好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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魔性変革編 第七話 特訓、秒読みです!

和地Side

 

 夜、俺達はこんなところで意外な楽しみを味わうことが出来ていた。

 

 具体的に言うと露天風呂。それも完ぺきな日本風。

 

 グレモリー本家は日本フリークらしい。っていうか俺、生まれた初めての和風露天風呂を冥界で楽しむとか何かを間違えている気がする。

 

 ま、まあお風呂そのものは立派だし、それはいいか。

 

 問題は―

 

「耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ覗くな覗くな覗くな覗くな」

 

「悪いけどさ。雰囲気最悪だからちょっと黙れないか?」

 

 ―イッセー(この馬鹿)の呟きがほんと怖い。なんていうか真剣さが嫌というほど分かるか、尚更怖い。

 

 目が怖いし表情も怖いし、っていうか真剣にシャワーで水をかぶりながらガンガンと頭を打ち付けるのやめろ。

 

 どんだけ覗きがしたいんだお前は。もう病気だから病院行けよ。

 

「そこまで覗きを我慢したくなるのか? お前、結構な頻度で一緒に風呂入ってるんだろ?」

 

 少なくともそう聞いている。っていうか、リアス部長やアーシアだけでなく、隙あらば朱乃さんやゼノヴィアとも入れるらしいじゃねえか。

 

 そんな状況下で、覗きにそこまで飢えるとか病気だって病気。

 

「……覗きは別腹なんだよ。当たり前のこと言うなよな」

 

「いや、そんな甘いものは別腹なんて女子の言い訳みたいなこと言われても困るぞ?」

 

 何を、「お前何言ってんの?」みたいな顔してる。それはこっちのセリフだ。

 

 駄目だこいつ。人間には個人差があるものだけど、こいつの煩悩は間違いなく常人のそれじゃない。

 

 もし常人がこいつ並みの煩悩を持ってたら、まず間違いなく暴走してたぞ。耐えようとしているだけ凄いような気がしてきた。

 

 あ、駄目だ。このままだとイッセーが基準値になってしまう。ちょっと距離を取って考え直そう。

 

 俺は泡を流すと、イッセーから距離を取ってお湯につかる。

 

 ふぃ~。ああ、なんかこれあったかい上にどこか気持ちいい。

 

 俺はそんな感じでなんとなくぼ~ッとしていると、隣に木場が座ってきた。

 

「……あ、悪いけど俺は同性愛の趣味無いから」

 

「酷くないかい!?」

 

 え~。だってお前、最近ホモなんじゃないかってぐらいイッセーに熱い視線送ってるし。

 

 正直ちょっとだけ距離を取ったぞ。っていうかなんでこのタイミングで隣に来る。

 

「……そんなに警戒しないでくれないかい? 僕個人としては、今後についてちょっと頼みたいことがあってね」

 

 と、木場は真剣な表情だった。

 

 なんだ?

 

「今日の会合の話は聞いただろう? あの話を聞いた後だと、どうしても僕達は警戒しないといけないことがある」

 

 えっと、確か変態が歪みない変態っぷりを見せつけて、そのあとフロンズが凄い根回しの末に色々と要望を通したりとかだったな。

 

 そこまで思い出して、俺はなんとなく気が付いた。

 

 ああそうだ。奴さんは、禍の団との戦いは短期間に激化する可能性を言ってたな。

 

 そうなると確かに気にすることがあるよな。というか、アザゼル先生も何年か先になるとは思ってたけど、同時にぶつかる可能性は確実視してたし。

 

「対ヴァーリチームってことか? つっても俺、そんなに会話したことはないぞ?」

 

「ああ、ちょっと違うかな。ヴァーリ・ルシファーについて詳しく聞こうってわけじゃないんだよ」

 

 そう木場は言ってから、真剣な表情を見せる。

 

「僕達は嫌でも強くなる必要がある。そうしなければ部長もイッセー君も、自分の身だって守れない。……だから、ちょっと自分そのものを強化するだけ以外の方法を考えちゃってね」

 

 ああ、なるほど。

 

 確かに俺も、自分自身の力だけじゃなく、装備による強化もしてるからな。

 

 つまり―

 

「―仮面ライダーになることは可能なのかって話か? やめとけやめとけ」

 

「なんでだい? 確かに大量生産は神の子を見張る者(グリゴリ)でもしていない辺り、適性があるのは読めていたけど―」

 

 ああ、なんか勘違いされてるな、コレ。

 

 まあ多少は向き不向きもあるけど、問題はそこじゃない。

 

 問題があるとするならば―

 

「頭の中にAIチップを挿入(いれ)る必要があるんだよ、ショットライザー(アレ)

 

 ―仕組みの方だ。

 

 軽めにさらりと言ってみたけど、やっぱり流石に流せないな。

 

 明らかに木場は息を呑んでる。まあ、現代の価値観だとちょっと引いたりする感じはあるだろうからなぁ。

 

「……ザイアコーポレーションを牛耳っていたという人達って、やっぱり危険思想の持ち主だったようだね」

 

「そんな感じだな。まあ、死ぬ危険性とかはまずないから、俺はさほど気にしないことにしてる」

 

 まあ、それはそれとして。

 

 とりあえず人に勧めるものではないからなッと。

 

「やるならレイダーにとどめておくか、新規開発を依頼した方がいいと思うぞ? たぶんだが、そっちの方が確実性は高い」

 

「……そうだね。悪いことを聞いたみたいだし、謝るよ」

 

 ああ、結構気にしてるなこいつ。

 

 そこまで不便があるわけでもないし、悪影響がないように魔術による補佐もかけてはいる。定期的なチェックは要るけど、さほど気にすることでもないとは踏んでいるんだけどな。

 

 とはいえ空気を切り替えた方がいいような気も―

 

「―お前も一流になりな! 男なら混浴だぞ、イッセー!」

 

「うぉおおおおおお!?」

 

 ―したけどこれは求めてねえよ!?

 

「ちょ、何してんですか先生ぃ!?」

 

 俺は思わず問い詰めるけど、この総督全然気にしてない。

 

 え、何か問題なことしましたかと顔に書いてやがる。

 

「あ? 気にするこたねえだろ。大抵の女子共はイッセーにぞっこんっぽいしな」

 

 そういう問題じゃねえ!

 

 っていうか確かに、グレモリー眷属の女子達はイッセーに対する好感度高いけども!

 

 リーネスはそういうのおおらかだし、ヒマリはぶっちゃけその辺緩くなってるけども!?

 

「カズヒ姉さぁあああああん!?」

 

 惚れた女の裸を、別の男に先に見られる俺の身にもなれぇええええ!

 

 いや、そうじゃない。投げ込めって意味じゃない。だから掴もうとするなこの駄天使。

 

 思わずバックステップするけど、カズヒ姉さんは大丈夫なのだろうか―

 

「……ちょっと誰か! 衛生班(キュウタ)呼んできて! 反射で顔面を岩に叩き付けて失神したわよイッセー! あとアザゼル先生(元凶)は後で(しめ)るから男子は拘束しといて!!」

 

「了解だカズヒ姉さん!!」

 

 俺は速攻で魔剣を創造すると、鎮圧のために雷属性を発動させた。

 

 ……全員悶絶して大惨事になったので、後で元凶以外には謝っておいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことがあった次の日、俺達はジャージを着て城の外に並んでいた。

 

 今日から四週間ほど、グレモリー眷属は自分達を高める為、そして若手同士のレーティングゲームで勝利する為に取っ組んだ。俺達もそれに合わせる形で、鍛え直すことになっている。

 

 なにせ俺達、将来的に禍の団の部隊であるヴァーリチームの対抗馬になる予定だからな。総督も赤龍帝(イッセー)聖魔剣(木場)を鍛える為に駒王町に来たってことになってるから、当然コーチ役をすることになる。

 

 ……最も、基本後方支援のリーネスもトレーニングする側に立っていることは意外だったけど。

 

「よ~し! お前らにはこれからトレーニングメニューを伝える!」

 

 と、なんかノリノリで先生が声を張り上げている。

 

「今回のメニューはあくまで将来の成長を重要視したものが殆どだ。だからすぐに効果が出てこない奴もいるだろうが、全員迷走さえしなけりゃ一級品のダイヤモンドになれる奴だからこそのトレーニングを汲んでいる。焦らずやれば絶対成長できると太鼓判を押してやるよ!」

 

 おお、すっごい太鼓判だ。

 

 まあ最も、グレモリーの次期当主のリアス部長が率いる眷属だからな。今代の赤龍帝だったりデュランダルの保有者だったり、聖魔剣というイレギュラーやハーフヴァンパイアの邪眼持ちまでいる。他のメンバーも間違いなく優秀だから、将来性込みなら凄いだろう。

 

 そして俺もヒマリもカズヒ姉さんも、神器二つに魔術回路持ちな星辰奏者。更に俺とヒマリが仮面ライダーに慣れることも踏まえれば、まず間違いなく強くなれる余地はある。

 

 ……まあ、強くなる前に殺されるって可能性はあるからな。余裕がある今のうちにスタートダッシュしたいのが本音だけど。

 

「で、まずはリアス。お前は過去のレーティングゲームのデータを重点的に見ながら、この内容のトレーニングをしろ」

 

 そう言いながら、先生は部長に書類を手渡す。

 

 部長はそれを素早く見返すと、怪訝そうに眉をひそめた。

 

「……特別なトレーニングはないようだけれど?」

 

「そりゃそうだ。魔力も才能も身体能力も、既にお前は高スペックだ。だから基礎トレーニングをしっかり積んでいけば自然と最上級悪魔になれる。だが、お前は一眷属悪魔じゃなくてグレモリー眷属を率いる(キング)だって意識がちょっと足りてないのが問題だ」

 

 そうはっきり告げて、先生は真っ直ぐ部長を見た。

 

「リーダーに求められるのは、個人の戦闘能力以上に状況を判断し、有利な状況は維持して不利な状況を打開する策を素早く判断する頭脳だ。眷属という手段を生かすも殺すも指揮官のそういった能力次第なんだよ。だからこそ、お前が重視するべきは頭の方だ。数多くのゲームの勝敗とその理由を知れば、おのずとその辺は鍛えられる」

 

 確かに。

 

 一戦闘員として強いかどうか、指揮官として強いかどうか。この辺りには素早くものを考えられる能力の重要性が変わるよなぁ。

 

 指揮官ってのは人を使う立場だから、そういったところが重要になるってのは確かにそうだ。正論すぎて反論の余地がない。

 

「……なるほどね。確かにその通りだから素直に従うわ」

 

「そうしろそうしろ。お前はグレモリーの次期当主なんだから、自分で全部やるよりやれる奴を探してあてがうことを覚えた方がいい。これはその練習だな」

 

 そう告げてから、今度は朱乃さんの方に向き直る。

 

「お前に告げることは一つ。堕天使の血を受け入れろ」

 

 ……いやちょっと待った。

 

 堕天使に対する敵意が結構見えてる朱乃さんが堕天使だったのか?

 

 俺は首を傾げたいけど、目の前で朱乃さんの殺気が駄々洩れでそれどこじゃない。

 

「私は……あのような忌々しい力に頼らずとも―」

 

「頼らないからお前は()()()()なんだよ。フェニックス戦を見たが何だあのざまは。堕天使の力を開放して光の力を使ってりゃぁ、敵の女王は難なく倒せた。イッセーが追加戦しなくてもリアスの婚約をどうにか出来てた可能性だってあったろうさ」

 

 ばっさり切り捨てると、先生は真剣な視線を向ける。

 

「俺から言わせりゃ、自分を受け入れない奴に真の強さ何て宿らねえよ。そんなことじゃ禍の団と本格的な戦いになれば足を引っ張るだけだ。腑抜けたことを言ってヴァーリチームをどうにかできねえことは、イッセーとシャルロット(神滅具二人羽居り)どころかリアス(予備動力)付きで何とかなったことから予想できるだろ」

 

 あれはあれでちょっとイレギュラーすぎる気も知るんだけど。

 

 っていうかヴァーリチームってそんなに強いのか? まあ、孫悟空の末裔とか強くなかったらおかしいような奴だからまあ分かるけどさぁ。

 

「お前はこの20日間で、雷の巫女から雷光の巫女に進化して見せろ」

 

 ……うっわぁ、めっちゃ不本意だって気配がバリバリだよ。

 

 今日はつつかないように使用。触らぬ神に祟りなしっと。

 

 アザゼル先生もすぐには無理だと思ったのか、ため息をつきながら木場に向き直った。

 

「とりあえず木場。お前は剣術そのものは自分の師匠にしてもらうようだし、俺が指示するのは禁手の維持時間だ」

 

 ああそうか。正しい意味で禁手になってるのは、グレモリー眷属だと木場だけだからな。

 

 そりゃそういう方向性になるか、なるほどなるほど。

 

「禁手ってのは必殺技じゃなくて上位形態だ。分単位秒単位なんてのは落第点もいい所で、数時間数日と維持できてこそ意味がある。ちなみにヴァーリは月単位でいけるからな」

 

「……分かりました。師匠との修行は禁手で行うことにします」

 

 ここは素直な意見だなぁ。っていうか木場の師匠って誰なんだろう。

 

 俺は魔剣をサブウェポンで使ってるところがあるから、あまりガチの修行をされるとそれはそれで困る。ただソフトな練習を許してくれるのなら、アドバイスぐらいもらえないか聞いてみたいなぁ。

 

 そして先生は頷き、今度はギャスパーに向き直った。

 

「ぼ、ぼぼぼ僕は何をすればいいのでしょうかぁあああああ!?」

 

「とりあえずそのメンタル強化が最優先だ。俺が作った引きこもり脱却プログラムで対人恐怖症を克服しろ。……いや、お前はそれができるだけで思いっきり化けるから」

 

 ぐうの音も出ない正論だ。

 

 いやほんと、このハイスペックを対人恐怖症の引きこもりで盛大に台無しにしてる節があるからな。人波に表で生活できるだけでだいぶ変わるだろうとは思う。

 

「ま、今回は一歩前に進めればそれで十分だがな。本命に関しちゃ夏休み明け、ちょっとした計画があるからそれでやってみることになるだろうよ」

 

 なんか気になること言ったな、この人。

 

 え、何か計画あるの? また人体実験とかするんじゃないだろうな、この人。

 

 俺がちょっといぶかしんでると、今度は小猫に向き直った。

 

 小猫も結構本気モードで、かなり気合が入っている。

 

 モチベーションってのは意外と馬鹿にならないし、これは意外と伸びるんじゃ―

 

「小猫に関しては朱乃と同じだ。お前は血を受け入れることからすべてを始める」

 

「……っ」

 

 ―一気に消沈したよ。

 

 え、なに? どういうこと?

 

 俺が戸惑っていると、先生は朱乃さんをちらりと見てから視線を小猫にもどす。

 

「俺のスタンスは朱乃の指示で分かってただろう? 自分を受け入れない奴が本当に強くなれるなんて思っちゃいないんでな。まして赤龍帝(イッセー)聖魔剣(木場)デュランダル(ゼノヴィア)と、戦車であるお前以上のオフェンスがいる以上、持ち味を生かさないわけにはいかないだろう」

 

 そういうことは小猫も小猫で訳ありだと。

 

 と、イッセーはそこまで分かってないのか軽く肩を叩く。

 

「大丈夫だって! 小猫ちゃんなら余裕で強くなれるって」

 

「……簡単に言わないでください………っ」

 

 ……うわぁ、マジギレで睨んでるよ。

 

 これはよっぽど根の深い問題なんだろうなぁ。こっちも今日はつつかないでおこう。

 

 と、そこで先生はイッセーとアーシアを飛ばして、リーネスに向き直った。

 

「で、イッセーとアーシアにゼノヴィアは諸事情あって後回しにする。リーネスはこの基礎トレ中心だ」

 

「了解ですけどぉ、何か上乗せできるものはないんですか?」

 

 と、リーネスが答えるけど先生は肩をすくめる。

 

「お前は中級止まりだが、頭はいいし飲み込みも速い。そして魔術回路も高水準だ。今回はその下地の基礎工事で、本格的な方向性はその結果を見てからだ。並行して研究を怠らないようにしといてくれ」

 

「分かりましたぁ。頑張りますね」

 

 意外とあっさりというか、まあリーネスってなんでも要領よくこなせるからな。

 

 基本的に後方支援とかを重視してるし、まずは下地をきっちりと慣らして頑丈にしておくってことか。

 

「で、次はヒマリ。……ぶっちゃけお前が一番困っている」

 

「めっちゃくちゃ酷いですのよぉ!?」

 

 盛大にヒマリが反論するけど、こればっかりは仕方ない。

 

「いや、お前ってめっちゃくちゃ癖がある素質を持ってるからなぁ。先生も流石に困るだろ?」

 

「和地も酷いですのよ!?」

 

 ぷんすか怒ってぽかぽか叩いてくるけど、しかし事実だ。

 

「……そんなにへんてこりんなんですか? 普通に強かったと思いますけど」

 

 イッセーがそう聞くと、先生はすぐに頷いた。

 

「いや、ポテンシャルはかなり高い。魔術回路持ちで星辰奏者の適性があって、加えて神器も二種類ある。つーかこいつはある意味でヴァーリじみた真似もしてる」

 

 ああ、その辺に関しちゃめっちゃ凄いと俺も思う。

 

 ぽんぽんと俺がヒマリの頭を撫でて宥めている中、先生がはっきりと言った。

 

「コイツの魔術回路は生成量と貯蓄量に特化しててな。ぶっちゃけ封印系神器の龍の外装(ドラグナイト・メイル)は小技感覚で覇龍(ジャガーノート・ドライブ)を使ってるんだよ」

 

 微妙に空気が凍っているけど、俺はスルー。

 

 先生、説明任せました。

 

「……アザゼル? 今、覇を平然と使っているとか言ってなかったかしら?」

 

「その通りだリアス。ヒマリは自前の魔術回路を使って、禁手でもないのに神器を覇に至らせている。更に自前の魔力が莫大で、神器そのものは高位だが神滅具でなく、そして魔術回路持ちは生物を支配する形で使い魔を五感を同調させながら操れることがかみ合って、封印系神器との相性がいい。この相乗効果で覇を寿命を削るどころか暴走のリスクなく平然と使えるのさ」

 

「ちなみに魔力精製量と貯蓄量は、此処にいる他全員を足した全部より遥かに多いわぁ」

 

 部長に応える先生と、更にリーネスの補足説明で全員がちょっと引いている。

 

 ですよねー。俺の相方ってこの一点特化の魔術回路が絶大だからなぁ。

 

「ただし、他に問題点が数多いのが難点だ」

 

 そして先生がバッサリ言った。

 

 まあこれは仕方ない。

 

 まず第一に、ヒマリは聖剣創造の方に癖が強い。

 

 亜種発現とかそういうわけでもないのに、同時に一本しか作り出せない。まあこれは、仮面ライダーになった上での戦闘も踏まえれば問題ない。

 

 ショットライザーを片手に聖剣を持てればそれでいいし、そうでないなら両手持ちにすればいいからだ。

 

 ただし次が曲者。

 

「何故かコイツ、星辰光が全然発動しねえんだよ。ただでさえぶっ飛んだステータス構成だから、ぜひ能力も見てみたいんだけどなぁ」

 

 とまあ、先生が言った通り。

 

 本当にぶっ飛んだステータスをしているのに、何故かそれを発揮することができない。

 

 ちなみに性能はこんな感じだ。

 

 

基準値:E

発動値:D

収束性:E

拡散性:E

操縦性:E

付属性:EX

維持性:D

干渉性:E

 

 

 ……ぶっ飛んだステータスにもほどがある。

 

 まずEXと形容するほかない付属性が曲者。そしてそれ以外が軒並み底辺だってのがおそるべし。

 

 だけどそれも発動できないのなら意味がない。宝の持ち腐れ以外の何物でもない。

 

「まあ結果として、魔術回路の規格外の量でごり押しするのが基本スタイルだ。量はともかく質が底辺だから、本当にごり押しが基本だ」

 

「強化魔術に同調すること特化の聖剣を作ることで、相乗効果で頑丈さだけはデュランダルに匹敵するレベルにして、基本的には仮面ライダー併用ねぇ。まあ覇龍も普通に使えるから、基本性能によるごり押しにはめっぽう強いのよぉ」

 

「……ちなみに俺の魔術回路の量はAってところだけど、ヒマリはA++ってところだな。俺もヒマリと同じ方法で魔剣を強化できるが、ヒマリが同時併用で覇龍まで使うのは流石に真似できないんで」

 

 と、俺達がそう補足説明すると、全員なんというか珍獣を見る目でヒマリを見た。

 

「特化型の極みですのよ、えっへん!」

 

 褒めてないから胸を張るな。これは引いているというんだ。

 

「……まあそういうわけなんで、ヒマリは基礎トレ重視な。強化魔術は概念的に強化する分全体をまんべんなく高めることができないから、強化してないところも十分高くできる能力で、強化したところに振り回されないようにしろ」

 

「ラジャーですの!」

 

 と、元気よく敬礼するヒマリに頷いてから、今度は俺に向き直った。

 

「お前に関しては星辰光絡みで一つアイディアがある。トレーニングメニューとサンプルを汲んだから、メニューをこなして休憩中にサンプルを視聴することで伸ばしていけ」

 

 そう言いながら渡してきた書類を読んで、俺は目を見開いた。

 

 おお、こんな方法があったのか。

 

 俺の星辰光にこんな可能性があったなんてな。涙の意味を変える者として、これを習得するのには今後の戦いに備えられるという意味がある。

 

 俺がちょっとうきうきしていると、先生が更に一枚紙を取り出す。

 

「後悪いんだが、大王派の連中が運営するこの星辰体(アストラル)研究施設にこの日付の時に行ってくれ」

 

 そう言いながら差し出してきたのは、とある星辰体研究施設の場所だった。

 

 後なんかのイベントについてあるな。「星辰奏者適正検査」?

 

「悪魔側に堕天使側(こっち)から技術供与したから、今後は悪魔からも星辰奏者をそこそこ作れそうでな。その視点的運用やテスターとして、抽選で集めた平民を主体として星辰奏者の適性検査をするんだとよ」

 

 あ~、なるほど。

 

「大王派的には、まず平民で人体実験をしたいと?」

 

「ま、そんな性格悪い話だろうよ。最も堕天使側の技術が使われるから、一部の上級悪魔は眷属を送り込んでるみたいだがな」

 

 なるほどねぇ。

 

「堕天使側から技術者が来て監督するってんなら、問題ないです」

 

「んじゃ頼むわ。ちょうど悪魔領に星辰奏者としてベテランのお前がいるから、具体的に星辰奏者が何できるか見せてやってくれ」

 

 そういうことね。了解了解。

 

 俺がちょっとその辺りを見直してる中、今度は総督がカズヒ姉さんに向き直った。

 

「カズヒ。お前はぶっちゃけ実戦経験も鍛錬も高水準で、星辰光(アステリズム)は癖があるが、それも使いこなせてる……慣れてちゃいかんだろコレ」

 

 カズヒ姉さんの星辰光って具体的に何なんだよ先生。

 

 なに? そんなにデメリットがでかいとかか? 星辰光は出力差が大きいと内臓とか骨格がゴリゴリ変わって血反吐吐くこともあるけどさぁ?

 

「必要な時以外使ってませんよ先生。……では、部長と同じような形になると?」

 

 カズヒ姉さんがそう返すと、先生は首を横に振った。

 

「いや、お前の方向性は神器の効果的運用だ。なんで、此処に行ってもらう」

 

 そう言って、先生は地図を一枚カズヒ姉さんに渡した。

 

「今のお前に問題点をつけるなら、剣豪の腕(アーム・ザ・リッパー)で使う為に異界の蔵(スペイス・カーゴ)に入れてる武装の性能だ。RPG-7やAK-47とか言った東側の安物ばっかりじゃ、いくら大量に格納して強化しても限度がある」

 

 そう告げてから、先生は周りを見渡した。

 

「他の連中に説明すると、異界の蔵はちょっとした輸送船レベルの容量を持つ四次元ポケット擬きで、剣豪の腕は手に持った武器の性能を底上げする神器だ。それこそ旧式かつ安物でも異形に通用するだろうし、魔術を併用してRPGの弾頭を一斉発射すれば最上級も足止め可能だろうが……その程度だとそこまでだな」

 

 そうはっきり言ってから、先生はカズヒ姉さんに向き直る。

 

 言いたいことを悟ったのか、カズヒ姉さんは肩をすくめた。

 

「ゲリラ時代はこれと魔術回路を併用して、横暴敷いてる連中から武器弾薬食料薬品をごっそり盗んでは、こっそりゲリラの本部に贈り物してたのよ。ちょうどいいからあまりを使ってる感じね」

 

「ああ~。近年まで紛争地帯だった小国に伝わる足長革命おじさん(ジェド・マロース・リヴォリャーツィヤ)ってやっぱお前か」

 

「……一応女として、おじさん扱いは思うところがあったのよね」

 

 ……なんかすっごい異名を持ってらっしゃる!?

 

「い、意味が分からねえ。なんでその読みでそうなるの?」

 

「ジェド・マロースはロシア版のサンタクロースみたいな方だと聞いたことがあります。でもりヴぉりゃーつぃや?」

 

「リヴォリャーツィヤはロシア語で革命を意味します。つまり革命の為にプレゼントを送ってくれる人といった感じですね」

 

 と、イッセーとアーシアにシャルロットが補足説明をしてくれる。

 

 そういえば、ナポレオンすら当時のロシアを制圧することはできなかったんだよなぁ。極寒の大地すげえ。

 

「ま、そういうことだ。……っと、漸く着いたみたいだな」

 

「……なるほど、カズヒ殿と肩を並べるには未熟な者が多いようですね」

 

 その先生の声と同じタイミングで、失礼な声に影が俺達にかぶさった。

 

 ふと振り仰ぐとそこには―

 

『全く、まさか悪魔の領土でお前に会うとは思わなかったぞ、アザゼル』

 

『久しぶりっす、姐御ぉ!』

 

 ―なんかでかいドラゴンが二頭いた。

 

「お姉さま! お声をかけていただきありがとうございます!!」

 

 後カズホまでいるのはどういうことだぁああああ!?

 




 と、いうわけで特訓編の幕開けであり、同時にそこから戦闘能力方面への私的というか解説が行われるわけでもあります。

 特にいちいち現地で説明すると長くなるので後回しにしていたヒマリ周りが一番説明してますね。

 絶大な魔力量と簡単な魔術、そして神器の特性を生かすことによるごり押しがヒマリの基本戦術。常時覇を発動させた龍と共に、超頑丈になった聖剣と仮面ライダーラクシュミーの力で戦闘を行うため、小技や策略に頼る必要がない……というか当人がそう言ったことに不向きなのでする意味がない。

 そしてとがりっぷりが若干丸くなった魔術回路持ちの和地は、魔剣においてのみそれを運用。最初期の戦闘で神滅具製の魔獣に対応していたのはそこが理由。逆に対コカビエル戦でヒマリが出張らなかったのは、リーネスの魔力タンクとして結界の強化を行う担当になったためです。

 そしてキングオブ特化型の星辰光。付属性に天元突破していますが、なぜか星辰光を発動できないというどこぞの死想冥月のようなとがりっぷりですが、かなり変則的な星辰光なので真の発動は結構後になりそうなのじゃよ。具体的にはヒーローズ編以降になりそうなのじゃよ。




 続けて和地の指導方法はとある新たな運用方法です。コレのおかげで和地の派生フォームの方向性を決めることができたので、近いうちにお披露目できるかもしれません。逆にヒマリの方向性もこれで決められそうです。




 そんでもってカズヒは神器の特性を生かすための武装の新調とならしになります。ロンギヌス・イレギュラーズのリセスに近い強化パターンですね。

 ちなみにカズヒの武装についての説明もここでしました。ゲリラ自体のつてで集めたAKシリーズや機関銃にRPGを基本として、自分の戦闘スタイルに合った改造などを踏まえて使ってました。こと荒稼ぎというかあら盗みしまくっていたのでそこからやりくりしてましたが、今後のインフレに対抗するため神の子を見張る者製の武装になっていきます。








 そしてここで新キャラ祭り。

 ―またの名を、カズヒ親衛隊祭りとなっていきます。

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