好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 はーい、そんなこんなで会合編です。

 ハイスクールD×Dの二次創作で、このあたりで高評価できる作品はあまり見たことが無いのが実情。そんなわけなので、ぶっちゃけ自分でどうやったらいいのかを書いてみようと思っており、いくつかやっておりますです。

 今回はまだそこまでいきませんが、いろいろな変化を見せることになるとは思います。


魔性変革編 第四話 荒れる会合(前編)

 

 

 

 

 あまりにもあんまりな性癖暴露による横やりの所為で、挨拶を交わす時間を捻出できていない。

 

 誰もが微妙な空気を見せているから、話し合いをする雰囲気でないからだ。

 

「……というか、ゼファードルって本家の次期当主じゃなかったはずだけれど。どうなっているのかしら?」

 

 部長がそうぽつりと呟いた時、それに応える人がいた。

 

「ああ、どうも本家の次期当主が事故死してしまったようなのだよ。それでイシロとゼファードルが代理の候補となって……イシロが辞退してゼファードルが代理に任命されたというわけだ」

 

 そう返答したのは、金髪の上級悪魔の方だった。

 

 そしてそれに続くように、灰色の上級悪魔も肩をすくめる。

 

「ついでに言うと、グラシャラボラス家は最初からゼファードルの方を推してたっていうから、実力で劣ってる不良を優遇とか何事だよって思ってたがな。……確かにあの性癖とそれに対する忠実っぷりなら、最上級悪魔候補であろうと本家の当主代理にゃ向いてねえ」

 

 まるでツーカーのように話を繋げた二人に、リアス部長は苦笑を浮かべる。

 

「その本家次期当主に並び立てる立場のあなた達も大概でしょう? フロンズ・フィーニクスとノア・ベリアル……でよかったかしら?」

 

 そう返され、二人は静かに頷いた。

 

 そうか、彼らがフロンズ・フィーニクスとノア・ベリアルか。

 

 現悪魔の政争において、大王派を有利に持ち上げた立役者であるフィーニクス家の次期当主。そしてそのフロンズの親友でもあり、自身も最上級悪魔入りがほぼ確実と言われるノア・ベリアル。

 

 これは、中々有望な者達のようだ。

 

「……そういえば、魔王様を輩出した家の次期当主と、サイラオーグさんたちバアルやアガレスの次期当主が参加してるんだよな? あとはあのイシロって人とこの二人で……最後の人は誰なんだろう?」

 

 そうイッセー君が疑問の視線を向けるのは、二組のまだ会話を交わしていない上級悪魔とその眷属。

 

 片方はフードを被っている眷属達を従えている、細めの少年。

 

 片方は多数の学者風の眷属を従え、傍には鎧やプロテクターに身を包んで臨戦態勢ともいえる者を使えさせる、鋭い目つきの少年。

 

 確かに、彼ら二人は絶叫こそしていたけど沈黙を守っていたね。

 

 そんな疑問符に気づいたのか、フロンズ氏が目で双方を示しながら口を開いた。

 

「あちらのフードを集めた者達が、現ベルゼブブを輩出したアスタロト家の次期当主、ディオドラ・アスタロト殿だよ」

 

「ついでに言うと、残った奴が若手悪魔ナンバー2と名高い、ヴィール・アガレスとその眷属だぜ、赤龍帝くん」

 

 そう続けたノア氏は、そして呆れたように肩をすくめる。

 

「ヴィール・アガレスは強いぜ? 見ての通り眷属の殆どは科学や魔法の研究者で、戦闘要員は三人だけ。にも関わらず自分を含めた四人だけで、実家の当主とレーティングゲームをして完全勝利(パーフェクトゲーム)を成し遂げたんだからな」

 

「……つまり、たった四人でそれ以外のメンバーを庇いながら、当主とその眷属を打倒したということか? それは強いな」

 

 ゼノヴィアが感心するのも納得だ。

 

 仮にも当主となれば、能力は習熟しているしレーティングゲームの経験も相応にあるはずだからね。にもかかわらず圧倒的な勝利を刻み込むのは、生中な手合いではできることじゃない。

 

 それを成し遂げた彼は、間違いなく圧倒的強者だろう。

 

 ノア氏はイッセー君を見ながら、同時に顎でヴィール氏の眷属を一人示す。

 

「ついでにいうと、眷属の一人は神滅具級の新種神器を持ってるそうだぜ? そっちとしちゃぁ要警戒だな、赤龍帝?」

 

「え、マジですか!? うっわぁ、俺以外にも転生悪魔で神滅具持ちっているんだ……」

 

 そんな風にイッセー君が感心している中、ソーナ会長は軽い溜息をついた。

 

「少なくともあなた達も大概でしょう? 筆頭眷属以外は常にトレードで入れ替えて起きながら、それでもこの場に参列できるだけの成果を上げているのですから」

 

 その通りだと思う。

 

 彼ら二人の特徴は、常にトレードを積極的に行っていることだ。

 

 トレード。上級悪魔達が眷属悪魔や未使用の駒を文字通りトレードする内容だ。

 

 上級悪魔次第でそれを積極的に多用するか否かなどに違いはあるけど、彼らほど積極的にトレードを行う上級悪魔もそうはいない。

 

 特にノア・ベリアルは女王及び婚約者の僧侶二駒以外を半年以内に総交換することで有名だ。フロンズ・フィーニクスも僧侶と騎士はひと月未満で積極的に交換している。

 

 それでありながら、模擬戦としてレーティングゲームを積極的に行って、高い勝率を誇っている。だからこその、本家次期当主を主体とするこの会合への出席許可だ。

 

 その事実に対して、二人はさほど自慢げでも何でもない。

 

「ま、気にしないでくれや。俺としちゃぁ、気心の知れた奴ばっかり動かし慣れるより、いろんな奴らを動かす経験を積んでおきたいんだよ」

 

「私も似たようなものだ。なにより、数千数百の年月を生きる悪魔の長い人生で、配下や客将を早い段階で完成させるのはどうかと思っているのでね」

 

 そうさらりと答える二人だけど、そこにリアス部長とソーナ会長は、警戒するように目を細めた。

 

「……客将ねぇ」

 

「大王派らしいものいいと言っておきましょうか」

 

 その態度に、ノア氏は不敵な笑みを浮かべる。

 

「あながち間違っちゃいねえだろ? 悪魔の駒を使って眷属にしたところで、そいつは元々は悪魔じゃねえ。俺としちゃぁ区別や線引きはしっかりするべきだと思うぜぇ、マジで」

 

 その言葉に、フロンズ氏も応用に頷いた。

 

「君達の眷属には悪いが、私も同意見だ。なにより悪魔の発展は正しき悪魔の更盛あってこそ。正しき悪魔と交わった第二世代以降はともかく、駒によって疑似的に悪魔となった第一世代の他種族に、最上級悪魔の椅子を容易く与えすぎであるとは思っているとも」

 

 その言いように、彼らはやはり大王派であることをひしひしと感じる。

 

 血統主義、貴族主義なところがある大王派の悪魔達は、転生悪魔に対して思うところがある者が多い。

 

 血統としては傍流に値するフィーニクス家を厚遇しているのも、出生率の向上という形で純血悪魔の発展に多大な貢献を果たしたことが大きな理由だろう。

 

 そんな少しピリピリとし始めた空気を和らげるかのように、フロンズ氏はしかし微笑を返す。

 

「安心したまえ。食客には食客に相応しい待遇を与えるのも貴族の務め。私は上級以上の昇格試験を本来の悪魔ではないまがい物に与える気はないが、生活を切り詰めない範囲で厚遇はするとも。権益も中級悪魔と同様の者は与えたいと思っているのでね」

 

 その言葉に対して、フロンズ氏の後ろにいた二人の男女がうんうんと頷いている。

 

「全くだ! 第一貴族だの上級だのなんて堅っ苦ししいだろぉ? 中級程度で大金もらって遊べる方が、よっぽど気楽で楽しいぜ!」

 

「まさしくその通り。なにより私は主の直属として、ある意味においては並みの上級以上の権限を彼から与えられているからね。それ以上をパトロンに求める気はないのさ」

 

 その返答に、僕達はあえて何も言わない。

 

 後ろの二人が他種族由来であることは分かったし、何より二人が納得して満足もしているのなら何かを言っても無駄だろう。

 

 フロンズ氏達のスタンスを知った上で、現魔王派より彼を支持するのなら仕方ない。意外には思うけれど、今此処で空気を悪くするわけにもいかない。

 

 何よりも―

 

「……皆様、大変長らくお待たせいたしました。主様達がお待ちでございます」

 

 ―ここからが、ある意味で本番だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして通された会合の間。イメージとしては大学の講義室の一種といえる大きな部屋に、僕達は通された。

 

 一番上の檀上にはサーゼクス様達現四大魔王様が座られ、そのすぐ下には今代の大王バアル家などの有力な元七十二柱本家。更に有力な家の当主や高官が並んで座っていた。

 

 そしてその前に僕達は通され、リアス部長達それぞれの(キング)が前に出る。

 

 そして僕達を前にして、上役の方たちがこちらを眺めて頷いた。

 

「今日はよく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認することが、この会合の目的だ。三大勢力で結ばれた和平は他の神話にも向けられており、貴殿らの代でレーティングゲームは他勢力の参加も考えられる、注目されるだろう世代になることもあってな」

 

 確かに、レーティングゲームに注目している他の勢力は要るだろう。アザゼル先生も試合の映像などを入手していると聞いている。

 

 今後和平が結ばれれば、間違いなく天使や教会、神の子を見張る者からもレーティングゲーム参加が成されることはあるだろう。

 

 となると、カズヒや九成君達とレーティングゲームで試合をすることになるかもしれないのか。

 

 そんなことを思っている間に、上役の方々の一人が髭をなでながら皮肉気な表情を浮かべている。

 

「まあ、早速やってくれたようだ。それもまた一興だがね」

 

 皮肉気ながら言っているが、どうやらゼファードルとシーグヴァイラ様のやり取りは望むところなようだ。

 

 そしてそんな人達の言葉の後に、サーゼクス様が僕達を見渡してくれる。

 

「それはともかくとして、今回選ばれた君達十人は、家柄実力ともに申し分ないか、家柄を補えるほどに優秀さを示した、次世代の代表だ。ぜひ切磋琢磨し経験を積んでほしいと思っている」

 

「その経験とは、いずれ我々も『禍の団』との戦に投入されるということでしょうか?」

 

 そのお言葉に対して、サイラオーグさんがそう尋ねた。

 

 それに対して、サーゼクス様は静かに首を横に振る。

 

「確かに経験になるだろうし、その可能性もあるだろう。しかし可能ならば避けたいと私は考えている」

 

 その言葉に、サイラオーグさんは一から見えないけれど不満げな様子なようだ。

 

「何故です? 若いとはいえ我らもまた、悪魔の上に立ち守る責務を持った上級悪魔です。この年になるまで先人の方々からご厚意を受け、それでも何もしないなどというのは良心に反します」

 

「勇気は認めるが、それは無謀だ。なにより成長途中の君達を戦場で失うなど、冥界にとって大きな損失でもある。君達は君達自身が想像する以上に尊い宝であり、段階を踏んだ成長をしていってほしいのだよ」

 

 サイラオーグさんに真っ直ぐにそう答えながら、サーゼクス様は更に続ける。

 

「何よりも、今は和平によって出来た繋がりを重要視したいというのが今の冥界の見解だ。既に各神話にも和平の打診は行っているし、その暁には全勢力で禍の団と対峙することになるだろう。君達にはその後、平和な世界で新たな形のレーティングゲームを盛り上げてほしいのだ」

 

 そう諭すように告げるサーゼクス様。

 

 サーゼクス様はリアス部長に負けず劣らず試合を持っている。そしてその慈愛は悪魔全体だけでなく、きっと広い世界に向けられているのだろう。

 

 ましてサーゼクス様達は禍の団との戦いで、大きな苦戦を強いられた経験がある。

 

 36機という数で攻めたとはいえ、現魔王であるご自身や並び立てる力量のアザゼル先生にミカエルさんが苦戦したのだ。敵がヴァーリ・ルシファーの白龍皇の力を生かすために用意した結界を逆利用しなければ、此処に生きて立つこともできなかったかもしれないと痛感もしているはず。

 

 そう考えれば、サイラオーグさんの意思は蛮勇のそれにも近い。

 

「……分かりました」

 

 強い意志で告げられたと理解して、サイラオーグさんは納得はできてないようだけれど食い下がる。

 

 ―そのタイミングで、フロンズ・フィーニクス氏が一歩前に出た。

 

「お言葉ですがルシファー様。そのお考えは甘すぎると意見させていただきます」

 

 ―しかも、あまりにも不敬と言えるようなことを即座に言い放った。

 

 誰もが一瞬沈黙し、硬直すると言ってもいいその発言。更に言い切った直後に、彼の頬を魔力の弾丸がかすめた。

 

 それを放ったのは比較的下段にいる、分家の当主。魔王派に属している最上級悪魔だ。

 

「……無礼者! 魔王様の慈愛を甘いとは、不敬であるぞ!」

 

 次の攻撃すら即座に放てるだろう状態で言い放つ上役に対して、しかしフロンズ氏は真っ直ぐに目を合わせて向き合った。

 

 頬から流れる血を気にも留めず、一切臆することなくその上役に向き直る。

 

「お言葉ですが、主が愚行を犯す前に厳罰を受ける覚悟を持ってでも諫めることこそ、身分をわきまえた者の行動と具申します。主を妄信して道を踏み外した行軍に喜んでついてくことこそ、無能の証ではありませんか?」

 

「き……さ……ま……っ」

 

 怒りで顔が真っ赤になる上役の方だが、その近くにいた上級悪魔が苦笑しながらその肩に手を置いてなだめ始めた。

 

「構わないではないか。そこまでの覚悟があるのなら、意見を聞く程度はしていいのでは?」

 

 そう落ち着いた言葉で諭す彼に、離れたところにいた上役が鋭い視線を投げかける。

 

「そうはいかんぞ。我ら大王派の若手が蒙昧なことをすれば、偉大なるバアルの名にすら傷がつきかねんではないか!」

 

「落ち着きたまえ。まずは魔王様の意見を聞こうではないか。罰を下すかどうかはそこからでも遅くはあるまい」

 

「その通りだ。罰するにしろ認めるにしろ、判断材料が少ないだろう?」

 

 と、魔王派大王派の区別なく、方々から声が飛んだ。

 

 それに対して魔王様達が困り顔になった時、魔王様達のすぐ下の檀にいる現大王が、鋭い視線でフロンズ氏を見据える。

 

「……偉大なるルシファーを襲名した者に苦言を呈したのだ。覚悟と説明はあるのだろうな?」

 

「無論でございます。聞いたうえで死罪に等しいとおおっしゃるならば―」

 

 その言葉と同時に、フロンズは一振りの短剣を取り出すと、逆手に持ち切っ先を己の首に向ける。

 

「―死ねを命じくださいませ。この場で命を絶って見せましょう」

 

 その態度に、殆どの者達が息を呑む。

 

 そして、誰もがちらりと視線をサーゼクス様に向ける。

 

 これはまずいね。サーゼクス様の性格では死ぬことを命ずることはないだろうけど、どうあがいても話を聞かないわけにはいかなくなっただろう。

 

「……まずは、そう思う理由を説明してくれたまえ」

 

 ため息交じりに告げたサーゼクス様の言葉に、フロンズ氏は会釈を返す。

 

「では申し上げます。……そもそも和平のきっかけは戦争を望む堕天使コカビエルの暴走に在りますが、彼は所詮堕天使側の戦争継続派、その一角にすぎません」

 

 確かにそうだ。

 

 神の子を見張る者の首脳陣で戦争継続派がコカビエルだけだったというだけで、僕達が関わった堕天使の中にも、悪魔を見下す堕天使は何人もいた。

 

 カズヒも和平締結後に言っていたけど、教会でも和平を機に離反する者が何人もいるという。

 

 そういう意味では、この悪魔―それも戦争継続派だった旧魔王末裔を追放したこちら側―にも、将来的には戦争を再開する腹積もりだったものがいてもおかしくない。

 

「和平の必要性は本来必須であり、会談という好機を逃さず和平を結んだのは英断でしょう。しかし知的生命体とは賢者だけでなく愚者も数多く、更にその比率は曖昧と言わざるをえません。この和平がきっかけで現政権に対する不満を強める者も数多いでしょう。また、和平の話を他神話にまで広めれば更に増え、同様の者が他神話からも出てくるでしょう」

 

 そう言ってから、フロンズ氏は一呼吸を置いた。

 

 そしてその上で、ため息をつきながら首を横に振る。

 

「これだけなら散発的なテロが起きる程度で済むとは思いますが、間の悪いことに禍の団が宣戦布告をしてしまいました。首魁がオーフィスという現魔王様が束になっても勝てないだろう規格外の存在であることを踏まえれば、現政権(我ら)に対する不満を晴らす為に、禍の団に繋がる者が多数出てくるでしょう」

 

「それは否定しない。だからこそ、若い者達が危険にさらされないようにしたいというのが私の願いだ」

 

 サーゼクス様がそう反論するけど、フロンズ氏は首を横に振った。

 

「いえ、むしろ逆にございます」

 

 そう言い切ってから、フロンズ氏は上役達を見渡しながら告げる。

 

「三大勢力の和平という歴史の変動といえるこの事態、それが静まるの待つのならまだやりようはございましょう。ですがこれを機に各神話とも和平を結ぶのであれば、魔王様の判断は愚策でございます」

 

 そうはっきりと断言する。

 

 フロンズ・フィーニクスは、この場において豪胆とも狂気ともとれる意思を持って、真正面からサーゼクス様達の方針を否定していた。

 

 そして、彼の発言はまだ続く。

 

「今後和平の輪が加速度的に広まるほど、それに不満を持つ者も増えましょう。三大勢力内で止まるのならば抑えられるものもいましょうが、他の神話や妖怪魔物と広げれば、不満は更に急速に溜まり、ガス抜きが追い付かずに暴発するでしょう。そしてそのガスの抜ける場所として、最強の存在(オーフィス)が率いる禍の団という存在はあまりに甘美な桃源郷と言えます」

 

 そして真っ向から、フロンズ氏はサーゼクス様達を見据えた。

 

 いや、これはもう苦言とか諫めるとか言うレベルではない。

 

「双方が双方を高め合う、運命の変転といえるであろう歴史の転換期がこの時期です。そんな時期に先ほどのような腑抜けきった油断まみれな対応をされるなど―――魔王様(あなた)方は我らフィーニクス家の尽力で増えた純血悪魔達をどぶに捨てるおつもりか?」

 

 糾弾と言っても過言ではない。

 

 殆どの者が息を呑む中、フロンズ氏は睨みつける一歩手前の険しい目で、サーゼクス様達を見据えていた。

 

「どれだけ悪魔の肉体になろうと、他種族からの転生悪魔は本質的にまがい物の他種族です。食客や客将として厚遇することと、それで水増しして悪魔が増えたということは別の話。転生悪魔が純血と混じり合って生まれた二代目や、もとから混血として生まれた者を否定する意図は私にはありません……が、我らフィーニクス家が真に悪魔の血を引いた者達を増やす為に尽力した結果を、悪魔の王たる魔王様がむざむざ捨てるような決断を下すなど看過できませぬ」

 

「……そのつもりはない。私は転生悪魔も純血悪魔も同じように慈しみたいと思っているが、だからこそ純血悪魔の新しい世代を軽んじるつもりもない」

 

 サーゼクス様はそう答えるけど、フロンズ氏はその視線を崩さない。

 

「ならば今後に備え、厳しくも先を乗り越えられる政策をとっていただきたい」

 

「逆に問うが、ならば代案はあるのかね?」

 

 そう鋭い視線を向けるフロンズ氏に、ため息交じりの声が飛んだ。

 

 それを放ったのは一人の上役。大王派を明言している上役の一人だ。

 

「貴殿の主張には筋が通っているが、しかし真に尊ばれるべき貴種たる悪魔を無策で死なせるわけにもいくまい? 具体的かつ実現性を証明できる代案を提示するのは、魔王様の意向に反する際の最低限の礼儀であろう?」

 

 たしなめるようなそのお言葉に、フロンズ氏は不敵な笑みを浮かべる。

 

「無論ございます。この件につきましては、サーゼクス様の迂闊な発言がなければ、まず大王派での会合で提案する内容でした」

 

 そう告げ、そしてフロンズ氏は笑みと共に告げる。

 

「私としてもいきなり過酷な戦場に送り込めなどというつもりはありません。まずは下級や中級からも戦力を集められるようにするべきでしょう。義勇兵の募集や予備役制度の確立、及び彼ら急増戦力でも班単位でなら敵を足止めできるような兵装の開発と量産が必須であり、そちらについてはいくつかのプランを並行してある程度の草案は裁量の範囲内で進めております。……他に何か補足する者があれば、上役の方々はもちろんこの場にいる若手の者達にも語ってもらいたいところです」

 

 そう尋ねるフロンズ氏に、隣にいたノア氏が手を上げる。

 

「……んじゃ、腐れ縁として俺からいいかい? ツーかそういうのは相談してくれればサポートしたぜ?」

 

「アドリブゆえすまないね。議題にあげる前には助言をもらうつもりだったのだよ」

 

 友人同士の苦笑いで通じ合い、そいてノア氏が一礼する。

 

「では、僭越ながら友人の案に補足と修正を。……可能ならば禍の団との戦いが激化しないうちに、禍の団でも他のでもいいので小競り合いレベルに投入させるべきだと思います」

 

 一礼したままでそう前置きし、彼は頭を上げると共に更に続ける。

 

「その際は通常投入される戦力とは別に投入するべきでしょう。それも露払いや広域警備による撃ち漏らしの対応、残敵掃討といったレベルに収めておくべきかと」

 

「……なるほどね。ぶっつけ本番で投入するんじゃなくて、戦場の雰囲気を経験させるのが主目的かぁ。有効なのは確かだね」

 

 そう間延びした声で、魔王様の席にいる一人の男性が納得したように頷いた。

 

 彼はファルビウム・アスモデウス様。グラシャラボラス家の本家出身であり、現アスモデウスを襲名している魔王様だ。

 

 常に怠けたいがゆえにその為の努力をしっかりとしてきた方であり、基本的には優秀な眷属が仕事をすべて行っている。しかしその戦闘能力はセラフォルーさまやグレイフィアさんと同格の魔王クラスであり、また戦略において現政権で屈指の能力を誇っている。

 

 その彼が評価をしている以上、この案は一定以上の価値があるのだろう。

 

「だけど、今の段階で四大魔王(僕達)は主導できないかな。和平を中心に平和主義で動く以上、そのけん引役の僕らが僕らがタカ派の政策をとるのは無理がある」

 

 そう、はっきりとファルビウムは否定する。

 

 ただの感情論ではなく、和平を進める魔王という立場から来た否定だ。それは将来的な政治の領域でもあり、必然的にフロンズ氏の要望を退ける根拠にもなる。

 

 だから無理かと思ったその時―

 

「……ならば、そちらは大王派(我々)が対応しよう」

 

 ―バアル現当主が、そう名乗りを上げた。

 

 サーゼクス様達四大魔王が目を見張る中、バアル家当主は厳かに告げる。

 

「平和を求めそれを勧める魔王達ができないのならば、それは対立派閥である大王がやるべきだろう。どちらにせよ必要性の高い事業だと分かったのだ。それを切って捨てるというのも、今後の冥界の発展に滞りが生まれかねんしな」

 

「……なるほど。()()()()()()()()()ことだが、確かに必要か」

 

 サーゼクス様の隣に座る、現ベルゼバブのアジュカさまがそう興味深そうに呟く中、だけど魔王様たちは否定をしない。

 

 必要性をきちんと告げられている上、今の現魔王派は発言力が若干劣っている。6対7の比率程度だが、必要性を示されたうえで分業として示されれば困難だろう。

 

 流石は大王派が筆頭とする現大王。これぐらいの政治力は持っているということなのか……っ。

 

「確かに魔王様では無理でも、大王なら取りえますな」

 

「万が一何かを言われても、それなりの言い訳は立つということですか」

 

「今後の冥界の未来を考えれば、確かに必要ですな」

 

「魔王様の名に傷がつくことはない。こればかりは礼を言いますぞ、大王殿」

 

 僕達が息を呑む中、更に周りの上役達もそれに対して同意を示し始める。

 

 驚くことに大王派だけでなく魔王派すら賛同する意見が出てくる中、現バアルはサイラオーグさんに視線を向ける。

 

「細かい流れは適宜詰めるが、大王である私が支持する以上、名代は分家のフィーニクスではなく、本家側の者であるべきだろう。まして、戦に臨む覚悟を持つ息子がいるのならば尚更だ」

 

 そこまで言っていったん目を閉じてから、彼はサイラオーグさんを真っ直ぐに見据える。

 

「サイラオーグ。結成した暁には義勇軍の指揮官としてお前を指名する。自ら禍の団と対峙する覚悟を見せたのだから、否とは言うまいな?」

 

 その言葉に、サイラオーグさんは一瞬だけ沈黙する。

 

 ただし雰囲気や気配でうっすらと気付くことがある。

 

「……ええ。冥界に貢献できる機会を望んでおきながら、与えられたそれを拒むようなことは致しません」

 

 ―――不本意な形にされたことで、内心で強く歯噛みをしているのだろう。

 

 これは、思った以上に荒れそうだ。

 




 会合編、またの名をフロンズ無双編。

 このフロンズ、単独での戦闘能力や眷属全体の戦闘能力はさほど高くありません。

 しかしそれを補って余りあるのが、技術力と政治力。表でグレモリー眷属を筆頭としたD×Dメンバーが武功で評価を高める間に、その裏でしっかりと自分の足場を固めつつ、隙あらば別の方法で評価をもぎ取る男となる予定です。

 そして次回は会合にしてフロンズ無双編後編。常々D×D二次創作で個人的低評価ポイントになりやすい所で、またフロンズがやってのけます。

 将来のイッセー達のライバルの活躍をお楽しみくださいな。

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