好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 ちょっと数話ほど、長めの話になってしまいました。


魔性変革編 第三十四話 学園内のひと時と、学園内での真面目な話

和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで毎日を過ごしているけど、体育祭に参加できるとか、何て言うか夢みたいだな。

 

 色々と学園生活は無縁だったから、こんな形で高校生になれるとは思ってなかった。少なくとも更に一回参加できる可能性があるんだから、これは本当に楽しもう。

 

 そんなわけで、俺達学生は体育祭に備えてトレーニングとかも色々やっている真っ最中。

 

「負けないわよゼノヴィア!」

 

「いや、私が勝つ」

 

 だけどお前らはもうちょっとセーブしろ。オリンピックに出れる速度で走るな。

 

「走ることで揺れるおっぱい。……久しぶりに癒しを感じたぜ」

 

「だが揺れすぎるとこう味がない。やはりおっぱいは適度な速度で揺れないとな」

 

「ああ。覗きに行けない環境で、おっぱいがこれだけ貴重だなんて思ってなかったぜ」

 

 遠い目であほなことを語る松田、元浜、イッセーは無視しよう。同類に思われたくない。

 

 と言っても―

 

「さあ、障害物競走ならこういった運動ができると有利よ。あとで一人一人コツを教えるからやってみなさい、障害物競走参加メンバー!」

 

「うっす! でもそれ、国体レベルの新体操選手とかの領域な気がすっぞカズヒ!」

 

「っていうかバク転を呼吸するようにやれるとか何者!? オカルト研究部じゃなくて新体操部(ウチ)に来て! せめて助っ人でもいいから、絶対大会でそこそこいけるから!!」

 

 そんな感じでカズヒ姉さんはカズヒ姉さんで人気が出てるな。

 

 っていうか過酷なトレーニングだけど面倒見がいいから、体育会系との相性がいいな。転校してから日が浅いのに、もうクラスに溶け込んでるよ。

 

 俺もあのレベルに溶け込みたい。学生生活を友達の方面でも満喫したい。

 

 ……まあ、イリナよりは溶け込んでいる気もするが。

 

 あいつ、やばい新興宗教みたいなクラブを自分で作って勧誘してるからな。変人で認識が統一しそうなんだが。

 

 ちなみにアニルもルーシアもオカルト研究部の方に所属してた。

 

 アニルは料理研究部とかも考えてたみたいだけど「炊き出しとかのボランティア活動にも参加したいし、俺は燻製専門なんで」って感じで、その辺りの自由を利かせる代わりにオカルト研究部に。

 

 ルーシアに至っては「そもそもの目的を考えると、オカルト研究部に属するのが一番です。いざという時の連携も取りやすいですし」って真面目な理由で、こっちは速攻でオカルト研究部だった。

 

 ヒツギは転校生であることを良いことに、いろんな部活に体験入部とかしてエンジョイ中。カズヒ姉さんは一応オカルト研究部に属しているけど、女子運動部に覗き警戒の助っ人を頼まれたりしている。あと体術関係の部活から、異種格闘技戦を想定した模擬戦相手(アグレッサー)を頼まれたりもしてる。

 

 ……一年生の方が連携取れてるような気がしてきた。あと、名義上はリーダー格のイリナが一番ダメじゃないだろうか?

 

 ま、まあ馴染んでるということで、いいだろうん。

 

 俺が自分を納得させていると、ふと隣に誰かが立った。

 

「おっす。何してんの?」

 

「お、鶴羽。……いや、何て言うか周りを見てたら感慨深くなったっていうかちょっと教会が心配になったっていうか」

 

 体操服姿の鶴羽ってちょっと新鮮な気もする。

 

 ……やばい。エロいことした関係だからそういうそそる感情が出てきた。

 

 深呼吸深呼吸。心を落ち着けろ。

 

 俺がちょっと挙動不審になってると、鶴羽は少しニヤついていた。

 

 これは気づかれたな。やっぱりこういうのは女の方が優秀なんだろうか。

 

「……ふふん。まあ、私は可愛いし出るところも出てるから、気になっちゃうのは当然よねっと。じゃ、悪いけど私も用事あるから」

 

 あれぇ?

 

「え、ああ」

 

 俺は返事をしたけど、なんかよく分からない感じだった。

 

 なんだろう。確かに鶴羽は淫乱とかいうわけでもないけど、そういう関係として流れ的にこぉ、もうちょっとからかわれるなり誘われるなり怒られるなりすると思うんだけど。

 

 っていうか、ザイアにいた頃はそういったこともあった気がする。

 

 これはあれか。鶴羽もここ数年で成長してるってことか。

 

 男子三日なんとやらとかいうし、女子だってそういうことになりえるよなぁ、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはそれとしてちょっと寂しい。

 

 なんとなく、水分補給として体育館側の自販機に行きながら、俺はちょっとした寂しさを感じてた。

 

 ちょっと前に再会した時は大したこともなかったんだけど、なんか急に鶴羽に距離というか壁というか、違和感とでもいうべき何かが見える。

 

 俺、何かしたか?

 

 首を傾げながらスポーツドリンクを買って取り出した時、背中に柔らかいのが当たりながら、しな垂れかかられた。

 

 ……あ、これヒマリのおっぱいだ。

 

 この感触だけで分かる当たり、俺も大概慣れてるな。この辺も普通からずれてるというか、ザイアの功罪はどう考えたらいい物か。

 

「どうしたヒマリ? そっちはそっちで体育祭の練習中だろ?」

 

「そうですのよー。で、気分転換にちょっと相談がありますのっと」

 

 そんなことを言いながら、ヒマリは俺を引っ張って校舎裏に。

 

 いやちょっと待ってちょっと待って。

 

 お前あれか。まさかあれか?

 

「おいおいエロマンガじゃあるまいし、校舎裏でヤる気か?」

 

「ふふん。ちょっと違いますのよ?」

 

 ちょっと?

 

 ちょっとってどこが違う?

 

 ……別の意味で嫌な予感がする。具体的には、斜め上を飛び越えているかのような嫌な予感が。

 

 状況次第では張り倒すことも考えながら、俺は警戒しつつ引っ張られていくと、そこに見覚えのある女の子が。

 

「……なんで和地までいるわけ、ヒマリ?」

 

「それはもう、和地がいなければ始まりませんもの!」

 

 そこにいたヒツギも、詳しい理由は知らされてないみたいだ。

 

 ……凄く嫌な予感がする。具体的には、本気で張り倒した方がいいレベルのそれが。

 

 そんな俺の気持ちも知らず、ヒマリはヒツギの後ろに回ると、その肩に手を押しながらにっこりとほほ笑んだ。

 

「和地にヒツギも、ヤリ直しですのよ?」

 

 ほら、こいつは時々こういうこと言う。

 

 俺は盛大に肩を落とし、額に手を当てて俯いた。

 

 何がどうしてそうなるわけだよ。

 

 うっかりお酒を飲んで酔った勢いでやらかしているだけでもアウトだってのに、第二ラウンドを校舎裏とかどんな発想をしたらそうなるんだ。

 

「ななななななぁ!? ちょ、ヒマリ、なんでそうなるかなぁ!?」

 

 ほれ、ヒツギも顔真っ赤だし。

 

 あーもう度したもんかなこれはぁ。

 

「とりあえず、俺はする気もないから落ち着けヒツギ。そしてヒマリはまずなんでそんな発想に至ったのか言ってみ、ん?」

 

 まだ飲んでなかったスポーツドリンクをヒツギに渡して落ち着かせながら、俺はヒマリにジト目を向ける。

 

 ヒマリはヒマリできょとんとしながら首を傾げるのは可愛いけど、とりあえず説明しろ。

 

「えー? だってヒツギってば、どうも(しょ)体験のことを殆ど覚えてませんのよ? 和地のテクから言ってそこそこいい初体験でしたでしょうに、覚えてないなんてそれは可哀想ですわ」

 

 そんなことを言っているヒマリは、悪戯とか悪意は全くない。

 

 むしろ労わるような目でヒツギを見て、本気でヒツギの為を思って行動している感じすらある。たぶん実際そうだろう。

 

 だけど何でそういう方向性なんだ。

 

 あとその得意げな表情やめろ。……違うドヤ顔に移行するな。

 

「だったらもうちょっとムードというかテンションが上がる形で上乗せして、ぱぱっといい思い出を増やすべきですもの! なんなら、私も手伝いますのよ♡」

 

「いやいやいや! しなくていいから! むしろ黒歴史として忘れたいから!!」

 

 ですよねー。

 

 顔を真っ赤にして首をぶんぶん横に振ってるヒツギの方が意見としては真っ当な気がする。

 

 というか、一見するとお嬢様口調で雰囲気もちょっとはあるヒマリがエロに寛容で、遊びなれたギャルっぽいヒツギが信徒でそっちに潔癖気味って、何て言うかギャップあるな。

 

 元々仲が良いけど、妙な凸凹コンビ感がある。

 

 ま、そこはどうでもいいわな。

 

 俺も流石に収集つけたいし、どこかで見られてたらまずいからスパッと終わらせよう。

 

「アホかおまえは。ただでさえやらかしてちょっとお互いに気まずい所があるのに、なんでこんなアブノーマルなプレイで上書き何て発想になる! あと3〇にしようとするな」

 

 初体験が微妙な形になってるのを解消する為に、3〇は無いだろ、普通。

 

 俺はヒツギを庇う様に前に出ると、ヒマリの両肩に手を置いて、説得を試みる。

 

「落ち着け。そもそもヒツギは信徒の中でもそれなりに顔な、デュナミス聖騎士団だぞ?」

 

「そうですわね。……それがどうしましたの?」

 

 分かってないなお前。

 

 こういうところが困ったというか天然というか。いや、可愛いのは可愛いんだけど、そういう問題でもない。

 

 俺は深呼吸を一つついてから、分かり易いように言葉を選ぶ。

 

「信徒は色欲を大罪にして、貞淑を美徳としているわけだ。酔った勢いでエロいことしてしまいましたってだけでも問題なんだから、そこから問題を上乗せするな」

 

「うんうんうんうん! 私一応信徒だから! それもガチ信徒の羨望の的な精鋭だから!? そういうのは要らないからね!?」

 

 後ろで食い気味にヒツギも頷いていた。

 

「えー。でも初めての経験がよく覚えてなくて、それから気持ちいいS〇Xを知らないのも可哀想ですわよ。一度ぐらいは気持ちいい経験をしても罰は当たりませんのよ?」

 

 言いたいことは分かるが、信徒的にはあれだろうしなぁ。

 

 本人は悪意なく善意で動いているから始末に負えない。

 

 しかもヒマリはこういう時、理屈ではなく感性で動くから、理詰めの説得が難しい。

 

 ヒツギはヒツギでこういうことに初心(ウブ)なのか、それとも振り回され体質なのか。ちょっと冷静な立ち回りができるような状態でもない。

 

 これはどうしたもんか―

 

「ハイそこぉ! 特にヒマリ! ストップ学内淫行!!」

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

 ―と思った瞬間、上から鶴羽が舞い降りた。

 

 どこから来た!?

 

 そう思った瞬間、今度は近くのマンホールが開いて飛び出す影が。

 

 ってリーネス!? お前もなんでそんなところから出てくるんだよ。

 

「そこまでよぉ! 健全な高校生活に3〇なんて許さないわぁ!」

 

「リーネスに鶴羽もですの!? そ、そんな、私は折角ならHの思い出は良い思い出にするべきだと―」

 

「「はいシャラップ!」」

 

 問答無用で二人はヒマリをとっ捕まえると、そのままずるずると連行する。

 

「じゃ、私達はヒマリ(このお馬鹿)を会長のところに連行して説教してもらうから。そろそろ練習に戻ってなさい」

 

「あと、今日の部活動は異形がらみが主体になるからその辺りを心の準備をよろしくねぇ?」

 

 にっこりと全然笑っている風に見えない笑顔で言ってきてから、そのままヒマリを連れて二人は去っていく。

 

 なんか慌てているみたいだったけど、何がどうした?

 

 いや、まあ、助かってはいるな。ならいいか。

 

 細かいことは後で考えよう。それより早くするべきことは一つだ。

 

「あー、ヒツギ」

 

「ひゃい!? な、ななななんじゃんか!?」

 

 顔を真っ赤にして慌てないでくれ。

 

「お前にそのつもりがないのにそんなことを素面でする気は無いから安心しろ。とりあえず、妙な誤解がされないように時間をずらして戻ることにしないか?」

 

「お、おぉう! 私はちょっと心を落ち着けるから、和地が先に行っていいよ!」

 

 うん。顔真っ赤だし、今から出てったらすぐに怪しまれるわな。

 

「よし! そのスポーツドリンクは迷惑料変わりだ。しっかり飲んで落ち着いてから戻って来いよ?」

 

 俺はそういうと、足早に校舎裏を去る。

 

 それとなく周囲を確認するけど、とりあえず他に人はいないらしい。

 

 ……変に騒がれることは無さそうだな、ちょっとほっとした。

 

 だけど、なんであのタイミングで慌てたように鶴羽やリーネスが突入してきたんだ?

 

 まさかと思うが見張ってた? いや、いくら何でもそんなことは……なぁ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前はお前で体育館倉庫で何してんだ」

 

「未遂だよ! それにアーシアにそんなことするわけないだろ!」

 

 なんでもイッセーはイッセーで、体育館倉庫でゼノヴィアに連れ込まれてアーシアまで巻き込まれたらしい。

 

 イリナが気付いて乱入して、頓珍漢な指摘をしたことで空気が台無しになって終わったそうだ。何を指摘してるんだあの天使は。

 

 というか、イッセーはイッセーで何を言っているんだこいつ。

 

 アーシアがお前のこと大好きなのは分かり切ってるだろうに。むしろ据え膳だぞそれ。

 

 俺が呆れた目を向けてると、イッセーはうんうんと頷きながら殊勝な顔をする。

 

「俺はアーシアに兄のように慕われてるからな。いつか花嫁修業の成果を誰かにするのはめちゃくちゃ嫌だけど、それまで俺がしっかり守るんだ」

 

 イッセーは病気か何かだろうか。

 

 真剣に医者を探すべきか、俺は真剣に考えたくなった。

 

 どう見てもそんなノリじゃないだろ。完全にLOVEのあれだろ。兄じゃなくて男として見てるだろうがあれは。

 

 ツッコミを入れるべきか悩んでいると、イッセーは盛大にため息をついた。

 

「まったくゼノヴィアにも困ったもんだぜ。強い子供を作りたいってのがあいつの夢なのは知ってるけど、アーシアを巻き込むんじゃありません。俺も流石に最初の経験が種馬ってのは……いやそれはそれで」

 

「いいのかよ」

 

 脱線したイッセーにツッコミを入れるけど、本当に色々と心配になってくるな。

 

 既にゼノヴィアもイッセーオンリーワンでロックオンしているみたいなんだが。どう考えても種だけを目的にしてないだろマジで。

 

 モテる気ないだろコイツ。

 

 俺はそう思いながら、とりあえず部室のドアをノックしてから入る。

 

「和地とイッセー、入りまーす」

 

「おう、遅かったな」

 

 と、アザゼル先生が返事をする。

 

 他のメンバーもほぼ集まってるな。というか―

 

「どうしました、イッセー。何か悩んでいるようですが?」

 

「ああ、シャルロット。ちょっと今後の俺のハーレム王を目指す方向性とか、色々と悩んじゃってさ」

 

 普段は学業中の駒王学園には入っていないシャルロットまで来てた。

 

 シャルロットはその辺をきっちりしているというか、悪魔稼業の時間帯でもない限りはこっちにはあまり来ないんだけどな。

 

 これは本当に異形(こっち)側の話が主体みたいだな。

 

 普段みたいに駄弁るとか、そういった感じじゃなさそうだ。むしろガチ目の事態と考えるべきか、これは。

 

 俺がちょっと気を引き締め直していると、リアス部長が真剣な表情を俺たちに向けてきた。

 

「……知っている子が殆どだけど、聖ミカエル監察団の子達は直接聞いたことも無いから、まずはそこから話をまとめるわね」

 

 そう言いながら、部長は簡単に説明する。

 

 夏休みにグレモリー眷属が冥界に行った時期の一幕。その前半にあった若手悪魔の会合。

 

 魔王排出家や大王及び大公の次期当主に、そんな彼ら勝るとも劣らない若手悪魔の有力者達が、眷属を引き連れて会合した一幕。

 

 その時色々とひと悶着があったが、最後にサーゼクス様が若手悪魔同士のレーティングゲームを提案した。

 

 その所詮はリアス部長とソーナ会長の対決。俺はリアルタイムでは見なかったけど、ソーナ会長たちシトリー眷属が試合に負けて勝負に勝った形だ。

 

 現地の構造や特色を生かしギャスパーを速攻で撃破。更に堕天使側の技術を利用してゼノヴィアを撃破。とどめにイッセーを、匙が禁手に至ってない上に格下の神器で時間差だが相打ちに持ち込んだ。

 

 封印が解除されたばかりで、封印されるだけのポテンシャルを持つ変異の駒(ミューテーション・ピース)のギャスパー。伝説の聖剣デュランダルを扱う、期待のルーキーであるゼノヴィア。とどめに前日に禁手に至った、いろんな意味で注目の的であるイッセー。

 

 グレモリー眷属の評価を上げる要素ともいえる三人をことごとく撃破されたことで、部長の評価はかなり削れたらしい。しかも有数のアドバンテージともいえるアーシアをやられたことも踏まえれば、もうけちょんけちょんだろう。

 

 木場がデュランダルを使うという変則運用や、朱乃さんや小猫ちゃんの本領発揮、更にイッセーの新技といった要所要所での活躍はあった。だけどこのけちょんけちょんをひっくり返せるほどじゃない。

 

 そんな第一階から波乱の幕開けだったのはよく覚えているけど、その続きか?

 

 俺が考えていると、部長が何かを言う前にアニルが手を上げた。

 

「質問っす! それって俺達聖ミカエル監察団が聞いてもいいんすか?」

 

 ああなるほど、その辺を気遣ったのか。

 

 まあ確かに和平を結んだばかりで、あんまり情報を明かすのは問題視する奴もいそうだしなぁ。

 

 俺はそう納得するけど、部長はその懸念を払拭するように微笑んだ。

 

「大丈夫よ。このレーティングゲームの映像は、見ようと思えばイリナさんほどの立場なら入手できるし、上はいくらかの試合を公式レーティングゲームと同様の手法で放送することも考えているもの」

 

「そうよアニルくん! 主の代行たるミカエル様の名のもとに、私達三大勢力は和平を結んだもの! 皆仲良くゲームも仲良く!」

 

 そんな風にイリナが胸を張って宣言すると、ちょっと笑みが周囲にこぼれる。

 

 ルーシアはそんなイリナに微笑みながら、部長達にも笑顔を向けて頷いていた。

 

「……そうですね。なら、次のゲームは私達も応援します」

 

「私もしますのよー! あ、でもこういうのはホットドッグを片手に見るべきものですの?」

 

 ヒマリ、ルーシアを見習ってもうちょっとこぉ、考えた発言をだな。

 

 そんな感じで空気が緩んでると、部長は何故か表情を鋭くした。

 

「……ただ、グレモリー眷属(私達)としては笑えないわ。何せそれぞれ第一試合が終わった形だけれど、1位のサイラオーグ・バアルと3位のイシロ・グラシャラボラスが、それぞれ6位のノア・ベリアルや8位のディオドラに敗北したの」

 

「「「「「「「ぇえ!?」」」」」」」

 

 部長のその発言に、悪魔側のメンバーが大声をあげて驚いた。

 

「あのサイラオーグ・バアルが負けたんですか? それに、イシロ・グラシャラボラスもだなんて……信じられませんね」

 

 木場がそこまで言うほどか。

 

 俺達は話に聞いたぐらいだけど、どれぐらいの実力者なんだ?

 

 そんな面食らってる悪魔側に付いていけてない俺達のうち、ヒツギは隣にいたゼノヴィアの方を振り向いた。

 

「えっと、ゼノヴィア? どんな実力者だったの?」

 

「そうだな……。サイラオーグ・バアルの動きは騎士の私や木場以上で、一撃を放った時の轟音は鎧を着たイッセーでも模擬戦では出したことがないほどだ」

 

 冗談だろ。

 

 木場以上のスピードで動いて、イッセー以上の拳だと?

 

 鎧を着たイッセーの拳は、文字通り最上級悪魔に手が届くレベルだ。正式にイッセー側が禁手になったこともあって、一対一でもコカビエルと殴り合いで勝ち目があるだろう。

 

 それ以上って、生身でコカビエルを殴り倒せる余地があるってことだ。寒気がするな。

 

 俺が戦慄していると、ギャスパーもなんかがくがく震えていた。

 

「イシロ・グラシャラボラスさんはそんな拳を顔面に貰ってピンピンしてましたぁ。その後不意打ちでゼファードル・グラシャラボラスさんをボコボコにしてましたよ」

 

 あ、そういえばそうだったな。

 

「もろに喰らってって、会合の揉め事ってやつ? 何したのさその女」

 

 ヒツギがちょっと引いてるけど、確かそれ違う。

 

 小猫ちゃんが思い出してちょっと遠い目をしながら首を横に振ってくれた。

 

「……いえ、やらかしたのはゼファードルの方でしたが、性癖に従ってパワートップ2のお二人の攻撃を喰らおうとして割って入ったんです」

 

「……そんでもって、思わず手を止めて攻撃を叩き込まなかったゼファードルにキレて、マウントポジションで殴りまくったんだよ。あれはとんでもないドMだな」

 

 イッセーも遠い目をして乾いた笑いが口に浮かんでる。

 

 うん、今聞いてもちょっと引くなソレ。

 

「…‥となると、順当な決着は残りの二試合だけですか。序盤から大荒れですね」

 

 シャルロットが気を取り直してそう言うけど、アザゼル先生が首を横に振った。

 

「ところがどっこいそうでもない。2位のヴィール・アガレスは9位のゼファードルをフルボッコにしたが、5位のシーグヴァイラと七位のフロンズ・フィーニクスの試合は、いうなればリアスとソーナの試合に近い」

 

 え、マジで?

 

 それってつまり、フロンズ・フィーニクスが試合に負けて勝負に勝ったような勝ち方を下ってことか。

 

 ど、どんな勝ち方したんだ?

 

 俺達がマジ顔になっていると、先生も真剣な表情をしながら、持っていた資料を見ていた。

 

「……もっとも、ヴィール・アガレスにおいても色々と見えてきているからな。下馬評通りの結果になった試合なんて一つもねえ。ある意味豊作だな、この年の若手悪魔はよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 だいぶ後にこの言葉を思い出して、俺は本当にそうだとすら思った。

 

 この十人の若手悪魔、その殆どがのちの世界の趨勢を揺るがす戦いに深く関与することになったからな。

 

 

 

 




 そんな感じで、平和な日常かと思ったらシリアスな方向に進み始めました!

 いろいろと波乱の展開が連発する若手悪魔のレーティングゲーム第一試合! お楽しみに!

ノア・ベリアルのサイラオーグ封じ。いかがでしょうか?

  • サイラオーグを過剰に下げない最適な作戦
  • サイラオーグアンチかと言いたくなる
  • もっと遠慮なくやってもいいと思うよ?

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