好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 と、そろそろヘルキャット編の戦闘も終盤となっていきますです、ハイ。


魔性変革編 第二十五話 後に続く者もまた、神の子に並ぶものなれば

和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……よし。じゃあ一気に下に置いたあいつをぶちのめせ」

 

 そういうベルナに狙いをかけて、俺は真上から強襲を仕掛ける。

 

 色々状況は複雑だけど、おそらく俺が真っ向から挑むべき相手はベルナだと、心から思っているからこその行動だ。

 

 相手がテロリストだからって、問答無用で皆殺しってのは空かない。のっぴきならない事情や、洗脳に近い精神状態だってあると思うから。救える命に手を差し伸べたいと、思っているから鍛えているんだしな。

 

 だからこそ、俺は結界を蹴って飛び掛かる。

 

「ベルナ・ガルアルエル!」

 

「―なっ……あぁっ!?」

 

 そのまま体当たりをかますと、俺はベルナと取っ組み合いになる。

 

 拳が当たるけど結構痛いな。神器主体の人間が使う生身じゃないだろコレ!

 

 それはともかく組み付きながら拳を躱しつつ、俺は本心からの言葉を投げかける。

 

「……お前だって薄々気づいているんじゃないか!? 自分の姉の危険性を!」

 

「うるせえよ! 何が分かるって―」

 

 ベルナがそう反論するのは当然だが、俺だってはっきりと言えることはある。

 

「分かるさ! 俺はああいった目を何度も見てきた!」

 

 吠えるだけの理由はある。あの目を俺は何度も見てきた。

 

 愛していると、敬意を持っているという、あの手の目を俺なザイアで何度も見てきた。

 

 あいつらは本当に家族のように思っているつもりなんだろう。もしかすると、本当にああいう風に家族を愛しているのかもしれない。

 

 だけど―ッ

 

「あの目はお前を人として見てない。少なくとも、普通の人が人に対して向ける愛とは異なってる!!」

 

 それだけは言える。断言できる。

 

 あいつらの俺達に向ける愛は、絶対に人間が真っ当に人間に向ける愛じゃない。

 

 明らかに異常な行動や真似をして、それが愛だと本気で思っている。そういう連中の目を、俺はずっと見てきたから知っている。

 

 あいつらにとってはそれが本当の愛なのかもしれない。そういう愛し方で満足できる奴もいるのかもしれない。

 

 それでも、それでも……っ

 

「それを分かって、それでいいと思えない奴が! そこに甘んじるなんて認められないんだよ、俺は!!」

 

 ベルナ(お前)が見せたその目は、決してそんな奴の目じゃないって思ったから。

 

 涙の意味を変えたいと思っているから。悲しみで生まれようと悦びで流してやりたいから。あの日の嘆きで生まれた涙が、笑顔と喜びで流れたことを、人生の意味としているからこそ。

 

 あんな目は黙ってみてられないって思っているんだよ。

 

「……うるせぇよ!」

 

 しかし俺の懐で、連続して水流が叩き付けられる。

 

 それで引きはがされた俺は、即座に結界を足場に着地する。

 

 これが、床を粉砕されてなお俺が対応できた理由。天井に飛び上がって真上からベルナを強襲できた理由。アザゼル先生が俺に示した、俺の星辰光の新たな可能性。

 

 星辰光で作られた障壁を、床に対して平行に設置する。それによって足場を形成することで、俺に空中での対応能力を与える運用方法。

 

 足場のもろさを踏まえても、踏ん張るということができるのは比較的有効。障壁を利用した変則的な軌道も取りやすく、応用の余地はまだまだある。

 

 それで落下状態から止まった俺に対して、ベルナもまた空中に滞空する。

 

 問題はその方法だ。

 

 魔法を利用したわけじゃない。ワイヤーとかそういったものでもない。ましてや独立具現型神器を使ったわけでもない。

 

 その理由を見て、俺は目を見開いた。

 

「悪魔の……翼?」

 

「ああ。あたしは悪魔の先祖返り、ベルナ・ガルアルエルだ」

 

 そう気だるげに言いながら、ベルナはこっちに敵意を向ける。

 

「英雄派の異端児舐めるなよ? こっちはなぁ、腹くくってるからテロなんてやってるんだよ!!」

 

 あ、まずい。

 

 一瞬狼狽して隙が生まれた。ベルナの攻撃を避け切れな―

 

「創生せよ、天に描いた星辰を―――我らは煌めく流れ星」

 

 その起動音声(ランゲージ)と共に、俺は横から搔っ攫われる。

 

 急加速のGが掛けられる方向を見れば、そこには歯を食いしばったインガ姉ちゃんの姿があった。

 

 助けに来て、くれたのか?

 

「……ぼさっとしない! 撃って!」

 

 その言葉に、俺はハッとなってショットライザーを構える。

 

『SAVE』

 

 正直な話、ベルナは説得するべきだと思う。

 

 だけど、それに拘ってインガ姉ちゃんや一般市民を死なせるのも言語道断だ。

 

 だからこそ、俺は歯を食いしばって引き金を振り絞る。

 

『セイヴィングブラスト』

 

 その一撃を、苦い想いと共にぶっ放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 くっそぉおおおおお! 思った以上に手こずってる! 手こずってる!!

 

『これはあれですね。……体調を強制的に悪化させられてますね』

 

『というよりはだ。おそらく強制的に同調されているのだろうさ。そこを繋ぎとして仙術を喰らってると考えるべきだ』

 

 シャルロットとドライグがそう推測してくれるけど、俺は正直結構きつい!

 

 黒歌が放った毒霧には耐えられてたけど、これは結構きついって。

 

 これが仙術の影響か。これでもだいぶましだとは思うけど、それでもきついって直撃喰らったらどうなるんだよ!?

 

「あっははは! やっぱりヴァーリに比べたらまだまだにゃん♪ 今なら真っ向からでも勝てるんじゃないかしら!」

 

 そう言いながら、黒歌は俺の攻撃を避けまくってこっちに攻撃を叩き込んでくる。

 

 くそ! 黒歌の動きも明らかに高まってるっていうか、あいつからどう考えても赤龍帝のオーラまで見えてるんだけど!

 

 これは本当にドライグの推測が当たってるのか。だとすると、長期戦はいろんな意味で不味い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵藤一誠の懸念は的中していた。

 

 黒歌の星辰光は生態同調式強化能力。更に仙術を利用した応用による、敵の弱体化を直接行使にある。

 

 黒歌

 恩讐報復呪詛千万、禁断の黒猫(フォビドゥン=カース・キャスパリーグ)

基準値:D

発動値:C

収束性:D

拡散性:C

操縦性:D

付属性:A

維持性:A

干渉性:C

 

 黒歌の星辰光は本来、味方と同調することによる自他の相互強化で使うものであり、そのレベルは低い。

 

 相互に少しずつ強化するといった程度でしかなく、ステータスに反して性能は低い部類に値する。しかしそれが強大なのは、黒歌の持つ仙術にこそある。

 

 同調をバイパスとすることで仙術を発動させることにより、敵から力をより強大に受け取り、同時に少しずつ敵を弱体化させることが、彼女が編み出した星の最大運用。

 

 付属性と維持性が共に極めて優秀であるがゆえに、一度発動すれば解除はほぼ困難。ゆえにこの技は決まれば、長期戦でなら勝率を大幅に上げるのだ。

 

 短期決戦に持ち込まれなければ、真っ向からの模擬戦でヴァーリにすら届いた切り札と言える。もちろん限度はあり、収束性と拡散性の問題から距離を取られるなり絶大な星辰光で防御されるという余地はあるが、この状況なら問題は無い。

 

 森林という地域でなら、猫という種族特性の差が有利に働く。反射速度と敏捷性なら十分勝負になり、戦術や妖術を利用すれば、相手にこちらの位置を感知させづらく、相手の位置を感知することでアドバンテージを絶大に高めることができる。

 

 そして今の兵藤一誠では星辰光の強制解除は困難だ。星辰光もなければ、そういった術式の知識もないのだから。

 

 故に勝つ。当然勝てる。

 

 目を曇らせた妹を連れ帰る程度のことは十分できる。

 

 そう確信したその時、視界の隅に映るものがあった。

 

「………は?」

 

 その光景に、黒歌は一瞬絶句して目を奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 激痛に崩れ落ちながら、ヴァーリは血を吐いた。

 

 油断していたつもりはないが、敵は予想の上を行った。

 

 全力の攻撃により、ヴァーリはリュシオンの両腕を切り落とした。

 

 体術を基本とするリュシオンにとって、これは間違いなく大きなディスアドバンテージだったが、しかしリュシオンはそんなことを一切頓着しなかった。

 

 彼は文字通り切り落とされた瞬間に、両手ではなく口元に龍殺しの聖剣を創造し、それを加えてこちらを深く切り裂いたのだ。

 

 躊躇も動揺もあったが、それは本当にごく僅かだった。そしてそれ以上に体術使いの両手を切り落とせたという油断が生まれて隙だらけだと、文字通り一瞬で察知して攻撃を叩き込んだ。

 

 ここまで合理的な判断で衝動を制御できる者もそうはいない。どれほどの修羅場を潜り抜けたのか分からないほど、リュシオンは両手を吹き飛ばされた激痛を意にも介さなかった。

 

「……俺の勝ちだ。とはいえ、このままだと失血死だね」

 

「だろうね。そろそろ止血をした方がいいんじゃないかい?」

 

 ここまで滾る接戦は珍しい。

 

 だからこそ、こんなところでリュシオンに死んでほしくない。

 

 そう思っての助言のつもりだったが、リュシオンは静かに首を振った。

 

「いや、その止血より治した方が早い」

 

 そう告げるリュシオンは、両腕を切り落とされているとは思えないほど平然として、告げる。

 

非禁手化(カオス・シール)

 

 その言葉と共に、絶大な神器の力が明らかに下がる。

 

 ありえない、明らかに禁手にすら至っているオーラが、禁手を解除したというレベルでないほどに下がっている。

 

 それの目を見開くヴァーリの前で、リュシオンは一呼吸だけ入れると、即座に新たに告げる。

 

禁手化(バランス・ブレイク)再生の超人類(リジェネレイト・エボリューション)

 

 その瞬間、白い素粒子による光と共に、両腕が元通りに復元される。

 

 ありえない速度の修復だった。ともすれば、フェニックスの上級悪魔すら超える速度の修復だ。

 

 更にありえないことに、切り落とされた両腕はそのまま残っている。禁手で作られた龍殺しの聖剣は消滅し始めているのに、だ。

 

「それは、いったい……?」

 

 唖然とするヴァーリの前で、リュシオンは苦笑を返した。

 

「ああ、禁手を消して別のに至ったからね。元々龍殺の超聖剣(ゲオルギウス・カレドヴルッフ)は持続させてないと維持できないんだけど、禁手すらなくなったんだからまあ仕方がないかな?」

 

 違う。そうではない。むしろそんなどころではない。

 

 禁手を解除したのではなく消した。更に、全く異なる禁手を展開した。

 

 これは禁手を二つ持って切り替えているわけではない。それはそれで異常だが、これはそんな次元ではない。

 

 これは、この異常はそんなものではない。

 

「禁手という位階をなかったことにして、別の形で禁手に至ったのか?」

 

「そんなおかしなことじゃないだろう?」

 

 平然と、唖然として告げた言葉を肯定された。

 

「禁手には世界の均衡を崩す意思の力が必要だ。なら逆に考えれば、真逆である世界の崩壊を拒絶する意思があれば禁手の到達をなかったことにすることもできる。そう考えるべきだろう?」

 

 前代未聞の発想と所業を、彼はなんてことが無いように告げる。

 

「その後は、別の方向性で世界の均衡を崩す意思を持てば別の禁手に至ることもできる。特に再生の超人類は俺が初めて至った禁手だからね。何度も至り直してるから、当然これぐらいはできるさ」

 

 そんな恐ろしいことを、目の前の男は当たり前のように告げる。

 

「まあ、コツを掴めないと大変だとは思うけどね。それでも基本は発想の転換、いわばコロンブスの卵と同じさ。一度でも成功すれば誰でもできるだろうし、前人未到ではあっても後追いなんていくらでも出てくるだろうさ」

 

 ………ありえない。

 

 これはそんな次元ではない。

 

 自分は間違いなく、歴代神滅具保有者の中でも一握りの特別(スペシャル)だと断言できる。

 

 だがこれはそんなものではない。高みとか強さとか、そういう言葉で測っていい物ではない。

 

 いうなれば、異常(アブノーマル)

 

 目の前の男は、本来常人では至れない異常な領域を、呼吸するように行き来できる。世界の均衡を崩す意思を、その真逆の世界の均衡を築く意思と同じように、呼吸をするように行き来できる。

 

 普通に考えてありえない思考が、彼にとって状態なのだ。

 

「………ああ、そういうことか」

 

 ヴァーリ・ルシファーは、今この場において思い違いを痛感した。

 

 目の前の男にとって、禁手というのは大したことがないのだ。

 

 コツさえつかめば誰でもできる。だって自分は当たり前のように至れるし、その逆もできるのだから。

 

 狂人は自分が狂ってないと思っているとは、誰が言い始めたことか。その実例が、目の前にまざまざと示されている。

 

 その寒気すら覚える発想に、ヴァーリは最後の確認のために質問する。

 

「聞こう。君はいつ禁手に至った? 神器に目覚めてどれぐらい経ってだ?」

 

 その言葉に、リュシオンは質問の意図を測りかねながらも素直に答えた。

 

「故郷が異能を使うテロリストに襲われたその日、神器に目覚めて二時間後ぐらいだね。神器に目覚めるだけだと全く足りない状況だから、それだけの意思を見せる必要があったし当然だろう?」

 

 その言葉に、ヴァーリは心から理解した。

 

 この男は、それが必要なら世界の均衡を崩す意思を持つことが呼吸をするようにできる。

 

 だから、その逆を行うこともそれを持ち直すことも当然のようにできる。なにより呼吸と同じようにできるから、それをコツの問題としか思えない。

 

 本来、そんな意思を持つことはそう簡単にできることではない。少なくとも、誰もが簡単にできることでは断じてないのだ。

 

「は、ははは……」

 

 歓喜と、一割程度の寒気を覚えながらヴァーリは確信する。

 

 この時代は、神滅具保有者全体において歴史上類を見ない豊作の世代だ。

 

 新種の神滅具が連続して発見され、その使い手も多くが異常の領域と言える特別。果てはその法則を超えるイレギュラーの塊すら現れる。

 

 歓喜と少しばかりの戦慄を覚えながら、ヴァーリは負傷の消耗で意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてそれを目にしなかった赤が、その隙をついて黒に突撃を敢行する。

 

 

 

 




 と、イッセーや和地のクライマックス的戦闘を差し置いて、ドン引き要素をぶちかましたリュシオンです。

 両腕ぶった切ったことで生まれる敵の隙を、ぶった切られた直後に冷静につける時点でもぶっ飛んでますが、問題なそのあとですね。

 この男、本文中でも書きましたが禁手に到達する逆の精神状態を作ることで禁手を消し、禁手に至った時の精神状態をわざと少し変えたり同じ状態を再現することで、必要な時に必要な禁手を意図的に至らせるという真似ができます。
 もちろん、そんなものは原作においても出てきていません。そんな簡単にとんでもないことができるほど甘くないのが禁手の世界。なにより英雄派もそこまで動いていないので、禁手に至らせることすら偉業なのが現状ですしね。
 これをリュシオンは当たりまえのようにこなせます。そしてコツを掴めているかどうか程度の問題としか見ていません。そして何より、リュシオンは必要だから神器に目覚めたその日のうちに、禁手に到達できる精神状態に至りました。

 ……断言しましょう。こいつはこの作品でもトップクラスに精神がぶっ飛んでいるキャラクターです。設計コンセプトとしては自分が影響を受けているシルヴァリオサーガを作り上げたLight作品の、ある精神ぶっ飛び系キャラクター二人をかけ合わせた感じです。オクトーバーの意味が十月という秋の月で、リュシオンの頭にエをつける……といえば、どんなトンチキとトンチキを掛け合わせたのかわかるでしょうか?

 本格的な説明は彼の元ネタを明かすその日まで取っておくつもり(具体的にはデュランダル)ですが、これからも小出しで異常精を出していこうと思っておりますです、ハイ。

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