好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
今回は防衛線の直前、その準備段階となります!
九成Side
とりあえず避難誘導は完了した。
アウロス学園は非常時に備えて地下にシェルターが設けられており、とりあえずアウロスにいる達達は全員そちらに避難してもらった。
アグレアスの方は規模が大きい為と市内の一か所に集まる形で避難しており、重要度の高い備品はサンタマリア級の一隻に集め、シェルターの防備を行う担当として配備される形になった。
とはいえ脱出はほぼ不可能。結界は本当に頑丈で、アウロスの方も紫炎の追加防護で更に脱出は不可能。アグレアスに至っては息をのむ数の邪龍達が囲んでおり、下手に脱出するよりは防衛線を展開した方が安全だと判断されていた。
転移も現状不可能であり、加えて時間操作までされていることから増援が来るまでどれだけ掛かるか分かったものではない。
幸い勇儀さんが一度離れているだけだから、彼が異変に気付く可能性はある。
時間的にあと十分ぐらいで学校に到着するタイミングで展開されたから、通常の時間軸で十分もあれば異変は発覚。規模から言ってもっと早く気づいてくれる。最もそこから増援が来るまでの時間が追加されるわけだが。
そこで頭いい組はとんでもない策を考えた。
名だたる魔法使いがいることを利用し、新しい転移魔法を今扱える魔法を参考に編み出そうという、突拍子もない策だ。
最もそれができるのに掛かる時間は、三時間以上は確実に掛かる。それまでの間防衛をしなければ、民間人に多大な犠牲が出ることは確定されるも同然だ。
だからこそ、俺達は準備を整えている。
クリフォトが本当に三時間待つと思っておくのは油断に近いしな。
そういうわけで、長丁場になるだろうから今のうちにある程度食べておこう。補給は取れる時に取っておかないと体が持たないからな。
そう思って、何かないかと学食用の施設に向かった時、既に厨房の方で何かを作っている音が聞こえてきた。
俺以外にも誰かいたの……か……?
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……っ」
「……ほ、ほどほどに……な?」
……なんだ、あの光景。
一心不乱に小麦粉をこねるヴァーリを、凄いひきつった表情でベルナが見ている。
むしろベルナが手を止めずに、大量のドーナツを作っているのがギャップを誘う。
「……何やってんだ?」
思わず俺はそう答えるが、ヴァーリはこっちを見ることもない。
「戦いに備えている。悪いが集中したいから邪魔しないでくれ」
よし、距離を置こう。
これは迂闊に踏み込むと事態が悪化するあれだ。君子危うきに近寄らずとかいうしな。
そういうわけで、俺は念の為に手を洗ってから厨房に入ってベルナの方に向かう。
「で、ベルナは何やってんだ?」
「みりゃ分かるだろ? ドーナツの大量生産だ」
そう言いながらベルナが顎でしゃくった先を見ると、既に大量のドーナツが山のように置かれていた。
「避難の準備が整うまで、ガキどもが怖がるかもしれねえだろ? なんか食うだけでも落ち着くかと思ってよ」
「……そうだな。確かにその通りだ」
俺もそこは参考にするべきだろう。いや、参考にしなくちゃいけないとすら思う。
こういう心遣いって大事だよな。うん、確かにその通りだ。
俺も何か作った方がいいかと思っていると、ベルナはドーナツ作りの手を止めることなく、小さく頷いた。
「カズ。アタシは……いつか教師になる」
その言葉は、小さいが力強く確かな決意に満ちていた。
「誰かに何かを伝えたい。そんな風に思えたんだ」
ドーナツを上げながら、ベルナは笑みすら浮かべてはっきりと告げる。
それは、彼女が自分の道を定めた瞬間だ。
……その微笑みに、俺は目頭が熱くなった。
そして視線をこっちに向けたベルナは思いっきり面食らっている。
「おい!? なんで泣くんだよ!?」
「……感動の涙ぐらい俺だって出すさ」
とりあえず水道で涙を洗い流してから、俺はそう言いながら微笑んだ。
いや……うん。これはあれだな。
「綺麗なものを見た。そういうんだろうな」
本当に、そういうのが一番なんだろう。
さっきのベルナの横顔は、そういうのが一番いいと心から思う。
ああ。だからこそ―
「守り切るぞ、この学園」
「ああ、分かってるさ」
―改めて、その決意は定まった。
「もっとだ……もっとコシのある麺を……っ」
―隣がアレでなければと強く思うがな……っ
Other Side
九成和地とベルナ・ガルアルエルが去ってなお、ヴァーリ・ルシファーは集中して作業を続けていた。
その目は真剣に彩られており、動かす手には邪念などない。
そして作業を終え、ヴァーリは一つ息をつく。
「今の俺では、時間的にもこれが限界か。麺の道は険しいな」
そう苦笑交じりに見るは、練られ切られた小麦粉の塊。今は生地を寝かせている段階だ。
自画自賛などできるわけがない。質は正直に言えば悪く、これを飲食店で出せば文句が大量に出てくるだろう。少なくとも金がとれるような出来ではない。
だが、これこそがヴァーリ・ルシファーの新たなる領域。その第一歩なのだ。
カズヒ・シチャースチエとの戦いに負け、彼は心を病みかけた。
麺を食する機会が激減。リゼヴィムの追撃にも制限が掛かる。更に正直食指が動かないことを何度もし続け、少し気が触れかけている。
そしてそれは、奇しくも兵藤一誠と近い精神状態にヴァーリを近づけた。
修行僧が滝に打たれながら悟りを開こうとするように、かつて兵藤一誠が幾人もの女性を救うほどの力を持つ異能を会得したように。ヴァーリ・ルシファーもまた、悟り力を会得した。
母体は出来た。だが茹でて完成する為には必要なものが足りない。
白龍皇が持つ、敵の力を半減し己を強化する異能。そしてイメージに則って現象を起こす悪魔の魔力。その二つを併せ持つことこそ、ヴァーリ・ルシファーという奇跡の具現。
今ここに、ヴァーリ・ルシファーは新たな領域の一歩手前となっている。
寝かしが終わり、あとは切って麺として茹でる。そしてその前の肝心な段階こそが必須となる。
そしてそれを試せた時、戦いの形成は一気にひっくり返るだろう。
「待っているがいい、リゼヴィム。そしてカズヒ・シチャースチエ」
ヴァーリは誰もいないのを分かりながらも、その光を思って含み笑いを漏らす。
「これこそが、俺の到達した真理。それを目にする時はもうすぐだ……っ」
今ここに、更なる白龍皇の光が齎されることとなる。
和地Side
その後、ドーナツを届けてから時間もそろそろなのでちょっとトイレに寄って行った。
事前の栄養補給とトイレは済ませておいた方がいいだろうしな。こういう細かいところも意外と大事だったりするんだよ。
そして出す者を出してすっきりしてから、俺はトイレを出ると、女子トイレの方から誰か出てきた。
「あら和地。貴方もトイレだったの?」
「あ、カズヒねぇか」
カズヒねぇもこういうところはきっちりしているよな。
俺はちょっと感心していると、ふと廊下の壁の方を見る。
―このがっこうにまたかよいたいです
―れーてぃんぐげーむのせんしゅになります
―おとおさんとおかあさんをよろこばせたいです
そんな、体験入学に参加した子供達の寄せ書きが目に入る。
「……勝ちましょう。そして守り抜きましょう」
同じように見たカズヒねぇが、目を細めながらそう告げる。
「この学園は子供達の未来を明るくしてくれる大事な学園だわ。それがこんなことで泥を付けさせるわけにはいかないもの」
「犠牲者が出れば悪印象は免れないけど、民間人を守り切れば美談として広まるだろうしな」
この学園は、この学園一つで終わっていいわけがない。今後も続いていく学び舎が出なくてはいけないだろう。
だからこそ、余計なケチはつけさせない。
正義を奉じて邪悪を穿つ
互いが互いに交し合った、瞼の裏の笑顔の誓い。
その誓いにかけて、この学園は必ず守る。
「……守り切って、そして勝とう」
「ええ。クリフォトにはしっかりお代を払ってもらいましょう」
お互いに拳を軽くぶつけ合い、そして俺達は頷いた。
覚悟はいいか、クリフォト共。
全員まとめて、叩き潰す……っ!
さぁ、激戦前のちょっとほっこりとする一時でした!