好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
和地Side
そんなことがあった夜、俺は外出することになった。
まあそういうこともあるだろうけど、聞きたいことはただ一つ。
「……なんで俺とメリードの二人なんだ、リーネス」
「消去法と警戒と気遣いといったところよぉ」
そう返すリーネスの指示に従って、俺はスーツを着ていた。
礼服や喪服の代わりになる黒いスーツは、そういったことを踏まえてリーネスが用意してくれている物だ。毎年サイズに合わせて伸長している代わりに、値段そのものはさほど高くない。
まあそれはともかく、あまり着てないから衣装に着られてるよな、コレ。
俺がそこを気にしていると、コホンとメリードが咳払いをしていた。
「あまりそわそわしない方がよろしいかと。こういった場では逆に悪目立ちいたします」
「いや、いろんな意味で
本心からそう言いたくなる気持ちを分かってほしい。
ここはつまりあれだよ。歓楽街。
風俗店とかキャバクラとかホストクラブが蔓延る夜の街。どう考えてもこの時間帯に高校生がいる所じゃないし、メイド服着た女の出番なんてイメクラぐらいしかない場所だ。
場違いなのは当然だろうに、メリードは平然としていた。
「それは分かりますが、私はリーネス様の従者ですので。必要だというのなら、そしてそれが真実ならば従いましょう」
「気を付けましょうねぇ。ヒューマギアに星塀を向けるような変態性癖とか、絶対増え始めてるでしょうしぃ」
そんなことをリーネスが言うけど、まあそれなりに備えはしているから大丈夫だろう。
いやほんと、なんで俺こんなところにいるんだろうなぁ……と思ったら。
「あら、もう来たの? お互い早かったわね」
「あれ? 九成君も来てたの? っていうかなんで私はこんなところの来る羽目になったのか、説明してくれないかしら、カズヒさん?」
なんかきょとんとしているイリナを連れて、カズヒ姉さんが来ていた。
気遣いってつまりこういうことなんだろうかなどと思っていると、更に俺達に視線を向けながら近づいている人影が。
「お待たせしました。と言っても、集合時間より三十分も速いですけど」
「まあいいじゃねえか。だったらさっさと行こうぜ?」
なんでソーナ会長が、アザゼル先生と連れ立ってこんなところに!?
俺がイリナと顔を見合わせながら戸惑いつつ付いて行くと、そこは何というか「クラブ・グリゴリ」なんていう完璧に神の子を見張る者が経営に関わっている感じのビルを丸ごと使ったクラブだった。
ちなみに下の階層はそれぞれ大衆向けのキャバクラやホスト部になっており、上の階層は高級クラブになっている。
そんな高級クラブのそのまた上、最上階のVIP用クラブに俺達は連れてこられた。
「どうだ、すげえだろ? 元七十二柱の本家や日本の各政党のトップ、大病院の院長や国際企業の重役、果ては各勢力の神クラスを接待する為に用意した神の子を見張る者の特注施設だ」
「「おぉ~っ」」
思わぬ豪華なもてなしに、俺とイリナはちょっと面食らってた。
ちょっと新鮮だから楽しみたいぐらいだな。
「……相談するつもりではあったけど、こんなところにする必要あったのかしら?」
「そうですね。あまり人に知られたくない話と伺ってますが、もう少し学生向けの施設は無かったのでしょうか」
なんてことをカズヒ姉さんと会長が言っているけど、本家次期当主の会長はともかく、カズヒ姉さんもあまり興味を示していない。
まるでここ程じゃないけどそれなりに高級な場所に通ったことがあるみたいな雰囲気だ。内乱地帯のゲリラが経験する余地なんてなさそうなんだけど。
「まあまあ。盗聴の危険がない場所で、かつあまり知られたくないっていったのはカズヒでしょぉ? ここなら要人用だからぁ、人員や施設も防諜はしっかりできてるわぁ」
そんなカズヒ姉さんの肩にしなだれかかりながら、リーネスはあやすようにそう言った。
え、そんなレベルの話なのか?
ミカエル様の直属であるイリナはともかく、なんで俺がそんな話に選別されるんだ?
……いや、ヒマリには向いてない話だってことは確信しているけどね!?
俺が戸惑いながらソファーに座ると、なんかこう……明らかに色っぽい男を誑し込むというかとろけさせる為の美貌を持ったお姉さん達が入って来そうだった。
後格好が目に毒すぎる。俺には、俺にはまだ早い!
「すいません冷静になれそうにないんですけど!」
「分かってる分かってる。おーい、悪いけど周囲を警戒しつつ食えるもん持ってきてくれ」
そんな感じでカナッペを肴にジュースを飲んで少し気分を紛らわせてから、リーネスはカズヒの方を向いた。
「それじゃぁ。……口が堅くて権力がある、グレモリー眷属以外を連れてきてって言った理由、教えてもらえるぅ? 諜報面もばっちりにしてるけどぉ」
え、コレカズヒ姉さんが言い出しっぺだったのか?
俺達の視線が集まる中、カズヒ姉さんは軽く肩をすくめた。
「……そうね、和地まで連れてきてくれたのは僥倖かしら」
そう言うと、カズヒ姉さんは会長に、アーシアがディオドラに求婚されている件とそもそも追放された理由について話し出した。
その辺りは会長もある程度は把握していたから、すぐに話は終わるけど、問題はそこからだ。
「イリナは今日のことだから覚えているでしょう? グレモリー眷属とディオドラが話している間にした、和地の話」
「九成君の話で今の流れだと、インガさんって人の話よね? 修道院が襲われた時にディオドラに助けられて眷属になったっていう」
な、なんでそこでインガ姉ちゃんが出てくるんだ?
「カズヒ姉さん? なんでそこでインガ姉ちゃんの話が?」
「まずはそっちの説明をしてからよ。それと……覚悟はしておいて」
覚悟って、どういうことだよ。
俺が胸騒ぎを覚えている間、カズヒ姉さんは俺がした話を皆にも伝える。
預けられていた修道院が妖怪のはぐれものに襲われて、死にかけたこと。別の修道女と縁があったディオドラが、彼女を助けに来たこと。その際其の修道女の頼みで、インガ姉ちゃんも蘇生させる形で転生悪魔にして助けたこと。
そしてそれを聞いている先生と会長の表情が、みるみる険しくなっていった。
一体どういう―
「……つまり、貴女はディオドラが
じょ、常習犯?
一体何の常習犯だっていうんだ?
俺が不安に駆られていると、会長の言葉を聞いた先生が肩をすくめた。
「なるほどねぇ。つまり釣りだって思ってるわけか」
釣り?
俺が本当に不安に覚えていると、カズヒ姉さんは頷いた。
「根拠……というか、懸念材料が他にもあるのよ。このディオドラが残していった、アーシアと交換する予定だった眷属の資料を見て頂戴」
そう言って、カズヒ姉さんはその資料をテーブルの上に乗せた。
ちょろまかしてる感じだけど、そこはまあいい。
そこにいるのは可愛い女の子とかだけど、彼女に何かが隠されているということなのだろうか。
俺達がそれを見てから視線をカズヒ姉さんに戻すと、カズヒ姉さんはかなり苛立っている感じだ。
ど、どういうことだ?
「……簡潔にまとめるわ。こっちの女の子、元シスター……を通り越して
………………は?
おいおいおいおいちょっと待て。
インガ姉ちゃんと本命だった修道女だけじゃなくて、挙句の果てに他にもいるってのか?
それは確かに、いくらなんでも怪しすぎる。
「……それも、
そう語るカズヒ姉さんの表情は、能面のようだった。
同時に殺意や憤怒や怨嗟が漏れ出てて、正直寒気すら覚えている。
だけどまあ、そこは思ったよりは気にならなかった。
……というか、俺も大概マジギレしてる自信がある。
いかんいかん。落ち着け落ち着け。冷静に冷静に。
そう、これはあくまでカズヒ姉さんの予測だ。怪しいのは全面的に事実だけど、まだリーチだけだ。確実ではない。
しっかり裏取りして、証拠も集めてからじゃないとな。万が一間違いだったら取り返しがつかないことになる。
そう、取り返しがつかないことになるレベルで、俺はブチギレる自信があるからな。
「じゃあ、裏取り調査とかそういうのをやればいいってことだよな? 俺はそういうの出来ないけど、できる奴を動かせる奴は揃ってるしな?」
「怖いわよ、九成君。でもまあ、そういうことならミカエル様の
イリナが俺の雰囲気に引きながらもそう言ってくれる。
こういう時はイリナみたいなタイプは助かるぜ。
素直で真っ直ぐだから、こういう懸念とかにはすぐにでも動いてくれるからな。そういう意味では天使向けな性格してるよ。
カズヒ姉さんもそのつもりだったのか、険しい表情をしながら頷いた。
「辺獄騎士団の本部にも、念の為既に連絡は入れているわ。映像資料で十分顔の確認はできるでしょうし、まして天使長であられるミカエル様の
あ、あのスマホはそういうことか。
本部に連絡してその辺りの準備をしてもらっていたのか。で、余計な茶々を入れられないよう、黙らせられるだけの箔を持つイリナを巻き込んだと。
先生もそこに気づいたのか、面白そうな含み笑いをしてたし。
こういうの好きそうだしなぁ、先生。
「ま、その辺に関しちゃ俺も口添えするさ。正直ディオドラのパワーアップは不自然だからそのつもりだったしな。……で、リーネス」
と、先生派リーネスに視線を送る。
「お前が態々連れてきたってことは、第一弾はそいつだってことでいいんだな」
「はい。そして、おあつらえ向きに的確な物の力を借りれましたぁ」
ああ、なるほど。
リーネスのその答えと、無言で一礼したメリードのおかげで大体わかった。
つまり、そういうことか。
俺が納得してると、リーネスは他にも気になってることがあるのか先生を真っ直ぐ見据える。
「あと、ディオドラが悪魔の駒の研究班とかと繋がってる可能性について調べてもいいかしらぁ。できればお兄さんでもある現ベルゼブブ様に探りを入れてほしいんですけどぉ」
「あぁ~。あの急激なパワーアップ、兄貴の方がテコ入れしたんじゃねえかって疑ってたのか。ま、確かに妙な急成長だしちょっと探っとくぜ」
なんか気にしてたのはそういう可能性か。
まあ確かに、あまりに急激に強くなってるらしいからな。そこは気になるか。
………俺は、インガ姉ちゃん顔を思い出す。
インガ姉ちゃんは、恩人のようにディオドラのことを語っていた。同時に、昔のインガ姉ちゃんとは思えないぐらい、自身が無くて暗い女性になっていた。
この懸念は当たってほしくない。
俺は、冷静でいられる自信がないからな。
Other Side
「………ひ、ひぃ……ひぃいいいいっ!」
「あ~あ~あ~。情けない姿だねぇ、大将」
「て……めぇ! お前が、お前が本気を出してりゃ俺だってこんなことには―」
「おいおいそりゃねえぜ。俺はあいつらがガチの本気を出してこないよう、力の配分に気を使ったってのに」
「なん、だと!?」
「そこにも気付いてねえんですかぃ? まったく、殺し合いレベルの大暴れを、特に文句なしでやれる機会が何度もあるって言われたけど……アウトっすねぇ」
「な、なんだと!?」
「だって心折れてるでしょ? そんなんで試合出ても無様すぎますし、俺が暴れる時間も出ないっすよ」
「……わ、分かった。今度お前を他の奴とトレードして―」
「あ、そういうの良いんで。アンナの結局模擬戦と一緒で、スリルが全然ないからやる気でないっすわ」
「はぁ!? じゃあどうす……まさか!?」
「……あ、安心してくだせぇ。旧魔王の末裔達に協力するとかはねえですわ」
「そう、なのか?」
「へい。昔あった面白い奴がちょっと一旗揚げるっていうんでしてね。そっちに行こうかと思ってますわ」
「一旗揚げる?
「はっはっはぁ。そんなレベルじゃないですよ。……えぇ」
「……がっ!? あ……ぐぁ……」
「―魔王派と大王派に喧嘩売るって話でさぁ。なんで、当分眠っていただきます……ぜ?」
と、どんどん不穏な雰囲気になっていきますが、次は日常……でもないけど、千条とは異なる回です。