好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 日美子忌憚も終焉し、涙の意味を変える男は彼女の元へとたどり着く。

 さぁ、百話を軽く超える長い期間を終え、本気の想いを遂げるのだ!


銀弾落涙編 第四十話 銀弾装填、忌憚の先に笑顔の花を

 

 和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、カズヒ姉さんの過去を歩いていく。

 

 彼女の苦しみを。

 

 彼女の後悔を。

 

 彼女の過去をその目に焼き付けながら、俺は一歩を一歩を踏み出し、そして辿り着いた。

 

 鎖に絡め捕られ、虚ろな目を向けるカズヒ姉さん。

 

 俺は、そんな彼女の目の前に立ち、そして抱きしめた。

 

 ……いや、何やってんだ俺。

 

 いろんな意味で感情がパニックになった。感極まって暴走した。

 

 あ、あわわわわわわわわ!?

 

……何、やってるの……?

 

 しかも起きたぁああああ!?

 

 ええい! こうなればこのままいくぞ!

 

「……迎えに来た。帰ろう、カズヒ姉さん」

 

「状況が、分かってるの?」

 

 カズヒ姉さんは、そうそっけない反応を返した。

 

「……見たんでしょう? 私の過去」

 

 カズヒ姉さんはそう告げる。

 

「多分だけど、乳語翻訳(パイリンガル)をいろんな異能で調律する形で心を繋げたんでしょう? 今の私の精神状態なら、あの過去を見せつけたと考えるべきだと思うわ」

 

 よくお分かりで。

 

 まぁ、此処で隠すのもあれだな。

 

「……あぁ。しっかりと見た」

 

 素直に答えると、カズヒ姉さんはうつむいた。

 

「なら分かるでしょう? 私は―」

 

「―俺はカズヒ姉さんと一緒にいたい。その気持ちがとても強くなったよ」

 

 俺がそう切り返すと、カズヒ姉さんは驚いたようだ。

 

 まぁ、驚くところはあるんだろう。だが素直な想いだと断言できる。

 

「壮絶な過去だったな。大変な過去だったな。罪深い過去だったな。悲惨な過去だったな」

 

 ああ、それは間違いない事実だ。

 

 道間日美子は間違いなく邪悪に生きた。それはもう事実だ、変わる余地はない。

 

 だけど、そのうえでだ。

 

「その上で、言いたいことが二つある」

 

 俺は、少し体を離してカズヒ姉さんに向き直った。

 

「愛している、カズヒ姉さん。結婚を前提に付き合ってくれ」

 

 まずはこれだ。

 

 それにカズヒ姉さんは面食らっているようだけど、とりあえずもう一つも言わせてほしい。

 

「そしてもう一つ」

 

 そう。これはもっと重要なことだ。

 

 最悪告白が断られるのは良しとしよう。

 

 だけど、これだけは伝えておきたい。譲れない。

 

 目を伏せ、焼き付いたその笑顔を思い出し、そして目を開けて彼女を見る。

 

「……今の俺があるのは、貴女の()()()()。本当にありがとう」

 

 この感謝の言葉は、絶対に譲れない。

 

 その言葉に、カズヒ姉さんは困惑している。

 

 まぁ、そりゃ困惑するだろう。

 

 だけどいい機会だから、全部話させてくれ。

 

「……俺が涙の意味を変えたいのは、貴女が流した嘆きの涙を、笑顔でこぼさせることができたからだ」

 

 そう、始まりはそこだった。

 

 道間田知が、道間日美子の涙の意味を変えることができた。

 

 道間日美子が、道間田知に願いを告げて笑ってくれた。

 

 それがあるからこそ、九成和地は涙換救済(タイタス・クロウ)としてここにいる。

 

「貴女がくれたあの笑顔があるから、俺は誰かの涙の意味を変えれた。この事実は、何があっても変わらない」

 

 そう。

 

 涙換救済が助けた人は、道間日美子の笑顔が原点にあるんだ。

 

 そして―

 

「俺の笑顔が貴女を再起させる力になれて、本当に嬉しいと思っている」

 

 ―原点たる笑顔は、俺自身が導いたものでもある。

 

 本当に何でもない、何も分かってない子供の気遣い。

 

 それが、道間日美子を一歩引き戻すことができた。そして彼女の笑顔に誓った決意が、いくつもの涙の意味を変えることができた。そして俺の笑顔に誓った彼女は、いくつもの正義を守り邪悪を祓ったのだ。

 

 この事実は、道間日美子の罪業と同じだ。どうなったところで変わらない。

 

「あの日、お互いが瞼の裏に焼き付けた笑顔。それに誓った決意は、間違いなく多くの人を救ったんだ」

 

 だから、俺は心からこれを言える。

 

「……これからも、お互いの笑顔に誓って(誰か)変えて(救って)生きていきたい涙換救済(タイタウ・クロウ)悪祓銀弾(シルバーレット)()()()()()の存在だと、心の底から思えるから」

 

 罪業も嘆きも消せないのなら()()()()()()()()()()()()

 

 過去は変わらない。だからこそ、瞼の裏の笑顔に誓って生き抜いた結果も変わらない。誰かが何人も救われた事実も、紡いだ絆も変わらない。

 

「カズヒ姉さんは自分を嫌っていてくれて構わない。嫌いになって当然だしな」

 

 そりゃ自分のことを許せないだろう。そんなことは分かっている。

 

 だけど―

 

「……そんなカズヒ姉さんを誰かが好きでいることを、カズヒ姉さんが誰かを救ってきた人間だということを、否定することだけはしないでほしい」

 

 ―そんな自分が成してきた善行と、向けられる好意は否定しないでほしいと心から思うんだ。

 

愛している、カズヒ姉さん。貴女の笑顔に誓った決意は間違ってなかった。俺はあなたと共に笑顔の誓いを成し遂げあいたい

 

 これが、俺の本心だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 嫌われると、心のどこかで思っていた。

 

 受け止めてはくれるだろう。だけど、今までのように思ってくれるだなんて自信はなかった。

 

 それだけのことをしてきたと分かっている。罪深いことをしたのだと分かっている。

 

 だけど、彼は笑って受け止めてくれた。

 

 ……あの時、田知(あの子)の笑顔に誓った決意。あの子もまた、自分の笑顔に誓ってくれた。

 

 その誓いを胸に、自分もあの子も多くを救ってきた。その事実もまた、罪業と同じように変わらない。

 

 あの時、私を救ってくれたその笑顔。彼もまた、私の笑顔を胸に本当に立派な男になって笑ってくれる。

 

 その救済は私がいたからこそだと。私が救ってきた成果は、罪業で打ち消されはしないのだと。彼は胸を張って断言する。

 

 ……自分を好きでいることは、それでもできない。

 

 だが、それでもいいと言ってくれた。

 

 私が私を好きになれないことを、彼が私を好きでいてくれることは矛盾しない。そのうえで、私を好きな彼を否定することもしたくない。

 

 ……瞼の裏の笑顔は、その真実を知ってなお、私に笑ってくれている。その笑顔の持ち主もまた、罪業を知ってなお私を誇って笑顔を向けてくれている。

 

 かつて私を救った笑顔が、またしても私を救ってくれた。

 

 私が誓った笑顔の持ち主。私の笑顔に誓った彼は、多くの涙の意味を変え、それを誓ってくれた私の成果でもあるといってくれる。

 

「……いいの? 私、実質的におばさんよ?」

 

「異形社会でなら二十年足らずの差はないも同じさ」

 

「私が貴方のお母さんにしたことは、許されないわよ」

 

「それは二人に言ってくれ。……いや違うな」

 

「あ、やっぱり―」

 

「―カズヒ姉さんがいなければ、俺は生まれなかったわけだしな。つまりカズヒ姉さんがいたからこそ、俺は多くの人達の涙の意味を変えることができたんだ。」

 

「……そうくる? というか、私はこの生き方を変える気なんてないわよ?」

 

「構わないさ。俺だって涙の意味を変え続けるしな」

 

「……もし悪を成すというのなら、私は絶対あなたを倒すわよ?」

 

「逆に姉さんが暴走するなら、俺が体を張って止めるとも」

 

 素直になれずに言い訳をしても、さらりと全部返してくる。

 

 ただ、何時の間にか顔が真っ赤になってプルプル震え始めてきた。

 

「……それでその、できればそろそろ答えを……ですね? 割と心臓バックバクで緊張してるんですが。……は、吐きそう」

 

「……プフッ!」

 

 そのくせ、妙なところで年相応だ。

 

 ……何かが馬鹿らしくなってきた。

 

 そうだ。彼はこちらが出した条件を乗り越え、間違いなく重い過去の真実すら乗り越え、こんな私を選んでくれた。

 

 だからこそ、まだだ。

 

 全身に力を入れる。

 

 強引に体を動かす。

 

 拘束を引きちぎるように、私は和地に顔を近づける。

 

「……和地」

 

「ひゃい……っ!?」

 

 強引にかつ力強いが、それでもその口にキスをする。

 

 そうまだだ。こんな程度でとどまってもらっては困る。こんなところでとどまるつもりもない。

 

 まだ助けよう。まだ救い上げよう。まだ涙を変えよう。まだまだ笑顔に誓い続けよう。

 

 自分が好きになることはなくても、誰かが自分を好きでいていくれることを、自他問わず認めさせるために。

 

 私も、彼も、悪を祓って涙を変えよう。

 

 誰かを救い続けることこそ、瞼の裏に焼き付いた、お互いの笑顔に掲げた誓いなのだから。

 

「……不束者で問題児ですが、これからよろしくお願いします

 

 一瞬きょとんとした彼は、すぐに嬉しそうな顔になった。

 

「……………お、お願いされますっ」

 

 妙なところで初々しい反応に、思わず本気で笑ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「……まだだっ!!」」

 

 気づいた時、カズヒと九成が声を合わせて響かせた。

 

 モデルバレットの右手が動き、フォースライザーに手を伸ばす。

 

 それを止めようとする咄嗟の左手を、九成がしっかりと掴んで食い止める。

 

 同時に、九成が持っている魔剣が強い輝きを放っていた。

 

『な……冗談でしょ!?』

 

 狼狽するモデルバレットの右腕は、二つの意志がぶつかって拮抗する。

 

 ああ、やったんだな九成。

 

 待ってたぜ、カズヒ!

 

「……やっちまえぇええええええ!」

 

 俺は全力で声を上げる。

 

 ああそうだ。馬鹿なこと言ってんじゃねえ。

 

「今更お前の過去を知ろうが、お前は俺達の仲間のままだ! 根性入れろよ、十八番だろ!」

 

 全力で俺は声を飛ばす。

 

 ここまで来たんだ。お前がお前の手で乗り越えなくてどうするんだ!

 

「そうよ! 今更私達が、貴女の貢献を否定するわけないでしょう!」

 

「やって見せろ。悪祓銀弾(シルバーレット)の強い意志は、俺や兵藤一誠にも負けんはずだぞ!」

 

 リアスもサイラオーグさんも、声を飛ばしてくれる。

 

「負けんじゃねえよカズヒ! 人に偉そうなこと言ってんだから、自分もやって見せろや!」

 

「師匠! 私達を引っ張り上げてくれた師匠は、こんなところで終わらないはずよ!」

 

「カズヒがいないとカズ君が元気でないでしょう? それとも先生達が独占しちゃっていいのかな~?」

 

「カズヒ! 和地君がここまで頑張ってるんだから、頑張って!」

 

 ベルナも、春菜も、リヴァさんも、インガさんも、カズヒを呼んでくれる。

 

「……カズヒぃ。戻ってきて、私達にはあなたが必要なのよ!」

 

「ここまでやってダメでしたなんて、絶対許さないんだからぁああああっ!!」

 

 リーネスと南空さんも、大切な友人の為に声を張り上げる。

 

 九成が妨害を止める中、カズヒとモデルバレットの拮抗はまだ崩れない。

 

「まだだ……そうまだだろう、カズヒ姉さん……っ!」

 

 九成が吠えるけど、このままだとどうなる?

 

 オーラの放出がデカすぎて、俺達は近づけない……っ!

 

「……カズヒ、姉さん―」

 

 オーラに吹き飛ばされそうになりながら、九成はそれでもカズヒから離れないように力を籠め―

 

「「……カズヒ!」」

 

 ―その背中を、ヒツギとヒマリが支えていた。

 

 何時の間に。……いや、そうだよな。

 

 二人だって、カズヒが大事に決まってる!

 

「……道間乙女じゃなくて、ただのヒツギが言わせてもらうよ。……私はあんたの友達じゃんか! それは、前世がどうだろうと変わらないし!」

 

 ヒツギの声がきっかけになったのか、少し動く。

 

「一緒に卵掛けご飯食べますわよ! 前世()がどうあれ私たちは友達ですの。私はカズヒと一緒に卵かけご飯が食べたいですの!」

 

 ヒマリの声が後押しになって、九成も一歩を踏み出した。

 

……まだだ……まだだ……まだだ……まだだ……そう……まだ……だぁっ!

 

 カズヒが声を上げて、少しずつ、少しずつ動いていく。

 

『ざっけんな! 乙女ねぇを踏みにじったカズヒ(こいつ)を、あんたら(道間乙女)が助けるとかあほくさいんだよ!』

 

 モデルバレットがオーラの放出を過激にするけど、それでも二人は九成を押す。

 

「あのねぇ……っ」

 

「そんなの……っ」

 

 二人は強引に魔力で押し切り、そして息を同時に吸い込んだ。

 

「「今はどうでもいい!」」

 

 そして、強引にモデルバレットに組み付いて動きを封じる。

 

 その二人の姿を、九成は涙すら浮かべてみて、カズヒの手を取った。

 

 魔剣の光は更に強く輝き、それに照らされながら九成は吠える。

 

「帰ってきてくれカズヒ姉さん。俺達はあなたが大好きだ!」

 

 その言葉が―

 

「―ええ、そうよ。カズヒ()の人生は、まだ続くのよ!!

 

 ―ゼツメライズキーを引き抜いた。

 

 ぶん投げたゼツメライズキーが、軽い音を立てて地面に落ちる。

 

 そのまま疲れたのか崩れ落ちようとするカズヒを、九成が慌てて抱き留め―

 

「「カズヒ!」」

 

「カズヒぃいいいいい!」

 

「カズヒぃ!」

 

 ―る前に、ヒマリとヒツギが抱き留め、駆け寄ってきた南空さんとリーネスが九成を跳ね飛ばした。

 

「九成ぃいいいいいいっ!?」

 

 思わず俺は絶叫するけど、四人は九成に向いていない。

 

 四人とも涙目になって、苦笑しているカズヒを抱きしめていた。

 

「……四人とも、痛いって」

 

「やかましい! 散々心配させたんだから我慢しなさいよもぉおおおおお!」

 

 大泣きする南空さんに、カズヒは苦笑している。

 

「まったくもぉ。……本当に心配したのよぉ?」

 

「ほんとゴメン。……それに、ありがとう」

 

 涙目になったリーネスに、カズヒは撫でられたままで居られている。

 

 そしてヒツギもヒマリも、カズヒを抱きしめていた。

 

「……ま、正直色々と複雑だしぎくしゃくもするだろうけどさ? ざっくりまとめると―」

 

「―道間乙女は日美子のことが大好きで、()()()()()()()()()()()が大好きですの

 

 そんな風に抱きしめながらの二人に、カズヒは寂しげに、だけどしっかりと笑いながら頷いた。

 

「そうね。乙女ねぇはもういないけど、その残滓を受け継いだ子が二人もいる。……そんな二人を、私は大事にしたいもの」

 

 カズヒは、そう受け止めたのか。

 

 ……これからどうなるかは分からない。

 

 だけど、カズヒ達は大丈夫だと思う。

 

「……ありがとう。私もみんなが、大好きよ」

 

 良かったな、カズヒ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………耐えろ、耐えろ俺……っ」

 

 あと九成、ドンマイ!




 ……ここに至るまで、本当に苦労しました。

 何度かエタり、大幅見直しをして、ようやく書きたいところを書き切ることができた一話です。まじで感無量です。

 これからも、カズヒを、九成を、そしてこの作品をよろしくお願いします!

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