好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 思った以上に話が長くなったので、サイラオーグVSノアは別の話ということにします。


魔性変革編 第三十五話  狂王蹂躙

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんかとんでもないことになってる若手悪魔のレーティングゲーム。

 

 その映像もあるということで、俺達はそれを見ることになった。

 

「それで、どれから見せるの?」

 

「そうね。まずはヴィールとゼファードルのゲームから見るべきでしょうね。これが一番見やすいともいえるわ」

 

 カズヒにそう答えながら、リアス部長は映像を映し出す。

 

 ちょっとドキドキしてたけど、そんな気持ちは映像が進むにつれて吹っ飛んだ。

 

 ……壮絶な戦いなんてもんじゃない。趨勢は一瞬でついたと言ってもいい。

 

「……失せろ」

 

 鎧を着た男が絶大なオーラを放ち、

 

「詰まらなさそうなのばっかりだし、ちゃちゃっと終わらせる方向でっと」

 

 綺麗な女性が氷の剣を作ると、一瞬で相手を切り刻み、

 

「あんたらなんかに手こずれないのよ、雑魚ども!!」

 

 俺と同じぐらいの赤毛の女の子が、両手に右手に炎を纏って相手の女王(クイーン)を一発で叩きのめした。

 

 此処までにかかった時間は二分もない。相手のチームに接触した直後に決着をつけたって言ってもいい。

 

 圧倒的だろ、おい。

 

「凶児とまで呼ばれたゼファードル。その眷属も決して弱いわけではないというのにこれとはね」

 

「……プロのプレイヤーと模擬戦をして、幾度も勝っただけのことはありますわね」

 

 木場と朱乃さんが目を細めながらそう言うけど、俺だって凄いのが分かるよ。

 

 確かあの三人だけが、ヴィール・アガレスの眷属で戦闘要員。それ以外は研究者とかそういったのなんだろ?

 

 どいつもこいつも、俺が鎧を着ても真っ向勝負で負けそうなぐらい強いじゃねえか。

 

 そりゃあんなのが三人もいたら、他の眷属が戦闘要員じゃなくても二番目になれるって。三人がかりならコカビエルだって倒せるだろ。

 

 と、そんな圧倒的不利な状況下でゼファードルと残った一人の眷属は賭けに出たみたいだ。

 

 残った眷属がたった一人でその三人相手に凌いでいる間に、ゼファードルはヴィールに向かって一直線。

 

 っていうか凄いなあの兄ちゃん。あんな化け物じみた三人相手に、たった一人で凌いでる。

 

「……あ!」

 

 その時、ギャスパーが何かに気づいたのか声を上げた。

 

『……ほぉ』

 

「おぉ……」

 

「……へぇ」

 

 と、ドライグに九成に先生が、そんな戦闘の様子を見て感心してた。

 

 ん、なんだなんだ?

 

「どうしたの、ギャスパー? それにアザゼル達も」

 

 部長がそういうと、ギャスパーはその眷属を指さした。

 

「この人、冥界のパーティ会場で会ったことあります。僕は気づかなかったけど、ヒマリ先輩が言うには戦意がないけどいつでも戦える動きだったって」

 

「思い出しましたの! 確かにあの人ですの!」

 

 ヒマリも思い出したってことは、本当なのか。

 

 なんていうか納得って感じの動きだよなぁ。油断が全然できないっていうかなんて言うか。

 

「場慣れしてるわね。いえ、むしろ老練と言ってもいい動きだわ」

 

「そうッスね。あれ、才能があるとかそういう以前に二十代ができる動きじゃないっすよ?」

 

「かなり前から悪魔になっていた人が、トレードとかいう制度で眷属になったのでしょうか?」

 

 カズヒがそう呟いてからアニルやルーシアが首を傾げるけど、俺はその辺の動きはさっぱり分からない。

 

 やっぱり何年も鍛えてる人は違うな。

 

 それに何十年も鍛えてるなら、あの動きにも納得だな。そりゃ強くもなるって。

 

 俺はそう感心してたけど、なぜか部長は首をひねっていた。

 

「あら? でも数か月前にたまたまあってスカウトしたとかそんな噂よ? 純粋な人間とも聞いたけれど」

 

「噂は噂ってことじゃないかしら? ほら、根拠もないのに変な噂を流す人っているじゃないですか」

 

 イリナがそういうけど、つまりそういうことなんだろうか。

 

 っていうか、九成も会ったことがあるなら応えてほしいんだけど―

 

「よしそこ……危な……ふぅ……」

 

 ―凄い白熱して見入ってるな、オイ。

 

 っていうかコレ、記録映像だからな? 実況中継とかじゃないからな?

 

「……よし、行けぇえええええ! ……だぁああ! 惜しい!!」

 

「なんか凄い白熱してますのね」

 

「熱中していて楽しそうですわね」

 

 ヒマリや朱乃さんがそう言ってるけど、和地は全然聞いてない。

 

 だけど問題はそこじゃない。

 

 その眷属が足止めしている間に、ゼファードルはヴィールの下に辿り着いた。

 

『ヴィール! てめえ、俺と一対一でケリをつけようじゃねえか!』

 

『……』

 

 唾を撒き散らしながらそう挑発するゼファードルに、ヴィールは無言だった。

 

 むしろ何て言うか、呆れてるとかそんな感じか?

 

 なんか見ていて不安になるぐらい、戦おうって雰囲気を感じない。一応試合中の映像だってのにだ。

 

 そんな無反応に、ゼファードルは業を煮やしたのか、両手に魔力を籠めて、ヴィールに突きつける。

 

『この糞野郎が! 人の話を聞かねえならぶち殺-』

 

 その瞬間―

 

『少し黙っていろ、塵が』

 

 ―何時の間にか、ゼファードルの後ろにヴィールがいた。

 

 しかも、籠められていたゼファードルの魔力も吹き飛んだ。

 

 え?

 

 俺達の殆どが面食らってる中、ゼファードルも慌てて反応して振り向こうとして―

 

 その勢いのまま、地面に何故か倒れこんだ。

 

 俺達は慌てて視線を動かして息を呑んだ。

 

 ゼファードルの四肢が、膝や肘の当たりから切り落とされている。

 

 ヴィールはいつの間にか手刀を形作っていて、そこから魔力で作られた刃が見えていた。

 

 まさか、今のすれ違いざまに切ったのか?

 

 ゼファードルは混乱していたけど、やがて自分がどうなっているのか気付いて、顔を真っ青にする。

 

『ひ、ひぃいいいいいいいギィッ!?』

 

『騒ぐな、鬱陶しい』

 

 その顎を踵で砕きながら、ヴィールはゼファードルを見てもいない。

 

 ヴィールが見ているのは遠くの戦闘。三人の眷属が戦っている方向だけを見ていた。

 

『なるほどな。お互い本気ではないだろうが、あそこまで戦えるとは末恐ろしい奴だ。だからこそ……なのだろうがな』

 

 なんかちょっと感慨深げだけど、そのあとふと何かに気づいて足元を見る。

 

『あびゃ……りりゃうぃぃ……りりゃうぃぃ……』

 

『……思ったより頑丈だな。まあいい、降参するのならそれらしい倒し方をしてやる』

 

 涙をぼろぼろ零しながら、砕けた顎でうわ言みたいに投了(リザイン)を言おうとしてできなくなっているゼファードル。

 

 見てて思わず同情するけど、ヴィールはなんていうか、捨て損ねたゴミに気づいた表情で、ゼファードルを片手で掴み上げる。

 

 そして本当に軽い感じで、何十メートルも上に投げ飛ばした。

 

『お前みたいなカスにうろつかれても迷惑だ、……粉みじんに砕いてやるから、そのまま永久に不貞腐れてろ』

 

 もう片方の手で、洒落にならないぐらい絶大な魔力が込められた。

 

 というよりあれ、リアス部長やライザーより強い魔力な気がするんだけど。

 

 実力だけならNo2。あのサイラオーグさんの次に強いと言われている、若手上級悪魔。

 

 その洒落にならない大魔力が、ゼファードルを一瞬で包み込んだ。

 

『……ゼファードル・グラシャラボラス様の撃破(テイク)を確認。ヴィール・アガレス様の勝利です』

 

 圧倒的。そんな言葉をつけるしかない。

 

 それが、ヴィール・アガレスとゼファードル・グラシャラボラスのレーティングゲームの顛末だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 五分ぐらい、皆黙ってしまっていた。

 

 戦慄っていうかなんて言うか。たぶんだけど、もし俺達じゃなくてヴィールがコカビエルと相対してたのなら、カズヒ達やリーネス達がいなくてもコカビエルをどうにかできたんじゃないかって思う。

 

 あれで二番目に強いって、サイラオーグさんとかどんな実力者なんだよ。魔王様に喧嘩売れるとかそんなレベルか何かなのか?

 

「あの、若手悪魔のトップ2って、洒落にならない強さなんです……ね?」

 

 俺はなんていうかちょっと引きつりながら言ったけど、先生と部長は静かに首を横に振った。

 

 え、どういうこと?

 

「……イッセー。私はサイラオーグが模擬戦をする光景を何度も見てきたけど、あのヴィールほどの力を見たことは無かったわ」

 

 え?

 

 思わぬ言葉に俺達が面食らってると、アザゼル先生は納得した感じで頷いてた。

 

「だろうな。ヴィールの奴、どうやらまだまだ手を抜いているみたいだしな」

 

 え゛

 

 俺達は思いっきり、さっきの映像を見る。

 

 ……めっちゃ強かったよな、ヴィール。

 

 あれでまだまだ手を抜いている?

 

「……冗談ですよね? あれでまだ手を抜いていると、そんな強さではないでしょう?」

 

 木場がそう言うけど、先生は静かに首を横に振った。

 

「残念だが、あいつはまだまだ余裕がある。切羽詰まるというか本腰を入れるというか、そういう感覚を一切見なかった。……最も」

 

 そう言いながら、先生は映像を戻した。

 

 再生されるのは、ゼファードルの眷属がたった一人でヴィールの武闘派眷属との戦いだった。

 

「ゼファードルの眷属と、あと氷使いの女もそうだろうがな。他二人も伏せ札はありそうだが本腰を入れていて、だかあの二人は本腰すら入れてない」

 

 おいおいマジでかよ。

 

 俺達全員、あの戦いは本気の本気だとばっかり思ってた。

 

 だけどまともに戦ってた連中全員。まだ奥の手とか切り札とか本気モードとか隠し持ってるのかよ。

 

「……だな。春っちも贋作抹消連盟とやり合った時に禁手っぽいの使ってたけど、今は使ってなかったし」

 

「あ、そっか。あの赤い髪の子、お前の幼馴染だったとかいう子か! そういや禁手っぽいの使ったって言ってたな」

 

 九成が白熱してたのも当然だし、隠し玉があるってのも納得だったな。

 

 確かあの子が、テロリストの星辰光で極寒になって他施設内を一気にあったかくしたって話だったな。

 

 俺が思い出してると、先生も映像を確認しながら首を捻ってた。

 

「いや、あの嬢ちゃんが使ってるのはおそらく赤き炎の腕(アーム・ファイヤ)だろう。右手に炎を纏うのが基本で、極めて放てるようになっても右手限定は変わらないはずだ」

 

 あ、そうなんだ。

 

 でも映像では両手に纏ってるけど?

 

「既に禁手ということではないですか? 伏せ札や隠し玉がその上であるのなら、先ほどの判断と矛盾は無いと思いますが」

 

 シャルロットが指を口元に当てながら言うけど、先生はそれでも首を捻ってた。

 

「いや、それだと出力がでかすぎるだろ。赤き炎の腕は神器としちゃそこまで強力ってわけでもねえから、禁手になっても最大性能はそこまで高くねえんだがなぁ」

 

 ん~。なんかよく分からないことになってるな。

 

 先生は本気で気にしてるみたいだけど、リアス部長はため息をついてから首を横に振った。

 

「……まあ、それはいいでしょう。私達はゲームでとはいえ争うのだもの。全てをグレモリー眷属(私達)と近しいアザゼルや和地に明かせるわけではないわ」

 

「まあそうね。初見っていうのはそれだけで優位性が変わるものだし、今後のレーティングゲームを見せるのなら手札を可能な限り伏せるのは立派な戦略的選択肢だわ」

 

 カズヒもそう言って頷いた。

 

 まあ確かに、そういやそうなんだよなぁ。

 

「確かにカズヒの言うとおりだ。それに、他の試合もある以上はあまりこの試合だけに時間をかけられないか」

 

「……考えるのは後でまとめてですね」

 

 木場と小猫ちゃんも頷いて、次の試合を見ることになる。

 

 でも後三試合か。結構長いな。

 

「では、次はどの試合にしますか? 先を見据えるなら次に当たりそうな相手から見るのがいいと思いますが」

 

 ルーシアがそういうと、先生は切り替えたのかすぐに魔方陣を操作し始めた。

 

「なら、サイラオーグとノアの試合だな。リアスのチームとタイプが近いサイラオーグとは、近いうちにやり合うことになるだろう」

 

「少し早いのではなくて? 次になるのならゼファードルだと思うのだけれど」

 

 部長がそういうけど、先生は首を横に振った。

 

 ん? なんかあるのか?

 

 俺が首を傾げてると、今度はカズヒが肩をすくめた。

 

「ゼファードルはもうリタイアでしょうね。どう見積もってもしばらくは試合ができるとは思えないわ」

 

「むしろ一生試合が出来なくても驚かねえがな」

 

 先生までそんなことを言うけど、どういうこと?

 

「どうしたというのだ? 負けて悔しいのは分かるが、だからこそ雪辱に燃えると思うのだが」

 

「いや、そんなことはゼファードルは考えてもいないだろうさ」

 

 ゼノヴィアがそう言うけど、先生はそう返した。

 

「奴はもう駄目だ。ヴィールに一瞬かつ徹底的に、しかも自分の全力をあっさり打倒されて負けたことで心が折れてるよ」

 

 心が、折れてる。

 

 ……諦めなければ案外何とかなる困難って多いけど、困難を前に諦めちまったらできることもできなくなる。

 

 俺達がここまでこれたのは、困難が遭っても諦めずに頑張ってきたからだ。逆に、才能があっても諦めちまったら困難を超えられないってことか。

 

 なんていうか、なぁ。

 

 もったいないとかそんなことを思っちまう。

 

「己の夢に一切の妥協も躊躇もない奴は、相手の精神を殺す気で挑むことは十分ある。サイラオーグ・バアルにしろヴィール・アガレスにしろ、殺すぐらいの腹積もりで仕掛けてくる連中は怖いから気を付けとけ」

 

 先生はそう言うと、だけどちょっと目を伏せた。

 

「最もそれは恐れだけじゃなくて恨みも向けられるがな。だからこそサイラオーグは敗北したと言ってもいい」

 

「……でも、そのサイラオーグって人は若手悪魔ナンバーワンで、ノア・ベリアルって人は六位で圧倒的に不利だったのに、どうやって勝ったのかしら?」

 

 イリナが気になるのも分かる気がする。

 

 俺はサイラオーグさん達のことはよく知らないけど、若手ナンバーワンってことはめっちゃ強いんだろ?

 

 それにノア・ベリアルとフロンズ・フィーニクスは結構な頻度で眷属のトレードを行っているとか聞いたことがある。

 

 リアス部長もその辺りは当然知っているから、少し首を傾げていた。

 

「そうね。フロンズとノアは一部の側近を除いた眷属は、定期的に未使用の駒や他の悪魔の眷属と交換して、一年もすれば殆どが入れ替わるわ。当人達は「どんな時でも一定の指揮能力を得る練習」と言っているけれど」

 

「奴さんは自前の眷属じゃなくて、領地や臣民規模で強化する方針のようだしな。そもそも眷属悪魔って奴を「直属の部下」程度で認識してるんだろうさ」

 

 先生はそんな部長に頷きながらそう言った。

 

「奴からすれば戦力は側近じゃなくて配下の軍勢レベルで揃えるべきものってことだ。だから直属は軍事力じゃなくて技術力を重視しているし、レーティングゲームそのものも民営化してスポンサーに回りたいってところなんだろう。……そして」

 

 そう言いながら、先生は目を細めて映像を再生させる。

 

「そのスタンスがよく分かる一戦の一つがこれだ。見とけよ、ノア・ベリアルのサイラオーグ潰しをな」

 




 と、ヴィールの大暴れっぷりとサイラオーグの封殺を一話にまとめました。








 ヴィールははっきり言って、これでもまだ本気を出してません。もちろん他の眷属も、真の力の領域を見せることを禁じています。

 これは彼のスタンスによるもので、それが明かされた時が彼のガチの領域を見ることができるときでしょう。

 なおヴィールの設計コンセプトは「若手悪魔最強にして最狂」「意思の力が強さとなるなら、そこに貴賤は関係ない」。少なくともサイラオーグやカズヒ、そして和地であろうと、一対一の戦闘でヴィールを任すつもりはありません。イッセーやヴァーリであってもD×Dの領域に至るまではタイマンで勝たせるつもりは現状ないです。

 その本領が言ったんでも垣間見えるまであと少し。今月中には書けるし投稿できると思うので、もうちょっとお待ちくださいな。








 ちなみに前に書いたかもしれませんが、カズヒが魔術師(メイガス)的に五大属性として設定していることから、サブヒロインはそれぞれの属性をを戦闘スタイルに組み込んで設定する形になっております。
 春っちこと、成田春菜(なりた はるな)は火属性です。なので非に特化した戦闘スタイルですが、かなりすごいので今後も注目してくださるとうれしいです。

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