好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 ちょっとパソコンの調子が悪くなっていたため、予約投稿をし損ねて遅れました。そこは申し訳ない。


聖教震撼編 第二十一話 神曲・神聖喜劇(ラ・ディヴィナ・コムメディア)

Other Side

 

 

 

 

 

 

 気づいた時、カズヒ・シチャースチエは見覚えのある部屋を見ていた。

 

 それは彼女が道間日美子であった時……否、その二つの長くはない人生で、最も多く性交を経験した一室である。

 

 それに気づくと共に、彼女の脳裏に知識がインプットされていることに気が付いた。

 

「……対心宝具、神曲・神聖喜劇(ラ・ディヴィナ・コムメディア)

 

 その名は、ある作家が作り出した作品につけられた名。

 

 すなわちそれゆえに、どの英霊が成し遂げたのかが判明したも同然だ。

 

「ダンテ・アルギリエーリ。もしくは神曲のダンテそのものか」

 

 そう独り呟きながら、カズヒはため息をついた。

 

 宝具の性質なのか、カズヒはこの空間のルールを既に理解していた。

 

 指定した対象を取り込む結界。取り込まれた対象は、時間圧縮を受けた状態で、自身をダンテと仮定する形で神曲の旅路を再現した、自身ではなく対象の心象を具現化する固有結界。

 

 正攻法での脱出は非常に困難。また時間圧縮をある程度受ける都合上、正攻法で脱出する方がはるかに効率的。それがある種の心理的な責め苦を与えることによる、トラップじみたものではあるのだが。

 

「……なめられたものね。嫌がらせ特化型の宝具で私を足止めとか」

 

 だからこそ、カズヒはため息をついた。

 

 地獄など何度も経験した。そうなって当然な選択をした自覚もある。

 

 今までの人生は煉獄ともいえる。それだけの業を、覚悟をもって背負ってきた。

 

 そして天国を既に実感している。今の自分がどれだけ恵まれていると思っている。

 

 ゆえに、正攻法で乗り越えよう。それが理論上可能ならば最短距離だと、とっくの昔に理解している。

 

 ましてダンテの神曲とは、乗り越えて至高天まで到達する物語だ。性質上到達不可能に設定されているはずがない。

 

 乗り越えて見せる。それが今までの自分の生き方に対する責任であり、今の幸せに対する誠意である。

 

 まして自分はそれが得意技だ。強い意志をもってして、本来不可能な困難すら乗り越える異常者。攻略できるように設定されている精神的試練など、乗り越えられない道理がない。

 

 ゆえに一呼吸。

 

 既に部屋には、思い思いくつろいでいる男達が何人もいる。

 

 最初が地獄ならどうなるかなど確定的に明らかだ。そろそろ道間日美子(かつての自分)が入り、下劣な欲望のはけ口になる。そういう、かつての当たり前を見るのだろう。

 

 そこまですんなりを考え、カズヒは空いたドアに視線を向け―

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こ、この格好でするの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 ―赤面を俯かせた少女を見て、凍り付いた。

 

 道間日美子(かつての自分)が来ていた制服を着ている、女子としては背が高い、桃色の髪をした少女。

 

 魔術的特性で会得してしまったその特徴的な髪色を持つ彼女を、見間違えるなどありえない。

 

 かつての大事な家族。そして恨みに恨みぬいた怨敵。自分が徹底的に汚しつくした哀れな生贄。

 

 そして、愛する救済者を最初に世に生み出した、いわば義母ともいえる女性。

 

「乙女、ねぇ」

 

 声に動揺の色が出てくることを、カズヒは驚愕ではなく納得と狼狽で理解した。

 

 想定外の一撃をもらうということは、想定している一撃をもらうより遥かに精神的に動揺するものだ。

 

 なにせ構えてないのだ。威力が高くとも予想していた一撃なら構えの分だけ対応できる。だが想定外の構えてない一撃は、威力が低くでも大きく崩される余地がある。

 

 初見殺しの類が厄介なのと同じだ。対応ができてないというのは、それだけで影響が大きくなるのだから。

 

 それでもなお、激昂も狼狽もしていない自分がいる。カズヒはそれを、諦観の類と共に理解した。

 

 強い決意を生態として持ち続けて生き続ける。それゆえに、負けて砕け散るか貫いて勝つかの両極端。進めず立ち止まることも折れて道を変えることもできないのが、自分のような極まった光の厄介なところだ。

 

 道間日美子(かつての自分)もそのようなものだ。幼少期ゆえにまだ未成熟だったそれは、しかし確かにあったのだ。だからこそ歪み汚れこそするが、願いだけは真っ直ぐに進み続けてしまったのだ。

 

 そのザマが、目の前の光景を作ったのだ。

 

「……本当に、これで日美子にこんなことをしないんですね?」

 

「もちろんもちろん。無理やりしたりとかもうしないから、約束約束」

 

 八割詐欺なその約束は、日美子の方から提案したものだ。

 

 乙女がこいつらに処女を差し出し、その後も毎日と言っていい頻度で性欲のはけ口になる。その代わり、道間日美子に同じことを強要しない。それが乙女が誘導された約束。日美子(自分)が提案したことだ。

 

 そもそもこの頃には無理矢理されたりしたことなんて、一切ない。

 

 ある種の開き直りと諦めに至っていた日美子にとって、むしろ男達の性欲のはけ口になることは、不快感だけでなく快感も得られることだ。誠明に対する捨てられず叶わない恋心の、ジレンマを忘れるいい方法になっていた。自棄になった手合いというのは、自分を傷つけることをいとわないのだ。

 

 だからこの頃には、日美子は自発的に参加していたも同然だ。むしろ職業や財力があることもあり、適度に甘えることでリターンを得ている、win-winの関係に近づいていたともいえる。

 

 だから当然だが、乙女がこいつらに犯されてからも、関係は減っただけで続いていた。

 

 そもそも基本として、何時どこでするかについてのすり合わせはほぼできている。それ以外の時も、基本的に数日前から予定のすり合わせぐらいはしている。自発的に誘う時だって少なからずあったぐらいだ。

 

 そう。こうなるように誘導したのは、ひとえに乙女と誠明の関係にひびを入れる為。

 

 関係がぎぐしゃくしてくれたのならそれでよし。追い込まれた乙女がどこかに消えてくれれば好都合。万が一何かが壊れてくれたのなら、それを利用して誠明を壊してでも手に入れて見せる。

 

 どこまでも汚れ果てながらも突き進んでしまった、悍ましい決意の始まり。

 

 それをまざまざと見せつけられ、流石のカズヒも心を痛める。

 

「……訂正するべきね。流石はサーヴァントの宝具を言ったところかしら」

 

 激痛を踏み越えながら、カズヒはしかし苦笑するしかなかった。

 

 宝具が効果的に決まったことになのか、この光景を見てなお突き進める己のどうしようもなさになのか、それはカズヒ自身も分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてカズヒがその固有結界に囚われた……ということは、当然だがカズヒ以外は固有結界に囚われてないということでもある。

 

 それは本来そうであること。そして、現状は決してそうではなかった。

 

「……ここまで十全に仕込んだと、そういうことでいいのかねぃ?」

 

「いや、なんか予想外の事態になってるね」

 

 孫悟空とハインリヒは、お互いに苦笑しながら睨み合う。

 

 孫悟空によって展開された結界の陣を、紫炎で出来た棘付きの鎖が取り囲んで、突破を試みる状況が成立していた。

 

 膠着状態となっているその競り合いに、しかしそれ以外の者達は関与していない。

 

 神聖糾弾同盟の者達は、ハインリヒの命令で人員を集めに向かっている。確実に圧殺できる人数になるまでは、よほどの事態にならない限り戦闘を開始しないように言明されている。

 

 音に名高い孫悟空。神仏の中でも勇名をはせる武闘派を相手にするのならば、それだけの物量は最低限必要だ。流石にサブリーダーであり大御所の孫悟空を引き連れてくるとは読めてなかったが故の措置ともいえる。

 

 そして同時にその対応は、孫悟空以外が動かないという確信があってこそのものだった。

 

 そんなハインリヒの判断を理解している孫悟空は、視線はそのままに後ろの気配に問いかける。

 

「そっちは大丈夫かい? まだ動けない感じの気なのは分かっとるが」

 

「……いや、ほんと御免なさい。何が何だか……」

 

 そこでは倒れこんだヒツギとヒマリが、何とか戦える体勢になれないか悪戦苦闘していた。

 

 控えめに言えば、ヒマリとヒツギは急に動けなくなり、こうして戦力として対応できない状態に陥っていた。

 

 そして、カズヒもまた動けない。

 

 ダンテ・アルギリエーリの宝具に囚われたカズヒは、立ったまま意識が喪失している状態だ。

 

 その体には魔力で構成された紙片(ページ)がまとわりついている。それが宝具の影響を受けていることを示す証拠であり、外部からの干渉で外せない、認識としての紙片(ページ)だった。

 

 そして、そのうち数枚はヒツギとヒマリにも出現して張り付いていた。

 

 その状況に最も目を丸くしたのはハインリヒであり、だからこそ彼らは警戒を重視した対応をとっている。

 

 そして孫悟空も無理をせず、この異常事態を好機を掴む余地として防戦に徹していた。

 

 そして、その拮抗状態を作る要因はハインリヒにもある。

 

「……神滅具(ロンギヌス)紫炎祭主の磔台(インシネレート・アンセム)。ったく、同じ神滅具の使い手を一年に何度も見れるたぁ、サーヴァントは怖いもんだ」

 

「まぁ確かに。自分と同じ神滅具の使い手を見れるとは、サーヴァントというシステムは怖いものだよ」

 

 苦笑で返すハインリヒの手には、もう一つの要因たる本があった。

 

 同様の本は室内のいたるところに設置されており、その全てが共鳴してある種の結界を作り出している。

 

「魔女に与える鉄槌、じゃったかのぉ? 対異端の力を持つ宝具……を大量に作れると、そう考えてよいのか?」

 

「ああ、既に数百冊ほど。仕様変更も多少しているんだ」

 

 そう微笑むハインリヒは、得意げな表情となっている。

 

 魔女に与える鉄槌。ハインリヒ・クラマーが大きく関与し、そして魔女狩りの加速や激化に一躍を担った本である。

 

 ある意味でハインリヒの代名詞であるがゆえに、彼はそれを宝具として保有。更にその性質から、ハインリヒは対異端宝具である魔女に与える鉄槌を、製造することまでが保有する宝具の性質となっている。

 

 それを利用した対異端結界。異なる神の加護対策が込められたそれが上乗せされたがゆえに、ハインリヒは神仏でも実力者である孫悟空を相手に、足止めを行うことに成功していた。

 

「他にも宝具が使われとるようじゃが、おぬしじゃないだろうて。サーヴァント二人係とは豪胆なこったい」

 

「少し違うな。これは私が召喚された亜種聖杯戦争を利用した札という物さ」

 

 孫悟空にそう答えるハインリヒは苦笑しながら肩をすくめていた。

 

「ある程度保存が利きそうだから決起まで残していたんだけど、D×Dには暗部を救いと取らない女がいると聞いた。私みたいなタイプは真っ先に狙ってきそうだから、調べ上げて対策をとったまでさ」

 

 そう、ハインリヒはカズヒを狙い打った対策をとっていた。

 

 ダンテ・アルギリエーリは亜種聖杯戦争で戦った相手だ。元が文学者だったこともあり、対処は比較的簡単だった。神聖糾弾同盟の手厚い援護ありとはいえ、それなりに戦闘の心得はあるからだ。

 

 そしてその過程で、ダンテの宝具を知っていたからこその狙い撃ちだ。

 

 この宝具は、あるデストラップを秘めた決まれば確殺の宝具と言ってもいい。

 

 時間稼ぎにその辺りの説明をすることを踏まえながら、ハインリヒは警戒だけは忘れない。

 

 それは孫悟空に対する警戒で、意味不明な事態になっているヒマリ・ナインテイルやヒツギ・セプテンバーに対する警戒。

 

 カズヒ・シチャースチエに対する物ではない。

 

 万が一を掴んでも、カズヒ・シチャースチエは消耗する。その確信だけはある。

 

 だがそうなる可能性は極小だ。九割九分九厘以上で、カズヒ・シチャースチエは昇天する。

 

 ゆえにそれを待ち構えながら、ハインリヒは本格的な攻撃の機会を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな確信を向けられているなど露知らず、カズヒは過去を見せつけられる。

 

 正直に言えば、かなり精神的にダメージが入っている。

 

 自分の業は理解しているし、息を抜く時はあっても投げ捨てたことはない。日夜背負い続けてきたという自負ぐらいはある。それがカズヒ・シチャースチエという極まった光の在り方だ。

 

 とはいえ、こうして乙女の視点でそれを体験したことはなかった。

 

 もちろん、道間日美子は自分が道間乙女を地獄に引きずり込んだという自覚はある。何をされるのかと言われれば自分がされたことだと即答できる。誠明に見せる為に録画映像をもらっているし、万が一六郎といった顔見知りが参加していたりする映像だとまずいので、ちゃんと毎回毎回確認している。

 

 だからこそ、その光景はもちろん何度も見ている。実際に見るのと映像で見るのとは違うというが、何度も経験している時点でほとんどその辺りは変わらない。しいて言うなら視覚以外の五感で感じれることだが、自分が経験している方がより多く感じれるだろう。

 

 己の業は生涯背負う。それが最低限の覚悟だと思っているし、自分が恨む側ならその方がまだ恨み買いもあるというものだ。そういう人間でい続けたいと、心の底から願っているし、実践している。

 

 だからこそ、それだけなら苦痛ではあっても試練だとは思わない。

 

 カズヒがそれを試練だと思っている理由は、もっとシンプルなものだ。

 

―苦しい……辛い……悲しい……

 

 言葉になっているわけではない。だが、その感情がカズヒの中に流れ込んでいく。

 

 ……どれだけ覚悟をし、業を背負うとできないことはある。

 

 それは被害者の感情を実際に知ること。読心術の類を持っているわけでないカズヒが、共感することや察することはできても、当人が実際にどんなどんな感情をどんな度合いで感じているのか、それを文字通り当事者の視点で感じることは不可能だ。

 

 しかし今カズヒは、道間乙女がどんな感情をどんな風に感じているのか、それを感じることができている。

 

 もちろんそれは自分から生まれたものではない。だからこそ、疑似的な体感でしかない。当然として、正真正銘で自分の感情のように誤解することはない。

 

 だが、それで十分すぎた。

 

 己の業を改めて痛感し、カズヒはそれを深く刻み込む。

 

 その一点をもって、彼女はこの手法をとったであろうハインリヒに感謝する。

 

「背負うべき業をここまで痛感できるのは、きっと一握りだけが知れる感覚でしょうね」

 

 自分が背負うべき業を、より体感的に理解する。

 

 ただその一点だけは感謝するべきと思い―

 

「―そういうところを受け付けない人は多いですよ?」

 

 ―その声に、カズヒは目を見開いて振り返った。

 




 ピンポイントでカズヒ対策をしていたハインリヒ。しかもよくわからんけどヒツギとヒマリにも影響が出てきたスーパーラッキー。さらに対神仏対策をしていたので、膠着状態に持ち込めました。

 そしてここからカズヒ地獄めぐり。ダンテ・アルギリエーリの宝具により、常人なら精神崩壊レベルの精神攻撃が、はーじまーるよー!

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