好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
イッセーSide
「なぁ、イッセー。カズヒ姉さんって、自己犠牲精神が強いと思わないか?」
「……アナル処女とか、信徒の自己犠牲精神としてどうなんだろうな」
遠い目をする九成に、俺はそう言うしかなかった。
アニルも軽く遠い目をしてるけど、アニルなりになんか言おうとしたのかちょっと考え込んでる。
そんでもって考えがまとまったのか、シカ肉の薫製を差し出しながら九成に振り向いた。
「あの人確かバリバリの暗部出身っすよね? 多分暗部に入る前から任務でとっ捕まって強姦とか覚悟してんじゃないすか?」
「あ~。カズヒ姉さんはそういう覚悟を真っ先に決めてそう。……あ、これ美味しいぞ、お前も食えよ」
「おう……本当に美味いな。でもカズヒさんの生下半身とか俺が見たいんだけど」
薫製を食べながらのこの盛り上がるに盛り上がれないカズヒさん談議。
なんでこんなことになったのかというと、これも和平を進める一環とかそんな感じらしい。
いや、薫製食べながら駄弁るのが一環なんじゃなくて、一環の為の下準備とかそんな感じ。
俺達は別館の一階にある、その一環用のスタジオの準備とかをしてるんだ。で、それなら男どもだけでやって親睦を深めようって感じで、今は休憩中。
で、アニルが手製の薫製をおやつ代わりに持ってきたから、それを今食べながら駄弁ってる。
ちなみに本館の屋上に、薫製製造用のプレハブ小屋が立てられたりしてる。アニルの要望が要望以上に通った感じだ。
アニルはちょっと高価な薫製機とか貰えないかなーとか言っただけらしい。だけどそこでアザゼル先生が気に入ったり、クックスも本格的に手を出すことを決めたことで派手にいったんだ。
その結果、業務用の薫製機や熟成用の設備とか、下ごしらえに使うハーブや燻す時のチップを入れるケースも購入されて、もういっそのこと専用の設備を用意しようってなって屋上にプレハブ小屋が、違和感がないような外装でつけられたってわけ。あと本館の屋上なのは「別館の屋上だと煙が本館につくかもしれないから」って感じらしい。
……確かに美味しいけど。そこまでするかって感じではある。
「いやぁ、あそこまで本格的なもんを用意してもらうってのは、恐縮半分感激半分ってところっス。腕が鳴るし材料を大量に確保しても腐らせなくて済むから、そっちも腕が鳴りますわ」
「……そういえば、鹿とか兎とかだったけど、もしかして自分で狩ってるのか?」
アニルの発言に首を傾げた九成がそう言うと、アニルは素直に頷いた。
え、マジか。
「自分で肉まで狩ってんの!? 店で買うんじゃなくて!?」
なんか別の意味で本格的だな! 思わず大声上げちまったよ。
え、マジで!? 貴族のたしなみ的な?
ちょっと引いてると、アニルは燻製を食べながらちょっと頬を掻いた。
「いや、元々薫製作りは手段だったんすけど、何時の間にか趣味になっちまいまして」
「手段? なんの?」
九成が聞きたくもなるよな。
薫製作りを手段にするって、いったい何の手段だよ。
俺もすっごく気になる。マジで気になる。
「炊き出しっす」
「「炊き出し!?」」
炊き出しで燻製!?
思わず俺と九成が一緒の叫んじまったよ。
「いえ、信徒だし高貴な家柄だし、やっぱり恵まれない人に施しをとは思って活動してたんすよ。でもほら、あまり過剰に施しするのもあれっすし、何より家がない奴らに日持ちしないのを送るわけにもいかないっすよね? だから豪華にならずに日持ちになるのをと考えてた時にたまたまテレビの特集を見て―」
見て? 見て何がどうなったの?
思わず俺と九成が前のめりになると、アニルはちょっと引きながらも、薫製の皿の一つを持ち上げて見せた。
「―外来種による生態系の破壊を見たんで、そのあと増えすぎて獣害になってる獣とかも含めて自分で狩って、それを燻製にして炊き出しのお土産的な感じにすることにしたんすよ。そしたら意外と奥が深くて趣味に」
「お前凄いな!」
俺よりよっぽど立派だよ!? 後輩ができすぎでちょっと後ろめたいよ!
「あ~。日本でもブラックバスとかあるしなぁ。そういう方向でなく奴も多いし、そういった方法もあるかぁ。……狩猟免許取るか?」
あと九成はちょっと迷走してない?
「アザゼル先生に頼んで特例でそういったのも狩ってるっす。先週は琵琶湖行ってブラックバスとかの外来魚を銛でついてついて今は塩漬け中でさぁ。来週はアライグマをぶった切ろうかと。……知られてないけどあいつら狂暴っすから、マジに戦闘の練習になるんですわ」
何時のの間に琵琶湖行ってたの!?
あと怖いなアライグマ。え、そんなに狂暴なのかよ。
「俺、分家で親兄弟もそこそこいるから家継ぐこともないでしょうから、たぶん悪魔祓い目指してなかったらそっちの専門業者やってたと思うっすわぁ。燻製マジで奥が深いから、悪魔祓い引退したらそっちで食ってこうかなぁ」
この年で引退後の展開とか、しかもそれが薫製関係とか渋いな。
感心しながら燻製を食べてると、ドアが滾々とノックされた。
「まだやってるの? そろそろお風呂入ったら?」
顔を覗かせたのはカズヒだった。
見る限り、お風呂に入ってたのかほんのり頬が赤い。そういえば別館の一階は男女別でそこそこの大きさの共同浴室があったっけ。
お、九成はカズヒに見惚れてる。ソーナ会長に対する匙並みに惚れ込んでるなぁ。
俺がそんなことを思ってると、更にひょっこり部長や小猫ちゃん、あとルーシアもこっちを覗き込んだ。
「あらあら。ちょっと一緒のお風呂に入ったついでに様子を見たら、そろそろ休んだ方がいいんじゃない、イッセー?」
「そうですよ、先輩方。まだ本格的な開始は数日後ですし、毎日確実に進めていけば余裕で間に合いますから」
そんな風に労わる笑顔で部長とルーシアにたしなめられるけど、俺達ってもしかして燻製食べてるのに夢中で時間忘れてたか?
やばい、ちょっと恥ずかしい。九成とアニルもそう思ったのか顔を赤くして顔を背けてるし。
あ、でもそこまで長い間してたとか気づいてないはずだ。なんとしてもここは誤魔化さないと恥ずかしすぎ―
「……いえ部長、たぶん燻製で時間を潰してます。アニルは燻製を持ち込みすぎないで、美味しいから食べ過ぎる」
「わ、悪い小猫。あと俺の燻製褒めてくれてありがとな」
うん、小猫ちゃんも褒めるこの美味しさ。本当にうっかり食べ過ぎそうだ。
だけどまあ、何て言うかな?
「……なんていうか、意外な組み合わせですね部長。メンバーの統一感があまりないっていうか」
そんな風に思っちゃうなぁ。
カズヒにルーシアだけどか、部長と小猫ちゃんだけとかならまだ分かるよ? 二人ともグループとか立ち位置とかが同じだし。
カズヒと小猫ちゃんってのも、髪の色が白だからなんか分かる。
あとルーシアと小猫ちゃんってのも分かる。二人とも妹だし。属性とかじゃなく妹……あ、部長も妹だった、お姉さまだけど妹だった。
だけどカズヒがなんていうか、違和感あるっていうかなんて言うか。
この四人だと、カズヒがちょっと浮いてる感じがする。
「……あ~、確かにカズヒ姉さんがちょっと浮いてるな。他三人は全員年上の家族がいるし」
「あ、そういや部長って魔王の妹さんっしたね」
九成とアニルもそんな感じだったけど、何故かカズヒは首を傾げていた。
「え? ならピッタ……あ」
ん? ピッタ?
俺達が首を傾げてると、カズヒはなんか急にちょっと戸惑った感じだった。
「……それもそうね。他の三人は全員妹だもの。その辺は共通点があるわね」
ん?
なんだろうな。
もしかして、カズヒって親を失う前はお兄さんとか……いたのか?
そんな毎日だけど、何て言うか楽しくやってはいる。
カズヒは基本的に厳しいけど、頑張ってることや成果はきちんと認めてくれるからな。最初はちょっと心配だったけど、きちんと合わせてくれる。
「……あ、イッセー。悪いけど後でノートを貸してくれない? 祐斗にも後で借りるんだけど、二年生の授業がどんな風に進んでるのか、ちょっと確認したいのよ」
なんてことを言われながら、俺は朝食を食べに向かってる。
結局あのあと、ちょっとやっちゃって寝不足気味だったりしてるけど、カズヒはしっかり寝てたっぽいな。
あ~。ただでさえディオドラがアーシアを奪わないか不安なのに、更に睡眠不足とかアホか俺は。
「別にいいけど、カズヒって勉強苦手なのか? 何て言うかちゃんと毎日勉強している印象あるし、ゼノヴィアより成績良さそうなんだけど」
「多方面に失礼ね。ゼノヴィアはあれで勉強できるし、一応教会は教育もきちんとしてはいるわ。ただ私は育ちが悪い方だし、高校の成績だってそんな頂点争いってわけじゃないわよ」
ふ~ん。
なんていうか毎日しっかり勉強して、特に赤点なんて取らないような奴かと思ってた。
「それに駒王学園は偏差値高いでしょ? 偏差値高い高校に通ってたわけじゃないんだから、何て言うか……教師の傾向とかそういった方面も読まないとテストで赤点取りそうだもの」
「そういう方向で採るのかよ」
「あら、やったことないの? 教師の性格から山勘当てる奴」
なんで山勘なんて言葉知ってるんだカズヒ。
と、俺達はそんなこんなでダイニングに到着するけど……ん?
なんか、アニルやルーシア、あとゼノヴィアがちょっと引いてるような気がするんだけど。
「どうしたんだ三人とも。特に変な朝ごはんじゃないけどさ」
「え、いやその……」
「日本食は慣れてませんけど、それ以前に、その」
アニルもルーシアもちょっと困惑してる。
そんな後輩達の代わりに、ゼノヴィアが恐る恐る、テーブルの真ん中を指さした。
「なあ。なんでこんなところに生卵が人数分置いてあるんだ?」
ん?
俺はテーブルを見る。
ご飯にホウレン草のお浸し。あと味噌汁じゃなくてお吸い物。あと醤油。
味噌汁は外国人は慣れてないこともあるっぽいからそれが理由か? アーシアはだいぶ慣れてるけど、ルーシアとアニルは、まだそこまで分からないしな。
そしてテーブルのど真ん中に置かれている、籠に入った生卵。
だけど、それはそれとして何があったんだ?
今日の朝ごはんの内容は簡単だし、そんなに驚くことじゃないような気もするんだけど。
何故かリアス部長は事情が分かってるのか、ちょっと苦笑いしてる。
「……あ、お母さま。今日の朝ご飯なんですけど」
「そうなのよぉ。実は昨日、お父さんが親御さんが養鶏所の同僚から卵を貰っちゃってね? だから久しぶりにこれにしようかってことになったのよぉ」
うん、特に驚くことは無いような。
「………奥様」
ん?
なんか、カズヒがすっごいマジ顔で卵見てるんだけど?
……いやちょっと待て。
同じぐらい熱視線で、リーネスやヒマリやヒツギが卵見てるんだけど。
俺がちょっと聞こうかと思ってると―
「もう食べ始めてもいいでしょうか!?」
―なんか食い気味でカズヒがんなこと言ってきたんだけど。
あとリーネス達もぶんぶんと頷いているけど、同意見か。
すいません、怖いです。
「え? あ、別に構わないわよ?」
「「「「いただきます!」」」」
母さんの返事を聞いてから、速攻で四人は生卵を取った。
キレイに一回でヒビを入れると、そのまま殻を割って卵をご飯の上に乗せる。
そして黄身を潰してから醤油をかけるカズヒとリーネスに、醤油をかけてから混ぜ始めるヒマリとヒツギ。
そして見事いい感じに混ざった卵賭けご飯を、勢いよく四人はかきこんだ。
うん、いい喰いっぷり。見てて俺もお腹が空いてくる。
「よっし! 俺もちょっと食べるか!」
「ぇえええええええ!? あの、今の見てなんで食欲が!?」
卵賭けご飯を作ろうとしたら、何故かアニルが引いていた。
え、どゆこと?
「イッセー! 生卵だぞ!? 過熱してないんだぞ!?」
ゼノヴィアもなんで心配そうにしてるんだよ。
俺がちょっと戸惑ってると、和地がちょっと驚いた顔でカズヒやヒツギを交互に見てた。
「か、カズヒ姉さんもヒツギも、卵賭けご飯食べ慣れてるのか?」
………ん~?
俺が訳が分からないでいると、部長が苦笑してた。
「イッセー。生卵を食べるのは世界的には奇食に入るのよ」
「え、そうなんですか!?」
マジで!?
卵かけご飯って美味しいのに。あ、そもそもご飯食べる方がどっちかというと少ないのか。
でもそういう意味でもなさそうだしな……。
俺が驚いていると、朱乃さんがニコニコしながら俺にお茶を入れてくれた。
「うふふ。世界には「生卵を食すのは日本人と蛇だけだ」というジョークもありますの。いわゆるロッ〇ーとかのあれも、目的の為にリスクや手段を択ばない人物と見せる為の演出らしいですわ」
まじか。あれそんな覚悟がいる行為だったの!?
俺はそこまでびっくりして、ふと振り返る。
「「「「おいしー♪」」あと久々ー♪」」
なんていい笑顔で卵かけご飯を食べてるんだ。日本人でもあそこまで感極まる奴はいないと思う。いや、ヒマリやヒツギはたぶん日系の血が入ってると思うけど、名前的に。
「すいませんお代わりほしいんですけど卵まだ残ってますか!? 我慢できないです!」
「やばっ! なにこれ、何て言うか前世の恋人に巡り合った的なあれがするんだけど!? は、もしかして私、前世純日本人!?」
カズヒとヒツギの反応に至ってはマジで怖い。どんだけ卵かけご飯に感動してるんだよ。
「久々に食べると感動ねぇ。しかも卵も新鮮だから涙出てきそうだわぁ」
「ふぉおおおおおおお! お代わり! むしろ晩御飯もTKGを所望しますわ!!」
いや、リーネスやヒマリも十分すぎた。
「うん、
九成も大概感動してるし。
そっか。卵かけご飯ってそんなレベルで珍しいのか。
ってことは、カレーに生卵入れるのは日本だけなのか。インドでもやってると思ってた。
こんな風に、毎日が時々刺激的だけど面白いことも起こってる。
だけどまあ、トラブルもやってくるんだよなぁ………。
そして日常回であると同時に、カズヒ関係の伏線回でもあります!