好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
まあそんなわけで俺達は、次のレーティングゲームに余計な影響が出ないように黙っていることになった。
黒に近いけど物証がないグレーだしな。
だけどそんな心配は全くなかった。というか、グレモリー眷属的にそれどころでもなかった。
そして巻き込まれて、俺は今冥界のテレビ局にいる。
……なんでこうなった。
「いや、なんでこうなった?」
「知らねえよ、俺もちょっと混乱してるよ」
俺のボヤキにイッセーがそう返す。
更にアニルが盛大にため息をついた。
「最低でも、俺らはとばっちりに近いですぜ。あとギャスパーも近いっすかねぇ」
「あうぅ。い、インタビュー何て緊張で吐きそうですぅ」
そんなアニルに背中を擦られながら、ギャスパーは緊張で顔を真っ赤にしたり真っ青にしたりとせわしない。
「あはは……。まあ、こういうのもリアス部長と縁を持つなら何度かあるから、頑張って」
そう苦笑しながら、木場が俺達の分のお茶も買ってきてくれたので、とりあえず小休止。
事の発端は俺達が戻った時。ちょうどイッセーを巡ってコスプレして鞘当状態だったグレモリー眷属に入ってきた連絡だった。
なんとびっくりなことにテレビ番組の出演依頼だった。
若手悪魔同士のレーティングゲームは冥界全土に放送されているけど、これが想像以上に注目されており、特にリアス部長とソーナ会長のゲームは色々な意味で注目されたらしい。で、ゲームの視聴率稼ぎなどを踏まえてインタビューが行われることになったというわけだ。
そこに和平の活発活動を行う要素も絡んでいる。結果として聖ミカエル監察団やAIMS第一部隊も参加する形でのインタビュー番組が決定したわけだ。
うん、どうしてこうなった。
テレビ番組の参加なんて考えたことも無いから、正直かなり緊張している。
くそ、うかつだった。冥界、それも悪魔側は上級悪魔が何足も草鞋を履いてる社会だ。
領主に直属を率いての部隊長と、最低でもこの二つは確定。更にレーティングゲームのプレイヤーという競技選手。場合によっては芸能人といった仕事もすることになるらしい。
そんな上級悪魔と一緒に活動することが前提の和平に備えたコマーシャル活動。しかも例の件を踏まえれば、当然こういうことに参加する可能性もあったんだよなぁ。
「流石に緊張してきたな。俺もちょっと調子が悪くなってきそうだ」
「まあ、テレビに出演慣れしてないなら当然だよね」
控室で木場にそう同情されていると、男子用の控室のドアがノックされた。
「皆、そろそろ準備はできたかしら?」
「部長ですか、はい、準備は一応できています」
木場が部長に返事をして、俺達は控室を出てスタジオまでの道を進む。
誰もがちょっと緊張しているけど、同時にテレビ局の内部とかは初めてだから、物珍しくてきょろきょろしている。
人間界のテレビ局じゃなく、冥界のテレビ局を見れるってのは、ちょっと意外な展開でもあるよな。
俺達がそんな感じで歩いていると、何やらガタイの言い男が、十人近い人数を引き連れてやってきた。
確か、サイラオーグ・バアルだったな。
「サイラオーグ! 同じ日にあなたも呼ばれるなんてね」
部長が声を上げると、サイラオーグ・バアルも苦笑を浮かべながら片手を上げる。
「リアス。君もインタビューか」
「ええ、あなたは終わったの?」
「これからだが、君達とは別のスタジオのようだ。だが、そちらの試合を見させてもらった」
そんな苦笑交じりの言葉に、部長も苦笑交じりで表情が強張った。
「情けない所を見られたわね」
「お互い様さ。素人臭さもどうにも抜けなかったし、俺に至っては不覚を通り越して敗北したからな」
そう答えるけど、サイラオーグ・バアルはあまりへこたれている印象がなかった。
確か、後援者が軒並み手を切ってきたとも聞いているんだけどな。
そんな俺達の視線に気づいたのか、サイラオーグ・バアルは俺達の方に向きながら肩をすくめる。
「……後援者の件なら問題は無い。元々ゼロから始めている以上、また這い上がればいいだけさ」
「……そうね。それに、私があなたとゲームをするとしても、負けてあげるつもりはないもの。なのに心配するなんて失礼かもね」
あー、確かに部長の言う通りか。
リアス部長は真剣にゲームに臨んでいるみたいだから、負けてやる気はないだろうしな。
例え部長に負けたとしても、サイラオーグ・バアルは後援者に手を切られただろう。なら、同じことなんだから部長達が心配するのはお門違いだ。まして部長達側であり縁のない俺達がするなんて論外ではあるよな。
それでも気にしてしまうのが、人という生き物の美徳なのか悪徳なのか。
そんなことを俺が思っていると、サイラオーグ・バアルはうんうんと頷いていた。
「どれだけパワーがあろうとも、形に嵌められれば敗ける。
ぽん、と彼はイッセーの肩を軽く叩いた。
「赤龍帝、兵藤一誠」
「あ、はい!」
勢いよく頷くイッセーに、彼は小さく頷いた。
「ライザー氏との一戦を見ても思ったが、お前とは理屈無しのパワー勝負がしたいものだ。お互いゲームでぶつかるまでに、その力を高め研ぎ澄ませよう」
それだけ言うと、別のスタジオに向かって歩き去って行った。
俺はそれを見送りながら、少し笑っている気がする。
「あら、どうしましたの?」
「機嫌が良さそうですね。何か思うところでも?」
ヒマリとシャルロットにそう言われて、俺は素直に思ったことを言うことにする。
「いや、ああいう男って、同性として憧れるっていうかなんて言うか……な」
あんな風に生きられたら、きっと涙の意味を変えることもできるんだろうかと、そんなことを思う。
不遇な目にあっても性格を歪ませることなく、多くの者達の為になる理想を持って困難に立ち向かえる。
そういう背中や生き方は、多くの人に笑顔を見せられるんじゃないかと、そんな風に思うわけだよ。
「確かに、でかい男っすね。俺も高貴な血が流れてる身としては参考にしたいっす」
アニルも思うところがあるのか、そんな風に憧憬の視線を向けていた。
隣ではルーシアも、眩しい物を見ているような表情だ。
「……いいなぁ」
というか、何かが琴線に触れたのか、羨ましそうな声が聞こえてきたな。
ちょっと寂しげにも聞こえるそれに首を傾げていると、放送スタッフがこっちに向かって近づいてくると一礼してきた。
「お初にお目にかかります。この放送局でアナウンサーをしている者です」
「こちらこそ、今日はよろしくお願いね」
笑顔で部長と握手をすると、そのまま打ち合わせが始まっていた。
そんな感じでスタジオに入っていると、ギャスパーとかカズヒ姉さんがそわそわし始める。
「む? ギャスパーはともかくカズヒも緊張しているのか? 意外だな」
「あのねぇ。ゲリラ戦とかレジスタンス活動とかを、テレビの撮影と一緒にしないで頂戴。……方向性が違う上、考えてもいなかったから心の準備が足りてないのよ」
ゼノヴィアにそう返すカズヒ姉さんは、なんというかすっごい居心地が悪そうだった。
逆に余裕の雰囲気を見せているのはイリナだった。
……嫌な予感を覚えているのは俺だけか?
「ふふふ。いい機会だから主とミカエル様の素晴らしさを伝えないと。天使としては説法と布教ができてこそね」
「やめましょうねぇ。放送事故というか放送テロよぉ」
リーネスの指摘が答えだろう。
聖書の内容を利かせるだけでも頭痛案件なのが悪魔だからな? そらんじたり聖歌を歌ったりしたら問答無用でテロだからな?
緊急時に取り押さえられるようにしておくべきだろうか。
あ、ちらりと目が合ったカズヒ姉さんが頷いていた。
やはりカズヒ姉さんも同じことを思ってたか。なら所属的に近しいカズヒ姉さんに任せよう。
「すぅ……はぁ……。うん、深呼吸するだけでもだいぶ変わるよ、ギャスパーくん」
「あ、うん。ルーシアちゃんはしっかりしてるね」
「もちろん。私の兄はリュシオンだもの」
そんな風に、ギャスパーを落ち着かせているルーシアはにっこり微笑んだ。
流石というかなんというか。でも自分が深呼吸してからって当たりは、まだ年下って感じがするな。
……俺も深呼吸をしておくべきか。
「あ、木場祐斗さんと姫島朱乃さんはいらっしゃいますか? おそらく質問が多くなると思われますので、その辺りついてちょっと打ち合わせを―」
なんて感じに話が進んでいるからな。俺に話が降られる前に深呼吸しておこう。
いや、フラれない可能性は高いと思うけどな。AIMS第一部隊としての質問はリーネスに行くだろうし。
そういう意味では、聖ミカエル監察団の顔であり名目上のリーダーのイリナが心配だ。実際のまとめ役やカズヒ姉さんとヒツギ割と完勝しているみたいだけど、いろんな意味で注目を集めるべきはイリナだからなぁ。
実際、イリナに聞こえないようにカズヒ姉さんとヒツギがハンドサイン込みで入念な打ち合わせをしているし。ルーシアとアニルの後輩組に気づかれないようにしている当たり、自然体の二人を上手くカバーにしつつ動くつもりっぽいな。
まあいいか。それよりまずは深呼吸―
「……はぁああああ!?」
―ってどうしたイッセー!?
「あ~……う~……ん~……」
『う……ぐすっ……この俺が……っ』
なんかシャルロットとドライグもダメージ入ってるし。
え、俺が深呼吸してる間に何が―
「そ、そんなに落ち込まないでください。子供人気を集めるのって、結構大変なんですよ? そういう意味ではレヴィアタン様に次ぐ快挙なんですから、乳龍帝は」
―本当に何がどうした!?
俺達がめちゃくちゃ動揺していると、なんか出入り口側が騒がしくなってきた。
今度はなんだ。このちょっと気になる時に。
そう思いながら振り返ると、カイゼル髭が特徴的な、中年の男性悪魔がこっちにニコニコと微笑んできていた。
態々中年の姿になる以上、それなりに年季の入った悪魔だろう。あと体つきそのものはしっかりしているから、だらしない生活を送っているわけでもない。動くから見て相応に鍛錬も重ねているようだ。
そんな男を目にしたリアス部長は、ちょっと苦笑交じりだけど微笑んだ。
「あら、シュウマ・バアル殿ではありませんか」
……あの男が、フロンズ・フィーニクスやノア・ベリアルを抱えるシュウマ・バアルなのか。
俺達がちょっと注目していると、シュウマはニコニコと笑みを浮かべながら部長の前に来ると―跪いた。
な、なんだ?
思わず俺達が面食らっていると、シュウマ・バアルはリアス部長の手を取ると、両手で崇めるように包み込んだ。
「お久しゅうございます、リアス様。このような場でお目通りが叶うとは喜ばしいことです」
「……顔をお上げください、シュウマ殿。貴方は大王派の有力者。魔王派であり、何より筆頭のサーゼクス様の妹でもある私にへりくだるべきではないでしょう?」
リアス部長はそうとりなすけど、シュウマ・バアルは一向に立ち上がらない。
「いえ。派閥としては対立しているとはいえ、我々はともに冥界を憂いより良くせんとする同士です。なにより分家の長でしかない私風情が、本家の者であり次期当主でもあるリアス様と比べ物になるわけがありません」
……め、面倒なタイプだ。
間違いなくよいしょしているんだろうが、ここまで分かり易くへりくだられるとそれはそれで無下にしづらい。
特にリアス部長は善良だから、尚更やりづらいだろう。
「……ですがそろそろ立ち上がってください。人目もありますし、眷属達も見ていますから」
「そうですか。少々気後れしますが、そこまで言われては仕方ありますまい」
そこまで言われてようやく立ち上がるけど、立ち振る舞いは完全に配下のそれだった。
……なんていうか、これが効く奴は結構多いよなぁ。
煽てられた上に能力のある者が従ってくれているとか、精神的に高揚する奴は少なからずいるし。
そんな対応に部長が対処を困らせていると、シュウマ・バアルの視線はイッセー達にも向いた。
少しだが、相手が下であることも踏まえたのか、そこからはへりくだる感じではなくしっかりとした上からの立ち位置が見えていた。
「そうそう、赤龍帝達リアス様の眷属達も、活躍は窺っているよ。他種族由来で対立派閥とはいえ、悪魔の一員としては喜ばしいことだ」
「え、あ、えっと……」
反応に困るイッセーを庇うように、朱乃さんと木場が前に出る。
まあ、この二人は部長の眷属としても年季が長い。対人恐怖症のギャスパーはもちろん、物静かな小猫ちゃんよりは立ち回りに慣れているだろう。
「あらあら。大王派の重要人物でもあるシュウマ様に仲間達と共に褒められるとは光栄ですわ」
「お褒めに預かり恐縮です。ですが、シュウマ殿の配下やお子様にも優秀な者は数多いでしょう」
そんな対応をうけて、シュウマ・バアルは照れくさそうな表情を浮かべていた。
「非才の身とはいえ、子に恵まれその伴侶にも恵まれ、更に巡り合わせにも恵まれたものでね。ティラもクーラも素晴らしい婿殿を迎えてくれてありがたいばかりだ」
素直にそう言いながら、同時に少し苦笑していた。
「だが彼らは私と同じで所詮分家筋。高貴たる本家の者達に対して挑戦的な態度を取ってしまう、若さゆえのあらもあってね。会合の時も不遜な態度だったろう。……申し訳なかった」
そう言って、シュウマ・バアルは軽く頭を下げた。
その様子に、リアス部長達を含めて周囲がちょっとどよめいた。
「頭をお上げください。分家とはいえ貴族の当主が下級の転生悪魔に頭を下げるなど、大王派の重鎮が知れば叱責ものです」
「そうですわ。リアス様は次期当主ですが、フロンズ様やノア様もあの会合に選ばれた者です。立ち位置としては対等です」
木場と朱乃さんがそう言うと、シュウマ・バアルは申し訳なさそうに頭を上げる。
だが、同時に静かに首を振った。
「いや、こちらが失礼なことをしていたのだ。頭を下げるべき時に下げるのは当然だ。叱責はそもそもそんな事態を引き起こした責任として素直に受け止めるさ」
そう告げた時、近くにいた眷属が彼の耳元で小さく耳打ちする。
その耳打ちにはっとなってから、シュウマ・バアルは部長に深く一礼した。
「申し訳ありませんが、我々も番組収録の為にきた身でして、これ以上は時間が取れないようです。もう少しお話をしたいところですが、失礼させていただきます」
「……ええ、シュウマ殿も収録が上手くいくといいですわ」
その言葉と共に、シュウマ・バアルは去って行った。
……なんていうか、厄介だなあれは。
「部長も大変ね。ああいうやりづらい相手は、正直に言って苦手な部類でしょうに。たまになら愚痴も聞くわよ?」
「そうねぇ。分家でありながら重鎮なだけはあるというか、油断できない相手ですけど、頑張ってくださいねぇ」
「そうね。今度お茶会も兼ねて愚痴を聞いてもらおうかしら」
カズヒ姉さんとリーネスにそう同情されて、部長も思わず苦笑していた。
……ホント、部長達も大変だなこれは。
できれば、他人事で終わってくれることを願いたいものだ。あの手の人種とはあまり深く関わりたくないぞ、俺は。
フラグになるなよ、絶対だぞ!
できればもっと早く出したかったシュウマ・バアル。
彼はフロンズやノアの養父であり後援者。自分が出したいと思っていた「できる大王派」の筆頭格です。
多分に影響を受けたのは、最近アニメが放送された自分が大好きなラノベ作品「現実主義勇者の王国再建記」のマシュー・チマ。もっともアニメ化されるとするなら後2クールか三クールぐらいあるでしょうから、ラノベであることを踏まえると映像に出てくる可能性はまずないでしょうけど。
できれば眷属も出したいけど、あまり出しすぎるとかき分けも大変だし負担も大きいので可能性は低め。子供に関しても半分はモブに毛が生えた程度になるでしょう。
そして次の話は、ちょっと前にやったのと同じくほとんどが台詞のみの幕間話となり、その次からホーリー編の本番に突入します!