好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 さて、ちょっとオリジナル部分を入れましたが、ここからがヘルキャット編の本番ともいえるでしょう。


魔性変革編 第十五話 特訓終了!

 

和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、今日で特訓機関も終了だ。

 

 最後の詰めもかねて、俺は今結構長距離でトレーニングの成果を示している。

 

 一旦星辰光の持続時間に限界が来たから、ちょうどいい所に池があったのでそこで休憩。

 

 簡単に習得した異空間の魔法に仕込んでた携帯コンロでお湯を沸かして、ちょっと優雅なティータイムだ。

 

 あ~。これなんかいい感じだ~。ちょっとほっこりする~。

 

 俺は何となく空を見ながら、ついでに買ってたクッキーをちょっと食べて、ふと息を吐く。

 

 冥界の紫色の空にはなれないが、たまに見る分にはいい刺激になるとは思う。同時に、青い空に慣れていた人たちは、こっちが普通になるとどうなるのかとも思う。

 

 インガ姉ちゃんに春っち。まさかザイアに引き取られてから、もう会う機会もないだろうと思った人達とこんなところで会うとは思っていなかった。

 

 あのあと戦後処理とか面倒なこともすることになったので、直接話している時間もなかった。

 

 ……子供の頃から綺麗になったよなぁ。っていうか俺、よくあんな綺麗な女の子達を見てすぐ連想で来たよなぁ。

 

 ……いかんいかん。カズヒ姉さんのとんでもない男の条件にちょっとパニくってるぞ俺。

 

 確かに可愛く成長しててぐっと来たけど、目を閉じてカズヒ姉さんの顔を思い出せば、すぐにカズヒ姉さんに見惚れる程度には俺はカズヒ姉さんにゾッコンだ。こんな状態でそういう真似をしていいわけがないというか、いろんな意味でできるか!!

 

 ええい、イッセーがちょっと羨ましいぞ。最初っからハーレム目指す宣言してるから、そういう心理的抵抗がなさそうな奴だしな。加えて悪魔だからその辺も更に気にする必要ないし、もう完璧に問題ない。むしろ女の方から寄ってきてるだろ。あのモテモテっぷりでなんで気づかない。

 

「いや、本当になんで気付かない?」

 

 なんか醒めた。

 

 本当にアイツ気づいてないっぽいからなぁ。ハーレム作る気あるなら気づけよ馬鹿と言いたい。

 

 ……ま、今日でみんなと合流も可能だろう。

 

 どれぐらい成長したのか、ちょっと気になるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇええええええん! 部長もうやだぁああああああ! これ以上やったら死ぬぅううううううう!!」

 

 もう全力で泣きはらすイッセーの言葉に、俺達は内心で同情する。

 

 ガチでひと月近く修行したが、結局イッセーは禁手には至らなかったらしい。

 

 まあこれはいいだろう。っていうか、一ヶ月山籠もりした程度で禁手になられたら俺達はどうなるんだよと言いたい。

 

「で、総督。ブッチャケ此処は予想の範疇内ですけど……他の方はどんな感じなんですか?」

 

 大泣きするイッセーに同情しながらも、とりあえず俺はその隙に確認するべきところを確認する。

 

 不確定要素というか不安要素というか、気になるところがあるからな。

 

 総督もそこは把握しているのか、眉間を揉みながらため息をついた。

 

「フロンズの奴だろ? 奴さんの横やりのおかげで、朱乃も小猫もそっちにできるならしたいって感情が隠せてねえな。……まぁ、あいつのスタンスが分かったのは不幸中の幸いか」

 

「……スタンス、ねぇ」

 

 カズヒ姉さんがそこに反応して、少しだけど目を細めた。

 

「技術開発による軍事組織全体の質の向上なのは、まあ当然といえば当然ね。ごく一部の戦力だけ向上させても、点の突破力は高められても面の制圧力は高められないもの。……とはいえ、異形の世界ではあまり重視されない点を重視しているのね」

 

 そう、そこだ。

 

 異形社会ってのは、悪魔に限らず量より質が重視されやすい。

 

 そもそもインフレ激しいというか、格の違いが戦闘能力の大小に大きく関わるからな。神や魔王クラスともなれば、一撃で数万の下級クラスを殲滅することも不可能じゃないだろう。

 

 そんなわけだから、必然的にそれぞれの勢力のトップは実力的にも高い存在であることが多い。それが異形という世界の在り方だ。

 

 そこに一石を投じると言っていいのがフロンズのスタンス。しかも質が悪いことに、これができないとは言い難い。

 

 プログライズキー関連技術は確かに強大だし、星辰体技術でも魔王クラスに集団で牙を届かせることができると、寄りにもよって禍の団が証明している。

 

 それを踏まえると、本当にできる可能性はあるっていうかなんというか……。

 

「個人的には、一つぐらいフロンズっていう人の成果を調べてみたいわねぇ。……いっそのこと、承諾してもらうのもいいんじゃないですかぁ?」

 

「思わぬ方向から裏切者が出やがったな。なに、お前フロンズの肩持つのかよ!?」

 

 リーネスからの想わぬ発言に、先生も流石に面食らっている。

 

 リーネスはリーネスで、意外とマジな顔つきになって言っているから尚更なんというか、インパクトが強い。

 

「頑張れば何でもできるなんて言うのは、歴史を振り返れば欺瞞か無知なだけですよぉ。それに、「才能がある」から「才能を使う」ことを強制されるのはいいのかっていう話にもなるじゃないですかぁ。なら、才能に左右されない何かを得られて、それで何かができるのには価値があります」

 

 真剣な言葉に、俺は何も言わずにそれを受け止める。

 

 総督もマジな話だと思ったからか、あえて反論はしないで話を無言で促した。

 

 そして、カズヒ姉さんはどこか遠くを見るように、なんでか胸が苦しいのかと思わせるような表情を浮かべていた。

 

「どれだけ頑張っていたって、分母と分子が釣り合ってない夢は叶わない。才能のあるなしでやりたいことが決まるわけでもない。だからこそ、才能に左右されない可能性を人工的に得られるのは、何かの救いになると思います。……だからこそ、私はプログライズキーや星辰光(それら)を知りたいと思っていますよ、総督」

 

 まっすぐに、リーネスはそうはっきりと言い切った。

 

「……まあ、才能を生かして行きたい人や、頑張って夢を叶えた人を悪く言いたいわけじゃないですけどねぇ」

 

 そんな、最後にちょっとだけ茶化してまとめるところに、俺は何も言えなかった。

 

 リーネスも、何かを抱えて生きているんだろうかと、ふとそう思えてしまってならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーも大変でしたのねぇ。よしよし、いい子いい子」

 

「あの、イッセーは結構スケベですから、その気もないのに胸に顔を埋めさせない方がいいかと思いますよ?」

 

「あら? あなたもそれとなくそんな位置取りになっているけれど?」

 

 ……ヒマリ、シャルロット(相棒)部長()相手にイッセーの頭を取り合うような状況に入るなや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこともありながら、俺達はとあるパーティに参加することになっていた。

 

「え、タンニーンさんって今回のパーティに参加しないのか? 冥界での定番行事って聞いてたんだが」

 

「ほら、贋作抹消連盟が色々やってただろ? 俺のコーチでまだその辺の事後処理が終わってないから、今日は辞退するってさ」

 

 先日のテロの影響は結構後を引いてるな。まあ、同時多発的に十か所以上でテロが勃発してたとか言うからある意味当然か。

 

 今回、俺達は冥界のパーティに出席することになっている。その年の有望な若手悪魔を紹介するパーティとか言ってたけど、部長の表情から殆どお題目でコネ作りとか酒飲んだりするパーティなのかもしれない。今年からは他の勢力からもゲストが来るらしいし、飲みにケーションで中を深めようって感じか?

 

 俺とイッセーは、駒王学園の制服を礼服代わりにして、女性陣や他の男性陣を待っていた。

 

 特に女性陣は時間がかかりそうだな。こういうのは、どうしても女子の方が男子より時間かかるって相場が決まってるし。

 

 なもんで、俺達はこうして時間を潰しているわけだ。

 

 こういう時は、女率が高いと肩身が狭いというか振り回されるというか。ま、綺麗な美少女ぞろいだと考えれば、当然の対価と考えるべきか。

 

 さて、そういえば報告では聞いてなかったことがあったな。イッセーもイッセーで把握しづらい所だけど、もしかしたら聞けるかもな。

 

「それでイッセー。結局フロンズの行ってた新技術、朱乃さんと小猫は使うのか?」

 

 そこがちょっと気になるな。

 

 先生は抵抗があるようだけど、俺としては選択肢の一つとしてはありだろう。

 

 嫌な気分を押し殺して能力を使っても、それが原因で綻びが生まれかねないからな。それに同時併用するっていう在り方も取れるんだし、使うことそのものは問題ないとは思う。

 

 イッセーはイッセーで少し首を捻っているが、どうやら話は聞いてるらしい。

 

「使った後の報告とかレポートとか求められただけみたいだから、朱乃さんも小猫ちゃんも貰ってはいるんだってさ。とりあえず一度使ってみたけど、二人とも「これは最低でも眷属悪魔全員で使うぐらいがいい」って感じの感想だったかな」

 

「そうなのか? まあ、言い方はどうかと思うけど、らしいって感じはするな」

 

 あのフロンズ・フィーニクスは、どうも戦闘能力面は「軍勢規模」で強化する方向っぽいしな。

 

 個人戦力を切って捨ててるわけじゃないようだけど、必要なのは軍事勢力全体に普及させれるかどうかが肝って感じだ。なんというか、面での制圧力に比重が向けられているっていうか。

 

 異形達の世界で言うと、神や魔王クラスは武闘派ならクリーンな核兵器級の攻撃とか余裕で出せるからな。放射能汚染とか長射程とかを考慮しなければ、本当に核兵器より一撃の威力は超えて当然な感じはある。

 

 だからこそ、その圧倒的な質ゆえに数に主眼が置かれにくい所はある。その上で量を維持できる質を重視している以上、人海戦術で神や魔王を理論上打倒可能にしている設計になって入るんだろう。

 

 正直興味があるんだが、どんな感じなんだろうな。

 

「一応ある程度資料が送られてもいたけど、九成の星辰光より弱いのだけは断言できるかな。……確かこんな感じだったような」

 

「あ、新兵器ってそういえば星辰体運用兵器か。……なるほどねぇ」

 

 と、適当な紙にイッセーが書いたのは、その星辰光のステータス。

 

 基準値:D

 発動値:C

 収束性:D

 拡散性:D

 操縦性:C

 付属性:D

 維持性:C

 干渉性:B

 

 なるほど、干渉性を重視した星辰光ってことか。

 

 干渉性ってのは、要は効果範囲内にある能力で制御できるものに干渉する力だ。

 

 ただ高ければいいってものじゃなく、それが普通に存在するかどうかで状況が大きく変わる。要は環境次第でオールレンジ攻撃ができる異能って感じでいえばいいんだろうか。

 

 例えば火を発射する星辰光があるとする。

 

 この場合、干渉性が引くとある意味とても分かりやすい。自分から発生させた火しか発射できないから、ある意味敵は自分だけを警戒できる。

 

 ただし、干渉性の高い奴が山火事の中で使うと話は別だ。燃え盛っているところからも火炎放射ができるから、敵は事実上全方位を警戒しないといけない。

 

 逆に干渉性が高くても、周囲に火がない環境だと意味がない。自分の放った攻撃で延焼を起こすという方法で、少しずつ砲台を作るという必要性がある。多大此れも、豪雨の中とかになると論外と言ってもいい。

 

 とまあ、そんな性質を重視したうえで俺が知っているフロンズのスタンスや朱乃さんや小猫の感想を考えると、読めてきたな。

 

「……たぶん、同じ装備を持った同士が連携することで、直列させての出力強化や並列作業での疑似的な精密制御を行うコンセプトなんだろう。性能を低くする代わりに、全員が同じ星辰光を使えるようにする。……コレ、現物見て方向性を変えたのか受けたのか似たコンセプトだから参考にしたのかは分からないけど、絶対サリュートⅠに影響受けてるだろ」

 

 俺はそうぼやくしかねえ。

 

 つまりこの装備は、誰でもこのレベルの星辰光を使える装備ってことなんだろう。少なくとも、純血にしろ混血にしろ転生にしろ、悪魔なら殆ど全員が装備できるようにしているはずだ。

 

 そして伝え聞いたり推測されたフロンズの性格から考えると、最低でも分隊規模、状況次第では師団規模で運用するのが前提ってわけだな。

 

サリュートⅠ(アレ)、サーゼクス様達でも手古摺ったからなぁ。性能が低い分は数でカバーするって感じか? 確かにあの人、眷属悪魔だけじゃなくて私兵集団とかもう持ってそうだけど」

 

「絶対テスターの本命はそいつらだな。二人はあれだ。「どうせ食客も軍勢に参加するのなら、最初からデータを取って不都合無いようにするべきか」とか、「魔王派にも流通させるんだから、魔王派に恩を売れる形にしよう」とかそんな感じだろ」

 

 イッセーとそんな風に意見を交換してると、もうどう見てもフロンズって奴が「やり手の政治家」にしか思えない。

 

 コンセプトの都合上派閥の垣根を越えて流通してくれないと困るのだから、できる限り恩を売る形で流通させる。そしてどうせ使う側にいるのだから、他種族からの連中もテスターとして積極的に組み込めればいい。

 

 そんな感じなのがとってもよく分かる。しかもデメリットがまずないうえ、対禍の団という大義名分もあるから断る理由がない。

 

 しかも二人からすれば、喉から手が出そうな代物だからな。尚更二人が使用するのは決定事項か。そして朱乃さんがテスターとして使用すれば「姫島」や「バラキエル」という異形社会でもネームバリューのでかい箔が勝手についてくれることにもなりかねない。

 

 別に断られても、他にたくさんテスター候補はいるから得に損もない。どう転んでも大損することの無いやり口には感心するしかないな。

 

「……お、兵藤に九成。お前らも制服で行くのか?」

 

 と、そこに姿を現したのは匙元士郎だったな。

 

「よ、そっちも女子待ちか?」

 

「まあな。……にしても、お互い色々頑張ったみたいだな」

 

 俺にそう返答しながら、お互いになんとなく苦笑する。

 

 イッセーも匙も、体つきががっしりとした感じだ。この二人は荒事絡みの環境に関わっている期間が短いから、その分過酷な特訓の成果が目に見えやすいな。

 

 俺は一応十年近く段階を踏んで軍事訓練を受けてるからな。今更ちょっと特訓した程度で、体つきが急にがっしりつくわけでもない。

 

 最も、特訓の成果はしっかりと掴んでいる。そこから自信はちょっとついてるし、久しぶりに濃密なトレーニング期間を積んだことでそれなりに体幹とかは洗練されたとは思っている。

 

 だからこそ匙も俺も含めてそう言ったんだろうな。……それが分かるぐらいには成長したってことなんだろう。

 

「大変だなイッセー。こりゃレーティングゲームは苦戦しそうだぞ?」

 

「いやいや敗けねえよ!? っていうか俺はドラゴン二人に徹底的に鍛えられたからな!?」

 

 イッセーが慌ててそう反論するけど、言われて思い返すと本当に酷いな。

 

 少なくとも、荒事絡みの世界に足を踏み入れて半年も経ってない奴が受けるトレーニングじゃない。どう考えてもレンジャー訓練とかの方がまだマシだろう。

 

 当人もサバイバリティがめっちゃ高まっているみたいだし。そこは心から同情するし、慌てて止めて最低限の装備を渡したカズヒ姉さんは厳しくも優しかった。

 

「……サバイバルキットの存在は、厳しいカズヒらしいけど本当にありがたかった」

 

「……大変だな、お前も」

 

「……そこは本当に同感」

 

 遠い目をするイッセーに、匙も俺も遠い目に合う。

 

 ちょっと気を取り直すか。

 

「で、確か明日か明後日には部長と会長でレーティングゲームだったな。正直ちょっと楽しみというか、どんな戦いになるのか期待してる」

 

 俺は素直にそう言った。

 

 まあぶっちゃけると、シトリー眷属の勝算は薄いだろう。

 

 何せグレモリー眷属は一味違う。今代の赤龍帝に今代のデュランダル使いに堕天使最高幹部の娘やら希少かつ強大な猫又の上位種とかいう、当人の信条すら無視すればこの時点で壮大なラインナップ。それ以外のメンツも軒並みレアキャラというかイレギュラーというか、とにかくぶっ飛んだメンツだ。

 

 将来性を含めれば、眷属悪魔全体の才能においてはトップクラスだろう。眷属全員を上級悪魔の末裔とかで構成しない限り、これを超えることはまずできない。

 

 というか、俺も下馬評というか会合前の戦力的な序列を見ているから尚更言える。才能だけでなく現状の成果や数値変換できる戦闘能力込みで、明確に序列が設定されている。

 

 上から順番にサイラオーグ・バアル、ヴィール・アガレス、イシロ・グラシャラボラス、リアス・グレモリー、シーグヴァイラ・アガレス、ノア・ベリアル、フロンズ・フィーニクス、ディオドラ・アスタロト、ゼファードル・グラシャラボラス、ソーナ・シトリーという感じだ。

 

 上から四番目と一番下となると、どっちが有利かなんて決まり切っている。代理でしかないゼファードルが会長より上なのはちょっと意外だが、なんでも最近スカウトした眷属の実力が飛びぬけているらしい。それが原因で会長がドベになっている。

 

 ただし、だから必ず負けるとは言い難い。

 

 何せ会長は部長の幼馴染で、ある意味グレモリー眷属の活躍をかなり近くで見てきた人だ。これまで後塵を拝してきたからこそ、その足元を掬う戦術を思い描ける可能性がある。

 

「言っとくけど、俺達は負ける気なんてないからな」

 

 匙はそうはっきりと告げる。

 

「会長は本気で誰でも通える学園を冥界に作りたいと思っている。だけどそれはフロンズの言う冥界の発展以上に、冥界にいる子供達のことを思っているからだ。フロンズに完全に主導権を握られるわけにはいかないんだよ」

 

 そう告げ、そして匙は自分の両手を見る。

 

「俺も、正直教師になりたいって思ってる。会長とできちゃった結婚をしたいって夢は兵藤に語ったと思うけど、俺の死んだ両親は教育関係だから、そっちも夢になってるんだ」

 

 ……そんな過去があったのか。

 

「その年で両親を亡くすってのはきついな。俺も経験あるから、少しは分かると思う」

 

 まあ、状況が違うから全部分かるなんて言えないけどな。

 

 それでも、その痛みを少しぐらいは分かると思いたい。

 

 匙はそこで少し寂しげに笑うけど、すぐに気分を切り替えたのか真っ直ぐに俺達を見る。

 

「だけど、冥界は日本とは比べ物にならないぐらい教育が進んでない。会長が日本に来たのは、人間界の先進国が持つ進んだ教育文化を学ぶ為でもある。俺も、それを支えたい」

 

 そして匙は拳を握ると、真っ直ぐにイッセーに突き出した。

 

「言っとくが、手加減してもらいたいわけじゃねえからな。むしろそんな真似したら許さねえぞ?」

 

「……あったりまえだ! 部長に限って親友との戦いで変な手加減なんて失礼な真似はしねえし、だから俺も部長を勝たせる為に全力で行くさ! 勝つのは俺だ」

 

「いいや俺だね」

 

 そして真っ向からにやりと笑いながら、お互いに戦意をぶつけ合い―

 

「それにここ一か月部長ともアーシアともお風呂どころか別途にも入ってないんだ! 情けない真似したら更に入れなくなるから尚更頑張るさ!」

 

「……………ふぅっ」

 

 ―余計な一言で、匙が崩れ落ちた。

 

「お前は本当に馬鹿なんだな!? もう行くところまで言ってるじゃねえか!? 匙、匙しっかりしろ!」

 

「お風呂……? ……ベッド? え、おま、何それ?」

 

 顔が真っ青通り越して真っ白だ!? これちょっとショック死しかけてないか!?

 

 試合前に番外で精神攻撃するなよな!? いや、匙の過去話も精神攻撃じみてるけど!!

 

 っていうかなんで俺に嫉妬の視線向けながら涙流してんだ!? 病気か、いやちょっとマジで。

 

「…‥なんで、そこまで言われなきゃならねえんだよ! モテない俺に対する皮肉か!?」

 

「とりあえずお前は脳の病院に行け! 非童貞の俺ですら羨みそうな境遇だろが! もうハーレム王なってるようなもんだろうが!?」

 

「どういう嫌味だコラ!! モテたいのに可愛がられたり兄のように慕われているだけの俺の生殺しの前で、今お前童貞じゃないって言ったのか、あぁん!?」

 

「むしろ童貞な方がおかしいだろうが!? どんな途中式を入れたらそんな状態でそんな結論になる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひどうてい……おふろ……べっど……たかみ……とぉぃ~」

 

 

 

 

 

 

 

「「って匙ぃいいいいいいい!?」」

 

 やばい、思わずヒートアップして匙にとどめ刺してしまった。

 

 泡吹いて痙攣までしてやがる!? 脈まで浅いぞ!?

 

 ちょ、冗談抜きでやばい!? 強心剤、強心剤!?

 

「キュウタぁああああああ!? マジで来てくれぇえええええ!? っていうかここがグレモリーの本家なら、常駐のお医者様とかいないのか!? 応急処置するから探せイッセー!」

 

「お、おう! 待ってろ匙、今人を呼んでくるから!!」

 

「おっぱ……できちゃ……どこに……?」

 

 白目をむくな匙ぃいいいいいい! 今イッセーが人を連れてくるからしっかりしろぉおおおお!?

 

 と、とにかく心臓マッサージ! あと人工呼吸用のマスクマスク!?

 

 

 

 

 

 

 

 おかげで出発までに十分ほど遅れたけど、その程度で済んで本当に良かったと思う。

 




 残念ながらタンニーンは不参加となります。というより、今後にあたってタンニーンを投入すると、パワーバランスが大幅に変化することから何かがちょっとバランス調整が難しくなることを踏まえました。

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