好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
……いま予約投稿をしながら気づきましたが、新たに10評価を頂きました。ちょっとテンションが上がっておりますです、はい。
そして日美子忌憚も中盤。鬱展開の八割は終わり、残り二話は全体的な傾向は下がってからそれ以上に上がる形になります。
個人的に土日の投稿は見てくれる方の数が減少傾向なのですが、えげつないところは全部さっさとやってしまった方がいいかと判断しました。
全体的な流れが上がる後半は、明日の朝六時からスタートです。朝起きて流れをアゲてから出勤登校できることを願っております。
そんな時から八か月ぐらいが過ぎた。
認識阻害の魔術を使いながら、食べ過ぎで太ったと異能を知らない友達にからかわれるのが最近の毎日。
今日も学食をたくさん食べて、買い食いもたくさんしてから家に戻る。
……誠にぃは、時々放浪癖ができていた。
どうも小旅行をしてみたかったらしい。夏休みに一週間ぐらい家を空けたりして、でもお土産を片手に家に帰ってきてくれた。
だけど、ちゃんと学校がある時は毎日通っている。今日はちょっと早めに帰っているみたいで、部屋からうめき声が聞こえてきていた。
「まぁ~た見てるの? 誠にぃったらもぅ」
ちょっとふくれっ面になりながら、階段を上がって誠にぃの部屋に入る。
電気も消してパソコンで映像を見ている誠にぃを気づかせるように、私は部屋に電気をつけた。
『……はいがんばってー乙女ちゃん!』
『ひっひっふーだよ、ひっひっふー』
『……ふぅ~……っ。…っ…っ…ふぅ~……っ』
『よっし、頭も見えてきた! もうちょっとの辛抱!』
一心不乱に見ている誠にぃは、だいぶ遅れてから電気がついたことに気が付いた。
幸せそうに振り返る誠にぃに、私はため息をついてしまう。
「毎日毎日飽きないよねぇ、誠にぃ」
「日美子も見たら? 本当にいい映像だろ?」
そう微笑み誠にぃと向かい合うように、私は座っている誠にぃの膝の上に乗る。
「まったくもう。今日は乙女ねぇも来るんだから、こんなの見られてたら恥ずかしがるよぉ?」
最近は、乙女ねぇも隠すことなくすべてを明かして和やかに会話押している。
叔父さんは誠にぃに私の弱いところとかをアドバイスするし、叔母さんは乙女ねぇに経産婦としてのアドバイスをしている。誠にぃも乙女ねぇも、ぎこちないことなんてないぐらい普通に会話している。
とはいえ、さすがに乙女ねぇも病院で休んでいるころ間。
『……よっし産まれたぁああああっ! えっと、お尻を叩けば産声上げるのかな?』
『慎重に、慎重にな?』
『……ふぇえええええっ!』
『よっしこれでもう大丈夫!? ……ほら、乙女ちゃん? 産まれたよ~?』
……この映像は、乙女ねぇの出産映像だ。
元々は、裏物AVとして撮影されたもので、女子学生妊婦が題材。ただこのタイミングで陣痛が始まって、色々と大慌て。今はラストで無事に出産ができたタイミングだ。
出産は厳しいものだとは聞いているけど、これを見ると本当にそうだと思う。
でも、おじけづこうなんて思わない。
「……私の時も、見てくれる?」
「当然だよ。しっかり記録を残してくれると嬉しいかな?」
そう答えながら、誠にぃは私の膨らんだおなかを撫でてくれる。
妊娠六か月。私は時々蹴ってくれるお腹の子に心からの感謝を覚えながら、赤ちゃんを愛しく抱えてる乙女ねぇの前でキスをした。
「……日美子は、大丈夫?」
と、お風呂上りに乙女ねぇにそう尋ねられた。
今になっては、乙女ねぇに対する負の感情はほぼなくなった。
むしろ今までで最も気安く思えているというか、経産婦の先輩が二人もいてくれるのは正直助かるというか。
なので、赤ん坊にお乳を与えている乙女ねぇの隣に座ると、甘えるように肩に頭を預ける。
昔はこれをする時も、どこかで不愉快なものが沈んでいた気がする。それがなくなったのは、乙女ねぇが出産しているからだ。
今の乙女ねぇは、あんな産まれ方をした赤ん坊を心から愛している。そんな幸せそうな微笑みが、乙女ねぇが私の敵にならないことの証明だ。
だからこそ、私は心から乙女ねぇに頼れる。
「大丈夫。だって誠にぃとの子供だもん。この子を妊娠出来て、本当に嬉しいし、産みたいもん」
ああ、本心からだ。
私と誠にぃの子供。そんなものが授かれるなんて、ずっと思っていなかった。
何回か妊娠して堕胎したこともあるけど、この子は絶対に産んで見せる。
誠にぃが私の物になった証明。私と誠にぃが結ばれた証。
「……この子の名前ね? 幸せの象徴だから
「そっか。誠明と日美子の子供だもん、きっと幸せに育ってくれるよ」
本当に壊れてるなぁと、この時素直に思った。
私の十年以上と、誠にぃと結ばれた流れでそう思えるのは凄い。乙女ねぇは、本当に心から堕ちているって確信できる。
自分がしたくせに呆れながら、私は乙女ねぇの赤ん坊をちょいちょいとつつく。
赤ん坊は色々なところができてないから、丁寧に扱わないと大変だ。
……この子は、ぶっちゃけ色々と大変な人生を歩むだろう。
乙女ねぇは壊れているし、妊娠させたのは遺伝子検査でかなりあれな野郎だった。
なんでも、魔術回路を持っていたから道間家が末端の種馬用にスカウトしていたらしい。ホストクラブで働いており、暗示の魔術を使って大手ホストクラブのナンバー3前後を、高い酒やつまみを使って獲得しているとか。
地味に下種だな。この子大丈夫だろうか?
……私がこんな形で産ませたくせに、何を考えているのやら。
幸せすぎて呆けたのかと、私はちょっとため息をつきたくなった。
「……でも、きっといい名前を考えると思うよ? 私はちょっと変な名前にしちゃったから」
「あ~……。確かに、意味を考えた名前だけど意味が分かりにくい名前だよね~」
ちょっと苦笑いしたくなるのは、乙女ねぇの子供の名前だ。
乙女ねぇは元々農村出身で、だから「畑」か「田」の文字を入れたかったらしい。
で、いろんなことを知ってほしいって思ったこともあって、決まった名前が―
「ま、あんたも将来頑張りなよ、田知」
―そんな名前を呼びながら、私はつんつんと赤ん坊の頬をついた。
うん、すっごいかわいいし柔らかいからなんか抱きがいがある。私と誠にぃの子供も、そんな感じになるんだろうか。
……いっそのこと、私達の子とくっつくぐらいのおぜん立てをしてもいいかもしれない。
そんなことを、適当に考えながら私は微笑んでいた。
そしてそれから数か月、私はぐったりしながら、漸くなくなってきた陣痛の余韻に浸りながら目を開く。
まだだ。まだ意識を飛ばしたらいけない。しっかり意識を持ったうえで、ちゃんと目に焼き付けよう。
「……ぁ~! ぁ~!」
そんな風に元気よく産声を上げる、生まれたての赤ん坊を抱えた誠にぃは、私に微笑んでくれる。
「元気な子供だよ。頑張ったね、日美子」
そう言って私を撫でてくれる誠にぃは、そっと赤ん坊を私に抱かせてくれる。
赤ん坊特有なんだろうか。初めて嗅ぐにおいを感じて、私は陣痛の痛みじゃなくて幸せを感じて涙を浮かべる。
あの頃、私は自分が幸せになれるなんて思っていなかった。なったとしても、それはもう道間日美子じゃないんだろうとも思っていた。
だけど、誠にぃは私の物だ。そして、その子供も生まれてくれた。
……同時に、私は何人もの子供を堕胎している。それが少し胸を痛ませる。
だから、この子には幸せになってほしい。
今迄の子供の分も、幸せを掴んで欲しい。漸く生みたいと思えた、愛する人との結晶に、幸せを掴んで欲しいと心から思える。
この香りが、私の幸せの証明だ。
そう思ったから、自然とこんな言葉が口をついて出てくる。
「……幸香。貴女の名前は、幸香だよ」
涙が湧き出てくる中、それでも私は幸香に微笑んだ。
幸せの香りを運んでくれた、私の愛しい可愛い子供。
貴女に、幸せが訪れることを願っている。
……だから、この涙はきっと嬉し涙だけだ。
罪深い道を歩んだ先の、何かどす黒い物がまとわりついた結果であっても、これは本当に嬉しいだけだ。
そう、これは絶対に嬉し涙だと、私はそう思いこんでいたんだろう。
それからおっさんに頼んで、色々と手順を整えていた。
乙女ねぇと誠にぃは喧嘩別れ的な感じで誤魔化せばいいとして、実の兄妹な私達がそのまま結婚ってわけにはいかないわけだからだ。
だからおっさんに頼んで、一体預けられる家を用意してもらった。
道間家が表の活動において利用する、事情を知らないフロントの家柄。九条家。そこの縁ある人に、養子ということで細かいところをぼかして預かってもらっている。
そして数年ほど経ったら、私と誠にぃは同性愛者だと知られたくない相手とカバーで結婚。そして誠にぃが養子として幸香を引き取り、私は第二子を作って生むという筋書きだ。
だからまぁ、二人目の子供は高校を卒業してからになるわけで。
まぁ、あれは結構きつかったから……一年ぐらいはインターバルも欲しいしな。そんな風に思いながら、私は高校生活最後の月を過ごしていた。
「っていうか大丈夫だったの、日美子ちゃん?」
「そうそう。なんか急にやせた気もするし、盲腸ってそんなにきつかった?」
「お医者さんに太りすぎってことで、病院食とか調整されてたんだよねー。いやぁ、大変大変」
あのおっさん覚えてろよ。他になんかカバーできる病名あっただろ。
おっさんにその辺りのフォローを全部任せていた自分のことを棚上げしながら、私は友達とカフェでのんびりお茶をしてた。
あ~。妊娠期間中は栄養バランスとか食べない方がいい物とかは気にしてからなぁ。砂糖たっぷり入れたミルクティー美味しいです!
……今にして思えば、よくもまぁ私はこんなことを言えたものだと思っている。
腐りきった情欲に塗れながら、反吐が出るような悪行を起こしながら。そんなことをしながら、よくもまぁこんなことができるもんだと、自分でも呆れそうになる。
ただこの時は、ひと段落ついたと思っていたからか、凄く気楽な時間を過ごせていたと思っている。
―そう、視界の隅でビルの一角が爆発した、その時までは。
衝撃が走り、数秒遅れて爆音まで響く。
「きゃぁああ!?」
「え、なに!?」
「事故……え、あそこ!」
友達がそれに気づいて慌てる間、私は一瞬だけだけど思考が真っ白に染まっていた。
あそこは、おっさん達が女の子を抱く為に用意していた部屋があるビルだ。
外側から位置を確認したことはない。だけど目で階層を数えれば、そこは確かにあの部屋がある階層だ。
その時になって、私はあそこに乙女ねぇがいることを思い出した。
「……乙女ねぇ!?」
「あ、ちょ……日美子!?」
叫びながら走り出す私を、友達は止めることができない。
咄嗟に強化魔術まで使った私の走る速度は、スクーターぐらいは余裕である。そんな速さで追いつける、運動部でもない女子は普通いない。
心臓が止まりそうになる中、私は本気で走っていた。
頭の中は乙女ねぇのことと、そして乙女ねぇがいつも可愛がっている田知のことだけ。
……この時点で、私は自分の本音を悟るべきだった。いや、少し違う。
私が乙女ねぇに黒い感情を覚え続けていたことも、誠にぃに対して壊してでも手にしたい愛憎入り混じった感情を持っていたことも事実だ。それは嘘偽りでもなんでもない。
だが同時に、乙女ねぇが幸せそうな顔で田知を抱いているところを見て嬉しくなる感情は、乙女ねぇに対する悪感情からでもなかった。
それに、誠にぃを想う気持ちに嘘偽りは欠片もない。本当に愛していた、欲しくて欲しくてたまらなかった。私が欲しい形の上でとはいえ、幸せになってくれると嬉しいと思っていた。
異能を知らない友人とも、友情を持っていたいと思っている。本当の意味で腹の底を見せれないとは言っても、それでも心に安らぎがあったのは事実なんだ。
七緒やアイネスとの友情は本物だ。二人と一緒にいた時間は、かけがえがないと断言できる。……だからこそ、二人がいなくなったことで反転してしまったのかもしれない。
そんな自分の心を客観視できず、暴走して迷走してこんなところまできた女にとって、当然のしっぺ返しが来るのは当たり前だ。
だけど、それでも―
「―あ、日美子も来たんだ? ふふ、驚いているかな?」
―息も絶え絶えになって駆け付けた先で、こんな綺麗な笑顔の誠にぃを見ることになったのは、他の形があってほしかったと思ってしまう。
とことんまで読者視点で鬱にしてくる流れは、ここまで……と言いたいですが、次の話の前半ぐらいまでです。
こっからはある程度上がる形になりますが、まぁそうだとしてもいろいろとした方面を行く話ではありますね。
……明日六時! どっちかというと最終的に上がる話を予約投稿しておきます!