好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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魔性変革編 第四十八話 落日の加速

Other side

 

 

 

 

 

 

 

 

 バシャルンにおける冥革連合に対する討伐部隊はすぐにでも集まり出陣した。

 

 禍の団との同盟を結んだことによる二正面作戦だが、冥界政府も対応できる戦力がいないわけではない。

 

 むしろ和平により各種神話勢力との協調ができていたこともあり、旧魔王派とのテロにおいてはかなりの戦力を集めることができている。むしろ旧魔王派は他の勢力も敵視していた為、各神話からの戦力供給がしやすい土壌もあった。過剰戦力と思われるほどの量が集まっていたと言ってもいい。

 

 しかし冥革連合は別口だ。想定外の形であり冥界の大都市を制圧している為、必然として戦力は悪魔が中心となる。

 

 その状況下において、レーティングゲームの有力プレイヤー達が大挙してきているがその内訳だ。

 

 同時に四大魔王からも増援が来る事態となっていた。

 

「……どう思う、ファルビウムちゃん」

 

 その一人であるセラフォルーは、同じく出陣したファルビウム・アスモデウスに話を振った。

 

 二人は四大魔王を襲名した一角だが、サーゼクス・ルシファーやアジュカ・ベルゼブブに比べると一歩劣る。その上先日のテロでは本来の血統であるカテレアやクルゼレイに眷属事追い込まれた為、発言力が多少低下していたのもあって待機組だった。

 

 最も、サーゼクスとアジュカは悪魔の領域に入れていいのかも分からないとされる、三人しかいない超越者に属する存在。セラフォルーやファルビウムも魔王に相応しい力を持っているが、それを踏まえてもあの二人は頭一つ跳びぬけている。

 

 魔王級に限定すればグレイフィア・ルキフグスやディハウザー・ベリアルなどがいるものの、超越者級ともなればあの二人ぐらいしか世に出れる者がいないのだ。

 

 それが幸か不幸かこうした対応部隊の指揮官として動けるのは、運命の悪戯というべきか否か。

 

 そんな中でセラフォルーが尋ねた意味を、ファルビウムはよく理解していた。

 

「……嘘は言ってないだろうね。冥革連合(あいつら)にとっての最善は、(キング)真魔(ディアボロス)(シビリアン)の駒を現政権(こっち)が普及させたうえで、()()()()()()()()()ことだろうさ。それはもう分かり切ってる」

 

 ファルビウムの断言に、セラフォルーもうんざりしながら頷いた。

 

 何せこの糾弾内容ともいえる宣戦布告は、嘘偽りなく現魔王政権(こちら)にとっても都合がいい内容なのだ。向こうの理想がそうである可能性は十分高い。

 

 本音が現政権を潰すことならば、そもそも演説内容をあんな形にする必要はない。

 

「態々王の駒までこっちに送ってるものね。素直に真相や現状を言えば、冥革連合はもっと勝ち目が上がるのにしないってことは、つまりそういうことなのよねん」

 

「だよねぇ。あれだけおぜん立てしてくれたんなら、本当にアジュカが作っても怪しく思われにくい。……まさかこっちが先に作ってるなんて、あの演説からじゃ思い至らない」

 

「確か人間界のマジックでこういったのあったわね。ミスディレクションだっけ?」

 

「あ~。黒〇のバスケって面白かったね。僕的には推理小説の叙述トリック的なのが印象かな」

 

 そんな風にぼやき合いながら、二人は迎撃部隊として抜擢された者達に視線を向ける。

 

 ディハウザー・ベリアル。ロイガン・ベルフェゴール。ビィディゼ・アバドン。

 

 レーティングゲームでトップ3として君臨し、個人として魔王クラスの力量を持つとされる三人が、こうして討伐部隊として派遣されている。

 

 不可視としては十分すぎるが、その意図を薄々察してセラフォルーもファルビウムもため息をつきたくなった。

 

「……万が一にでも知られないようにって、大王派のおじ様達の差し金かしらん?」

 

「まあ確かに。既に使ってる人が更に使っても効果ないだろうしね。まあオーバーフローして放出されたって誤魔化すこともできそうだけど、そこまで考えてる余裕はないでしょう。ばらされてる側からしたら」

 

 とはいえ、そこまで向こうも考えているからこその戦闘だろう。

 

 冥界でも屈指の軍師とされるファルビウムは、今回の戦闘で冥革連合との決着がつくなどとは欠片も考えていなかった。

 

 あれは馬鹿なのだろうが、然しただのバカではない。ただの馬鹿なら行動に移す前に計画をこちらに察知されているだろう。少なくともそれだけの能力と運を兼ねそろえているからこそ、計画を遂行するその時まで漕ぎづけることができたのだ。

 

 向こうの勝利条件は独特だが、初手から全滅するなどというわけにはいかないことは流石に分かっているだろう。

 

 正攻法では王の駒や真魔の駒を使わなければどうにもできない。少なくとも禍の団を含めればそうなると踏んでいるからこそ、こうして堂々と動いているのだ。今回動かせる戦力で仕掛けたところで決着がつくとは思えない。

 

「セラフォルー。悪いけど、僕達の発言力はもうちょっとそぎ落とすことになるよ。適度に相手の動きを見たら、僕達の名前を同時に出して撤退戦だね」

 

「そうねぇん。オーディンのおじ様達とも協力して動きたいわねん」

 

 今回の行動は、一部の貴族や民衆の心理面を考慮したものと、ファルビウムは既に割り切っている。

 

 まずは旧魔王派に決定的打撃を叩き込むことが重要。想定外のこの反乱は、そのあと腰を据えて取り組むべき問題だ。

 

 お互いにそう踏まえているからこそ、戦術的に即座な撤退ができるよう布陣を整えている。

 

「アジュカちゃんも色々大変になるでしょうし、サーゼクスちゃんの負担が大きくなりすぎてかわいそうかも」

 

「確かにそうだね。面倒くさいけど、今度愚痴ぐらいは聞いてあげるかなぁ」

 

 今この場において、二人はそう言えるだけの余裕があった。

 

 ……帰還後、そんな余裕が吹き飛ぶことを二人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼル Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 なにが、あった?

 

 俺もミカエルも、目の前の光景に度肝を抜かれている。

 

 そしてそれ以上に消耗がでかい。はっきり言って想定外だ。

 

「……ぐ……ぅ……」

 

「正直意外だね。もっと苦戦すると思ってたから、何て言うかしらけるっていうか」

 

 そう呆れ半分な口調でミザリ・ルシファーが見下ろすのは、全身が血まみれになったサーゼクスの姿だ。

 

 サーゼクスは文字通り全力の全力でミザリを仕留めに行った。

 

 一瞬で消滅の魔力そのものと言える真の姿を見せると、そのまま一気に仕掛けたといってもいい。

 

 それだけあいつは警戒に値する。

 

 あの野郎の実の息子であり、アドルフ・ヒトラーのデミ・サーヴァント。それは旧魔王派に決定的打撃を与えても意味がないほどの恩恵を禍の団に与えかねない。

 

 だからサーゼクスの判断は何処までも正しい。容赦も遠慮もできる相手じゃないし、俺達も操舵から援護をした。

 

 ……そう思った次の瞬間、サーゼクスは消耗した状態で元の姿に戻り、そしてそのすきを突かれて聖槍の一撃を喰らって崩れ落ちた。

 

 あまりにあっさりとサーゼクスがやられて、俺達もさすがにあっけにとられた。

 

 が、すぐに我に返る。っていうかあっけにとられている暇がない。

 

 あのサーゼクスが一蹴されるとか異常事態だ。それも、魔王どころか主神に喧嘩が売れる真の姿を発揮したうえでだ。

 

 ヒトラーの奴よりヤバい強さを発揮してやがる。いくら奴のデミ・サーヴァントとして上乗せされてるからって、サーヴァントが英霊本人の分霊―つまり100%じゃない―ことを考えれば異常だ。ルシファーの血筋からくると考えるべきか。

 

「容赦してる余裕がねえ! 仕掛けるぞミカエル!」

 

「わかっています!」

 

 ミカエルが星辰光を展開するのに合わせて、俺もファーブニルの鎧を装着する。

 

 そして左右から挟み込むようにして攻撃を叩き込むが、ミザリはそれをすべて盾と槍で凌いできやがる。

 

 どっちかが相手の死角に入って攻撃しているし、それなりに長い付き合いで連携だってそこそこの練度だ。なにより年季のさでフェイントだって組み込んでいる。

 

 それをすべて、奴はあっさりと凌いできやがる。

 

 野郎、攻撃の察知が異常に正確だ。どこにどのタイミングで攻撃が入ってくるのか、先読みしているとしか思えねえ……っ。

 

 そして攻撃の方も厄介だ。

 

 野郎の攻撃はすべて、こっちにとって嫌なタイミングで嫌なところをついてきやがる。

 

 相手の攻撃を誘導するためのフェイクといった行動に全然引っかからねえ。それどころか、こっちが本当に無意識レベルで警戒を緩めてるところにまでちょくちょく攻撃が行くから、やりづらいにもほどがある。

 

 タイミングだって最悪だ。攻撃に入ろうとするその絶妙なタイミングで仕掛けてくることまであるせいで、さっきから二対一だってのにペースを完全に向こうに握られてやがる。

 

 こいつ、いったい何なんだ……っ!

 

 ミカエルの斥力場すら見切ってるのか、一瞬の拘束すらろくに引っかからねえ。引っかかったと思ったそのタイミングで魔力でカバーを入れるから、本当にこっちが一方的に消耗してやがる。

 

「てめえ! そもそもなんでこんなことをしやがる!」

 

 とにかく情報を引き出すために、俺は切り結びながら問いかける。

 

 大抵の奴は調子に乗ってると口が軽くなるもんだ。今の状態なら、少しぐらいは引き出せるはずだ。

 

 少しでも情報を引き出さねえとまずいだろう。特にコイツ、何年間も配下に慈善活動をさせたうえでこんなレベルの凶行をしてきやがるんだ。何を考えてるか何とか探らねえと……な!

 

 ようやくつばぜり合いに持ち込めて、俺はもう一回問いただす。

 

「何年間も私財を切り詰めるような慈善活動をしておきながら、全部台無しにするような真似しやがって! どう考えても金の無駄遣いだろうが!」

 

「これはおかしなことを。まさかこの程度で済ませるとでも?」

 

 なんだと?

 

 おいおいちょっと待て。

 

 慈善活動家がこれだけの規模の凶行を引き起こしたってだけで大問題だぞ。さらにその上があるってのか!

 

「これ以上何をするというのですか!」

 

「具体的にはあれかな?」

 

 そう言って顎で示したのは、増援としてきてくれた悪魔たちと戦っている化け物たち。

 

 観客席で本性を現し、現場の別勢力の連中からもぎ取った手足やら皮やらを材料に、幽世の聖杯で生み出した化け物ども。

 

 おい、まさか―

 

「慈善活動のついでに、バケモンになるようにしてたってのか!?」

 

「もちろん全員じゃないよ? そんな程度ならさっさとやってるさ。何年間も頑張ったかいがない」

 

 本当にうれしそうに、うっとりとした表情で微笑むミザリに寒気を覚える。

 

「今頃難民キャンプや養護施設じゃ、並みの星辰奏者の一人や二人じゃ止められないような暴走体が、十人につき一人ぐらいの割合で出現してるね。彼らは施設外の人たちだけを惨殺し、施設の者たちはしっかり守るようにプログラミングしてるんだ」

 

 ………そういうことか。

 

 俺と同じことをミカエルも悟ったのか、堕天しかねないぐらい激怒の表情を浮かべている。

 

 俺もミカエルも聖書が広まるぐらいのころから生まれてるからな。その分人間界の歴史もよく見ている。その醜い側面も、いやというほど知っている。

 

 この野郎、わざと化け物どもにキャンプや施設の連中を襲わせないことで、襲われた連中やその周囲に迫害されるように仕向けてやがる。

 

 どこまで腐った真似を……っ!

 

「貴方は! それだけの非道、いったい何が目的でそんなことを!?」

 

 ミカエルがブチぎれ寸前で吠えて―

 

「趣味です」

 

 ―間髪入れずに、ミザリの野郎は即答した。

 

 あっけにとられる俺たちの前で、ミザリは両手を広げてにっこりとほほ笑んだ。

 

 まるで人によっては聖人君子を思わせる。純粋なまでに喜びを示したその表情。

 

 そんな表情で、ミザリは本心から腐り果てた所業に満足している。

 

「質も量もできる限りこだわった上で、絶望や嘆きを見たいんだ。旧魔王血族がいろいろと動いていることも知ってたから、それと同時に君たちの出鼻をくじくような形で、できる限り質も量もこだわって嘆きと絶望を広げたかったんだ」

 

 その表情は、まるで子供が大成したところを見ている親のように感慨深げだ。

 

「幸いイシロは被虐体質だから、貴族としての生活を切り詰めるのも報酬になったしね。いつか旧魔王血族が動き出すその時に、更に精神的に現政権を苦しめられるから彼らも黙認してくれたよ」

 

 そんな表情で、どこまでも人を苦しめることだけを考えた悪意を形にして、それを慈しめるってのか。

 

 そんな穏やかな微笑を浮かべ、ミザリ・ルシファーは遠くを見つめる。

 

「ああ、きっと被害を受けた者たちや、暴れたい理由が欲しい人たちは動くだろうなぁ。彼らも化け物になるかもしれない、むしろ襲われなかったというのなら仲間かもしれない。そんな風に言い訳を得られれば、どこまで残虐になれる人は多いから。……ふふ、ニュースで流れるのを楽しみに待ってるよ」

 

 ………最悪のパターンだ。

 

 旧魔王派の連中は、身勝手極まりないが革命願望や奪還という大義名分を持っている。

 

 だがこいつは違う。悪意しかねえ。

 

 あまりにタチが悪すぎる……っ

 

「だからこんなところでは死にたくないね。俺自身の絶望は嘆きも美しいけど、やっぱり他人のを眺めるのが一番だしさ」

 

 そうはっきりと告げ、奴は聖槍を構える。

 

「……やるぞミカエル。こいつは、こいつはいくら何でも危険すぎる!」

 

「同感です。彼は生かしておくにはあまりにも悪意に染まっている……っ」

 

 俺とミカエルは同時に仕掛ける。

 

 だが同時にこうも思っていた。

 

 多分、こいつは今回取り逃がす。

 

 何故なら、イシロ達がまだ出てきてない。後詰として何人かが控えてると考えるべきだ。

 

 そう考える中、攻撃を回避するミザリは苦笑を浮かべると指を鳴らす。

 

「そろそろ出番だよアルバート。お披露目と行こうか」

 

 まだ伏せ札があるのかよ……!

 

 俺が内心で舌打ちをしていると、彼方から何かが接近してくる。

 

 あの輪郭、サリュート系列か!

 

「僕の同僚にアルバートってのがいただろう? 彼は研究者のサーヴァントでね、サリュートに興味を持っていたから取り寄せて、研究してもらっていたんだよ」

 

 ミザリがそう言いながら、その新型サリュートに視線を向ける。

 

「僕ももうちょっと楽しみたいけど、今はもっと情報を把握して眺めていたいんだ。だから、あの子の相手をしてもらっておいてくれ」

 

 そう言いながら、新型サリュートどもと入れ替わるようにミザリが離脱する。

 

 俺たちはもちろん追いかけるが、それより先に新型サリュートは星を解放して―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冗談だろ、クソッタレ!

 




 サーゼクスが思いっきりボコられましたが、これはミザリがサーゼクスを圧倒するほど強いのかというとちょっと違います。

 いえ、本領を発揮すれば確かに主神クラスに喧嘩売れる力量ですが、サーゼクスの真の姿はVS英雄派時点でのD×Dトップ10に食らいつける猛者。真っ向勝負ならこの時点のミザリはむしろ不利です。

 ですがこのミザリ、リメイク前の奴を知っているなら気づいているかもしれませんがこいつはサーゼクスの天敵となりえる反則級の能力を持っております。そこに聖遺物系神滅具全部乗せという特性こみなので、純血悪魔で勝ち目がありそうなのはリゼヴィムぐらいではなかろうかというスーパーメタ野郎なのです。

 そしてここはリメイク前と変わらず純然たる趣味でこれだけのことをしでかしたぶっ飛び野郎。D×Dの敵は基本的に能力がある小物故に迷惑なパターンが基本ですが、それと似ているけど変な方向をぶっ飛ばしておりますですハイ。

カズヒの星辰光、いかがでしたでしょうか?

  • 格好いい!! そして強い!!
  • ど、ドン引きです。
  • 光狂い並みに癖が強いな、オイ
  • 狂気の沙汰とはこの事か

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