好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 そんな感じで、派手な戦いが連発されることになりますよぉ。






 それにしてもアンケート、ストラーダのぶっちぎりトップだなぁ。



 あと、感想で指摘されたのでいっておきますと、自分は明らかな問題行動をとっているキャラを更正させたり、その過程で落とし前をつけさせることをアンチと見なしておりません。
 以前書いたISの二次創作でもそんな感じでしたが、かなり前なので把握できてないかたのほうが多いとは思いますので、ここで明言しておきます。


三勢合一編 第二十話 連・戦・佳・境

 祐斗Side

 

 

 

 

 

 

 敵の動きは明らかに驚異的だった。

 

 デュランダルと聖魔剣の攻撃力が上回っていることもあり、十分足らずとはいえ何とか凌ぐことは出来た。

 

 だけど、それでも既に追い詰められている。

 

 ………これは、まずい。

 

「ふぅん。ちょっと歯応えがなかったわね。この程度なら、たぶん上級悪魔クラスなら一対一で渡り合うことは出来るでしょうし」

 

 ジークリットもこちらに興味を失ってきているのか、仕留める方向性に入っている。

 

「ええい! こうなればせめて道連れに―」

 

 ゼノヴィアが焦れたその瞬間だった。

 

「落ち着いてください。信仰とは命を惜しまぬものですが、投げ捨てるものではありませんよ?」

 

 その言葉と共に、僕達を飛び越えてかける姿があった。

 

 輝く槍を振い、一瞬でネアンデルタールマギアを切り捨てるのは、プルガトリオ機関現長官の、クロード・ザルモワーズ。

 

 最強の神滅具と名高い黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の一撃は、この趨勢に大きな変化を与えるのに十分過ぎた。

 

 更に、情勢の変化は止まらない。

 

「お待たせ! 周囲の敵は片づけれたよ。あとはこいつらとミカエル様達の敵だけさ」

 

 その言葉と共に、新たに駆けつけるはリュシオン・オクトーバー。

 

 同時に動いたネアンデルタールマギアに対して、僕達との間に割って入るように入った彼は、静かに拳を握り―

 

「悪いが、敵に過剰な容赦をかける甘さはないんだ」

 

 ―その拳の一撃で、粉砕した。

 

 砕け散るマギアの残骸に対して、リュシオンは残心と共に一瞬だけ黙祷を捧げる。

 

 そして一瞬でそれを終え、真っ直ぐジークリットに鋭い視線を向けた。

 

「これ以上好きにはさせれないね。ただし、投降するならある程度の配慮はするよ」

 

「……生憎だけど、私は死ぬのを恐れなければ、プロとして仕事はしっかりする主義なの」

 

 そう返しながら、ジークリットは光の剣を両手に持ちつつ、両足からも光の刃を具現化して切りかかる。

 

 それに対して、リュシオンは拳で対応する。

 

 本来、どう考えても危険極まりない行為だろう。如何に星辰奏者といえど、ベースが純粋な人間では、強度には限界があるのだから。

 

 しかし―

 

「悪いが、こういう手品も得意でね。―創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌めく流れ星」

 

 起動音声(ランゲージ)と共に、彼は星を発動する。

 

 それだけではない。絶大な聖なるオーラが拳に宿り、相手の攻撃を弾き飛ばす。

 

 ま、まさかあれが彼の神滅具(ロンギヌス)星辰光(アステリズム)なのか?

 

「なんだと!? 猊下の聖拳をネロ以外に習得していたとは!?」

 

 そう思った時、それを否定する大声がゼノヴィアから出てきた。

 

 というか、ちょっと待った。

 

「ゼノヴィア、あれは技術なのかい?」

 

「ああ。前任のデュランダル使いであらせられるヴァスコ・ストラーダ猊下の聖拳。拳そのものに聖なるオーラを宿す、あの方の伝説ともいえる技だ」

 

 ……デュランダル使いなのに、拳でも伝説を作っているのか。

 

 話には聞いたことがある。長い年月に見合った戦闘能力をもつ上級悪魔達ですら、「あの悪魔と戦いたくない」などという感想が出てくるほどの猛者だったはずだ。

 

 それに対して、リュシオンさんは苦笑する気配を僕らに感じさせた。

 

理論(メソッド)無しの精神論だったから、ちょっと習得には手間取ったけどね。いずれ感覚的なものを理論的に体系化して、悪魔祓いの高等技術レベルに落とし込みたいものだよ」

 

 こっちはこっちで凄いことを言ってくるな。

 

 感覚によるものを習得するだけでなく、それを誰もが習得する余地のある技術体系に落とし込もうとする。そうなれば、悪魔祓いに大きな戦力強化を齎すことだろう。

 

 これが、神の子に続く者(ディア・ドロローサ)、リュシオン・オクトーバー……っ!

 

 僕らが驚いていると、ジークリットは距離を詰めずに光力の弾丸による攻撃に移った。

 

 攻撃に反応出来た事といい、ダメージがろくに見えてない事といい、接近戦でも渡り合えそうに見えたけどね。

 

 戦闘狂に見えて意外に慎重なのかな? まあ、戦闘狂にも種類はあるからそういうことなのだろうか?

 

 そしてリュシオンはその射撃をすべて回避する。

 

 あまりにも機敏すぎる、どこか違和感すらある素早い回避に、ジークリットは舌打ちした。

 

「……面倒な星ね。しかも使い手が規格外だからこそ洒落にならないわ」

 

「……へぇ。初見で見抜かれたのは初めてだよ」

 

 ……何か裏があるのか、二人は意味深な言葉を交わしている。

 

 そこに気を取られていた瞬間、更に一体のネアンデルタールマギアが破壊された。

 

「動きは読めてきました。反応は生物のそれですが、動きが多少機械的です。……この調子なら攻略法の確率もできそうです」

 

 クロードさんもここまで戦えるとは。

 

 これは、僕達も負けてられないね。

 

「行こうかゼノヴィア。ただ目を見張ってるばかりでは、リアス部長に申し訳ない」

 

「……確かにな。グレモリー眷属とはそういうものか」

 

 僕達も戦意を再び漲らせ、そしてそれを見たジークリットは不敵な笑みを浮かべる。

 

「……ふふ。少し見惚れそうだな。こういうのは少し羨ましいわね」

 

 そう言うと共に、ジークリットから更なる戦意があふれていく。

 

「来なさい。さあ、神滅具にデュランダルに聖魔剣。データを回収するのはとても楽しみだわ!」

 

 凌いで見せる。ここを凌ぐことが僕達の役目だろうからね。

 

 だから、君はリアス部長を頼んだよ、イッセーくん……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、まあ凄い事になってるな。

 

 トップ達の伏せ札で、一気に形勢が傾いた。

 

 よく耳を澄ますと周囲の戦闘音も小さくなっているし、形勢はこっちに傾いた……か?

 

「なるほど。できれば一戦交えてみたいが、今はまだ早そうだ。なら……」

 

 ヴァーリはそう残念そうにしながら、だけど興味深そうにイッセー達を見る。

 

 そして同時に、指を軽く鳴らした。

 

「……え!?」

 

 気づけば、可愛い女の子が目の辺りに魔方陣を浮かべている。

 

 あの子が停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)のギャスパーか?

 

 ってことは、あれはヴァーリの仕業だな。神器対策に先手を打ったってわけか。

 

「悪いが、流石にその神器は手こずりそうでね。最も来ると分かっていれば対処は簡単だ。初見殺しは初見殺しで面白いが、やはり分かっていてもなお脅威な物こそ真の強者だと思わないかい?」

 

「知るかよ! 俺はシャルロットに恥じない男になった上でハーレムを築きたいんだ。戦争とか二天龍の決着とか、マジでどうでもいいんだよ!」

 

 イッセーがそう吠えるが、ヴァーリは残念そうに軽く肩をすくめるだけだ。

 

 ったく。これは俺も本腰を入れるべきか?

 

 そう警戒しつつ、俺はもう一人も警戒する。

 

 同時に、カズヒ姉さんが一歩前に出てツインテールに剣を突きつけた。

 

「……九条・幸香・ディアドコイ。貴女は、テロリストになって何をする気なの? ハヤテとかいう奴もそこのヴァーリも語ったのだから、教えてくれてもいいんじゃない?」

 

 なるほど。あのツインテールはそういう名前なのか。で、ロボットを動かしているのはハヤテとかいう奴か。

 

 そして九条は、不敵な笑みを浮かべて点に指を立てる。

 

「英雄派の共通理念はどうでもよいじゃろう。妾が個人で思っていることを告げるのならば……つまらない人生を送りたくない、かのぉ?」

 

 なんだと?

 

 少し怪訝な表情を浮かべる俺たちに、九条は軽く肩をすくめる。

 

「妾は妾という存在を、その影響力を世界に刻み込みたい。そしてその刻み込む範囲に見合った豪勢で豪快な生活をしたい。そしてそれ以上を常に求め、砕け散るその時まで奪い肥え太りたいのじゃ」

 

 ………正気かよ。

 

 ある意味テロリストらしいその言い分に、カズヒ姉さんはうつむいた。そして手を顔に当てる。

 

 頭痛を堪えてるんだろうけど、まるで泣きそうになって顔を隠している風にも見えた。

 

 そして、数秒経って顔を上げる頃には、呆れを表情にしっかりを見せつけている。

 

「………貴女馬鹿なの? それを(信徒)の前でいう? 主の前には人間は原則平等、そんな信仰に生きる者の前で―」

 

「欺瞞はよすがよい」

 

 カズヒ姉さんの言葉を、九条は真っ向から切り捨てた。

 

「無論、本気かつ本心でそれを告げれる者はおる。だが妾の目には見えるのじゃよ」

 

 そう言う九条の目は、確かにちょっと特殊だった。

 

 黄金に輝くその瞳は、どことなく人のそれとは異なっている印象がある。

 

 かといってギャスパーのそれとは思えない。……神器じゃないのか?

 

 俺が警戒をしている時も、九条はカズヒ姉さんを見て、哀れみすら浮かべている。

 

「我が覇王の魔眼は、我が同志足りえる者を見抜き、見抜かれた者すらそれを自覚させる。更に魔術で応用することである程度の本質を測ることが出来る。だからな、分かるのじゃよ」

 

 確かに、それは厄介な能力だな。

 

 だけど、欺瞞だって?

 

「お主の本質は妾と同じ。己が野望の為ならば、それが肉親であろうと奪いに行ける簒奪者で蹂躙者で征服者じゃ。無理をしている自覚はあるのではないか?」

 

「………っ」

 

 その指摘に、カズヒ姉さんは歯を食いしばって答えない。

 

 そして、俺は先日のカラオケでの会話を思い出す。

 

―私は、自分が堕落しないなんて思ってない。むしろ腐りやすいって思ってるからこそ、正義の味方になりたいの。

 

 ああ。あれはそういうことだったのか。

 

 俺が何かを悟っていると、九条はカズヒ姉さんに手を差し伸べる。

 

「ともに私掠船団(プライベーティア)となってみないか? お主なら、妾の後継私掠船団(ディアドコイ・プライベーティア)の見習いに入れる程度の素質はあると見込んで居る。腕も立つしな」

 

 その誘いに、カズヒ姉さんは頷かない。

 

 迷ってもない。絶対にそれには頷かないという、強い意志が感じられる。

 

 だけど同時に、それを口にすることが出来ないようでいて―

 

「……論外ですわ」

 

 ―その間に、ヒマリが割って入った。

 

「……ふむ、見所の一切ないお主が、何を言う?」

 

「どうでもいいことですわ。少なくても、カズヒとあなたは全然違うって分かってますから、絶対にそんなことさせませんの」

 

 ショットライザーを突きつけながら、ヒマリはカズヒ姉さん庇う。

 

 俺はちょっと躊躇していた。

 

 まるでカズヒ姉さんは、図星を突かれて反論することが出来ない人のように見えたから。

 

 だけど、俺と同じようにカズヒ姉さんの告解を聞いたはずのヒマリは、胸に手を当ててはっきりと告げる。

 

「カズヒは自分が堕落しやすいと思って、だけどそんな自分を戒めれる立派な女の子ですの。開き直るどころか積極的に他者を蹂躙するような強盗如きと一緒にしないでくださいます?」

 

 ……ああ、全くだ。

 

 俺も腹をくくって、カズヒ姉さんを庇う様に前に出ると、同じようにショットライザーを突きつける。

 

「……ああ、全くだ。正義に味方する為に、自分から泥をかぶってでも一生懸命正しい人の為に命がけで頑張るカズヒ姉さんを、一緒にされていいわけがなかったな」

 

 ありがとな、ヒマリ。

 

 お前が俺の相方で、俺はほんとによかったよ。

 

「……失せろ悪党。カズヒ・シチャースチエは正義()味方で悪の敵だ。悪意を戒めず正義を意にも介さないお前にとって、敵であって味方なんかじゃないんだよ」

 

「……そうね。そうだったわ」

 

 そして、カズヒ姉さんもそういうと、真っ直ぐに九条を見据える。

 

 睨み付けない。悪意はない。

 

 ただ真っすぐに、彼女と自分が違うのだと、それを示すかのように胸を張った。

 

「私は自分を腐らせない為に命を懸ける。そうありたい気持ちに、欺瞞なんて一つもない。……残念だけど、悪党でいる貴女は()()()()な私の敵よ。情けはかけれないし容赦をするわけにもいかないわ」

 

 ……その言い回しが、ちょっとだけ引っかかる。

 

 本心から言っているのはよく分かる。そうであろうとすることに、命すらかけれるのもよく分かる。

 

 だけど同時に、九条・幸香・ディアドコイはカズヒ姉さんにとって何か重い物なんだろう。それもなんとなく分かってしまう。

 

 だからこそ、だな。

 

「俺は、いつかそこを話してくれるような奴を目指すとするさ」

 

「……子供が生意気よ」

 

 そんな風に、カズヒ姉さんは小さく微笑みながら俺の決意を受け止めてくれた。

 

 ああ、何年かかるか分からないけど、出来ることなら生きている間に、抱えている物を更にいくつも話してもらえるようになりたいもんだ。

 

 そして、ヒマリはそんな俺達を見て微笑んでいるのが装甲越しでも分かってしまう。

 

「うんうん。二人が仲良くなって嬉しいですわ。涙が出てきそうですの?」

 

「「そこまで?」」

 

 いやちょっと待て。

 

 俺はいいぞ? ヒマリの相方だし、カズヒ姉さんに惚れてるし。

 

 でもさ、ヒマリ。カズヒ姉さんのこと気に入りすぎじゃね?

 

 ま、それはいいか。

 

 一目惚れがこの世に本当にあるんだから、一目見て気に入るってこともあるんだろう。

 

 ……できれば同性愛的なのでないことは祈るけど。

 

「……よかろう。ならば妾は、おぬしらを難敵として打倒し、肥え太る為に喰らうとしようではないか!」

 

 そう告げると共に、九条は一振りの剣を構える。

 

 ザイアスラッシュライザーじゃない。それは、金属製の片手剣だ。

 

「魂を刈り取る形をしているだろう? これは我が後継私掠船団の幹部が鍛えた、魂を切り裂き殺す剣だ。……多少脆いのが難点じゃが、当たれば決まる類じゃぞ?」

 

 なるほどねぇ。

 

 嘘か本当かは置いといて、一発も喰らわないって条件を付けられるのは少しきついか?

 

 特に生身故に一番危険なのはカズヒ姉さんだな。サポートに回ってもらうか?

 

 そう思ったその時、カズヒ姉さんは呆れたようなため息をついた。

 

「それが何? 刀剣類の武器戦闘なんて、本来当たれば負けるのは当然でしょう?」

 

「なるほど、豪気よのぉ。つくづく引き入れられぬのが惜しい女傑よ」

 

 その言葉と共に、九条は不敵な笑みを浮かべてこちらに目を向ける。

 

 同時に黄金の花びらを具現化し、静かに腰を落とした。

 

()の妾を凌いで見せよ。さすれば、今回は引いてやろう」

 

 ……なるほど。つまりスラッシュライザーは確実に、至っているかどうかは分からないが禁手も使わないと。

 

 舐められたもんだが、つまりそれでも十分強いと言いたいわけか。

 

「……上等だ、やってやる」

 

「なら一泡吹かせてあげるわ」

 

 俺とカズヒ姉さんはいつでも切りかかれるよう腰を落とす。

 

 そして、ヒマリがぷんぷん起こりながらショットライザーを突きつけた。

 

「言いましたね! ならそれが油断だと教えてあげますわよ、二人とも!!」

 

「「OK!」」

 

 そして、俺達は一機に戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 ど、どこもかしこも戦闘が起きちゃってるよ。

 

 でもって、俺はヴァーリの相手ってか?

 

「……お前、本気で三大勢力全部を敵に回すのかよ?」

 

 コカビエルより強い奴だっているんだろ? そんなことしたら、命がいくつあっても足りないだろ。

 

「その程度なわけがないだろう? オーフィスだけでも三大勢力の一角程度なら総力で相手どる必要があるレベルだ。まして禍の団の派閥は三大勢力だけじゃない。必然的に、他の神々とも争うことが()()()

 

 ヴァーリは楽しそうだった。いやほんと楽しそうだよコイツ。

 

 明らかにめんどくさそうで命がいくつあっても足りないだろ? アザゼルの言う通りなら、そんなことしてたらハーレムどころかおっぱいひとつ楽しめやしない。

 

 コカビエルもそうだったけど、神の子を見張る者(グリゴリ)で強くて戦闘狂な奴って、こんなのばっかりかよ。

 

「アザゼルの下にいて和平に付き従っていたら、主神との闘いなんてできやしない。俺自身の夢の為にも、この好機は逃せないのさ」

 

 そんなに平和じゃいやなのかよ。

 

 平和でいいじゃん。命も危なくないし。

 

 そりゃまあ、戦争になれば手柄を上げるチャンスはあるかもしれないけど、それで死んだら元も子もないだろ。レーティングゲームや悪魔としての契約があるなら、それで十分じゃねえか。

 

 こんなのが俺の宿命のライバルとか、勘弁してくれよ。むしろ宿命のライバルとか要らないから。

 

「……そしてその前座として、イッセーを狙うということですか?」

 

 シャルロットが警戒心バリバリでそう聞くと、ヴァーリはなんかちょっと考え込んだ。

 

「……正直に言えば、もっと禁手に慣れたうえ、覇にすら手が届いてからがいいんだけどね。だけど、とりあえず味見をするのも悪くない……いや、味見をしないと我慢が出来なさそうだ」

 

 ……ドライグ、覇ってなに?

 

 アザゼルがリングを渡す時にも、そんなことを言っていたような気がするけど。

 

『神器は基本的に禁手が究極だが、俺のように封印された存在の力に由来する神器には別口の隠し玉があってな。寿命を文字通り削るレベルの消耗と引き換えに、封印した存在の力を完全開放する機能がある。それが覇……ドラゴン封印系の場合は覇龍(ジャガーノート・ドライブ)という』

 

 そんなのあるの!?

 

 すっげー。極めれば神すら殺せるうえ、そんな隠し玉まであるなんて、ほんと凄いんだなぁ、お前。

 

『そんな便利なものでもない。基本的に覇を発動すれば理性は吹き飛ぶし、寿命を削るってのはさっきも言ったが文字通りで、まさに最終手段なのさ。大抵の二天龍対決は覇を先に習得した者の勝ちではあるが……逆に言えば、そんな時でもなければ使っていいようなものでもないんだよ』

 

 え、マジで!?

 

 俺がちょっとビビってると、ヴァーリはその理由に気づいたのか苦笑した。

 

「その様子だと、覇龍に対してドライグから説明を受けたか? ……ちなみに、俺は魔王の血を引いているから、魔力を代償にすればある程度は制御できるし寿命も削らないのさ」

 

『言うほど簡単ではないがな。ヴァーリ、如何に結界が特別製とはいえ覇を使うのはよしておけ』

 

 アルビオンがヴァーリをたしなめるぐらには、危険な奥の手だってことはよく分かった。

 

 絶対使えねえよ。魔術回路と転生悪魔分全部足して、それでも子供の悪魔にも届かない俺のへっぽこ魔力量じゃ、絶対使った瞬間に死んじまう。

 

 ……あ、逆に言えば魔力が多ければ何とかなるのか。僧侶(ビショップ)昇格(プロモーション)ばなんとかなるのか?

 

 俺がそんな打開策を思いつくと、ドライグからため息が盛大に出た。

 

『言っておくが、相棒では僧侶に昇格した程度ではヴァーリ()の足元にも届かんから無理だからな。リアス・グレモリーレベルの魔力量になってから出直してこい』

 

「イッセー。初代四大魔王の血族を甘く見すぎよ? 今の末裔だって少なくとも最上級悪魔の領域ばかりなんだからね?」

 

「即断即決が必要な時以外は、思慮深くするようにしてくださいね? いえ、戦闘中は即断即決が必須だとは思いますけど」

 

 話が聞こえてたのか、リアス部長とシャルロットにも怒られちゃったよ。

 

 いや、最初っからそうさせる為にわざと聞こえるように言ったな、ドライグの奴。

 

 ……つまり、それぐらいの差が俺とヴァーリにはあるってことか。

 

 尚更、この場で使うわけにはいかないってことか。

 

「……ヴァーリ・ルシファー。貴方がどれだけ戦いたくても、ギャスパーを助け出したした以上、これ以上の戦闘では貴方は負けるでしょう。それが分かっているのに、今のあなたと真っ向から戦ってあげる必要があると思うの?」

 

「同感ですね。私の究極の羯磨(ロンギヌス)気配遮断(クラス別スキル)を併用すれば、増援が来るまで凌ぐことはできますよ?」

 

 リアス部長やシャルロットも同じ意見か。ま、そうだよな。

 

 先に覇龍に到達すれば勝ちって二天龍対決なんだろ? 正しい意味での禁手も覇龍ももう習得してて、しかも無理すれば暴走しないで使えるとか、そりゃぁ勝ち目ないよなぁ。

 

 真面目な話、誰か強い人が倒してくれればいいんだけどなぁ。

 

「……なるほど。俺も確かに目移り気味だが、どうやら赤龍帝()は挑もうという気概もないらしい。なら―」

 

 あ、もしかしてわかってくれたの―

 

「―俺が君の家族を殺せば、そんな腑抜けた気概を投げ捨ててくれるかな?」

 

 ―なんだと?

 

「……どういうつもりですか? いえ、テロリストにふさわしい下衆な精神性ですが」

 

「そうかな? 人生において他者に迫害されることや悲劇に見舞われることは、折れなければ爆発力を発揮するのは正しい事実だよ。まして憎悪というものは、他者の廃絶という行動に限っていえば、原動力としてこれ以上の者もそうはない」

 

 シャルロットの糾弾も、ヴァーリのクソッタレな言い分も聞こえない。

 

 今、何て言った?

 

「いや、リアス・グレモリーでも十分かな? シャルロット・コルデーがいなくなっては奇跡が消えてしまう。あとは奴を打倒する俺の憎悪と同等のバックボーンがあれば、空前絶後の俺に食い下がる、前人未到の赤龍帝にはなれると思うんだけどね」

 

「……ヴァーリ、ルシファー……っ」

 

 リアス部長もヴァーリに切れるけど、それすら気にならない。

 

「ふざけるなよ、てめえ……」

 

 俺は一歩前に出る。

 

 ヴァーリを真っ直ぐ睨み付ける。

 

 コカビエルの時もかなり切れたし、ライザーやレイナーレをぶちのめす時も本気だった。

 

 だけど。これはそんなレベルじゃない。

 

「なあ、俺の父さんと母さんは普通の両親だよ。お前の言う通り異能や異形なんかと全く関わらない、俺が悪魔になったことも知らない……俺を大切に育ててくれた、大事な両親なんだよ」

 

 それを……っ!

 

「……てめえの下らねえ趣味なんかの為に、殺されてたまるか! ぶっ飛ばすぞ、この糞やろうがぁああああああ!!!」

 

 そもそも裏切者だったしなぁ!

 

 今のふざけた寝言も込みで、落とし前をつけさせてやらぁ!!

 

 一回、本気で、ぶちのめす!!!

 




 ……ちなみに、リュシオンもジークリットもまだ手札を隠しています。

 リュシオンはレギュラーでない味方キャラとしては最強格としています。本気出した場合の戦闘能力は、デュリオ(禁手時)とかストラーダ(若返り版)と同格の化け物です。

 ただ星辰光も神滅具(候補)も、玄人向けというか使い勝手が悪いので、上記の二人と違って正しい意味での全力戦闘は戦場次第では不可能になりかねません。





 そして本作主人公と真の主人公が立ち向かうは、九条・幸香・ディアドコイ(様子見バージョン)。

 仮面ライダーにはならないし星辰光の詠唱もしないし禁手にもならないし、ついでにもう一つの隠し玉も使いません。それでいて、この戦場でも上位側の戦力であるから反則です。

 ちなみに保有している黄金の魔眼は人材発掘などに向いた後方向けの魔眼ですが、魔術併用の応用で相手の本質を見極めることも可能。

 ……つまり、幸香のカズヒ評は的外れではありません。ある意味でカズヒは常に無理をしている女であり、その理由はだいぶ前のカラオケでの告解通りです。




 そしてイキリまくりヴァーリ、盛大に挑発をぶちかます。

 実際ヴァーリからすれば憎悪が強くなろうとするモチベーションに効果的なのは自分で理解しているので、におわせるだけでもいい感じなんじゃないかとは思います。……が、とりあえずこの作品でヴァーリは落とし前を連続敗北でつける方向になりますので、とりあえず一回ぎゃふんといわされる予定です。

 伏線も張っているし常連さんなら予想できている方法はすでに書き終えてます。喜べヴァーリ、敗北をくれてやる。

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