好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 ……いろいろと大量にネタを思いついてしまい、執筆速度が低下中。

 いや、作品書いている方々なら理解してくれる人も数割はいるんじゃないでしょうか、この手の悩み。


魔性変革編 十八話 禍の団、強襲開始

 

 Other Side

 

 カズヒ・シチャースチエは今すぐにでも突貫することを視野に入れて腰を落としていた。

 

 全ての筋肉と骨格を加速の為に使い、そして幸香に突貫することを、本能が即決で選択していた。

 

 見逃すわけにはいかない。黙って見ているなどあり得ない。彼女の暴虐を放置するなど、自分の中に選択肢として存在してはならない。

 

 その絶大なまでの強い本能を、しかしカズヒは強靭な理性で強引に押しとどめる。

 

「……ぐ……っ」

 

 突貫したい。今すぐにでも彼女を止めたい。

 

 その強い衝動を、しかし「状況的に悪手である」という理性の判断がギリギリのところで推しとどめていた。

 

 そしてその均衡を、肩に置かれた手が理性側に引きとどめる。

 

 その力が籠った、しかしこちらを気遣ってくれる手の温かさに理性が増幅される。

 

 そして一呼吸おいてカズヒがちらりと視線を向ければ、そこにはこちらを気づかわし気に見つめているリーネスの姿があった。

 

「……ごめんなさい。手間をかけたわね」

 

「いいわよぉ。こっちも、ちょっと冷静じゃないものぉ」

 

 短い言葉で通じ合い、二人は様子見という選択肢をとる。

 

 そしてまた、目の前で動きが見え始める。

 

「……まさか、このタイミングで姿を現すとは思わなかったよ、シャルバ・ベルゼブブ」

 

「うっわ~。すっごく面倒くさいのが来ちゃったなぁもぅ」

 

「カテレアちゃん! まさかとは思ってたけど、なんでこんなことを!?」

 

 サーゼクス・ルシファー。ファルビウム・アスモデウス。セラフォルー・レヴィアタン。

 

 現魔王の三人が、旧魔王血族の三人と向き合った。

 

 その三人の姿に、旧魔王血族の見せる表情は差異はあれど同種。

 

 心底から屈辱と憤怒と憎悪が隠せていない。いっそ清々しいほどに分かり易い敵意を三人とも浮かべている。

 

「アジュカの奴はいないのか。まあいい、こちらもこの場でお前達を殺せるとは思ってないのでな」

 

「忌々しいなファルビウム。偽物の分際で、よくもまあ真なる魔王を前にそのだらしない顔を見せられるものだ」

 

「どうしてとは不愉快ですね、セラフォルー。私が貴女のような簒奪者に敵意を持ってないと思っているのですか?」

 

 三者三様に敵意を見せつけながら、結果的に誰もが息を呑む緊張状態を見せつける。

 

 今の悪魔の最強格であり盟主でもある、魔王を襲名した三人。

 

 かつての魔王の血を継いだ、旧魔王派最強かつ主導者の三人。

 

 そのにらみ合いは、悪魔という種族にとってあまりにも介入を躊躇させる雰囲気を作り出している。

 

 そんな旧魔王の末裔達の後ろで九条がさらりとパーティの料理をつまみ食いして舌鼓を打っているが、これを指摘する蛮勇の持ち主はいなかった。

 

 ついでにフロンズ達はメモを取るだけでなく、会話の内容が何かの参考になるとでも思っているのか録音の術式どころかレコーダーすら取り出している。これも指摘する余裕どころかそもそも気づく余裕すらない者達が殆どだ。

 

 そんな緊張状態が、一分かそれとも数十分続いたのか。

 

 その均衡を崩すかのように、のんきな足音が響き渡った。

 

「……なんじゃなんじゃ。老いぼれを態々こんなところに呼びつけて起きながら、のんきに下らぬ喧嘩をしているとは残念な者達じゃのぉ」

 

 その言葉に、不敬という叱責は飛ばなかった。

 

 何故ならば、その言葉を放ったのはある意味でサーゼクス達と同格。戦闘能力に限定すれば、それこそサーゼクス以外のどの悪魔も敵わないだろう存在が放った言葉だったのだから。

 

 それをよく知るシャルバ・ベルゼブブは、忌々しそうに舌打ちする。

 

「アースガルズの主神、オーディンか。サーゼクス、悪魔の誇りを忘れこのような者まで呼びつけるとは……恥を知れ、サーゼクス」

 

 これまで以上に殺意を込めた目でサーゼクスを睨むシャルバだが、オーディンはそれを見て愉快なものを見たといわんばかりの表情を見せる。

 

「ほっほっほ。主神を前にサーゼクスの方に意識を向けるとは、禍の団とは馬鹿ばかりで構成されておるようじゃのぉ?」

 

 ……盛大な挑発に悪魔の何人かが卒倒しかけるが、しかし平然としている者も何人かいる。

 

 そのうちの一人である幸香は、味が気に入ったのかグラスのワインを一気飲みしたうえで未開封のボトルをちゃっかり何本か抱え込みながら肩をすくめる。

 

「当然であろう? 賢者は賢しら故に世界を勧めることに二の足を踏んでいるのがこの世界よ。ならば世界を大きく変革させる者は、大馬鹿者であることが当然の結論であろう?」

 

 タッパーに気に入った料理を詰め込むという真似までしながら、オーディンをろくに見ずに言い返すという、豪胆を通り越して正気を疑う真似をしながら、幸香は遠慮なく言い切った。

 

 その態度にオーディンも少し目を丸くするが、幸香は気にも留めていない。

 

 今この場でいきなり攻撃をする可能性は低いと踏んでいるからなのだろうが、それは弩級の馬鹿だからか大物だからなのか。どちらにせよ、ただ者ができることでは断じてない。

 

「何百年間も奪われた信仰を取り戻す策も取らず、決定打という和平に屈してそのまま勝ち馬に乗るような強かな真似しかできぬ者とは違うのだよ、妾達禍の団も、彼ら三大勢力もな」

 

「……言わせておけばっ! 主神の前でよくもそこまで無礼な真似を!?」

 

 あまりの物言いにオーディンの近くにいた女性が激昂するが、オーディンは手を広げてそれを制する。

 

「構わん構わん。よく見るまでもなく可愛いいおなごじゃしのぉ。ちょっとぐらいは大目に見なければ神の品格が疑われるわい」

 

「オーディン様、此処はむしろ厳格な対応をするべきところです! というより、相手はテロリストなんですから鼻の下を伸ばさないでください! そちらの方が品格を疑われますよ!?」

 

 この状況下である意味真っ当なツッコミを入れるその女性に対して、オーディンは実につまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「そんな固いから未だに処女なんじゃ、おぬしは」

 

 その瞬間、女性は盛大に崩れ落ちながら大粒の涙をこぼした。

 

「処女は関係ないじゃなぁあああああっい! 誰が好きで処女だと思ってるんですか!? 私も卒業したいのにぃいいいいい!?」

 

 まさかの大泣きだった。

 

 お前ら空気読めよ、という無言の批判がそこら中から漂うが、あまりの泣きっぷりに指摘する者が別の意味でいない。

 

 というより、シャルバ達に至っては馬鹿を見るような目でオーディンとその女性を見ている。

 

「……状況が読めてないのかこの馬鹿どもは。これが神話体系の者達とは嘆かわしい」

 

 反論が非常に難しいと、殆どの者が思った。

 

「しっかりするがよい、処女を卒業したいというのならばそれなりの努力をせい。人間、食にしろ酒にしろ娯楽にしろ楽しむべきなのだ。折角美女に生まれたのなら、その美貌で男を誘う娼婦にならんでどうするのだ?」

 

「誰がそんな方法で処女捨てたいなんて言いましたか!? っていうかテロリストに真面目に悩み相談したつもりなんてないし、そもそも考えなるなぁああああ!」

 

 そして幸香は盛大に肩を叩いて犯罪組織らしい思考でアドバイスをして、その女性から魔法攻撃を放たれた。

 

 新規神滅具候補でさらりと防いでいるが、普通に並みの上級悪魔を殺しかねない攻撃である。

 

 主神のお付きとしてくるだけあって、ただの残念な美人ではないらしい。その事実に、気が緩んでいた者達は少し引き締められた。

 

 そしてその攻撃を防ぎながらも、パーティの料理を物色する幸香は軽く肩をすくめる。

 

「まあ、もう少し緊張感を持つべきではあるのだろうな。……既にこの地域一帯、我らの手の者が攻撃作戦を開始しているのには気づいた方がよいぞ?」

 

 お前が緊張感を持てという、盛大なツッコミが入れられることはなかった。

 

 何故ならその内容は、更なる戦力が仕掛けに来ているという事実を示している。

 

 必然警戒の色は濃くなり、そしてそれが事実であるという報告がまさにそのタイミングで届き始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腐っても現魔王政権側の重役達が何人も来ているパーティ会場であり、そんなところを警備していないなどということはあり得ない。

 

 むしろ最上級悪魔クラスすらいるレベルで警備は厳重であり、規模においても練度においても優れているというほかない勢力だった。

 

 だが、この事態においては相手が悪いというほかない。その事実を痛感して、警備部隊の一つは奥歯が砕けそうになるほど歯を食いしばっていた。

 

 彼らがいる場所は、ホテルから少し出た当たりの森の中。しかし彼らが入ろうとしてできないのは、そこが空間的に隔絶しているという理由によるものである。

 

 SSランク級はぐれ悪魔である黒歌は、その情報だけで凶悪な存在だということがすぐに分かる。最上級悪魔に匹敵する力を持つものなのだから、警戒するのは当然だ。

 

 だが、その力は想像を更に上回っている。

 

 すでに空間に干渉する術式まで習得しているのは想定外だ。おかげで今もってリアス・グレモリーの元に救援を送ることが困難になっている。

 

 グレモリー次期当主の窮地に対して、現地の警備班が役に立たないなど醜態でしかない。彼らにとってもグレモリー次期当主の価値が高いことを踏まえれば、これは死活問題といってもよかった。

 

「くそ! 増援はまだか!?」

 

「それが、警備本部と連絡が繋がりません! どうも何か大きなトラブルが起こっているようでして……」

 

「冗談だろ? リアス様が今窮地だっていうのに、それ以上に何が起きたっていうんだ!?」

 

 混乱状態だった警備班だったが、しかしある男が天を仰いだ時、目を見開いた。

 

「……おい」

 

「くそ! 相手がSSランク級のはぐれ悪魔では、いくらグレモリー次期当主と言っても若手では荷が重いぞ!?」

 

「こうなったら、誰か、走って増援を読んで来い!!」

 

「……おい! あれを見ろ!!」

 

 大声を上げるその男に、全員で混乱しながらも打開策を考慮していた者達が怪訝な顔で振り向いた。

 

 何を驚いているのかと、その視線をたどり―

 

「…………は?」

 

 ―その呆けた声が、誰もの感想だった。

 

 見れば、空の彼方に巨大な物体が軽く十は浮かんでいる。

 

 細長い楕円形の球体、その下に船のように出っ張った物体が見える。

 

 そんな物体の群れを見て、誰もが一瞬状況を忘れたのは無理もあるまい。

 

 自由に飛翔を可能とし、更に異能によって空を飛ぶ船をそのまま作ることも可能な異形達にとって、それはあまりに馴染みがない物だからだ。

 

「せ、潜水艦ってのに似てないか?」

 

「いや、上下逆だぞそれ。っていうか、あれ空中だし」

 

「あ、人間界の本で見たことあるぞ? あれ確か飛行船って奴だ」

 

「余計になんで冥界(こんなところ)にあんだ―」

 

 その瞬間、飛行船から砲撃が放たれた。

 

 そしてホテルに張られた結界と激突し、大きな衝撃が発生する。

 

 その光景に、呆気に取られるのは僅かな時間だった。

 

 その僅かな時間で一気に冷静になれたのは、明らかに攻撃であったことが大きい。

 

 非常時に対応する為に訓練を積んできたからこそ、非常時と理解できたからこそ即座に冷静さを取り戻し始める。それだけの優秀さが彼らにはあった。

 

 だからこそ、敵の存在を察知することもできた。

 

「……っ!」

 

「今度はなんだ―」

 

 その瞬間、彼らが防壁を張ることができたのは僥倖だったのだろう。

 

 離れた攻撃の威力もさほど出なかったことも大きい。

 

 口径40mmの榴弾の嵐。秒間20発ほどのそれを、彼らは結界で防ぎきる。

 

 そして同時に彼らは理解する。

 

 これはいわゆる制圧射撃。本命を補佐するための足止めだと。

 

「手が空いているやつは全周警戒! 敵がこっちに来ることを前提に警戒しろ!」

 

「……っていうか来たぞ!」

 

 その言葉共に、森から飛び出るは二つの巨大な人型。

 

 やけに張り出た背部が特徴的な5m未満のそれは、しかしその外見故に彼らに狼狽と驚愕を与える。

 

 その鋼は、駒王会談において最も猛威を振るった存在に酷似していた。

 

 そう、現魔王サーゼクス、天使長ミカエル、堕天使総督アザゼルの三人を、高々40機未満で苦戦に追い込んだ、文明の猛威。

 

 堕天使総督アザゼルの片腕を断ち切り、それぞれが伏せ札を切らねばその程度では済まない被害を与えただろう、鋼の魔星。

 

「……サリュート、だとぉ!?」

 

 その鋼の猛威が、今冥界を蹂躙するべく攻撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして彼らをおとりとして、本命の部隊が動き出す。

 

「総員、これより敵拠点内部に潜入。可能な限り多種多様な者達と戦い、今後の戦闘の為のデータを獲得しろ」

 

 そう告げる指揮官の声に従い、それぞれが八人前後で動く者達は、特殊なベルトと装甲を身に着けていた。

 

 プログライズキーを使用して変身する特殊強化戦士レイダー。その数は数百人にも及んでいる。

 

 彼らの任務は敵の殲滅ではなく、戦闘そのもの。

 

 転生悪魔という制度により、多種多様な種族が存在する今の悪魔社会。それを利用し、多種多様な異形との実践データを会得することで、今後の戦闘の為の教導プランを練る為の布石こそが今回の目的。

 

 故に、彼らは動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 危なかった。心臓がバクバク言ってるぞ。

 

 視界の隅に移った謎の飛行船団。そこからいきなり砲撃がぶっ飛ばされた時は、死んだかと思った。

 

 咄嗟にインガ姉ちゃんを抱き寄せながら伏せ、星辰光を出して防壁まで張ったが、先に結界にぶつかって爆発したのでちょっといらん手間だったな。

 

「ぶ、ぶ、無事かインガ姉ちゃん!」

 

「……‥え、あ、大丈夫だよ!? っていうか和地君こそ大丈夫かい!?」

 

 慌てて頷きながらこっちを心配するインガ姉ちゃんは、昔見たボーイッシュな口調だった。

 

 それに安心すると同時に、ちょっと不安にもなってしまう。

 

 やっぱり無理をしているというか、何かあるんじゃないかと思ってしまう。

 

 真剣に、件の修道院襲撃事件とか調べてみた方がいいのかもしれないな。

 

 だけど、今はそこじゃない。

 

「とりあえず、俺から離れないでくれよインガ姉ちゃん」

 

『ショットライザー』

 

『SAVE』

 

 俺はすぐに変身できるように準備しながら、ガラス張りの窓を確認する。

 

 下の方でもドッカンバッコン音が響いているし、飛行船団は今でも何発もぶっ放している。

 

 これはちょっと、やばいことになっているな。

 

「……おい! やっぱり何人かいたぞ!?」

 

「え、なにこれ!? 映画の撮影じゃないわよね!?」

 

「大丈夫か君達! 早く避難するんだ!」

 

「なんだなんだぁ!? 酒飲みすぎてちょっと悪酔いしてるってのに……うぇっぷ」

 

「うそ、テロなの!? マスター達は大丈夫なの!?」

 

「クソッタレ! 三日ぶりのお通じだってのに!!」

 

 警備員が廊下から走ってくるは、トイレから慌てて出てくる男女とかで、ちょっとごった返し始めてるな此。

 

 まあ、それはともかく―

 

「カズヒ姉さん達やイッセー達は大丈夫か? ……いや」

 

 ―まずやるべきはそこではない。

 

 姉さん達は、その場でやるべきことをちゃんとやれる人だ。だから俺もやるべきことをまずやろう。

 

 まずは避難とその手伝い! 他の行動はそのあとだ!

 

「負傷者はいますか!? 俺が背負います!!」

 

「あ、私もやるよ! その、いたらですけど―」

 

 インガ姉ちゃんも俺に続き、警備員達もこっちに意識を向けてくれる。

 

「君達は……いや、助かる! 何人か足を挫いているから、手伝ってやってくれ!」

 

 ……やることはきちんとやっておく。だから、無事にしのいでくれよ、みんな!

 




 禍の団の新兵器てんこ盛り回ともいえるお話でした。

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