好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 シリアスな題名ですが三割ほどギャグがあることをご容赦ください。









 あとなんか気付いたら1が増えた。というか1いれてるやつの評価の1の乱れうちが多すぎてこいつは本当によんでるのかと思い始めています。

 高評価は別にそのままでもいいとも取れるけど、低評価は何がダメなのかわからないと不快なだけなので、ダメポイントを教えて欲しい。変えるべきかいなかもわからん。








 あと、誤解がないように宣言しますが、自分にサイラオーグを下げる意図はありません。

 サイラオーグを改悪しないように、しかし明確な敗北を刻み付ける方法を考慮した結果、作戦による逃げ切り勝ちが妥当と判断しました。

 嫌いなキャラクターだからといって道理の伴わない理不尽で改悪する気はなく、好きなキャラクターであろうと必要なときは苦難を与えることを心情としているので、不満に思わせてしまったのなら謝罪します。


魔性変革編 第三十七話 勝敗を超える物

 和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、あんまり人がいると狭いからグレモリー眷属と見届け人代わりのアザゼル先生だけ残して一旦退出した。

 

 とはいえ、アーシアに対してお熱なディオドラに対して警戒しているメンバーは多いので、別室で待機と言ってもいい。

 

 俺達は休憩感覚でだらけたりしながら、それが終わるのを待っている感じだ。

 

「そういえば、私は事情をよく聞いてないのよね。あのディオドラって人が、アーシアさんが追放されるきっかけになった上級悪魔だったのよね?」

 

 と、缶ジュースを飲みながらイリナがそこを切り出した。

 

 まあ、あの告白を聞いてない組との間にはどうしても情報の密度が違うだろうな。

 

「ああ。証拠としてあいつも傷跡見せたけど、あんな怪我を見たらアーシアなら衝動的に回復しちゃうだろうな」

 

「おっきな傷跡でしたものねー。人間界なら問答無用で緊急手術で集中治療室ですの」

 

 俺に続いてヒマリもそう言うけど、実際そんな重傷だったな。

 

 いやほんと、ディオドラが惚れるのも納得ではある。

 

 ほんと、ヒマリの言う通りほっといたら死んでいたレベルの怪我だったからな。あんな状態で教会にいたら精神的にもきつかっただろう。

 

「教会のシスターがあんな重傷を治したんだものぉ。それが原因で追放された負い目もあったら、若い子なら想いを寄せちゃうかもしれないわよねぇ」

 

「リーネスって俺達と歳変わらないだろ。なんだその年配者視点」

 

 それとなくリーネスに突っ込むけど、確かにそうだろう。

 

 だからディオドラがアーシアに結婚を申し込むのもちょっとは分かる。

 

 しかしまあ、あいつは教会に縁がある上級悪魔だな。

 

「そういえば昔同じマンションだった枉法インガって人がディオドラの眷属なんだけど、あの人も修道院出身なんだよ」

 

 俺はそのことを思い出しながら言うと、ルーシアがちょっと目を大きくした。

 

「修道院の人がなんで、アスタロト本家の転生悪魔に? アーシア先輩のいたはずの教会もですけど、普通は悪魔も近づかないようにしているし、近づけない備えも多少はあるはずなのですが」

 

 そういえばそうだな。

 

 ちょっと気になるけど、インガ姉ちゃんの場合はちょっと違うだろう。

 

 なんたって、問題はそれどころじゃなかったわけだし。

 

「インガ姉ちゃんから聞いた話でしかないけど、なんでも修道院が教会嫌いの妖怪に襲撃されて、ディオドラがたまたま正体を知らずに助けてくれた修道女を助けに来た際、流れで蘇生目的の転生をさせたとかなんだとか」

 

 大体そんな感じだったはずだ。あとでちょっと思い出し直した方がいいかもしれないけど。

 

 そんな感じで思い出しながら説明すると、イリナがあ~と言わんばかりに上を見上げた。

 

「あ~。そういえば日本にある修道院が、数年前に妖怪に襲撃されて壊滅したって事件はあったわねぇ」

 

「そうなんですの? でも、そのあと妖怪の連中はどうしましたの? 当時の教会がただで済ますとは思いませんのよ?」

 

 ヒマリがそういうと、イリナは首をひねりながら思い出し始めた。

 

「それが、悪魔の勢力と続けて揉めたらしくて、下手人の集団は壊滅してるのよ。元々妖怪の中でもはぐれ者だったみたいで、悪魔とも和平を結んでなかったからよく分からないことも多いのよねぇ」

 

「あ~。ま、あの時期ならそうなりますわな」

 

「どの勢力とも結ばれてませんでしたし、複数の勢力と揉めれば分からなくなることもありますね」

 

 アニルとルーシアも納得した感じだな。

 

 ま、敵対中の勢力が三つも絡んで揉めたんだ。記録に残すのも一苦労だし、集められる情報にも限度があるよな。

 

 というより、そもそもディオドラが仇を討ったとかか? 見かけによらず熱い男なのかもな。

 

「和平前はそういったことも多かったし、そういう意味だと和平様様じゃん? ……ま、今は禍の団(カオス・ブリゲート)って厄介な連中が出張ってるけど」

 

「それもそうねぇ。でもぉ、和平が結ばれてなくても動きそうだし、暴れだす前に和平が結べてよかったものぉ」

 

 そんな風にリーネスが苦笑するけど、ふとちらりとカズヒ姉さんに視線を向けた。

 

 そういえば、カズヒ姉さんは一言もしゃべってないな。

 

 俺もそれとなく見ていると、なんかスマートフォンを取り出してなんかメッセージを送信してるみたいだし。……今なんか魔法とか魔術とか使ってた気もするんだけど。

 

 俺はちょっと首を傾げたけど、その時ドタバタとなんか騒がしくなってきたな。

 

 部長達がいる部屋の辺りだけど、何かあったのか?

 

 俺達が首を傾げていると、転移魔方陣の発動と思われる感覚がしてきた。

 

 どうやらディオドラは帰ったらしい。

 

「……終わったみたいねぇ。じゃ、戻りましょうか」

 

「分かりました。あ、まずはゴミをゴミ箱に入れてからですよ?」

 

 そんな風にリーネスとルーシアがまとめる形で、俺達はグレモリー眷属のところにUターンするけど―

 

「あの野郎絶対倒してやる!」

 

「へぶるぁ!?」

 

 イッセーが勢いよくドアを開けた勢いで、開けようと伸ばしていた俺の手に激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 後で謝ってくれたからいいけど、ドアを開ける時はもうちょっと静かにしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあその気持ちも分からなくはない。

 

 ディオドラは業を煮やしたのか、自分の眷属とトレードでアーシアを手に入れようと画策したそうだ。

 

 だが自分の眷属を家族として扱うリアス部長は当然拒否。むしろ結婚関連に夢もあるしビジョンもある身として、ディオドラのやり方に更なる嫌悪感を見せて険悪な雰囲気に。

 

 更にあろうことかディオドラがやらかした。今度自分達がレーティングゲームをする際に、その勝敗で決めようとか抜かしたらしい。

 

 もうちょっと手段を選べというか、それを言ったら余計にややこしくなると想像できるだろというか。よっぽどアーシアのにご執心とかそういうことか?

 

 しかも割って入ったイッセー相手に「下賤な下級悪魔」発言。これにはアーシアも怒ってつい平手打ちするけど、ニコニコ笑顔でアーシアの目を覚まさせると言って宣戦布告。

 

 間がいいのか悪いのか、次の試合がグレモリーVSアスタロトになったとアザゼル先生に報告が入り、ヒートアップしたイッセーや部長がそのままレーティングゲームを了承しやがった。

 

「……相手の戦力も把握してないってのに、何を考えなしにやってるのよイッセー。部長も止めなさいよ」

 

 心底からついてますとよく分かるレベルで、カズヒ姉さんがため息をついた。

 

「俺が」

 

「私が」

 

「「ディオドラに負けると!?」」

 

 イッセーも部長もめっちゃ怒り心頭で吠えるけど、カズヒ姉さんは逆に冷めている。

 

「敵を知り己を知ればっていうでしょう? 己はともかく敵が分かってないのに、勝てるかどうかなんて確信できるわけないでしょうが。ジュースでも飲んで頭を冷やしなさい」

 

 と、ため息をもう一回つきながら、カズヒ姉さんはまだ誰も飲んでなかった缶ジュースを二人に押し付けた。

 

「まあそれならそれで、さっさとディオドラ・アスタロトとイシロ・グラシャラボラスのレーティングゲームを見た方がよさそうねぇ。先生ぇ、お願いします」

 

「そうだな。気分転換も兼ねて敵情視察と行こうかねぇ」

 

 と、リーネスの発案で先生が怨敵ディオドラとドMのイシロのレーティングゲームを始めるが―

 

『『『『『『『『『『うっわぁ』』』』』』』』』』

 

 ―大体そんな感想になった。

 

 いや、何がうっわぁっていうとイシロ・グラシャラボラスだよ。

 

 外観はもう美少女というほかないめちゃくちゃ可愛い女の子にすら見えるイシロ・グラシャラボラス。

 

 彼女は盛大に攻撃を喰らっていた。………わざと。

 

「ああ危ない危ないさあ攻撃を受け止めるわよぉ!!!」

 

「いや邪魔なんだが」

 

 眷属にも邪魔と言われながら、攻撃に割って入って受け止めるイシロ・グラシャラボラス。

 

「させないっていうかこっちに攻撃を放ちなさい!!」

 

「いや、あんた狙ってないんだけど!?」

 

 目くらましの噴煙を発生させる目的の攻撃すら見逃さず、全力でディオドラの眷属の放つ攻撃を受け止めるイシロ・グラシャラボラス。

 

「前後から! 前後から放たれる攻撃ぃ!!」

 

「「いや本当に邪魔!」」

 

 追い詰められた眷属をかばい、孤軍奮闘するディオドラが放った攻撃を、味方が放った攻撃と前後で挟まれるように割って入って攻撃を喰らうイシロ・グラシャラボラス。

 

 一言言おう。

 

 あの女、試合の勝敗を考えてねえ!

 

 室内の全員が唖然となっていた。

 

「……あの部長、あの人、プロのレーティングゲームのプレイヤー相手にストレート勝ちを三回もやったから、会合に参加したんですよね? ……あれで?」

 

 信じられないことをイッセーが言ってしてたけど、部長は視線を逸らした。

 

 まさかあんなだとは思ってなかったんだろう。仕方ないな。

 

「……ストレート勝ちに関しちゃ普通に試合をしてるみたいだぞ? 後で話を聞かされたみたいだが、「……若手の有力者の一撃はどれだけ痛いのかと思っていたら、つい我慢が出来なくて」とか頬を赤く染めながら満面の笑顔で言われて、話を聞いた奴は有休をとったとか」

 

『『『『『『『『『『うっわぁ』』』』』』』』』』

 

 シンクロしてドン引きして、あと心労が限界になったであろうその人にも同情した。

 

 なんというか参考にならない。

 

 ちなみに試合形式は敵の撃破じゃなくて特定のアイテムを破壊した数で決まるらしく、ディオドラたちはディオドラとインガ姉ちゃんが奮闘して時間を稼いでいる隙に、人海戦術でアイテムの過半数破壊してディオドラが勝った。人数さとディオドラの尽力で凌いだ形だ。

 

 インガ姉ちゃんは星辰奏者としてかなり高いスペックだったらしい。そしてディオドラも、リアス部長と真っ向勝負しても勝てそうなスペックで頑張った結果凌ぎ切った感じだ。

 

 ……それ以上にイシロが割って入りすぎて味方を引っ掻き回したのが原因な気もするけど、中盤に入る前から眷属達のやる気が全然見られなかったしな。

 

 モチベーションって本当に重要だよなぁ。

 

「にしても、ディオドラの奴はなんか強くなりすぎだな。あいつ下馬評から考えてもここまで強いとは思えないんだが」

 

「そうね。夏休みの間に鍛錬を積んだと考えるべきでしょうけど、それにしても動きが早く力強すぎる気もする」

 

 先生とリアス部長が首を傾げていると、リーネスはまじまじと映像を見て小さく頷いた。

 

「……リアス部長ぉ、確か彼は冥界の技術顧問ともいえる現ベルゼブブの親族でしたよねぇ?」

 

「え、ええ。悪魔の駒を開発した、アジュカ・ベルゼブブ様を輩出したアスタロト本家の次期当主よ」

 

 部長のその言葉に、リーネスは再び頷いた。

 

「あの、リーネスさん? どうしたの?」

 

「何か気付きましたか?」

 

 イリナとルーシアが尋ねると、リーネスはディオドラを指さした。

 

「……うん、ちょっと気になるところはあるけれど、確証は無いから、もうちょっと調べさせてねぇ?」

 

「いや、ディオドラとのゲームはあまり時間が無いから、できれば言ってほしいんだが」

 

 ゼノヴィアが文句を言うけど、リーネスはにっこり微笑んでそれを流した。

 

 な、何に気づいたんだ?

 

 俺達はすっごい気になるんだけど。

 

 めちゃくちゃ気になってると、先生はなんかため息をついた。

 

「話は戻すが、若手同士のレーティングゲーム、どいつもこいつも(キング)同士で戦いすぎだろ。いや、ディオドラは戦っているとかそういう感じじゃねえが」

 

 そんな風に先生は、呆れている感じだった。

 

「レーティングゲームにおいて、王は倒れたらその時点で終わりな存在だし、実戦においても中核だぞ? そもそもトップの仕事は前線より指揮が主体なんだから、もうちょっと戦闘を避ける努力が必要だってのによぉ」

 

「まあ、気性や性格って中々治せないものね」

 

 そんな風にカズヒ姉さんも苦笑するけど、まあ確かになぁ。

 

 王がやられたら即敗北が基本なんだから、可能な限り避ける努力は必須だよなぁ。その辺は然り考慮するべきか。

 

 リアス部長はちょっと顔を逸らしているけど、まあそこは少しずつ慣れていくべきなので頑張ってくださいな。

 

 そんな関与しないからこその無責任発言を内心でしながら、俺達は最後のシーグヴァイラ・アガレスとフロンズ・フィーニクスのレーティングゲームを見るんだ……が。

 

「……なんか、こぅ……アレですよね?」

 

「具体的じゃないよ。でも、言いたいことは分かるかも」

 

 と、アニルや小猫ちゃんが微妙な表情を浮かべる気持ちも分かる。

 

 試合内容はランペイジ・ボールとかいう、ボールをゴールに入れるという、一種の球技。ゴールは点が入るごとに転移して、また選手は戦闘不能になっても一定時間が経つとサイド参加ができるという代物だ。

 

 ゲームそのものはある意味一方的。点を入れたのはシーグヴァイラ・アガレスのチームだけで、フロンズ・フィーニクスは一点も入れることは無かった。

 

 だけど、それをもってしてシーグヴァイラ・アガレスの圧勝と言えるものはそうはいないだろう。

 

 なにせ、シーグヴァイラ・アガレス眷属は平均して三回はリタイアした。シーグヴァイラ本人を含めた殆どの眷属が再出撃までのインターバルを経験しているからだ。

 

 それほどまでに戦闘は圧倒的だった。

 

『はっはぁ! まさかこんなもんかい! アガレスが聞いて呆れるねぇ!』

 

 そう吠えながらハルバードを振り回すのは、会合の時に匙に切りかかったとかいう女だった。

 

 あのサイラオーグ・バアルがガチ目の対応をしたって当たりでも、その女がシャレにならないぐらい強いってのがよく分かる。

 

 アガレス側にしたって、女王のドラゴンらしい男とアガレスが、更に上級悪魔の一族らしい騎士(ナイト)を含めた数人で何とか凌いでいるようなものだ。はっきり言って、あの場で一番強いのはあの女だろう。

 

 だがそれ以上に、他の戦いは蹂躙と言ってもいい。

 

 主力がハルバード使いに抑え込まれている所為で、フロンズの眷属はインターバルを入れて休憩しながらでも蹂躙できている。その所為でどんどんやられているぐらいだ。

 

 そしてフロンズは……ぶっちゃけ何もしてない。

 

 攻撃が届かないだろうところまで距離を取って、二人ほど護衛を付けたうえで微笑みながらカメラじみた術式が向けられているだろう方向を向きつつ、その光景を解説。

 

 その二人は俺達がアザゼル先生の護衛をやっている時に会った二人だ。話を聞く限りあの二人は受肉したサーヴァントだとか。

 

 そして解説対象は、フロンズが率いる眷属達、それも兵士を主体とするメンバーだ。

 

 残りのメンバーは全員がレイドライザーでレイダーになって戦っている。ここまではいい。

 

 だが問題は、同時に使っている剣だ。

 

 それぞれの体格に合わせて多少の調整はされているが、同時に基本的な部分は共通になっている。そして切れ味はそこそこ高いが頑丈さはさらに高くなっている。

 

 そして問題は、それらすべてが聖なるオーラを纏っていることだ。

 

『ご覧いただけてますでしょうか。輪が眷属が使うこちらの聖剣、これは我らが大王派のシュウマ様が擁する研究班が鍛造に成功した魔性聖剣という新たな聖剣の大量生産仕様、魔軍聖剣ブリゲイターというものです』

 

 そう語るフロンズの手にも、同じような聖剣が握られている。

 

『製法そのものは従来の聖剣研究をもとにしながらも、手順をきちんと踏むことで、現段階でも年百本以上の製造が可能。今後技術指導が進めば一日一本製造することも不可能ではないでしょう。ですがこの最も素晴らしき点はそこではありません』

 

 そう語りながら、フロンズは自慢げに自分の眷属を見た。

 

『彼らは特別聖剣に愛されているわけではありません。彼らは聖剣に選ばれたのではなく、彼らに合わせて聖剣を造り出したからこその、新たなる時代の形なのです』

 

 そう、それこそが多数の聖剣使いを用意するという、冷静に考えるととんでもない偉業の真骨頂。

 

 あそこにいるフロンズの眷属は純血悪魔の下級であり、教会の人工聖剣使いの技術も使われていない。

 

 にも拘らず全員が聖剣を使い、更にレイダーとしての機能である共通の星辰光でアガレス眷属を攻め立てる。

 

 レイダーが共有する星辰光は雷電操作。俺のかつての見立て通り、干渉性の高さでお互いの雷撃に干渉することで、部隊による連携でより強大な雷撃を放つというものだ。

 

 これとレイダーの装甲を利用することで、電磁加速による突撃といった手法までやってくるから始末に負えない。アガレス眷属には同情する。

 

 更に得物が聖剣だということで、もはや勝敗は圧倒的だ。このゲームが通常の戦闘系統なら、既に勝負はとっくの昔についていることだろう。

 

 だが、フロンズは点を取ろうとしない。

 

 ボールを持っている敵眷属を倒すことはあっても、ボールを拾うことは一切しない。むしろボールを取りに来る相手の眷属を待ち構えて戦闘している。時にはあえて相手の方に蹴り出して、動き出すよう誘導することすらある。

 

『この聖剣は製造の際に対象となる人物の血液や髪などを採取し、その鉄分や炭素を利用、または薪の代わりとすることで担い手と同調することで、聖剣使いの適性ではなく対象にのみ同調する聖剣にすることに成功いたしました。現段階では奪われ再同調される可能性を否定はできませんが、聖剣というものが所有者を選ぶことも踏まえれば、リスクは普通の聖剣を使うより遥かに低いでしょう』

 

 そう語るフロンズは、決して眷属達を責めない。

 

 これでは最終的にルール上では負けるのにだ。

 

 むしろその調子だと言わんばかりに、戦闘することを望んでいるような立ち回りだった。

 

『今後はレイダー部隊との同時運用や別個の運用も踏まえつつ、冥界の軍事力強化の一つとして要望を通したいところです。ご覧の皆様で眷属用に求めるおつもりがありましたら、シュウマ・バアル様にご連絡いただけるとありがたいです』

 

 ……そんな通販の営業トークみたいなことをフロンズは続け、そして試合は終了する。

 

 結果としてはアガレス側が勝ったようなものだが、これは勝たせてもらったと言っていいだろう。

 

 いや、むしろ―

 

「……フロンズは本当にレーティングゲームに興味はないんだな」

 

 ―俺が思ったことを、アザゼル先生はそう言い切った。

 

「どういうつもりなんだ? ゲームでいくらでも勝ちようはあったろうに、結局フロンズ達は勝てる試合をみすみす逃したといっていいだろう」

 

「そうですわ。第一、あそこまで実態が圧倒していたのなら、勝ってしまっても問題ないでしょう。恩を売ったつもりなら、むしろ屈辱を与えているだけで論外ですわ」

 

 ゼノヴィアと朱乃さんがそう言うと、アザゼル先生は冷めた目を止まった画面に向けた。

 

「さっき言ったとおりだよ。より正確にいうなら、あいつはレーティングゲームの勝敗なんかに興味がない。目的を果たすと勝ってしまう勝負は勝つが、そうでないなら一切勝敗なんて考慮しようとすらしてねえんだ」

 

 ああ、そんな感じだった。

 

 ゲームの勝敗その物なんてどうでもいい。敗北したけどそれが何か。

 

 フロンズのゲームに対するスタンスには、本当にそんな感じが漂っていた。

 

 ただ、俺はそこまでは分かっても実態が分からない。そこまでは俺の頭じゃ答えを導き出せない。

 

「先生。その目的ってのが何なのか分かりますか?」

 

 だから俺は質問すると、先生はすぐに頷いた。

 

「CMだよ。厳密にいえば、あいつはゲームを自分達が開発した技術のいい宣伝に使うことばかりに使っている」

 

「宣伝!? そりゃ確かに凄い物作ってますけど、それで負けたら評価だって―」

 

 イッセーがそう反論するが、そういうことじゃない。

 

 そ、あいつにとってそんなものは本当にどうでもいいんだ。そこは俺も何となく分かるし、分かっているメンバーも何人かいそうだ。

 

 そのうちの一人である木場が、自分の手元を見ながら口を開いたのはその時だ。

 

「イッセー君。彼は競技選手としての評価何てどうでもいいんだよ。何故なら彼は技術とその影響を受ける人員数にこそ主眼を置いているからね」

 

 そう言われて、イッセーは一瞬だけ黙り込んだ。

 

 そして視線が上に行ったり右に行ったりしたけど、少しすると俺達の方に戻ってきた。

 

「それってつまり、軍隊全部を強くすることにしか興味ないから、少数精鋭の眷属悪魔やレーティングゲームで評価を上げることに意味を感じてない……ってことか?」

 

 なんだかんだで考えられるし、頭の回転も悪くないよな。流石にイッセーもこの高偏差値高校に入っただけのことはあるな。

 

 そんでもって他の分かってない組も、今のイッセーがした解釈で大体分かったらしい。

 

 視線がアザゼル先生に集まると共に、先生は頷いた。

 

「会合の後で駄弁ったメンバーは覚えてるかもしれないが、フロンズは冥界の軍事力強化を一人十数人程度しか持てない眷属悪魔じゃなく、数が増えていっている下級中級による軍隊規模で高めると割り切っている。だからこそ、奴は会合で、必要性の薄いレーティングゲームを民営化させる方針を示しつつ、富国強兵に有効な教育関係の改革として下民が通えるレーティングゲームの学校設立を賛同したんだ。そのスタンスがものの見事に見えてきた一戦だったな」

 

 そう言いながら、止まった画像のフロンズをアザゼル先生は見据える。

 

 それは、一技術者としての関心か。それとも、堕天使を統べる者としての警戒か。そこは俺には分からない。

 

 だけど言えることは、この人は珍しく本気でマジな表情を浮かべていることだ。

 

 そして同じように考えていたリアス部長も、眉間にしわを寄せていた。

 

「……厄介ね。政治的なことを主体として、既に布石も打っているのが尚更だわ」

 

「どういうことかしら? リアス先輩」

 

 イリナが首を傾げると、リアス部長は軽くため息をついた。

 

「フロンズはさっきの営業でシュウマ・バアルという名前を、商談をする際の相手として告げていたでしょう。彼は大王派の有力者で、バアル分家の中でも有数の家の当主よ」

 

 そう言うと、部長はさっきの映像を映し出しながら、黒髪紫目の女二人を示した。

 

 一人はノア・ベリアルの女王の、サイドテールの女。一人はフロンズ・フィーニクスの女王の、ぼさぼさ頭の女。

 

 この二人がどうしたっていうんだと思っていると、部長は目を鋭くする。

 

「フロンズ・フィーニクスの女王は、シュウマ・バアルの二子にして長女のティラ・ベリアル。あのサイラオーグと一対一の決闘をして、彼にフェニックスの涙を使用させるだけの深手を負わせるまで食い下がった女傑よ」

 

 ……マジですか。

 

 あの大暴れっぷりを見ていると、もうそれだけでめっちゃ強そうなんだけど。

 

「ノア・ベリアルの女王はクーア・バアル。彼女もシュウマ・バアルの三子にして次女で、十二の純血の最上級悪魔と一対一で模擬戦を行い、渡り合ったこともある才女よ」

 

 こっちもこっちで洒落にならない女だった。

 

「シュウマ・バアルは本家に対して自分達が常に下に付くという名目で、複数の下級悪魔から優秀な素質を持つ女性を集めて妻とし、三人の妻の間に六人の優秀な子供達ができたの。シュウマ・バアル自身が最上級悪魔であると同時に、確実に最上級悪魔級の実力に至ると称される六人の子供を持っているわ」

 

「そりゃまたすっごいというかなんというかねぇ。だが、厄介だな」

 

 そんな風に、アザゼル先生はフロンズ達を称した。

 

「賭けてもいい。今後大王派は、フロンズ、ノア、そしてシュウマを中心に一気に力をつけていくだろう。お前らもうかうかしてると追い抜かれるぜ? ……気を付けるんだな」

 

 先生がそう言うだけの者達か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして先生のこの予感は的中する。

 

 後に若手四王(ルーキーズ・フォー)と呼ばれることになる、リアス部長達とは別枠で語られる、若手悪魔のもう一つの筆頭がいた。

 

 後の世に革新衆とすら呼ばれることになる、若手大王派の集まりの筆頭として、彼らは名を知られることになるのだから。

 




 具体的に言うと、趣味と宣伝。


 アップダウンが激しいですが、そこについてはご容赦を。







 趣味百パーセントでアホやってるイシロは放っておいて、フロンズの方を。

 フロンズは本当にこんなスタンスで行動しており、はっきり言ってレーティングゲームの勝敗はぶん投げて行動してます。

 何よりも冥界全体を強化することと、その過程で自分達に利益を与えることを考えているので、レーティングゲームの価値を「其れなり以上の上級悪魔をアグレッサーとした、実戦テストを兼ねた宣伝の機会」程度に割り切っております。

 なんていうか、フロンズとノアのコンセプトの一つは「リアス達とは戦う土俵が違う」という観点です。

 基本的に視点が異なるからかみ合わないので、リアス達からすれば非常にやりにくい感じです。簡潔にまとめるなら「相手が勝つ土俵で勝負して何か意味があるのか?」といったところですね。

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