好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 はい、切りどころがなかなかなかったのでちょっと長くなります!


魔性変革編 第十三話 悪意阻むは赤と青

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

『くそ! ギリギリで間に合わなかったか!』

 

『マジでやりやがったなオイ! 赤龍帝、時間がねえからこのまま突っ込むぞ捕まってろ!』

 

「ああ! 構わねえからやってくれ!」

 

 もう燃え始めてる森を見て、おっさんもラトスも全力で突っ込んだ。

 

 単純に強い方が自由にするべきってことで、ドラゴン形態のラトスに俺はしがみ付いてるけど、安全に降りることは考えない。

 

 っていうか、連れて行ってほしいって頼んだ側だから今回は我慢!

 

 そのまま突っ込んでテロリスト相手に大立ち回りするおっさんに、ドラゴン形態で体当たりするラトス。俺もそのまま転げ落ちる感じで着地して、籠手とアスカロンを展開してテロリストを睨み付ける!

 

「おらぁ! 赤龍帝が聖剣抱えて登場だ! やられたくねえならとっとと投降しやがれ!!」

 

 ほんと、二天龍の宿主が聖剣持ってるって、脅しとして十分なんだよな、ドライグ!

 

『十分な恐喝だ。特に相棒は上級悪魔のエリートを倒したうえでコカビエルやヴァーリとの戦いも潜り抜けた。実態は多分に幸運が含まれているが、並みの悪魔なら最上級堕天使や魔王の末裔と戦って生き残ったなど強者の証明だ。とどめに悪魔の天敵である聖剣があるとなれば―』

 

「ひ、ひぃ! 赤龍帝だって!?」

 

「しかもマジで聖剣だぞ!? 消滅される!!」

 

 おお、マジで効果あった。

 

 と思ったらいきなり銃口を向けられて慌てて逃げる。

 

 うぉおおおお!? 掠めた、籠手が展開されてないところを掠めた!?

 

「なめんじゃねえぞガキィ! この程度を慌てて躱す奴なんぞにビビってられるか!」

 

「こちとら玉砕覚悟でやってんだよぉ! 死ぬこと前提なんだから死んでも食らいついて動きを封じやがれ! タルウィルさんの邪魔させんな!」

 

 くそ! 確かアントレイダーだったな。あんなのが何人もいるのかよ!

 

 しかも死ぬ気で来るとか最悪じゃねえか! 殺されても足止めする気満々で? しかもタルウィルってのがいたらまずいのか!!

 

 ああもう! どこにいるんだよ、そのタルウィルってのは!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんでこんなことになったのかっていうと、おっさんから籠った一撃について聞いていた時に、おっさんに届いた連絡と、こっちも届いた連絡だった。

 

 なんでもとある上級悪魔からの救援要請が届いて、それをサーゼクス様の部下が担当したら、えらいことになっていたとか。

 

 その上級悪魔はアントレイダーを引き連れた部下のクーデータで家族を人質に取られ、他の眷属達を見せしめに殺されたうえで、個人的に取引している他の悪魔の領内に気づかれずに移動できるよう手配するよう強制されたらしい。

 

 そして分かったのが、その眷属がテロ組織「贋作抹消連盟」の幹部だったこと。そんでもって贋作抹消連盟は純血の下級中級が中心となっている組織で、他種族からの転生悪魔に対して暗殺やテロをやっている組織らしい。

 

 まさか他種族もいる自分の眷属に紛れ込んでたなんて思われなかったけど、そいつは元々友人達と一緒に眷属に慣れないか言ったが、他種族を優先されたことで本格的に参加したとか。

 

 そしてそいつらの狙いは教えてもらえなかったけど、位置からいっておっさんの領地の一つ。それも人間界では絶滅していて、それしか食べれないドラゴンがいる「ドラゴンアップル」の群生地の可能性があると判明。助け出した時は既にそこから移動していて、急いで緊急連絡がおっさんと俺に届いたっていうことらしい。

 

 それで相手が悪魔なら俺もアスカロンで役に立てるんじゃないかってことで、ラトスと一緒におっさんについて行ったらこんな感じだ。

 

 くそ! こんなテロに巻き込まれるとか思わなかったぜ!

 

 アスカロンで射撃を弾き飛ばしながら、俺はなんとかアントレイダーと対峙する。

 

 結構強いけど、これぐらいならまあ何とかしのげる。それも倍加を溜めて解放するを繰り返せば、一人ずつは何とか倒せてた。

 

 これも特訓の成果か、ドライグ?

 

『だろうな。相棒の特訓はとにかく基礎体力や危機対処能力を高めつつ、組手で必要な技術を叩き込まれるというものだ。タンニーンが加減をしなかったことと、ラトスが意外と教え上手だったおかげで、しのぐまでなら何とかなっている』

 

 そっか。こんなことで実感したくなかったぜ!

 

「そろそろ遅くなるぞ! 一斉射撃でぶち殺せ!」

 

「応ともよ! 死ねやまがい物がぁ!」

 

 やべ、倍加が切れるタイミングが読まれてる!?

 

 何時の間に遠巻きに囲んでると、これって流石にまずいか!

 

 そう思った瞬間、どこからともなくテロリストが投げつけられて、アントレイダーが虚を突かれた。

 

 それに合わせて、一人の顔面を掴んで武器にしながら、ラトスが乱入してくる!

 

「無事かイッセー! 悪い、俺もタンニーンの旦那も手こずってる!」

 

「マジかよ、おっさんもか!?」

 

 あのおっさんを手こずらせるとか、こいつら強すぎじゃね!?

 

「いや、どうも対悪魔用の装備を調達してたみたいでな。旦那が来ることを最初から予定して、専用部隊を組んでたらしい」

 

 あ、なるほど。そりゃおっさんの領地を荒らすならおっさんの対策するか。

 

 って、そんなこと言ってる場合じゃない。

 

 なんか向こうでも燃え始めてる。まだドラゴンアップルの区画じゃないっぽいけど、このままだと延焼ってのが起きるかもしれないぞ。

 

 背中を合わせてアントレイダーと睨み合いながら、ラトスは俺に視線を向けた。

 

「イッセー、敵さんの本命は星辰奏者らしい。どうも火をつける担当で、星辰光の性質なのか、中々消えない。姐御からの受け売り知識なんだが、たぶん維持性と付属性ってのが高いんだろう。一度くっついたら長い間続く」

 

「それ、俺じゃなくて皆に行った方がいいんじゃないか?」

 

 俺に言われてもどうしろってんだよ。

 

 だけどラトスは、ちらりと燃えている方向を見て言った。

 

「ただし射程はさほど高くないっぽいな。たぶんだが、火がついている方向に向かってけば見つかるだろうぜ」

 

 なるほどな。つまり、「俺がおとりになるからお前がいけ!」って感じか。

 

 だけど、それは違うだろ。

 

「馬鹿野郎、まだ禁手になれない俺がおとりやるべきだろ? 大丈夫、リアス部長の為にもこんなところで―」

 

 死んでやるもんか。そう言えなかった。

 

 というより、ラトスがいきなり俺を掴むと抱え上げた。

 

 え、え、どういうこと!?

 

「野郎! 味方を投げて砲弾にする気か!?」

 

「頭イカれてるのか!? それとも俺達以上の覚悟決めてるのか!」

 

 なんか怖いことをテロリストが言ってるけど、ラトスはなんかにやりと笑った。

 

「50点だ。投げるのは確定だが―」

 

 その瞬間、俺の視界に空が映った。

 

「―投げる方向は本命だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「覚えてやがれぇええええええ!?」

 

 

 

 

 

 

 虚をつくには効果的だけど、俺まだ飛べないんだよぉおおおおおお!?

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況が分からないまま、枉法インガは床に倒れていた。

 

 体の震えを抑えることができない。それどころか、このままでは死ぬ可能性すらあるとなんとなく思える眠気を感じている。

 

 子供の頃など、何度もテレビなどでそういう話を見たことがある。寝たら死ぬという、最低でも日本では定番の話だ。

 

 実際は備えをしっかりしている状態などでなら寝て体力を回復した方がいいとも言われているが、この状況下で意識を失えば確実にとどめを刺しに来るということも理解できている。

 

 今この建物内は乱戦となっている。

 

 ご丁寧に自動ドアを開けて入ってきた、数十人の侵入者。彼らは多くがレジスティングアントレイダーになりつつ、他種族ベースの転生悪魔に攻撃を仕掛けてきた。

 

 レイダーと似て異なる装甲を身に纏った和地が応戦し、更に警備員も入り乱れての乱戦だった。乱入者は他の通用口からも侵入していたらしく、混乱状態になっている。

 

 そして、彼女が眠気を感じて倒れているのは最も想定外の非常事態。

 

 季節が夏となっているこの状況下で、例え冷房であってもありえない極低温の状態に建物全体が鳴っているのだ。

 

 自動ドアを破壊しないで入ってきたのは、暑い外気が入ってくることを可能な限り避ける為だろう。その結果として、夏真っ盛りの湿度の高い温帯で、凍死寸前になっている。

 

 このままでは死ぬ。それだけは嫌でも分かる。

 

 だけどどこかほっとしている自分がいて、インガは自虐的に頬を歪めた。

 

 そしてその時、足音が響く。

 

 視線をちらりと上に上げれたのは奇跡だが、不幸だろう。

 

 そこには、装甲越しでも分かるほどの殺意を視線に乗せた、アントレイダーの姿があった。

 

「忌々しい紛い物が。楽に死ねると思うなよ?」

 

 ――ああ、苦しんで殺されるのか、私は。

 

 そう悟れるだけの思考力が残っていることを、心からインガは恨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況は最悪だったと言うほかない。

 

 テロと言うものは何時如何なる時も仕掛ける側が先手を取りやすいものだが、それにしても後手に回りすぎている状況だった。

 

 その最大の理由は、大規模テロとしか言いようがないドラゴンアップル群生地を狙った襲撃が、本命の一環であると同時に囮であることが原因だ。

 

 タンニーンは他種族由来の最上級悪魔の顔と言っていい。

 

 単純な戦闘能力なら魔王眷属にも並び立てる者はいるだろう。レーティングゲームのランキングなら、七位のリュディガー・ローゼンクロイツの方が上だろう。

 

 だがしかし、タンニーンに絡むテロを真っ先に起こしたのはその人気と知名度だ。

 

 レーティングゲームに参加できない魔王眷属で、自らも魔王眷属であることに重点を置いている魔王眷属は、必然的にレーティングゲームでの活躍が少なくメディアの露出では一歩劣る。

 

 リュディガーは確かにランキングでこそ上だが、彼は相手の精神を絡めとる作戦を得意とする転生悪魔。加えて上級悪魔に至るまでは魔法使い組織出身であまり目立たなかった為、辛口評価も多いことと絡み合い、玄人好みではあるが一般市民での人気が劣る。

 

 見るからに分かり易くドラゴンであり、上位のプレイヤーであるタンニーンは、子供や一般大衆向けの人気を誇っている。それゆえに、テロの標的になれば非常に注目を集めてしまう。

 

 それはすなわち、他に対する意識が向けられにくくなることだ。

 

 まずそちらに注力させ、動揺している隙に他種族からの転生悪魔が多く集まるだろう施設に同時多発テロを仕掛けるのが、贋作抹消連盟のこの活動。

 

 三大勢力の和平という、下手をするとより他種族の転生悪魔が増える可能性の出来事の勃発。更にそのタイミングでテロを引き起こし、サーゼクス・ミカエル・アザゼルといった各勢力のトップを苦戦させ、アザゼルの腕を一本落とすという禍の団の成果により二重のインパクト。これにより現政権の方針に対する不満が爆発し、また三大勢力のトップが意外と弱いという勘違いを引き起こしたことがこのテロの要因である。

 

 また始末に負えないことに、彼らはこれまで入念な下準備をしていた。

 

 他種族からも眷属を加えている上級悪魔に、情報を集める為にあえて眷属でいることを受け入れた、臥薪嘗胆を体現する幹部を含めた構成員。サウザンドディストラクションにより来訪した、プログライズキーや星辰奏者の技術。そしてそれにはギリギリで調子に乗らず、本格的に動く為に準備と鍛錬を積んできた忍耐力。

 

 それらすべてが絡み合ったことで、このテロは比較的被害を大規模化させている。

 

 その一環として候補は前もっていくつも見積もられており、そのうちの一つに、よく転生悪魔を対象としたイベントが行われる建物があった。

 

 あくまで候補の一つであったが、そこで星辰奏者の適性検査が行われることで、そこは急遽対象となる。

 

 星辰奏者に他種族がなられては更に状況が悪化する。しかも質の悪いことに、その検査は実験目的で行われていながらも、技術の提供元が神の子を見張る者(グリゴリ)であったことから、技術力の高さから安全性はあるだろうと他種族ベース含めた転生悪魔も応募していたことを察知する。

 

 結論として、本命に匹敵する重要箇所として、精鋭が派遣され、他種族由来の転生悪魔を殲滅する作戦が決行される。

 

 そしてそれを率いる者は、ある意味で重要であることから実力者が派遣されることになる。

 

 ドラゴンアップル焼却作戦を担当するタルウィル。そんな彼の友人であり、この作戦において不満を抱いていた主へと反旗を翻した、ザルチェル。

 

 最大の特性は、彼らが独自に星辰奏者になっていたという点。そしてその能力を最大限に生かせるということだ。

 

 タルウィルが保有する星辰光は、焼夷炎弾投射能力、邪龍殺しの焦熱地獄(ヘル=コード・インフェルノ)

 

 長時間相手にへばりつきながら燃え盛る炎を撒き散らす星辰光。この星辰光を得たその時から、ドラゴンアップルを焼き尽くすことを作戦に組み込んでいたというだけの素質を持つ星。

 

 ザルチェルが保有する星辰光は、極寒空間精製能力、贋物滅す紅蓮地獄(ヘル=コード・コキュートス)

 

 広範囲の気温を南極圏の領域にまで下げ、更にその影響を受けない者をえり分けることができる星辰光。この星辰光を最大限に利用するべく、作戦は可能な限り気温が高まっている環境下であることを求められた星。

 

 この二つの星は、単純な性能以上に適切に運用した時の影響力が絶大であると考えられていた。

 

 その二つの星が、紛い物を滅ぼすべく猛威を振るう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 枉法インガは、死にたいと願いつつ死にたくないと願っている。矛盾した思考だが、これは意外と珍しいものではない。

 

 自殺する人間は、世界中で満を軽く超えるだろう。総人口が大きく劣る異形といえど、探せば両手の指がきかなくなるほどいるはずだ。そして実行する者達も少なくはない。

 

 だが、死というものは根源的な忌避感を抱かせるものだ。

 

 だから死なない程度の自傷で発散する者もいる。自殺する時も実態はともかく楽に死ねるような方法をとる者は数多い。そして踏み込むことができずに、うだうだと生きている者はもっと多い。

 

 枉法インガはそんな少女だ。

 

 自己嫌悪は強いくせに、かと言って死ぬのが怖いと思ってしまう。文字通り死に等しい痛みを味わってしまったがゆえに、それをもう一度味わうことを怖がってしまう。そうしない方が総計で苦しみが大きくなると分かっていても選べない、そんな少女だった。

 

 何時からそうなってしまったのか、彼女自身分からない。

 

 何時の間にか腐っていたとしか言いようがない。そんな風に、もっと元気でボーイッシュと言われていた自分は変わってしまった。

 

 だからだろう。このまま眠るように本当に死ねるのならいいのかと思ったのは。

 

 だからだろう。今まさに即死しない代わりに必ず激痛を味わいながら死ぬような傷を負わせようとしているのを理解して、声を出せないほど恐怖を感じているのは。

 

「……肺にでかい穴でも空けるか。そのまま自分の血で溺れて死ね」

 

「……ぃ……ゃ……」

 

 悲鳴もろくに出せない。

 

 どこかで読んだ記憶がある。人間の死に方の中でも溺死や水死というのは非常に苦しい死に方であると。

 

 昔の自分なら、もっと何かができたのではないか。

 

 ふとしたことで昔の、隣に住んでいた男の子と出会ってしまったから強くそう思う。

 

 昔はこうじゃなかった。何時の間にかこうなってしまった。どうすればよかったのだろう。

 

 助けなど来るはずがない。

 

 もう親にも見捨てられている。教会からも嫌われているだろう。()()()()()()()()()()()()

 

 どうしようもなく、インガの人生は詰んでいる。

 

 世界を探せば、もっと不幸な者もいるだろう。食べるのに困らないのは十分すぎる幸運だと、そういう人もいるだろう。むしろ世界には自分の待遇を羨む者もいるだろう。

 

 だが、その環境に自分が苦しく感じないかというのは別問題だ。そして、他者がもっと不幸だから自分はこの環境でも平気だと思えるのなら、枉法インガはこんなところで死んでいるわけがない。

 

 そんな女に、助けの手が伸びるわけがない。それを自分自身が理解しているにも関わらず―

 

「……助けて」

 

 ―そう声が出てしまう自分に、何より彼女が絶望した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時期、ドラゴンアップル焼却作戦を担当している悪魔達は、ドラゴンアップルの群生地に向かって突撃していた。

 

 囮であると同時に、この作戦は最も重要な作戦でもある。

 

 贋作抹消連盟にとって、転生悪魔の華ともいえるタンニーンは怨敵に等しい。そしてタンニーンという存在に最も通用を与えられるとするならば、それは彼が悪魔に転生する大きな理由だったドラゴンアップルを絶滅させることだ。

 

 そしてそれだけの作戦を行えば、間違いなく決死隊になることも分かっている。ゆえに、この作戦には組織でも特に強い意志を持つ者達が参加しており、アントレイダーの数も手向けと言わんばかりに多く用意されていた。

 

 結果と言って防衛網は突破されており、それゆえに三人で行動している彼らは何としてもドラゴンアップルを燃やす為に邁進し―

 

「………ぁ……」

 

 ―何か嫌な予感を覚える音を聞いて、ふと振り返る。

 

「……ぁぁぁぁぁあああああああっちくしょぉおおおおおお!」

 

 ―というか人と声だった。

 

 それに気づいたその瞬間、人の顔面に文字通り飛んできた少年の拳が叩き込まれる。

 

 その瞬間、盛大にアントレイダーは破壊され、変身者はそのままもんどりうって昏倒する。

 

 少年もそのまま地面に叩き付けられたか、受け身を取ったとしても悶絶するだろうにすぐ起き上がる。

 

「なんだこいつは!?」

 

「知るか! だがお前はさっさと行くんだ!」

 

 そして一人が本命を行かせる為に攻撃を開始し、本命は即座に走り出す。

 

 アントレイダーは対異形を想定している為、本来ならこれでも十分対応できるだろう。

 

 ―――だが、今回は相手が悪かった。

 

「アスカロン!」

 

「ぐあぁああああ!?」

 

 その味方の絶叫に、男は咄嗟に振り返ってしまう。

 

 そして、紅い籠手から聖なるオーラを纏った剣を伸ばした少年が、同胞を一太刀で倒すところを目撃し、背中を向けることを諦める。

 

 即座にレジスティングアーミーで扇状に包囲するが、少年は臆することなく睨みつける。

 

「てめえ! ドラゴンアップルが無いと死ぬドラゴンがいるってのに、燃やそうってのか!!」

 

「当然! むしろ俺達悪魔の世界を蹂躙する偽物どもや、そいつが庇護するドラゴンには死んでもらうぜ!」

 

 真っ向から言い返しながら、しかし男は……否。

 

「俺は贋作抹消連盟の星辰奏者(エスペラント)、タルウィル様だ。……てめえはいったいなんだ、偽物野郎」

 

 この作戦の切り札ともいえるタルウィルは、警戒心を強く持っていた。

 

 持っているのは神器としては数多い龍の手(トゥワイス・クリティカル)に似ているが、何かが決定的に違う。なにより、悪魔でありながら聖剣を持ち、そのオーラも明らかに並みの聖剣ではない。

 

「ドラゴンアップルは絶対燃やすし、贋作どもを星辰奏者にさせるつもりもねえ。誰だ、てめえ?」

 

 その言葉に、少年は真っ向から反論した。

 

「なめんな、お前達の好きにはさせねえよ。主様であるリアス部長の名に懸けてな!」

 

 そう真っ向から吠えた少年は、聖剣の切っ先を突きつける。

 

「俺はリアス・グレモリー様の最強の兵士(ポーン)、赤龍帝の兵藤一誠! あと、星辰奏者のところも好きにはならねえよ!」

 

 真っ向から啖呵を切った気に食わない少年は、はっきりとタルウィに宣言する。

 

「そこにはなぁ、コカビエルにだって立ち向かえる、頼りになるダチがいるんだからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その言葉に嘘は断じてない。

 

『サルヴェイティングブラストフィーバー』

 

 その音と殺気に、咄嗟に銃口を突きつけていたザルチェルは反応できた。

 

 仮にも上級悪魔試験すら合格した魔力で防御をしつつ、レジスティングアーミーを声のした方向に集めて防御態勢をとる。

 

 その上で、十メートル以上吹っ飛ばされた時点で敵が強敵だとすぐに分かった。

 

 即座に立ち上がり、小声で味方に指示を出しながら、ザルチェルは攻撃を仕掛けてきた相手を睨む。

 

 そこにいたのは、青い犬を模した装甲に身を包まれた存在。

 

 レイダーとは似て異なる意匠の、一人の戦士。

 

「……ったく。色々言いたいことや鬱憤はあるが、それはこの際どうでもいい」

 

 そう、腹に据えかねていると分かる声が、殺意を込めて投げかけられる。

 

 静かに、手に持った拳銃を突きつけながら、男の声がザルチェルに向かって放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の目の前で俺の身内に悲しみの涙流させたうえで殺そうとか、知らないとはいえ宣戦布告だ。……死にたくないなら抵抗するなよ? 加減するのも一苦労なんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 涙の意味を変える者、九成和地。

 

 

 

 

 

 

 

 究極を従える赤龍帝、兵藤一誠。

 

 

 

 

 

 

 赤と青の戦士が、涙と悪意を止める為に、今此処に戦闘を開始した。

 

 




 基本的にこの作品は、魔改造が今までの比ではないイッセーがもう一人の主人公としてかなり比重を重めに設定しております。

 なのでどの章でも、イッセーはイッセーで明確に活躍させたいと思ってますね。
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