好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 和地視点での、朱乃や小猫に対する事情説明会に近い話となります。


魔性変革編 第十話 来訪する不死鳥

「小猫ちゃんが倒れたぁあああああ!?」

 

 先生が持ってきた部長達が作った弁当に、俺が差し入れとして持ってきた各種食品で昼飯を食いながら、事情を話したら当然だけどイッセー大絶叫。

 

 まあそりゃそうだろうなぁ。

 

「全く。ハードトレーニングなんてもんは、基本的に体の毒にしかならねえってのに」

 

「つっても先生。事情は知りませんけどそれだけ嫌ってことなんでしょ? そこまで嫌なこと強制させるより、人工神器でもプレゼントした方が確実じゃないですか?」

 

 一応俺は聞いてみるが、まあ返答は予想できている。

 

 そして予想通りに先生は片手を振って拒否の姿勢。

 

「馬鹿やろう。人工神器はまだまだ実験段階で、神器の移植程じゃねえが元々持ってる才能に悪影響だってある代物だぞ? 神器や異能の才能がねえ奴ならともかく、小猫や朱乃みたいな才能の塊に渡すわけにはいかねえよ。堕天龍の閃光槍(ダウンフォール・ドラゴン・スピア)は特注品だから基準にすんな」

 

 ま、そう言うとは相談する前から思ってたし、そこは分かる。

 

 つっても、あそこまで嫌がってるのを無理に使わせるってのもあれじゃねえかとは思うわけだ。

 

「教え子に特注品プレゼントするぐらい別にいいでしょうに」

 

「持ってる才能を否定してくすぶったままでいる奴の為に特注品作るぐらいなら、才能なくても頑張ってるやつに作った方がいいに決まってるだろ?」

 

 自分を受け入れない奴に強さ何て宿らないってか。まあ、ある意味正論ではあるけどな。

 

 ちょっと釈然としないのは、俺の主力が星辰光やショットライザーっていう上乗せありきだからかねぇ。

 

「ま、やりたい方向があってそれ向きの才能があるってんのに、使わずに別の力寄越せって言われても釈然としねえところはあるっすね。それでも寄越せっつーんなら、相応の覚悟は見せる必要ありってことっすか?」

 

「いや、自分を否定するなんて真似やってるやつに力をやるってつもりは正直ねえんだがな。……ま、朱乃にしろ小猫にしろトラウマになってるってことなんだろうさ」

 

 ラトスにそう答えるけど、具体的にどういうことなんだ?

 

 俺が首を傾げてると、イッセーも首を傾げていた。

 

「朱乃さんが堕天使のバラキエルって人の子供だっていうのは聞きましたけど、小猫ちゃんはどんな感じなんですか?」

 

「それは俺の口からじゃなく、もっと近い奴の口から聞くべきだろうさ」

 

「いやちょっと待った。ちょっと待った」

 

 俺は思わずツッコミを入れて待ったをかける。

 

 そりゃイッセーなら知っててもおかしくないよなとは思う。そこは問題じゃない。

 

 問題はそこじゃない。

 

 俺がどう言ったらいいか分からなくて口をパクパクさせてると、ラトスが首を傾げて先に声を出した。

 

「いやいや総督さん。姫島って言ったら日本異能使いの大御所、五大宗家の苗字っすよね? 仲が悪いけど共闘したとか複雑な関係だって聞いてますけど、なんでそんなところとデキてるんですか。まずいっしょ?」

 

「あ、それは逆だ。元々向こうにゃ毛嫌いされてたんだが、姫島本家が目をかけてた才女とバラキエルができたことで更にややこしくなったんだよ。しかも姫島の血を引く神滅具使いが、神の子を見張る者(ウチ)五大宗家(あっち)のはぐれ者が手を組んで動いた一件でバラキエルが身元引受人になった所為で更にひと悶着遭ってなぁ」

 

「わりかし結構重要な情報を、ピクニック感覚で喋り捲らないでもらえません?」

 

 俺はとりあえずツッコミを入れる。

 

 いやまあ、多少は俺も情報は知ってる。リーネス達の会話で、姫島朱乃が五大宗家の姫島に縁があるってことぐらいは分かってる。

 

 分かってるけどそれ、たぶんこういう感じで言っていい所じゃない。

 

「おっと悪い。……イッセー、お前一旦グレモリーの城に戻すように言われてたんだ。礼儀作法の勉強だとよ」

 

「違うそうじゃない」

 

 いきなりすぎて反応に困ること言うなって言ってんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、イッセーが礼儀作法の授業を受けている間に俺はちょっと城内を散策していた。

 

 小猫のお見舞いをするべきかとも思ったけど、どうせイッセーも行くだろうからタイミングを合わせよう。何度も来られても小猫が迷惑だろうしな。

 

 とはいえブッキングしてもあれだし、一応寝ている部屋の近くで待機するべきか。

 

 そう思いながら歩いていると、ちょうど部屋の前にいた部長を見つけた。

 

「あら、和地。小猫のお見舞い?」

 

「いえ、それはイッセーが来るまで待っておこうと。だからまだ入らないです」

 

 俺がそういうと、部長は苦笑した。

 

「気が利くわね。ただ、ちょっと小猫は調子が悪いから話しておくことがあるわ」

 

 ……なるほど、事情に関係ありか。

 

「聞いていいんですか?」

 

「構わないわ。むしろ知っておいた方がいいかもしれないから」

 

 そう前置きをして、部長は廊下の窓から外を見る。

 

「私が小猫に初めて会ったのは、お兄様に紹介されたからなの。……その頃、彼女は感情を失っていたわ」

 

「……親族との死別ですか? 経験ありますけど、あれはキッツいですからねぇ。天涯孤独ってのはやっぱり精神的に来ますか」

 

 俺がそう言うと、部長は首を横に振る。

 

「いえ。不幸中の幸いだったのは、姉が一人いたことね。そしてその姉は才能にあふれていて、ある上級悪魔の目に留まり、姉が眷属悪魔になることで生活は安定したわ」

 

 あ、これ絶対にヤバい事情があるな。

 

 俺は部長の説明を聞いてそこまでは理解した。

 

 というか、姉が何かやらかしたのかその主が何かやらかしたのかの二択だろう。そうでもなければ態々魔王様が妹に保護させるわけないし、感情を失うなんて状態になるわけがない。

 

「姉は黒歌と言って、本当に優秀だったわ。僧侶の駒を二駒使うだけの素質があり、レーティングゲームでも数多く活躍。更に使える者が限られる仙術まで習得した彼女は、最上級悪魔クラスの力量を持っているはずだわ」

 

「ってことは、今は行方知れずってことですね?」

 

 俺がそう確認すると、部長は静かに頷いた。

 

 確か仙術っていうのは仙人とかごく一部の連中しか使えない稀少能力だ。そんなものが使える相手を確保できるとか、その上級悪魔がスカウトするのも頷ける。

 

 だが、あくまで知識としてだけど仙術にはデメリットがある。

 

 生命や自然界に存在する気を取り込む仙術は、その取り込み方に気を使う必要がある。負の気を取り込むと精神に悪影響が出てくるとか、以前見たデータベースに書いてあったはずだ。

 

 つまり―

 

「……暴走して、はぐれになったと?」

 

「ええ。主を殺し、追撃部隊も何度も返り討ちにしたわ。しかも主の屋敷が夜逃げでもしたかのように空っぽになっていて、その辺りの事情がよく分からない結果、上役達は非常に警戒したの」

 

 うっわぁ。そりゃキッツい。

 

 そりゃ上役もガチ警戒するだろ。そこはまあ、気持ちは分かる。

 

「塔城小猫っていうのは私が迎えてからつけた名前で、本当の名前は白音。あの子と黒歌は猫又という妖怪の中でも希少種にして上位種たる猫魈で、あの子も仙術を使うことが出来るの」

 

 あ、これ完璧に読めた。

 

 普通に人間社会でもあるやつだ。

 

「姉と同じように暴走するんじゃないかって邪推されたわけですか。人間社会でもありますよね、犯罪を犯した身内がいたり、同じような趣味とか持ってると、こいつもそれやるんじゃないかって邪推」

 

「ええ。お兄様が庇ってくれたおかげで何とかなったけれど、上役はあの子を殺すことも視野に入れて、あの子はかなりの悪意にさらされたわ」

 

 そう痛ましげにいう部長の気持ちも分かる。

 

 感情がなくなるレベルで追いつめられてたみたいだからな。当人としてもトラウマの極みだろう。

 

 というか―

 

「そんなトラウマ、ひと月やそこらで克服しろとか鬼かあの人は。……というより、普通カウンセラーとか必須ですよね? 冥界ってその辺未発達ですか?」

 

「耳が痛いわ。和平も結ばれたことだし、そ辺りりも発達していくように私も働き掛けたいわね」

 

 これはかなりきつい話だなぁ、オイ。

 

 と、いうかだな。

 

 木場は聖剣計画の実験体として使い捨てられ殺されかけた。

 

 ギャスパーはハーフと神器のコンボで迫害され、追い出されて命を一度は落としたと聞く。

 

 アーシアはアーシアで悪魔を癒してしまって追放され、堕天使に利用されて一度は死んだ。

 

 イッセーもイッセーで、神滅具が原因で神の子を見張る者(ウチ)が始末する羽目になった。

 

 で、朱乃さんと小猫についてはこれか。

 

「……勢いあまって自分から教会を抜けたゼノヴィアが浮いてません?」

 

「あの子もあの子で人生の根幹が揺らいだわけだから、もうちょっと手加減して頂戴?」

 

 部長がそうため息交じりに返したその時だ。

 

「……お嬢様、少々よろしいでしょうか?」

 

 使用人の一人が、なんか戸惑いを浮かべて部長に声をかける。

 

 なんだ? 緊張しているような、訳の分からない事態に巻き込まれてるかのような、そんな雰囲気を見せているぞ?

 

 部長も様子がおかしいと怪訝な表情を浮かべている。

 

「どうしたの?」

 

「それが、お嬢様が付き添ってもいいので、ぜひ朱乃様や小猫様とお話したいことがあるという方が来ておりまして。近くに立ち寄ったついでだから、あくまで予定を入れておけるかどうかを尋ねたいとのことではあるのですが……」

 

 なんで、朱乃さんと小猫を直接名指しで?

 

 それも部長が付き添っていいというのも妙だ。それだとまるで、付き添いしている状態でもなければ話し合いをすることを警戒されると言ってるようなものだ。

 

「……それで、誰なの?」

 

 部長が、警戒心を見せて促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フロンズ・フィーニクス様です」

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこのタイミングで出てくるんだ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次、フロンズの商談編となります。

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