好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

440 / 530
 あなたの好きな作品も、たった4クリックで応援できる!

 高評価・感想・捜索掲示板での紹介をストロング欲するグレン×グレンです!


聖教震撼編 第三十六話 煉獄(プルガトリオ)

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、この調子ならいいタイミングで宝具もクライマックスになりそうだ」

 

 対神用結界を維持しながら、ハインリヒ・クラマーは不敵な笑みを浮かべている。

 

 それを宝具に巻き込まれている三人を庇いながら、孫悟空は嫌な予感を覚えていた。

 

「どうやら、時間稼ぎってわけじゃないみたいだねぃ?」

 

「ああ。神曲・神聖喜劇(ラ・ディヴィナ・コムメディア)は、足止め用の宝具じゃないからね」

 

 そう語るハインリヒは、一冊の本を取り出した。

 

 それは己の宝具ではなく、イタリア語版のダンテの神曲だ。

 

 そのページをぺらぺらとめくりながら、ハインリヒは微笑みを浮かべている。

 

「神曲というものはそもそもそういうものだ。地獄から煉獄を経て天国を渡ることで、旅人が()()する物語だ」

 

 その言葉に、孫悟空は歯噛みする。

 

「え……? どういう……ことですの?」

 

 ヒマリは立てないながらも首を傾げるが、逆にヒツギは顔を真っ青にしていた。

 

「……まさか、カズヒを殺す為の……っ」

 

「その通り。神曲・神聖喜劇とは、対象を地獄と煉獄を巡らせてから天国に誘うことで、心を天国に行ける状態にして強制的に昇天させる宝具なのさ」

 

 ハインリヒは断言した。

 

 そう。神曲・神聖喜劇はデストラップが仕込まれている。

 

 半端に宝具の情報を対象に与えることで、対象を文字通り天国に誘う宝具。当てるまでが大変だが、当てれば旅路に辿り着けず心が折れるか、旅路を終わらせて昇天するかの二択を強制させる。

 

「どう転んでもこっちに損はない。……さて、そろそろ決着がつくだろう……ね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェが煉獄と称する、次の段階。

 

 正直何か強い試練になると覚悟していたカズヒは、目の前の光景に目を見開いた。

 

「……お~。なんか、可愛いね」

 

 そう目の前で語るのは、道間日美子だ。

 

 彼女が少しおっかなびっくりつついているのは、小さな赤子の頬だった。

 

 それに気づかず穏やかな表情で眠っている赤ん坊。そんな子供を抱きかかえながら、道間乙女は日美子と赤ちゃんに微笑んでいた。

 

「ありがとう。自慢の私の赤ちゃんだもの」

 

 そう返す乙女の心の声もまた、続けて聞こえてくる。

 

―日美子、なんかすっきりしてるかな?

 

 その声が聞こえる時期を、カズヒは全力で思い返す。

 

 そう、この光景もまた彼女の記憶にある時期だ。

 

 時期としては、乙女が出産を終えて体力も回復した時期だ。

 

 一週間ぶりに帰宅した乙女は、残念なことに誠明は小旅行中でタイミングが合わなかった。

 

 なので流石にサポート必須と、日美子が面倒を見に来ていたのだ。

 

 日美子としてもこのころには、誠明の子を妊娠するぐらいの時期だ。当然だがそのあたりを考慮して動いており、ちょうどよく前例を客観的に知れるチャンスでもあった。

 

 そしてひと段落突いた後、一休みしている時の光景だ。

 

「これが、煉獄?」

 

 どちらかといえば地獄ではないか。

 

 そんな風にカズヒは考える。少なくとも、カズヒからすれば地獄の追加といえるだろう。

 

 地獄と同じだ。壊れた乙女の心を聞きながら、自分の罪を突き付けられる。その繰り返しでしかないだろう。

 

 そう思いながらも、カズヒは真っ直ぐにその光景を目に焼き付けようとする。

 

「……違うよ」

 

 その手を、ベアトリーチェはそっととる。

 

 カズヒが振り返ると、ベアトリーチェはたしなめるような表情で首を横に振った。

 

「心構えも間違ってる。……ちゃんと、見てあげて」

 

 その真摯な顔と声に、カズヒは一瞬だが首を傾げる。

 

 言いたいことがよくわかってない節がある。だからこそ、とりあえずフラットな感情で光景を確認し直そうとする。

 

「……赤ちゃんって、泣いてるとうるさいけど寝てると可愛いよね。私や乙女ねぇもそうだったのかな?」

 

「どうなのかな? でも、田知は可愛いよね」

 

 笑顔で語り合う二人の光景は、あまりに歪だろう。

 

 八つ当たりじみた恨みを持ち、心のすべてを破壊しようとした道間日美子。日美子の悪意を叩きつけられ、心を壊し悪辣な男の子を産んだ乙女。

 

 だが、二人は赤子を間に挟むようにして笑顔を交わせていた。

 

―よかった。日美子も元気になったみたい

 

 その乙女の心の声は、本心からの安堵によるものだ。

 

 汚しつくされ壊しつくされ、道間乙女は破綻してしまっている。日美子が侵されることを阻止する為に体を差し出しながら、子供まで孕まされて出産したことを苦痛に思っていない。まして自分の代わりに子供まで産まされた乙女に対し、罪悪感を見せていない日美子に違和感も覚えていない。

 

 だが同時に、赤子を抱きかかえる乙女は、赤子に興味津々の日美子を見て安堵していた。

 

―日美子も笑顔になれてる。……すごいなぁ、田知は

 

 そう。この赤子こそ道間田知だ。

 

 九成和地となり、道間日美子だったカズヒ・シチャースチエと想い合う、比翼連理たる男。

 

 乙女がそれを知ることはない。この時点で日美子が邪悪を穿つ銀の弾丸となることも、田知が涙の意味を変える救済者になることも、わかるわけがない。分かる前に死に、そしてヒマリ・ナインテイルとヒツギ・セプテンバーの二つに分かち変わってしまったのだから。

 

 だが、乙女がそれを知らないことと、二人を祝福できることは全く別の問題だ。

 

―田知はどんな子になるんだろう。いろんなことを知ってくれると嬉しいし……

 

 そう未来を思いながら、乙女は日美子と田知を交互に見る。

 

「……こんなに気持ちよさそうに寝られると、なんか見てるだけでお昼寝したくなってきたかも」

 

「……ぁ……ぅ……~」

 

 興味津々で微笑みながらも眠気と戦い始める日美子。そして日美子の眠気を誘いながら、気持ちよさそうに寝息を立てる田知。

 

 そんな二人の未来を知らなくても、乙女は心から願うことがある。

 

―日美子とも仲良くなってほしいな。なんとなくだけど、仲良くなれそうな気がするもの

 

「……あ」

 

 その心から幸せを願う言葉に、カズヒは拳を握り締める。

 

 気合と根性で覚醒は遂げない。だが同時に、そのギリギリで自分を諫める。

 

 そうでないと何かがこぼれる。そして、乙女が分からないところでこぼしてはいけない気がするから。

 

 ただ、肩は少し震えてしまう。

 

 覚醒は遂げない。だから、耐えようとする感情が肩を震わしてしまう。こぼせない何かの代わりに、肩の震えが彼女の感情を表していた。

 

 そんな震えをただ一人見る、ベアトリーチェはカズヒを後ろから抱きしめる。

 

「……いいんだよ、カズヒ」

 

 そっと抱きしめる。

 

「貴女は本当に悪意のままに、道間乙女を壊したけど」

 

 優しく抱きしめる

 

「それでも、乙女は貴女の幸せを願ってた。田知と一緒に頑張ってる、貴女を否定するわけがない」

 

 ぎゅっと抱きしめ、凍てつかせようとするカズヒを体温で温め、和らげる。

 

「……乙女は日美子(あなた)が大好きだった。貴女が幸せになってくれることを、心の底から願えるの」

 

 微笑みながら、何も言えないカズヒを抱きしめ、そして乙女がもう言えないことを告げる。

 

「だから、それだけは否定しないで。自分を許せなくても認められなくても、乙女があなたを許してくれることだけは、忘れちゃ駄目だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う゛……ん……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 震える声が、彼女が煉獄をくぐれた事実を証明した。




 煉獄を淑女と共に進む、カズヒ・シチャースチエ。

 だが彼女は気づいているのか。地獄と煉獄に淑女がいるという意味に。

 そこに気づけるかどうかこそ、彼女の命運を決めると知れ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。