好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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という感じで、フロンズによる商談編のスタートです


魔性変革編 第十一話 不死鳥の商談と龍王の経験論

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

「……嫌なんです。こんな力は要らないのに、こんな力を使わなければ強くなれないなんて―」

 

 俺は小猫ちゃんに何も言ってやることができなかった。

 

 小猫ちゃんの過去はあまりに重い。

 

 木場の時やギャスパーの時もそうだけど、こういう時の俺は体当たりで行くしかないからなぁ。そも当たれないと、どうしようもない。

 

 ……くそっ。俺ってこういう時に何もできないのかよ。

 

「……イッセー君、此処は―」

 

 朱乃さんがそう言いながら、気づかわし気に声をかけてきたその時、ドアがノックされた。

 

『小猫に朱乃。今いいかしら?』

 

 あ、部長の声だ。

 

「リアス? 私は構わないけれど……どうしたの?」

 

 朱乃さんもプライベートの口調で話すけど、何故かドアの向こうで部長がちょっと口籠ってる感じがする。

 

 なんだろ? 他に人手もいたのかな?

 

 俺が首を傾げていると、ドアが開いて部長が何人か連れて入ってきた。

 

 一人は九成だけど……もう一人がどういうこと!?

 

「失礼。本当なら許可を貰ってから後日改めるつもりだったのだが、リアス殿から許可を貰ったのでね」

 

 ふ、ふ、ふふふフロンズ・フィーニクスぅううううううう!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達が落ち着くのを待ってから、フロンズ……さんは椅子に座って小猫ちゃんと朱乃さんを真っ直ぐ見る。

 

「さて、こちらも一応それなりの情報網はあり、はぐれ悪魔などの情報にも目は通している。なので君達二人の事情はある程度把握しているつもりだよ。……SSランクはぐれ悪魔である黒歌の妹、白音こと塔城小猫君に、五大宗家姫島の者と神の子を見張る者幹部バラキエルの間に生まれた姫島朱乃君」

 

 フロンズさんはそう言ってから、真っ直ぐに二人を見る。

 

「そしてリアス嬢と話をして、アザゼル総督から酷なことを言われたとも聞いているよ。忌み嫌っている力を振るえなど、人工神器をいくつか実現させている身でありながら惨いことをおっしゃっていたようだ」

 

 け、結構辛辣なことを言ってきたな。

 

 先生の言い分ももっともだと思うんだけど、その辺どうなんだろうか。

 

 だけど、フロンズさんはため息までつきながら首を横に振った。

 

「人工物という偽物に頼る暇があるなら、生まれ持った真の力を使うべき? そんなものは欺瞞だろう。それは君達が活動している人間界の在り方を見ればすぐに分かる」

 

 そ、そうなの?

 

 俺最近まで人間だったけど、そんな風に思ったことはない気はないけど。

 

「生まれ持った能力を高めて成果を上げることと、必要な力を振るえる道具を使って成果を上げることは全く別の概念だ。長距離走で優れた成績を誇るスポーツ選手であろうと、本当に長距離を移動するなら自動車なり飛行機なり客船なり、人工物をもって行うだろう? 自らを高める努力は大切だが、より簡単かつ効果的に行動できる道具があるなら、実用においてはそちらを使うべきだ」

 

 そう言って、フロンズさんは改めて二人を見た。

 

「……単刀直入に言おう。君たち二人には我々フィーニクス家が主導で行っている、強化装備プロジェクトのテスターになってもらいたい」

 

 その言葉に、俺達全員驚いた。

 

 部長と九成は前もって聞いていたみたいだけれど、それでもやっぱり少し気圧されてる。

 

 朱乃さんと小猫ちゃんに至っては、少し前のめりになってる気がする。

 

 いや、そうだよな。そりゃそうだよ。

 

 嫌な力を使わないと強くなれないって言われている時に、別の方法で強くなれるかもしれないって言われたら、誰だって食いつくはずだ。

 

 でも、ぶっちゃけ怪しい。

 

 だってこの人、大王派なんだろ? 魔王派のリアス部長達相手に、そこまでする理由ってなんだ?

 

「……何故大王派の者が魔王派に塩を送るのかとは思っているだろう。既にリアス嬢には答えているが、あえてこちらでも答えよう」

 

 あ、リアス部長達は聞いているのか。

 

 つまり、部長達は信用してもいいと思ったから連れてきたってことか。

 

 で、答えは?

 

「とはいえ、簡単極まりないことだがね。……派閥の違いがどれだけあろうと、冥界全体の利益を考慮して立ち回るのが(まつりごと)に携わる者の最低限の責務というものだ。ましてコマーシャルとしてより有用なものがいるのなら、十の利益を得るために三や四の利益ぐらい与える程度、そこまで気にすることはないだろう?」

 

 そう言うと、フロンズさんは両手を広げる。

 

「何より現状優先すべきは、冥界全体の戦力の向上だよ。そのために必要なのは個人が不快感を押し殺して特性を使うことではなく、多くの武装を数多くの兵士に与えられる環境こそが、軍備をより高めることにつながると思わないかね?」

 

 そして、フロンズさんは朱乃さんと小猫ちゃんを見る。

 

「ましてその恩恵により、忌み嫌っている力を転生悪魔が使わずに済むというのは一種の美談だよ。私は、転生悪魔が固有の異能を重視した戦力確保に重点が置かれている現状には憂慮している。その流れに待ったをかけることで、より多くの純血悪魔に技術を広め教えられる、技術指南という方向性を確立したいのだ」

 

 その言葉に、朱乃さんも小猫ちゃんも、少し目の色を輝かせていた。

 

 朱乃さんは、堕天使の血を嫌っているから堕天使の力を使いたくない。

 

 小猫ちゃんは、姉のようになりたくないから猫魈の力を使いたくない。

 

 だけど二人とも、自分が強くならなくちゃと思ってる。そこに力を得る方法をフロンズさんが提示してきた。

 

 俺は自分の力を伸ばすことに躊躇いとかないからよく分からないけど、モテたくてモテたくて堪らないのにモテないまま悪魔になって、上級悪魔になればハーレムを持てるって部長に教えてもらった時が近いんだろうか。

 

 フロンズさんは軽く微笑むと、そのまま立ち上がった。

 

「とはいえ考える時間は必要だろう。連絡先は伝えてあるから、その気になったら連絡してくれたまえ」

 

 そう言って立ち去るフロンズさんの後姿を、朱乃さんも小猫ちゃんも真っ直ぐに見つめている。

 

 今すぐにでも返事がしたい。

 

 そんな風に思ってることがよく分かる雰囲気だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、そんなことがあったんだよ」

 

「なるほどねぇ。ま、そういう悩みってあるところにゃあるわなぁ」

 

 って感じで、次の日になって山に戻ってきた俺は、ラトスやおっさんに話してみた。

 

 俺馬鹿だから、こういう時分からないしな。人に聞いてみた方がいいってことはあると思うし。

 

『……個人的にはアザゼルに賛成だがな。持っている力に目を背けて、本当の意味で強くなったとは言えんだろう。……だが、フロンズ・フィーニクスはそこに意識を向けていないようだ』

 

 おっさんはそう言うけど、フロンズさんの言いたいことも分かってるみたいだ。

 

 ま、アザゼル先生と結構普通に話せてたし、先生よりの意見になるんだろうなぁ。

 

「ま、俺はそう言う悩みはないけど、その辺を割り切ったり受け止めるのは中々難儀なもんだってのは分かる」

 

 むしろラトスがそう言ってるのが意外だった。

 

 おっさんはドラゴンで先生派だ。ドラゴンを宿している俺も、前向きに受け止める方がいいんじゃないかって思った。

 

 あと俺が知ってるドラゴンといえば、白龍皇を宿してるヴァーリだ。

 

 だからまあ、ドラゴンのラトスもそっち側かなって思ったんだよなぁ。

 

『意外だな。ドラゴンは総じて自分の強さに肯定的になりやすい風潮があるのだが』

 

「俺は俺で色々あるけどよ、これは俺が思ってるってことだけじゃねえよ」

 

 おっさんにそう返して、ラトスはコップを見ながらなんかしんみりする。

 

「プルガトリオ機関は、先祖返りして悪魔化した奴とかも結構いるからな。そういう連中は信仰心を保ってるからこそ、自分に宿った悪魔の力に思うところがある連中は多い。主の為教えの為に使うことはあっても、忌み嫌ってるやつは結構いるからよ」

 

 そ、そうなのか。

 

 俺は宗教とかあんまり詳しくないけど、そういう風に思う人とかもいるってことか。

 

 そういえば五大宗家が日本の異能保有者の集まりなら、いわゆるお坊さんとかもいるんだろうか。朱乃さんも神社慣れしてたけど、神社も宗教施設だったなぁ。

 

 じゃあ結構根が深いのか。そりゃ抵抗もあるだろうなぁ。

 

「教会でも自分の神器にコンプレックスあるやつがいるにはいるしな。……使わずに戦える手段ってのは、そういう意味じゃあ教会にこそ必要かもしれねえなぁ」

 

『ふむ。上乗せする前にそれを振う己こそを鍛えるべきだとは思うのだが……人それぞれということか』

 

 おっさんはラトスにそう言うけど、やっぱりおっさんとしては嫌なのかなぁ。

 

「っていうか、俺もアスカロンを貰ってるからあまり偉そうに言えないけど、おっさんはやっぱり身一つだから?」

 

『それはある。だが実戦もレーティングゲームも経験した身としては、己の本質を認めなければば籠めることは出来ないと言いたいがな』

 

 ……籠める?

 

 俺が首を傾げてると、ラトスも首を傾げていた。

 

「籠めるってなんすか旦那? オーラとか?」

 

『いや、言葉で単純に説明できないし、何より物理的な力というわけでもない。……だが、そういうのはあるんだよ』

 

 おっさんは俺達を見ながら、そう言った。

 

『実戦でもそうだが、レーティングゲームでもこれがある。実際レーティングゲームは命の危険こそ薄いが、その分金も名誉も地位も動かせるのが現状だ。だからこそ、本腰を入れて臨む奴らはそこに何かしらの執念や渇望、果ては決意や忠義なり色々なものを持って挑んでいる』

 

 そして、おっさんは静かに拳を握る。

 

 それを真っ直ぐ見つめながら、子供に物語を利かせるように、おっさんは語りかけてきた。

 

『それを拳に宿らせれる奴は、種族や階級の違いなく厄介なのさ。直接的なダメージではなく想いそのものをぶつけられるからこそ、力量差すら乗り越えて敵に届く力がある。根性論と言われるだろうが、経験論としてそれがあると断言できる』

 

 俺は言われて、何となく自分の手を握ってみる。

 

 籠める……か。

 

 ヴァーリ相手にアスカロンを格納したまま譲渡で強化したけど、たぶんそういうんじゃないんだろう。

 

 ラトスも拳を握ってみてるけど、俺と違ってなんか掴めてるような感じだった。

 

 そんな俺達を親みたいな目で見ながら、おっさんはまた口を開いた。

 

『コイツが本当に厄介のは、同じぐらい籠められる奴でないと打開策が撃てないことだ。なまじ精神論だからこそ、やり方というものがそれだけしか言えない。そしてだからこそ、籠った一撃を放てる奴は例外なく本物で、種族差や位階の違いを凌駕できる可能性を秘めているのさ』

 

「あ~……なるほど。それは俺、喰らった経験あるっすわ」

 

 ラトスがそう言いながら自分の頬を触っていた。

 

「実は俺、両親が小さい頃に死んだ上、人に溶け込ませる為に常時人間の姿で育ててたんすよ。なもんで人型の方が慣れてて少しの間自分を人間だと思ってたんすけど、その所為でうっかり体調崩してドラゴン化しちゃった時、育ててくれた人から化け物扱いされて追い出されちまって」

 

「朱乃さんや小猫ちゃん並みに重いなオイ」

 

 俺の周りの異形はそんなのばっかりかよ。

 

 なんか平穏におっぱいおっぱい言ってることが恥ずかしくなりそうだ。シャルロットに恥じないように頑張ってるけど、全然足りない気がしてきた。

 

 俺とおっさんがまじまじと見てると、ラトスは軽く笑いながら片手をひらひら振るう。

 

「ま、異形なんて見たこともないなら仕方ねえってところはあらぁな。だから出来る奴を褒める気は合っても出来なくて責める気もさほどねえんだが……あの頃は流石にやけになってよぉ」

 

 なんか遠い目をして、しかもプルプルと震えてた。

 

「……たまたま初任務で仕事してた姐御とエンカウントして、恨み言吠えながら襲い掛かったら説教しながらの殴られ祭りで、一緒に来ていた悪魔祓い達がドラゴン()を庇って姐御を止めるっていう始末なんだよ。……いや、プルガトリオ機関の初任務だからなんだけどな?」

 

「……あの人って本当に強くて厳しいんだなぁ」

 

 背中に寒気が走ったよ。

 

 だけどラトスはなんか感慨深げに、頬に手を触れながら拳を握り締める。

 

「だけどあの人は、本心から俺を止める為に怒ってくれたって思ったし、そのあとの説教とかで本質が分かった気がして感服したよ。……思えば、それが籠った一撃って奴なんだろうさ」

 

『なるほどな。確か白い長髪の女だったが、確かに面構えが違ったしな』

 

 おっさんもそういうほどなのか。

 

 確かに、鎧を付けた俺や仮面ライダーになった九成と一緒に、生身で戦ったもんな。それも一対一でコカビエル相手に足止めまでしたし、そりゃ強いよ。

 

 そんな人が籠った一撃を放てるなら、そりゃきっとめっちゃ凄かったんだろう。

 

「俺も、打てるようになるのかな?」

 

 俺は、リアス部長の自慢になりたい。最強の兵士になるって誓ってる。

 

 同じぐらい、シャルロットに恥じないマスターになりたい。その思いは本気だ。

 

 だけど、俺は籠められているのか? その想いは籠ってるって言えるほどなのか?

 

 俺がそう思ってると、おっさんはうんうんと頷いた。

 

『まあ、お前達なら一度でも放つことができればすぐに使いこなせるようになるだろう。修行でそういう奴らだとは分かっている。だからそろそろ休憩も終わりということで―』

 

 おっさんが言い終わるより先に、おっさんの耳元に魔方陣が出てきた。

 

 なんかこっからでもけたたましいとかそんな感じなんだけど、緊急連絡とか何かか?

 

「ま、まさか部長達に何かが?」

 

「いや、それならまずおたくの耳に届くんじゃね?」

 

 ラトスに何故かツッコミを入れられたその時、おっさんが勢いよく立ち上が……ったぁああああああああ!?

 

『……なんだとぉ!?「「ぐぎゃぁ!?」」……あ、すまん! いや、しかし―――ッ』

 

 おっさんは俺達を巻き込んだことを謝ってくれるけど、何があったの!?

 




 スタンスとして少数精鋭ではなく技術による軍隊全体の底上げがフロンズの強化スタンスであることがよくわかる回。

 個人の異能や特性を全否定するつもりはフロンズにもありませんが、彼としては「単一技能より総力戦」を視野に入れており、こと戦争などにおいては全体に一定以上の質を持つことが最優先という価値観ですね。だからこそ眷属は個人の戦闘能力より一定以上の質を大軍に齎せる可能性を重視している傾向があります。オンリーワンの異能はオンリーワン故に主力に向かず、優秀な総軍があってこその物だという価値観です。

 まあそれはそれとして、そこに対するアンチテーゼとして、原作でもあった籠めるを出してみた話ですね。

 機械的に量産された質では籠めることはできない。だが籠める方法を法則にできない以上、それで数をそろえることなどほぼ不可能。そんな感じで対になっている感じです。

 今後もフロンズ側は個と質と深度より、群と数と範囲を重視していくことでしょう。最も重視しているだけで、個人の固有異能を完全に切り捨てているわけでもないから、隙あらばそちらも確保していくことでしょうが。

 そして次回、ひと悶着あります。

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