好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
イッセーSide
うっへぇ。やっと終わったぜ。
「いやぁ、一時期はどうなることかと思いましたね部長」
俺がそう言うと、リアス部長も軽くため息をついた。
「そうね。ソーナの夢を上役の多くが笑うのは読めていたけれど、まさかいきなり匙君が切りかかられるとは思わなかったわ」
「全くです。匙、もう少し考えて発言してください」
「す、すいません……」
ソーナ会長にたしなめられ、匙はがっくりと肩を落とした。
匙も俺に似て熱血なとこがあるけど、その所為で逆に大変なことになったから、ちょっと落ち込んでるな。
うんうん。俺も同情するぜ。今度エロ本貸してやるから元気出せよ。
「とはいえ、あのサイラオーグ・バアルはすごいな。あれだけの拳を放てるのは、悪魔祓いではリュシオンやネロを含めて片手の指が余るぐらいだろう」
「そうですね。純粋な徒手空拳に限定すれば、若手悪魔で彼に勝てる者は誰一人としていないでしょう」
「彼のような人が同期にいるとは、会長も大変な時代に生まれたのですね」
ゼノヴィアがサイラオーグさんについてそう言えば、副会長達ソーナ会長の眷属達もそれについて話し出す。
ほんと、色々あった会談だよなぁ。
俺達がそんなこんなで緩んだ時間を過ごしていると、そこにシャルロットが顔を出した。
「……イッセー、もう終わりましたか?」
「お、シャルロット! もういいのか?」
俺が聞くと、シャルロットが微笑みながら頷いた。
「リアスさんの庇護下で動ける範囲は見てみました。人間界でもところ変われば差異がありますけど、世界そのものが違えば変化があるものだと勉強になりました」
シャルロットは非常時を考慮して俺から離れすぎないように、だけどこの機会に色々勉強したいと会合のビルで部長の庇護下なら入れるところを見学してた。
いざとなったら念話で助けを求められるようにしてたけど、まあ必要ないと思ってたから問題なし。
ま、ちょっと助けを呼ぼうかと思った時はあったけどね。
あんまり心配させたくないけど、まあ九成達と合流したら話すことになるんだろうなぁ。
そんなことを思ってると、廊下の向こうから何人かが歩いてくる。
あ、フロンズさんとノアさんだ。
フロンズさんの眷属に殴り飛ばされかけた匙がちょっとうげってなってるけど、まあ結局すぐに流れたから、あまり突っつくのもあれなのかな?
そう思ったけどちょっと気まずいから視線をずらすと、何故かシャルロットが面食らってた。
「あれ? シャルロットはどうしたのかしら?」
リアス部長が首を傾げてるけど、シャルロットは部長の方を見ない。
そして、フロンズさんの眷属を警戒している。
え、え……どういうこと?
俺達がちょっと戸惑い始めていると、フロンズさんは余裕な感じの笑みを浮かべながら、感心した感じで頷いてた。
「流石はサーヴァント。受肉したとはいえ同類を察知する目は養われているようだ」
………へ?
俺がちょっと目を丸くしてると、ノアさんが肩をすくめながら手の平を上に向けてる。
「俺らが聖杯戦争に手を出してるのは知ってるだろ? フロンズの奴は、そこで何人かスカウトしてんのさ」
えええええええ!?
さ、サーヴァントをスカウト!? って、サーヴァントって眷属悪魔にできるの!?
俺は困惑するけど、アーシアが何かに気づいた表情になる。
え、何に気づいたのアーシア? 俺にも教えて?
「……クロードさんと同じように、受肉なさっているのですか?」
あ、そうか。
俺は会談の時に出会った、カズヒの上司のクロードさんを思い出した。
そういえばあの人もサーヴァントだった。亜種聖杯を使って受肉したとか聞いてたっけ。
ってことはあり得るわけで、つまり本当にサーヴァント?
俺達がちょっと視線で尋ねると、フロンズさんは素直に頷いた。
「特に隠してはいないがね。この二人には領地の悪魔達に対する技術指導や、作成物による貢献などを主眼として迎え入れている」
そんなあっさりとした答えに続いて、男の方がこれまたあっさり頷いた。
「ああ、俺にとっちゃ対象は雇用主だな。この時代は俺のいた頃じゃぁどれだけ頑張っても楽しめねえ贅沢が楽しめるから乗っかったんだ。そういうわけで、機会を与えてくれたっていう代金はあるから大将経由でしか注文は受け付けねえぜ?」
「こちらもだよ。生前とは違いいろんな構想を実際に試しやすいし、宗教による研究への圧迫も少ないからね。まあ、そんな世界に連れてきてくれたマスター以外にパトロンを作る気はないので、依頼があるならマスターに告げてほしいかな?」
お、おぉ……。
なんていうか、凄いなオイ。
受肉してないシャルロットを除けば、俺ってサーヴァントと会う機会に恵まれすぎじゃないか?
この調子だともっとたくさんサーヴァントに合いそうだなぁ。っていうか、禍の団もいっぱいたくさんサーヴァントを集めてそうだなぁ。
英雄っていうから悪い人はいないような気もするけど、バーサーカーとかいるから気を付けないと。
そう思っていると、フロンズさんは会長に苦笑を浮かべた。
「しかし、シトリー本家の次期当主がアレはいかがなものか。間違いなく鼻で笑ったうえでそのままやるようなら邪魔をしてくるだろうことを、そのまま語ってどうするというのかね?」
「……おのれの夢を語る場で、決意を正直に語ることが悪いことですか?」
会長は不機嫌そうにそう返すけど、フロンズさんは即座に頷いた。
は、はっきり伝えたなぁ、おい。
俺達が呆気に取られていると、フロンズさんは苦笑しながら肩まですくめた。
「本音と建て前は使い分けたまえ。馬鹿正直に嘘偽りなく、相手が不快になることを素直に語るなど無価値だとも。ましてや妨害する相手に語るなど無謀だよ。
そう言ってくるフロンズさんを、会長は目を細めながら真っすぐに見つめ返した。
な、なんだ?
怒ってるとかそういうのとは少し違う雰囲気に、真っ先に食って掛かりそうな匙も戸惑ってる。
俺達が困惑していると、会長は観察するような目をフロンズさんに向けた。
「……なるほど。つまりあの場で魔王様を愚弄するようなことを言ってからの流れは、すべてあなたの筋書き通りというわけですか」
………っ
俺達全員、息を呑んだ。
そういえばそうだ。そう言われた方が納得できる。
フロンズさんはサーゼクス様がサイラオーグさんをたしなめた時、即座にサーゼクス様に対して「甘すぎる」って言ってたっけ。
魔王様にそんなことを言ったくせに、上役にソーナ会長が言ったことをとやかく言うのはおかしいとも思う。
で、でも、サーゼクス様達がそんな芝居するか? っていうか、サーゼクス様達はたぶん本音を言ってたと思うんだけど!?
「お兄様がそんな芝居をするとは思えないわ? 何より、お兄様やセラフォルー様は、間違いなく民を危険にさらしたくないと願うはずよ!?」
リアス部長もそう言うけど、会長は首を横に振った。
「お姉様達はそうでしょう。ですがそれ以外の上役の反応、どこか示し合わせた物が感じられる時ありました。……少なくとも、直後に頬をかすめた攻撃は筋書き通りとみるべきでしょう」
え、あれ……お芝居!?
まだ頬に傷が残ってるけど!? かすめるだけだからってわざと食らったのかよ!?
「そんなバカな!? 攻撃を放ったのは魔王派の悪魔のはずです! まさか大王派のスパイだというのですか!?」
木場がそう言って反論するけど、スパイってマジかよ!?
あ、でもサーゼクス様達側ならそんなこと言わないはずだ。だったら本当にスパイ?
俺達はフロンズさんを見るけど、フロンズさんは苦笑しながら首を横に振る。
「推測は30点だ。確かに彼には私が魔王様を否定する形で軍備強化を進言した時は軽傷を負う程度の攻撃を放つように示し合わせていたが、彼自身は正真正銘の魔王派だよ。それにその後の私の説明を聞いて賛同した者達も、全員に前もって話をつけていたわけではないしね」
あ、そうなのか。
安心したぁ。そっかぁ、会長の勘違いか。
そう俺が安心した時、部長は歯を食いしばってフロンズさんを睨み付けた。
え、なんで!? どういうこと!?
「全員じゃないってことは、何人かとは話をつけていたということね? ……それも、大王派だけじゃなく魔王派とも……っ」
あ、そうか。
リアス部長の言うことを聞いて、確かにそうだって漸く気付いた。
全員と話を示し合わせてないってことは、100%じゃないってことだけだ。
おいおいマジかよ。もうわけ分からねえ。
俺が呆気に取られていると、フロンズさんは平然とした態度だった。
それが癪に障るのか、リアス部長は奥歯をぎりぎり言わせながらフロンズさんを睨み付ける。
だけど、フロンズさんは肩をすくめてどこ吹く風だった。
「何もかもあなたの筋書き通りってこと? どういうつもり……!」
「それは違う。人とは一人一人が独自の思考を持ち、それを全て外から見て把握しきるなど不可能だよ。少なくとも、私はそこまでの洞察力を得てはいないとも」
フロンズさんはそう言って肩をすくめると、だけどちょっと得意げだった。
「私は事前に会合に参加する上役達をプロファイリングして、魔王派大王派の区別なく今回の提案を肯定してくれるような者数名に接触して成功後に利権が得られるよう進言する代わりに、特定の条件下における演出を頼んでいただけさ。5パターンの大筋を作った上で、それぞれ気質と反応に違和感を持たれないような方に、それぞれの符丁に合わせた対応をお願いして、あとは全部アドリブだとも」
……そのうちの一つが、あれだったってのか?
「政治の基本は演出と根回し。そして派閥が同じでも過激派穏健派などの傾向は違う。私は私の理想と私なりの冥界の未来を考慮して、どういう流れになってもある程度のメリットが私達に入るよう仕込んだうえで、アドリブができるよう研鑽を積んだだけさ」
マジかよ。
部長達とそう変わらない年だってのに、そんなことをしやがったってのか。
「腹芸を覚えたまえ、次期当主諸君。交渉とは相手を乗り気にさせることであり、派閥の違いが利益の共有可否を決定したりはしない。流れを読み、それに乗り、しかし自分に都合のいい方向に少しでも寄せる。それが出来てこその政治というものだよ?」
「……ハッ! サイラオーグと同じでお前も無能か」
その言葉に、俺達は全員振り返った。
そこにいたのはヴィール・アガレス眷属。
そいつらは足を止めたりはしなかったけど、真ん中のヴィール・アガレスはフロンズさん達に軽蔑って言葉を字で書いたような目で見てた。
そのままフロンズさんと視線を交わし合いながら、だけどそのまま通り過ぎながら、口を開いた。
「大王派のくせして、現魔王みたいに無意味なことをするんだな。そんなに無能さらして、お前にしろサイラオーグにしろ、現魔王達にしろ恥ずかしくねえのか?」
こ、こいつ……っ!
「心外ですね。仮にもお姉様は魔王に選ばれる力を示していますよ?」
「お兄様への愚弄を、よくもまあ私の前で吐き捨てれるわね、ヴィール・アガレス」
俺以上に怒りを浮かべながら、会長と部長がヴィールを見据える。
だけどヴィールは、心底呆れてる感じで肩をすくめた。
「無能だから無意味な時間を過ごし続けてるんだろ? 見て分からねえ当たり、グレモリーとシトリーの未来は暗いな。情けねえ」
視線すら向けずにそう言い切って、特に気負うことなく通り過ぎる。
こいつ、俺達がここで殴り掛かっても対応できるっていうのかよ……っ。
だけどここで暴れると、部長はもちろんサーゼクス様の顔にも傷がつきそうだ。我慢しねえと……っ。
そして俺達が我慢していることも気にせず、ヴィール達はそのままエレベーターに入って降りていく。
不快な気分になった俺達だけど、フロンズさん達は肩をすくめながらため息をついた。
「やれやれ。彼は自分が無価値なことをしている自覚がないらしい」
「ああいうのを無謀っていうのかねぇ。シトリーさんは反面教師にした方がいいぜ?」
こ、この人達は結構平然としてるな。
……魔王様達のことを無意味で無能とかいう若手ナンバー2に、大王派なのに魔王派とも話をつけて主張を通すフロンズ・フィーニクスにノア・ベリアル。あと問題児っぷりのグラシャラボラス家の二人。
サイラオーグさんはむしろ好感が持てたけど、こんなにちょっと気を付けた方がよさそうな人が多いとか勘弁だぜ。
俺のハーレム王への道って、実はめっちゃ険しいのか……?
和地Side
「ってことがあったんだよなぁ」
「マジかぁ。冥界の若手も色々いるんだなぁ」
イッセーから話を聞いて、俺も軽く引いた。
いや、俺も年齢よりよっぽど大人びてるって言われることはあるけどな? フロンズとかいうの、謀略とか政略とかにめっちゃ慣れてるじゃねえか。
相手の動きを予定通りに誘導して利益を得るんじゃなく、どんな風に動いても利益が入るように仕込みを入れるって何者だよ。いい大人でもそこまで出来る奴そうはいないって。
「言っちゃなんだけど、部長も会長も生き方が基本正道だから、そういうえげつないやり口とか苦手そうだしなぁ」
俺がうっへぇと思っていると、カズヒ姉さんは苦笑しながら遠い目をしていた。
「まあ、会談でも思ったけどあの
「そうですね。なんというかロベスピエールのような御仁みたいですね。それが絶対悪とは言いませんが、リアスさん達にとってはやりづらい相手でしょう」
と、シャルロットも頷いて頬に手を当ててため息をついた。
あのすいません。俺としてもそれはちょっと気になるんですが。仮面ライダー的に。
「話を聞く限りですが、おそらく彼はレーティングゲームの民営化も狙ってますね。貴族をレーティングゲームのプレイヤーではなくスポンサー主体に変えて、自分はレーティングゲームそのものに参加しない方向で行きそうです」
あ、その可能性はあるな。
話を聞く感じ、そういう風に民を有効活用しつつ飼いならそうって雰囲気が見え隠れしてる。
あれは民を人ではなく資産価値で見てそうだな。
「……一概に間違いとか悪徳っていえないところが、また面倒だな」
「そうね。運営とか政治ってのは、大規模になればなるほど善意や優しさだけを基準にできなくなるもの」
俺のボヤキに、カズヒ姉さんもため息をつきながら頷いた。
「悪意や問題があっても重用しなければならない時って、規模が大きい組織とかになればなるほどあるし、善良だからという理由で厚遇し続けるわけにもいかない時だってあるもの。ゲリラ時代にも思ったけど、革命とかクーデターって、それを成し遂げた後の運営の準備とかそもそものビジョンがないと、大抵グダグダになるのよね」
「あ~……。彼らも結局ナポレオンにとって替わられたそうですしねぇ」
革命とかを生きて経験したからか、カズヒ姉さんもシャルロットも、その辺については一家言あるっぽい。
それに対して年期もあってうんうん頷きながら、先生が感心した感じの目をしていた。
「……やっぱりな。あのフロンズって奴、サーゼクス達にしてみりゃ厄介な連中だったか」
その言い方に、部長がちらりと先生に視線を向けた。
結果的に兄がやり込められた節もあるから、フロンズに対しては思うところありそうだしな。文句の一つもつけたいのだろうか?
一瞬そう思ったけど、部長はそういうわけでもなさそうだ。
「そういえば、アザゼル達は少し前にあって話もしていたわね。何か気付いたことがあるの?」
なるほど、そこを聞くのか。
つっても、技術系の専門分野の話が殆どだから、俺とヒマリはろくに話してない。というか、分かってないところが多すぎる。
なんで目と目を合わせて即座に視線で先生を促せば、先生は先生で少し唸った。
「一言で言うなら、奴さんは政治や技術力に注力しているな。それも、出世することより影響力を高めることを重要視ってところだろう?」
「……すいません、先生。難しくて分からないです」
よく言ったイッセー。
俺を含めた数名がうんうんと頷いて補足を求めると、先生は肩をすくめながらも分かってくれたらしい。
「……リアス達悪魔歴がそこそこある奴は分かってるだろうが、大王バアルを主体とする大王派は血統主義の貴族主義だ。当然だが、家柄で劣る連中は下級中級、他種族からの転生悪魔が出世することに程度はあるだろうが不満は持っているやつらが殆どだな」
「耳が痛いけど、実際その通りだから文句も言えないわ」
部長がそう答えると、先生は更に続けた。
「そんな状況下で、フィーニクス家は上手く立ち回っている。亜種聖杯を直接力にするのではなく、冥界全体に大きな貢献を可能とする出生率向上を確立することに使い、それを大王派全体かつ下級中級も使えるようにして広めることで、下級中級の平民や貴族共の覚えをよくしたわけだ。更に今後も増えていくだろう平民達に手に職つけさせたり、限定的ながらゲームに参加できるようにすることで、フィーニクス家は冥界でも有数の評価や影響力を発揮するだろうな」
そう言って、同時に先生は警戒心を表情に浮かべていた。
「厄介なのはやり方だ。可能な限り提案や補佐に回り、手に入る利権も欲張るどころかかなりの割合を派閥や民に回すことで、フィーニクス家は自分達の家格をさほど高めずに、しかし影響力を少しずつ確実に盤石なものにしている。これによって、あそこの家は上役に嫌な目を向けられることなく、むしろ上役にとって必要不可欠な存在になっていくだろうな」
な、なるほど。
家柄そのものは高くなってないけど、上の覚えがいいからいざという時は家格以上に優遇されるってことか。
コミュ力とか後ろ盾で勝負するって感じか?
俺が頭を捻って理解しようとしている中、先生は更にがりがりと頭を書いた。
「特にフロンズの奴は、その辺りの立ち回りが上手そうだな。冥界全体の利益ゆえに魔王派にもメリットのある方針をとることで、大王派だけでなく一部の魔王派にも話を通せるってだけでも十分ヤバい。更に様々な状況に対応するためとはいえ、プロットは数はあれど大筋だけにしてアドリブで補正を利かせられる、事前準備と即興対応の両立。……リアスとそう変わらねえ年だってのに、海千山千の政治家張りに立ち回れるってのは怖いもんだぜ」
そこまで言ってから、先生は部長達グレモリー眷属を見回した。
「気をつけろよ? 奴さんは間違いなく、今後の冥界の行く先をいくつも予測したうえで、どこに進んでもちゃっかり影響力を高められるように立ち回ってる。そして何より、奴が他の若手に勝負を挑む場合、それは眷属なんて単位じゃないだろう」
「……どういうことですか? レーティングゲームではなく政争でということでしょうか?」
木場が首を傾げながら推測するけど、先生はあっさり首を振った。
「そんな次元じゃねえよ。こいつは俺が直接会話した内容と、お前らの話からの推測でしかねえが……そもそも、あいつはレーティングゲームを対して重要視してねえ」
ん、どういうこと?
「……しかしアザゼル先生。今の悪魔にとってレーティングゲームは重要だろう? 大王派である以上上役のご機嫌を取りながら出世するには、レーティングゲームが最も確実だろうに」
「そそそ、そうですよぉ。むしろレーティングゲームの改革案っぽいこと言ってましたよぉ?」
ゼノヴィアとギャスパーが反論するけど、先生は首を又横に振る。
「逆だ。奴はレーティングゲームで出世しようとか思ってないんだろう。だからこそ、レーティングゲームそのものを平民に解放していいと思っているんだ。もしそうなれば、昇格や貴族としての地位向上手段としては遠のくだろうしな」
ああ、なるほど。
確かに話を聞く限り、フロンズは貴族本人がゲームのプレイヤーとして参加して、勝ち負けを平民の娯楽にすることとか問題視してる感じだったな。
それに、他種族からの転生悪魔が出世することにも問題視している感じがあった。その他種族ベースの転生悪魔が出世するには、ゲームの成績が最も重要だっていう。ならゲームそのものが貴族としての栄達に関わらないようにするのは当然か。
そして、フロンズは先生と話していた時、眷属と共にいろんな技術について会話を交わしていた。
つまり―
「―つまりフロンズは、領地の税収や冥界への貢献で出世するつもりだと?」
俺がそう聞くと、先生はついに首を縦に振った。
「そんでもって、奴さんや自分の戦力を眷属悪魔に頼るつもりもなさそうだ」
そう言いながら、先生は自分のスマートフォンに視線を移す。
其のスマートフォンには、実は意外と研究データとかが見れるようにカスタムされてたはずだ。
「あいつは俺と話していた時、高い量産性を保てる範囲での新技術や技術力向上の術、それも兵器関係を聞き出そうとしている節があった。会合の話で漸く合点がいったが……奴は軍事力を少数精鋭ではなく大規模組織化する方向で強化するつもりだ」
それは、つまり―
「出生率が高くなれば、当然軍事力に回せる人数も増える。あいつはそんな奴らに回す装備の質を向上させることで、かつての悪魔が持っていた数的規模に下手な眷属悪魔より高い質を併せ持たせた、軍事的組織を結成することで軍備を高めるつもりなんだろうさ」
―レーティングゲーム及び眷属悪魔という、少数精鋭という概念そのものを重視していない。
俺以上にリアス部長が息を呑む中、先生は真剣な目つきで俺達を見回した。
「厄介な時期に生まれたな、お前ら。フィーニクス家は厄介だ。あいつらが目指すのは冥界全体の富国強兵、少なくともそれが組み込まれてるのは間違いないだろうぜ」
「……それは、確かに恐ろしいわね」
部長は、少し震える唇からため息を出した。
「フロンズ・フィーニクスにその親友といわれるノア・ベリアルは、バアル分家の子女を婚約者として迎え入れているわ。分家としては大王派で最も有力であり、レーティングゲームにおいてランキング十位台の常に維持し個人としてはトップ3に次ぐ実力を持ち、なによりフィーニクス家の祭壇を愛用し、六人の優れた子供達を持つシューマ・バアルよ」
……な、なるほど。
とりあえず頭の中で理解して、俺はため息をついた。
「家柄以上に厄介な奴に並び立てられてるのか。……大変ですね部長」
「お、俺頑張ります! 二天龍ですから、頑張って成果をあげたら部長の評価も上がりますよね!?」
俺が同情してイッセーが何というか気合を入れると、リアス部長は不敵に笑った。
「やすやすと抜かれるつもりはないわ。お兄様には以前苦労もかけた以上、それ以上に力となってあげたいものね」
気合の入ったいい表情だ。こういうところ熱血根性的な感じがあるよなぁ。
ただ、即座にヒマリが頭を撫でたのでちょっと空気が緩んだけど。
「頑張り屋さんですのね。よしよし」
三秒ぐらい沈黙が響いて、誰ともなくクスリと笑ってしまった。
「……タイミングが悪いですよ、ヒマリ先輩」
「あらあら。なんというか、無敵な感じで形無しですわね、リアス」
小猫がツッコミを入れて朱乃さんが茶々を入れる。
あ~もう。リアス部長ってば顔真っ赤。
「すいません部長、俺の相方が」
「……もぅっ」
だけどまあ、空気は悪くなくなったかな。
俺達は堕天使側だからそこまで直結しないけど、たまに愚痴聞く程度なら構わない。
ま、頑張ってくださいな。
フロンズ・フィーニクス一派とヴィール・アガレス。
この二人は結晶の核ともいえる発想部分が、似て異なる思想の下に描かれております。
一言でいうと「サイラオーグに対するアンチテーゼ」
基本的に自分、アンチ・ヘイトというタグで速攻で距離をとる性分であります。特にD×Dのアンチ・ヘイトは距離をとる性分です。
ただ興味を持った作品がある場合、まず可能なら感想欄を見て様子を確認する癖があります。これは感想欄というものに「どんなところが面白いか」や「どんな人が面白がるか」を探る余地があると思っているからです。
まあ大抵のアンチ・ヘイト作品は、念のために見ても「あ、これは無理っぽい」になる感じですが。
ただまあ興味深かったりするものがあったらそこだけ見るって場合もあります。そういった感じで特に興味を惹かれるのは「サイラオーグに対するアンチ」をにおわせるところ。
サイラオーグって個人的にはアンチ・ヘイトを向ける対象に全く持って向いてない印象があります。なのでこぉ、ダメージが入るのは覚悟のうえでそこだけ確認するということをしてみたことがあったり。
で、そこに関して「なるほど」と思ったところを採取して、そこからコンセプトを決めて肉付けを行うなどして形作るという手法を取った事があり、今回もそれが多少混ざっております。
そしてとくにそこを重点的に作ったのがヴィール・アガレスですが、彼に関してはまあ置いておいてフロンズ一派です。
フロンズ一派に関しては、それ以外の設計コンセプトが重要視されており、そのうちの一つは「できる大王派」「グローバル思考」といったところでしょうか。
彼らは基本的かつ根幹的に大王派思考であり、魔王派思考のリアス達とは明確に異なるスタンスで動いています。そしてその上で多種多様な方法で地盤を固めることになるでしょう。
そしてその筆頭足るフロンズは、「アイドル性」「戦闘能力」を肝として人気を得るグレモリー眷属側と真逆を体現する方向性、「実利提供」「政治力」を肝として支持を得ていく方向性にする予定です。
こと政治力においてはフロンズは若手でトップクラスにするつもりであり、今回においては「起こりうる流れを大別して別々の方向で数パターン作り、それぞれに合わせたある程度のプロットを作ってアドリブで修正」という手法を行うことで、「どう転んでもそれはそれで有益にする」というパターンです。それさえできれば対立派閥に利益が流れてもいいやと割り切ってます。
この「完璧を求めない」傾向ゆえにアドリブがきくところを厄介な側面にすることで、原作における大王派失墜の流れすら乗り越えるようにしていきたいと個人的に考えまくっております。
また戦闘能力においては眷属含めてもさほど高くないですが、代わりに技術力で底上げすることで対応するポジションにしていこうとも思っております。
これにより自分が抱え、そして大王派に属する軍事部隊そのものを底上げすることで、戦略的な形で勝利を得る。こういう「面による圧殺」を基本思想とする勢力にもしたいところですね。