好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
日美子忌憚もついに最後。道間日美子の顛末と、カズヒ・シチャースチエの始まりが描かれるこの話で幕となります!
だが残念なことに、私は彼を守り切れなかった。
当然だが、道間家は誠にぃの凶行に対して厳罰を決めていた。
既にある程度調べていたこともあって、誠にぃがこの凶行に至る根幹―すなわち私や乙女ねぇの凌辱―は、本家や一部の有力者には知れ渡っていたようだ。
既に道間家は、この事態を表に出さない為に立ち回っていた。大王派にすら最小限の情報流出でとどめることにしていたようだ。
街中の要点や市街に出るルートに、道間家の手の者が配備されていた。これではどうあがいても、乙女ねぇや田知を連れて出ることは不可能だ。
反面表ざたにしない為に、最小限の人員にしているから物資の調達は何とか可能だった。だけどいつかジリ貧になると、既に私は分かっていた。
だから、私はある程度の時が経ってからは聖杯戦争に全てをかけることにしていた。
博打なのは分かっている。だけど私の頭で考えられる範囲内で、他に打開策は思いつかない。そして他の打開策を考えている余裕も知識もない。
少しずつ準備をしながら、私は聖杯戦争を引き起こす為にとにかく準備を整えた。
……だけど、その準備が大詰めになった頃に事態は動いた。
隠れ家にしている秘密基地が見つかり、道間家が用意した異能の部隊が攻撃を仕掛けた来た。
考えるまでもなく、今までが幸運だと分かっている。いくら誰にも伝えずに作り、天才的な能力を持つアイネスが協力した秘密基地とはいえ、子供五人が作った魔術工房を一流の魔術師や異能の使い手が気づかずにいられる方がおかしいのだ。
……それでも、私は諦めることだけはしなかった。
内蔵がえぐり取られた。折れた肋骨が肺を突き破った。頭蓋骨が砕け、破片が脳に食い込んでいる。心臓の外壁も破裂している。
そんな、当たり前に考えて死んでなくても動けなくなる状態で、私は第一陣を全滅させた。
そして早々に離脱する第二陣だけど、彼らが追撃することはないだろう。
……単純に、聖杯は爆発する。それに巻き込まれないようにする為の措置だ。
控えめに言って、大爆発が起きることは間違いない。そして物理的に動けなくなっている今の私では、乙女ねぇと田知を連れて逃げる余裕もない。そもそも外周部が逃がさない。
撃退できたことで気が緩んでしまい、私はもう動けない。まだ時間は正午前後なのに、晴れていると分かりながらも視界が暗いのも致命的だ。このままなら、聖杯が爆発する前に私は死ぬ。
というか、何で死んでないのか自分が信じられない。
自覚できる範囲で内臓が五つは破裂しているし、心臓も負傷している。肺には完璧に穴が開いているし、骨も何本も砕け散っている。気が抜けて倒れたから流れた血だけでも、数リットルは流れ落ちているだろう。
ショック死も失血死もしてないことが信じられない。関節が砕けていなければ、多分今でも動けているかもしれない。
だが、どうあがいても物理的な破壊はどうしようもない。
どれだけ気合を入れようと、物理的に駆動が不可能では動かしようがない。これはそんな当たり前の限界だ。
当然だ。仕方がない。不満はあるし納得できないけど、認めないといけない。
頑張っても叶わない夢はある。諦めるしかない願いはある。むしろそうでなければ、一度夢を持ったら叶える以外の選択肢が認められない、そんな素晴らしくもない夢の奴隷になってしまう。
夢は祈りであって呪いじゃない。自発的に歩いていくものであって、強制的に動かされるものではない。
こんなこと、もっと早くに気づけばよかった。
他人にまで呪いを振りまいて、結果がこのザマ。
私が死ぬのは自業自得だけど、乙女ねぇや田知を巻き込んでしまった。本当に、救えない。
あ~……クソ。
既に真っ暗になりかけている視界が、涙でにじんでくる。
乙女ねぇと田知を巻き込んで死ぬのか。本当に、救えないなぁ……私は―
「……日美、子……っ」
「……あぁ……くそ!」
―その声に、私ははっとなった。
ゆっくりとしか動かせない首を動かせば、そこには泣きそうになっている面影がある二人の姿がある。
どっちもボロボロで、血まみれで、傷だらけで。
そんな、泣きそうになっている二人の女性は―
「……アイ、ネス……七緒……?」
―なんで、この二人が。
私は驚きで、ぽかんとなってしまった。
そんな私に、二人は殆ど倒れこむように屈み込んだ。
「……ゴメン。説明してる時間が、ない。……乙女ねぇや田知を……いや、二人だけでも……っ」
自分でも無理だと分かっている。だけど、それでも逃げてほしい。
できることなら乙女ねぇや田知を連れて。それが無理でも、せめて二人だけは逃げてほしい。
だけど、二人とも静かに首を横に振った。
「悪いが無理だ。既に本家の連中は、大王派の力まで借りて結界で
アイネスがそういうなら、そういうことか。
……最悪でも、此処が吹き飛ぶだけのすればいい。そういう判断で安全を確保したわけだ。
逆に言えば、爆発するまでは裏山から出ることはできない。アイネスでも無理ならば、もう詰みだ。
「ごめんなさい……パパが……ごめんなさい……っ」
七緒は七緒で、泣きじゃくりながら私に謝っている。
それはつまり―
「そっか。知っちゃったんだ」
―全部、知っているんだ。
なんだろう。どんな感情なのか分からないや。
「……私からも、謝罪させてくれ」
アイネスも、目を伏せて私に謝ってくる。
「……私達は、友がずっと苦しんでいることにも気づかず……いや」
言い淀んで首を振るアイネスは、本当につらそうな表情だった。
「……友達面をしていた事こそ謝罪すべきだろう。本当に……すまなかった……っ」
「……それは、違うよ」
そうだ。それは違う。
「助けも求めず……勝手に呪って……乙女ねぇも誠にぃも台無しにした。そんな私が……悪いんだ」
「そんなわけない! パパ達があんなしたのが一番悪いでしょう! 日美子は被害者じゃない!」
口から血をこぼしながら、七緒はそれを否定する。
だけど違う。それは違う。
「被害者だからって何もかもしていいわけがない。私の罪は、おっさん達の被害者って免罪符で、消していいわけが……ない」
そうだ。そこだけは違う。
おっさん達が諸悪の根源だろうが、私が大きな罪を犯した悪であることに変わりはない。
……駄目だな。もう視界がろくに見えやしない。
「……本当に、ゴメン。私こそ、二人の友達なんて……言えないや」
そんなことを謝ってしまう。
「乙女ねぇと田知も巻き込んで、二人まで巻き込んで……死ぬのかぁ。……幸香も、只じゃすまないのに……っ」
「……大丈夫。お前の子供だけは、大丈夫だ」
アイネスが、静かに首を振るのが気配で分かった。
幸香だけは、大丈夫?
それが正直信じられなかったけど、アイネスだけでなく七緒も頷いていた。
「……その辺り、パパ達は上手く隠してたわ。本家の連中は、あんたが子供を産んだことにも気づいてない」
「証拠関連も可能な限り抹消した。だから、幸香がすぐにどうにかされることはまずない」
……そっか。
「……ありがとう。そして、本当に……ごめんなさい」
ほっとしたのと申し訳なさで、また涙がこぼれていく。
ああ……くそっ。
アイネスや七緒まで巻き込んで死ぬのが、本当に情けなくて涙が出る。
私は結局、どれだけの人を巻き込んで死ぬんだよ。
だけど、そんな私を弱弱しく二人は抱きしめてくれる。
「こちらのセリフだ。友にこれぐらいのことはさせてくれ」
「友達だもんね。……せめて、地獄の沙汰で弁護ぐらいさせてよ」
その言葉に、更に涙がこぼれてきた。
「……いいの? まだ、二人の友達でも?」
暴走する聖杯の臨界が始まる中、私はそれが訊きたかった。
これだけのことをして、乙女ねぇや田知ごと二人を巻き込んで死ぬ。
そんな私が、本当に二人の友達でいいんだろうか。
だけど、そんな私を抱きしめる力は強くなった。
「「もちろん」」
……そっか。
私は少しだけ救われた気分で、天を仰ぐ。
「ありがとう、二人とも。……そして、ごめんね……乙女ねぇ、田知」
結局、二人を助けることはできなかった。
これだけは絶対に心残りだ。どうあがいてもこの後悔は、拭えない。
「そうだな。死んだらあの世で謝るといい」
「一緒に、頭を下げてあげるわよ」
二人が慰めてくれた直後、聖杯は限界を迎えて崩壊する。
……一抹の救いと多くの後悔。
それが、私が末期に抱いた感情だった。
そんな感情と光景が切り替わるように、道間日美子は名無しの女として覚醒した。
「……え?」
唖然として周りを見れば、そこは間違いなく日本じゃない。
海外だ。それも、スラムと廃墟を足して二で割ったような場所にいる。
訳が分からない。記憶が混乱している。
そして、私の体も明らかに変わっている。
立っているのに視点が小さい。両手を見れば肌の色も体つきも全然違う。というか、さっき自分が言った声も明らかに道間日美子のそれじゃない。
……直感的に魔術回路を起動させようとするが、そもそも回路が開いていない。後でしっかり開いて固定させておかないとと思いつつ、顔を動かすとガラスの破片と焦げて黒くなっている壁を見つけた。
それを合わせて鏡のようにすれば、そこに映っているのは物心がつくぐらいの幼子が映っている。
顔つき、髪、目。全部外人のそれだ。まかり間違っても日本人のそれじゃない。
完璧に混乱していた。むしろ混乱しすぎて一周回って思考がさえてるところまである。
これは……あれだ。
記憶を持ち越したまま転生しやがった。
……ただし、状況は致命的に悪い。
これはあれだ、私は孤児だ。しかも生活環境も致命的に悪い。
たぶんだが、これ確実に私は死ぬだろう。
そう思いながらも、私はどこかで納得していた。
地獄の沙汰を受けることなくよみがえる時点で問題だけど、地獄のような環境で死ぬのならまだマシだろう。
まかり間違って幸せな家庭に育てられる方がアレだ。問題がある。
地獄に落ちるべき女が、悲惨な環境で二度目の人生を終える。
それはまぁ、当然のことで―
「……ぅぇ……ぇえええん」
―その言葉を聞いて、私は咄嗟に振り返った。
そこには私と同じぐらいの、小さな女の子が泣いていた。
考えてみれば当然だ。こんな悲惨な環境があるのなら、そこにいる孤児は一人や二人では断じてない。私以外にいるに決まっている。
そんな彼女を見て、私は自分の諦観を投げ捨てた。
そもそも環境的にあれだ。寒すぎてこのままだと凍死する。
周囲を確認してカーテンの残骸を見つけると、それを引きちぎるようにして確保。それで私はその子を含めてカーテンで包まった。
「……大丈夫? あぁもぅ……凄く冷えてるじゃない」
これは間違いなくあれだ。さっさと何とかしないと冗談抜きで死ぬ。
今すぐ魔術回路を開いて固定化して、取り合えず火属性魔術で暖をとらないと。……水と食べ物も確保しないといけない。
やるべきことを考えながら、私は一度考えこむ為に目をつむる。
そこに、あの時の田知の笑顔が焼き付いている。
……そうだ。私がどれだけ邪悪であろうと、その所為で罪のない者達が死んでいい理由にはならない。
何より、あの子が向けてくれた笑顔を裏切ることはない。その笑顔を間違いには断じてしない。
私は、これからどう生きるかを決めた。
私が邪悪であったのなら、せめて悪をもって悪を喰らおう。
悲劇と嘆きの敵対者として、毒を以て毒を制する。
綺麗ごとだけではどうしようもない悲劇を、悪をもって打倒する必要悪。
……暗闇の中にいる正しくあるべき者達が、道を踏み外さない為。せめて一つの
「……貴女、名前は分かる? 私は……カズヒっていうの」
これが、道間日美子がカズヒ・シチャースチエとして活動することになるきっかけ。
道間日美子が死に、カズヒ・シチャースチエが始まった瞬間だった。
今ここに、銀の魔弾が錬成される、その工程は示された。
あとは語るまでもない。正義を奉じる必要悪。邪悪を祓う銀の魔弾。悪祓銀弾《シルバーレット》は、その在り方を貫いた。
それでもなお、悟りきれなかった勝利によって、
汝、涙を拭う救済者よ。
互いに誓った笑顔に懸けて、銀の比翼を救い上げろ。
この作品ってアンチ・ヘイト作品になります?
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いやぁ、ならんでしょ?
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なるなる、なりますよ
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……気持ち寄ってる?
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ちょっと判断できないなぁ