好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
さぁ、バアルの動乱も本格的に動きました! タイミングとしては承といったところです!
Other side
「……え?」
その声に誰もが振り返れば、マグダランの脇腹に魔力の矢が突き刺さっている。
その矢は針のように細く、突き刺さる位置も主要な臓器や血管を避けた、致命傷とは程遠い位置。
だが同時に、それをこの場の誰もが悟れない形で成し遂げた。それが矢を放った者が強者であることを示している。
殺気を向けられなかったのだろうが、戦意を悟らせなかった。
自分達を狙ってないとはいえ、認識もできなかった。
それはすなわち、相手が己の気配の殆どを殺し、正確無比な矢を超高速で放ったことに他ならない。
間違いなく、手練れである。
そしてこの場でマグダランを狙うということは、サイラオーグと匙にとって敵である。
そこまで気づいた時、矢を喰らったマグダランは崩れ落ちる。
そして、その瞬間に更なる動きが見えた。
「……冗談だろ」
一瞬だが、匙元士郎は唖然とした。
魔力の気配を感じた時には、魔力で構成される数十の矢が山なりに飛んできていた。
崩れ落ちたマグダランを狙うそれは、あまりに遅いが確実に当たる。それはマグダランが崩れ落ちていることを狙ってのもので、しかも矢の速度から見て、先ほどの狙撃より先に放たれたものだ。込められた魔力も、並みの上級悪魔なら一撃で殺しうるだけのもの。それが、このままではほぼ同時にマグダランに当たってしまう。
衛兵達も庇おうとするが、その瞬間に足に矢が突き刺さり、同じように崩れ落ちる。
間違いなく、この狙撃はマグダランを殺す為の詰将棋。事前に速度を一つずつ調整し、動かなければ確実に当たるように放つ。そしてそれらに気づかれるより先にマグダランに早い速射を当て、動きを止める。更にそれで動揺した瞬間をつき、衛兵の足まで止める。
……何より恐るべきは、このタイミング。
ビィディゼ・アバドンが倒されようというこの瞬間に、マグダランは撃ち抜かれた。これは偶然と考えるにはあまりにできすぎている。
「……恩を押し売りされたか」
ビィディゼが悟った通りだ。凶手はこのタイミングをわざと狙った。
ビィディゼが倒されようというまさにそのタイミングを計り、マグダランを狙い打つ詰将棋を当てる。思考の隙をうまく突いた、あまりに悪辣な方法だろう。
だからこそ、悪辣な男はそれに呼応できる。
「さぁ、どうするかね?」
その一瞬のスキをついて、ビィディゼは飛び下がりながら攻撃を放つ。
アバドン家が持つ、
その攻撃に、サイラオーグも匙も選択肢は一つしかない。
「ぬぅ……ぉおおおおおおっ!!」
「畜生がぁああああああっ!!」
吠える二人は素早くマグダランをカバーするように周り、攻撃の迎撃を試みる。
サイラオーグ・バアルが纏う獅子王の戦斧は、飛び道具に対する強い防護加護を持つ。匙元士郎が宿すヴリトラ系神器には、炎の結界を展開できる。
だが、それらをもってしても二重の猛攻は厳しい猛攻だ。
マグダランを狙う矢は正確無比で、更に早く迫る追加までくる。更に衛兵まで狙うことで、二人の対応力に更なる負荷をかけていた。
そこに便乗したビィディゼは、攻撃にわざとばらつきを加える。マグダランと衛兵だけでなく、一部に二人を狙った攻撃を混ぜ込んだ。当然、この状況下では二人は耐久力ゆえにそれを優先できない。
その攻撃はわずか数十秒だが、しかしそこに更なる攻撃が叩き込まれる。
「……がっ!」
「……ぐっ!」
縫い留めるように、あまりに早い矢が二人に突き刺さる。
鎧の継ぎ目、それも猛攻で絶え間なく動くそれを正確に貫く一撃。それが一瞬で均衡を崩した。
瞬間、攻撃の密度は一気に二人に収束。その全身を滅多打ちにする。
……そして攻撃が収まった時、二人は全身の鎧を砕かれ、血を流して崩れ落ちた。
「兄上! 匙殿!」
マグダランが声をかける中、二人はそれでも立ち上がろうとする。
その姿を見て、ビィディゼは寒気を感じるような表情を浮かべていた。
「これだけ喰らっても立ち上がるか。才能がない愚者でありながらよくもまぁ……」
自分では理解できないあり方に引くビィディゼ。
そこに足音が近づき、そして一人の青年が現れる。
バアル家に連なる者と思われるその男を見て、サイラオーグは血を吐きながら彼を睨み付ける。
「どういうつもりだ……シュウゴ・バアル……っ!」
「何って決まってんだろ? 手柄を上げに来たんだよ」
ヘラヘラと嗤いながらサイラオーグに返すのは、シュウマ・バアルの子息たるシュウゴ・バアル。
弓矢の形に魔力を集めての射撃戦を得意とする悪魔。その力量は既に最上級悪魔の域とされ、対ロキ戦闘において多大な戦果を挙げた男でもある。遠距離精密狙撃なら悪魔全体でも随一であり、彼ならあの妙技の連発も納得できる。
だが、問題はそこではない。
フロンズ・フィーニクスの後援者たるシュウマ・バアル。彼ら二人は政治の怪物であり、この事態においても致命傷を避ける対応をとる。そして魔王派とも連携を踏まえた行動をとるだろう。
そんな彼ら二人についているだろう彼が、この状況下でこの凶行を振るう理由が分からない。
それに対し、シュウゴ・バアルはヘラヘラと嗤いながら首を傾げる。
「はぁ~? 身内にとんでもないバカが出たんだぜ? 身内がすっぱりやっちまった方がいいじゃねえか」
何を言っているんだという表情で、何を言っているんだと言いたくなるようなことを返す。
シュウゴ・バアルは当たり前のようにそう言いながら、ビィディゼ・アバドンの方を向くと笑顔まで向けている。
「実際、旦那に独占されかかったしなぁ? 大王派の不正、その原点なんてもんは汚名返上にはもってこいだし、不正に関わってない俺らからすりゃぁ正義の裁きで大手柄じゃねえか」
「なるほど。彼らよりは考えて動けるようで何よりだ」
馴れ馴れしい態度をとるシュウゴに対し、ビィディゼは窮地を救われたこともあってあえて黙認する。
そしてシュウゴは、唖然としているサイラオーグたちににやりと笑って見せる。
「つーわけで、正義のD×D様の分際で不正野郎に手を貸すてめえは、反逆者も同然だな? そんな愚か者は不正貴族ごと、正義の断罪者ってやつのかませ犬になるんだな?」
「貴様……、どこまで腐っている……っ!」
その態度にサイラオーグは激昂するが、シュウゴ・バアルは首を傾げる。
言われる理由に思い当るところがない。そういわんばかりの態度を見せていた。
「あ? 身内から犯罪者が出たんだぜ? さっさととっ捕まえて突き出した方がいいだろ? バアルの汚名を少しはそそげて、手柄もゲットの一石二鳥じゃね?」
本気でそう言っているとしか思えない態度で、シュウゴ・バアルはそう告げる。
「冗談だろ。今はそんなこと、してる場合じゃねえだろうが!」
「いやいやそんな場合だろ? 身内にバカが出たってんなら、まずはその辺どうにかしねえとこっちの身まで危ないっての。オツムが悪いんじゃねぇか?」
匙元士郎の怒声すら、彼には理解の外側にある。
真剣に首を傾げるシュウゴは、自分の言葉に疑問なんて持っていなかった。
「他の神話の連中を助けるだけ助けて、俺らが後で痛い目見るとかアホじゃねえか。まずは後顧の憂いってやつを絶たねえとなぁ?」
その言葉に、匙元士郎は眩暈すら覚えそうになっている。
……根本的に、相容れるわけがないだろう。
手柄や名誉を望むことこそあれ、それ以上に他者の為に身命を掛ける利他の存在。他者の為に動くのはすべて己の手柄や名誉の為である利己の権化。
真逆の極限と言ってもいい。足並みを揃えられる時ならともかく、その差が如実に表れる環境ではこうなって当然なのだ。
「あ、ちなみに俺の眷属も、そちらさんに加勢してるぜ? これで魔王の妹のくせして不正貴族共に手を貸してるシトリーの嬢ちゃんも殺せてんじゃね?」
「それはそれで、セラフォルー様辺りに不興を買いかねんが?」
余裕を取り戻してそんな会話まで交わす二人だが、そこに爆音が鳴り響いた。
振り返る二人の視界に、桃色の髪が映る。
更にそれを追いかけるように現れる悪魔達に、思わず二人は跳び退った。
「ロイガンだと!?」
「おいおい、親父の派閥がなんでここに!?」
レーティングゲーム二位。すなわちビィディゼより上の悪魔である、ロイガン・ベルフェゴール。
シュウマ・バアルの派閥に属する、最上級含めた上級悪魔の貴族達。
その乱入に、ロイガンが同様のことを目論みでシュウマ達が止めに来た可能性を何人かは考える。
「……勘違いしないでくれたまえ、シュウゴ。敵は
だが、その誤解は足音と共に解かれる。
姿を現したシュウマ・バアルとその言葉に、サイラオーグは苦虫を噛み潰した表情を浮かべていた。
「貴方まで、このような愚行に関与するというのか……っ」
和地Side
俺は今、カズヒねぇの運ばれた病室に顔を出している。
……カズヒねぇもまだ起きない。相当の深手を負っていたし、相当キていたんだろう。
吹っ飛ばされた俺や壮絶{おっぱいはイッセー的にその通りなので}なことになっているイッセー以上に寝込んでいるとか、大変なことになっている。
寝顔そのものもゆったりしていないし、こうしてみると少し心配だな。
とはいえ、俺もそろそろ準備をするべきだろう。
深手を負っていたこともあるからすぐにはできないが、有事においてはそうも言ってられないこともある。
もちろん俺達にも状況{入院患者を初手から出すのは様々な問題がある}からまだ待機だが、遅かれ早かれ出張ることにはなるだろう。
……イッセーは絶対出てくるだろうな。多々問題はあるが、あいつはこういう時絶対動くタイプだ。
ま、俺も状況次第では動くけどな。
だからこそ、俺はそっとカズヒねぇの頬に手を当てる。
「……そろそろ準備をしてくるよ」
聞こえてないだろうが、まぁこういうのも気分というものだしな。
そして俺は苦笑しつつも病室を出る。
と、そこに春っちとベルナがいた。
「もういいの?」
「あんまり長居すると、カズヒねぇが起きたときに説教してきそうだろ?」
春っちにそう返しながら、俺は少しだけ目を伏せる。
……禍の団がトライヘキサをこのままにするわけがない。ミザリとしても親父を殺し損。ヴィールだって勝ちを狙う気になった以上、トライヘキサは有効活用したいだろう。
こっちも対策のたの字はしているだろう。ただ、それをもってしてもただで済むわけじゃない。
まったく。またしても壮絶な激戦か。
ため息をつきたくなっていると、ベルナがそっとこっちに近づいてきた。
「カズ、ちょっといいか」
「……ああ、いいぜ」
すぐに察して俺は、小さく微笑みながらベルナを抱き寄せる。
「そうじゃねえよ」
「違うの!?」
てっきりキスとかするのかと思ったらマジツッコミ!?
ちょっとショックを受けていると、ベルナはため息をつきながら頭を描いた。
「そうじゃなくて、姉貴達について気になるってことだよ」
「「……ああ」」
春っちと一緒に納得したけど、確かにそうだな。
あいつらはあいつらで
フロンズ達が不正に関与している可能性は低いだろう。あいつらがそんな迂闊なボロを出すわけがない。というより、こんなただただ私服を肥やす為の不正をする連中とは思えない。幸香達だって、所属勢力観点の筋は通すタイプだしな。
となると、奴らからすれば完全なとばっちりだ。少なくとも、積極的に仕掛けるわけではない。あいつらも今回は被害者だろう。
だがここまでのスキャンダルだと、絶対大王派全体に悪いイメージが向けられるだろう。フロンズ達も絶対に余計な悪評が立つだろうし、奴らからすると余計なダメージを負う羽目になっているわけだ。骨折り損のくたびれ儲けで負傷を最小限にする羽目になっているわけだろう。
……流石に幸香も速攻で見切りをつけるわけがないだろう。その程度の奴だったら、もっと楽に対応できるし、普通に曹操が手綱を握れていただろう。
ただ、大王派にとってこの事態は大打撃は確定。そしてフロンズ達は大王派の一派閥程度だし、どうあがいても巻き添え確定だろう。
「ここで変な暴走って、あり得るかしら?」
春っちがその辺りを懸念にしているが、俺もベルナもそこは首を横に振る。
「それはないと思うけどな。姉貴達はそこまで馬鹿じゃねえだろ」
「流石にこのタイミングで暴走はしないだろうな。むしろ暴走した連中を片付けてるだろうな」
暴走した連中を積極的に潰さないと同類扱いされるし、暴走するような連中はむしろ潰しておいた方が得。ここで一生懸命治安維持に尽力すれば、その分自分達の潔白も証明できる。
ただ、それをもってしても政治的なダメージは絶大だろう。当分の間は大王派全体が冬に時代だろうし、フロンズ達もとばっちりで苦労するだろう。
……魔王派側でありフロンズ達を警戒している俺達からすれば、それはそれで安心なんだがな。
「変な幸運に恵まれなければ、こっちとしては少しはましなんだろうがな」
ただ、妙な嫌な感じを覚えている。
あいつらだって決して油断できる奴らじゃないし、雑魚じゃない。何かしらのチャンスを掴み取れれば一気に切り返せるだろう。……何よりそういう天運を持っているだろう奴らだからこそ、冥界でのパーティでトップ二人が出会って会話を可能としたわけだしな。
あいつら、俺達の思わぬ方法や出来事で窮地を脱しそうだな、うん。
Other side
シュウマ・バアルは、今この場こそが自分の大一番だと判断する。
ビィディゼ・アバドン、ロイガン・ベルフェゴールといった王の駒使用者。
サイラオーグとマグダランの、バアル宗家の兄弟。
そして息子の一人であるシュウゴがいるこの場こそを、彼は自分の人生を掛けるに値する戦場だと認識していた。
「まさかお前がいるとはな、シュウゴ」
「こっちのセリフだぜ、親父。てっきり臆病風に吹かれて、そのままやられんのかと思ってたがよ」
シュウゴの言いぐさに苦笑しながら、シュウマ・バアルは肩をすくめる。
「バカ息子に言われてはおしまいだな。まぁ、役者が揃っているのはいい事か」
そう語るシュウマは、マグダランとサイラオーグに視線を向け直す。
「さて、宗家における現状の次期当主と本命の次期当主が揃っているのは都合がいい。お二人の腕でも一本切り落としておけば、如何にゼクラム様と言えど周囲が引きずり出すしかないでしょうしな」
「……貴殿がこのようなことをするとはな」
マグダランにそう言われるが、シュウマはあえて気にしない。
むしろゆったりと手を広げ、肩をすくめることを選んだ。
「恨むなら初代殿達を恨んでいただきたい。私の立場では彼らに
「……王の駒やレーティングゲームの不正に、貴殿も関与しているというのか」
悟ったサイラオーグに、シュウマは本心からのため息と共に頷いて答える。
自分で言った通り、シュウマ・バアルは立場上ゼクラム・バアルに逆らえない。
ある程度の意見を具申することはできるだろう。だが彼が本気ですることを命じれば拒否はできないし、したとしても自分達を破滅に導くだけだ。それぐらいのことを悟れるからこそ、シュウマは意見を具申することが許されていると言ってもいい。
そして、王の駒やレーティングゲームの裏取引じみた不正なら尚更だ。断ればお家取り潰しや暗殺が簡単に想定できるほどにシュウマは優秀であり、それだけの優秀さがあるからこそ、ゼクラム達に巻き込まれたと言っても過言ではない。
「ハイリスクハイダメージが確定している抵抗など、やる意味がありません。よしんば潜り抜けたところで、得るものが少ないのなら尚更です。まぁ、そこまで考えられると見抜かれたからこそ、不正に巻き込むことを彼らの選んだのでしょうが」
その結果、シュウマ・バアルは不正に大きく関わることになった。
彼の政治的手腕や根回しは、そういった事前の取り決めを行う際に有効だ。また大王派の核地雷ともとれるこんなものをうかつに起動させる趣味がないこともあり、無理やりにでも取り込めれば使える存在になるとも思われたようだ。結果として、かなり深いところにまで食い込まされてしまっている。
「それで利権を得ておきながら、この状況下で裏切るという事か!」
それはあまりに不義理でないかと、サイラオーグはそういう言う意味で批判的な言葉を投げかける。
だが、シュウマからすればむしろ逆だ。
「それはそうでしょう。利権の十や二十
シュウマからすればそれが本音だ。
確かに、不正に関わったことで得られたものはある。ゼクラムも不正という所業をやらせるに辺り、餌を用意する程度のことはする。能力に見合った行動を命じる代わりに、成果に見合った対価を用意してはくれた。
客観的に見ても、かなりの利権を得られたのは事実だ。各種不正に関わる繋がりは、自分達の表の行動にもプラスがあったことも認めよう。
更にそれらのプラスを、指摘にある程度利用する余地もあった。
ビィディゼ・アバドンが私的に勝敗をコントロールした八百長試合をしているように、その不正の繋がりを持つ者は、それを多少の小遣い稼ぎに使う程度のお目こぼしは貰っている。シュウマがはたしてきた成果を踏まえれば、それだけで下手な貴族の数百年分に匹敵する利益を得ることが可能だろう。
それら全てを踏まえたうえで、シュウマは本心からの感想を言うと決めた。
溜めに溜め込んだ本音の本音を、いい機会だから言ってやろう。
「……まったくもって釣り合わんのだよっ!」
不快感を心の底から込めて、シュウマ・バアルは今までの鬱憤を吐き出した。
「王の駒の不正使用や意図的なゲームの勝敗操作など、知られた瞬間に末代までの恥になる汚点だ! それをたかが利権如きの為に行わせる? 次期魔王を全て我が子に与え、宗家の座をもらえたとしてもやりたくないのだがなぁっ!!」
人前で激昂する。そんなシュウマ・バアルの姿に
「我が一族や大王派の存亡がかかるほど環境が悪いわけでもないのに、利益の為に不正をするなど頭があまりに悪すぎるぞ、それでバアルが務まるかぁっ!!!」
何度も地面を踏みつけ、つい魔力を解き放ち壁すら吹き飛ばす。
仮にも元七十二柱の有力分家。その威力は上級悪魔としても上位に及び、絶大な火力で壁を吹き飛ばす。
そして煙が晴れ、戦士達が呆気に取られて中を覗き込むほどになるまで、シュウマ・バアルは肩で息をしながら苛立ちを隠せていなかった。
「……失礼。晴らす機会に恵まれなかったので、欝憤が出すぎてしまったよ」
額に浮かんだ汗をぬぐいながら、気を取り直して苦笑を浮かべる。
それに呆気にとられた者達だったが、やがてサイラオーグは我に返ると息を吐いた。
「フロンズ達が何も知らなかったのは、貴殿が知らせないように尽力していたからですか」
「当然ですとも。調べれば私がせき止めていると必ず分かる様にしています。……このくだらなさすぎる愚行で、彼らの未来まで汚すのは避けたかった」
そう返したうえで、シュウマ・バアルは微笑みと共に告げる。
「そしてそれも知られてしまいました。こうなれば彼らを民衆の怒りのはけ口とし、マシな勇退を確保しつつ、息子達に降りかかる汚名を減らしたいところです」
そう告げてから、シュウマは呆れた視線をシュウゴに向けた。
「……最も、こんな独断専行は想定外だがね。功を焦って暴走をしないでくれ」
「いいじゃねえかよ、親父? どうせコイツラ口封じすんだろ? 手柄になるから俺にやらせてくれや」
ヘラヘラと気にせず笑うシュウゴにため息をつきながら、シュウマ・バアルは微笑みながら両手を広げる。
「まぁそういうわけなのです。言いふらされると困るから、遠慮なく死んでもらいましょう」
そう語る彼の背後、遠く離れた空高く。
そこに浮かぶは、サンタマリア級汎用母艦。それも三隻。
絶望的な窮地に対し、サイラオーグ達は戦慄すら覚える。
その圧倒的な脅威を背にしたうえで、シュウマ・バアルは宣言する。
「では滅んでくれたまえ。全ては我らが大願成就の為に……ね?」
ガチギレなシュウマ・バアル。
実際問題、宗家どころか重鎮クラスがゴロゴロと不正をしていて参加を命じられれば、分家としては呑むしかない。そういう事も貴族主義だからこそ起こりえるでしょう。
シュウマ・バアルはいわば中間管理職。どうしてもこういったことに振り回される立場だったりします。
次回、転となります!