好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 さて、激戦を何とか制したイッセー達。

 ここから、少しの休息となります


魔性変革編 第五十話 一息つく間

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 枉法インガはふと気づく。すると視界には、レーティングゲーム特有の空が広がっていた。

 

 記憶が混乱していると思いながら、ふと視界を動かすと、そこには苦笑したかつての小さな子がいた。

 

「おはよう、インガ姉ちゃん」

 

「……和地、君」

 

 それに対して、どう答えていいのかが分からない。

 

 強引に、強引に助け出すと押し付けられた。そして無理やり拒絶する手を引っ張り上げられてしまった。

 

「……なんで、ですか?」

 

 インガはそう聞きたくて堪らない。

 

 なんで自分達を助けようとするのか。

 

 自分達は確かに、その一歩を無理やり引きずり込まれるように悪鬼に踏み出させられたのかもしれない。ディオドラ・アスタロトが諸悪の根源だと、それは確かに事実なのかもしれない。

 

 だが、どのような形であれ、自分達はその後悪になった。自分達がしてきた悪行は、確かに事実なのだ。

 

 何より禍の団に与したのがその証拠だ。助けを求めるべき相手は確かにいたが、その手を取らなかったのは自分達だ。

 

 そんな思いが込められた言葉の意味を、和地は正確に受け取ったのだろう。

 

 苦笑すると、ふと空を見上げる。

 

「カズヒ・シチャースチエって人に言われたんだよ。薬物中毒とか依存とかいうのは、他人が強引に引っ張り上げないとどうしようもないってさ」

 

 そこに込められた感情は、いったい何なのだろうか。

 

「だから、俺はインガ姉ちゃんを強引に引っ張り上げることにした。インガ姉ちゃんはそうしてでも助ける価値があるって、俺が思ったからそうしたんだ」

 

 ボロボロになってまで、奇跡的に治す余地があったからと言っても致命傷を負ったうえで。

 

 それだけの価値があると、九成和地は枉法インガにそう言ったのだ。

 

 その上で、少し不安げに和地はインガに笑顔を向ける。

 

「だからあんまり自分を卑下しないでくれよ。そこまでされたら、助ける為に苦心した俺がバカにされてるじゃないか」

 

 そう返しながら、少し震えている手を和地はインガに伸ばす。

 

「どうか、助けを求めて(この手を取って)ほしい。俺が助けたいと思うインガ姉ちゃんに、俺が誰かを助けられる人間だと証明してほしい」

 

 そんな風に、和地はインガに逃げ道を与えて手を伸ばす。

 

「卑怯な言い方だけど、ディオドラを真似ることにする。俺はインガ姉ちゃんがきちんと罪を償えるように頑張るから、インガ姉ちゃんは罪を償って俺に胸を張らせてくれ」

 

 本当に卑怯な言い方だ。

 

 後ろめたさと罪悪感に潰れて、更に後ろに潰れて行ったのが自分だ。

 

 ただ前に進むことはできない。それほどまでに彼女の進行方向には、後ろに押しやる力が働ている。

 

 だからこそ、和地は引っ張り上げるだけでなく背中を押す。

 

 強引に拒絶を打ち砕いて引っ張ると同時に、彼女の弱さを逆手に取り、助け出したい方向に彼女を誘導している。

 

 その手段の択ばなさに、インガは苦笑してしまった。

 

「……強かになったね、ホント。もうちょっとこう、正義の味方っぽいやり方をしたら?」

 

「慕う女が悪の敵でね。正義()味方することは、正義の味方になること()()()()ってスタンスなのさ。真似させてもらうよ」

 

 そこまでする価値が、自分にあるのだろうか。そう思う。

 

 そこまでさせたのに、裏切れない。そんな風にも思ってしまう。

 

 ふとポケットに手が入ると、あの時の紙がまだ残っていた。

 

 ……それを残していたのは、心のどこかの本音の表れ何だろう。

 

 それを、インガはまず認めた。

 

「あの、ディオドラさ……ディオドラは? それと、みんなは?」

 

「あ、そっちの連絡は既に入った。アスタロト眷属はカズヒ姉さんが全員のして拘束中で、ディオドラももうぶちのめされたってさ」

 

 別の意味で逃げ場はなくなったとも、インガは納得した。

 

 実に強引な手法だ。ディオドラは逃げ場をなくして自分達を墜とした。しかし和地は、逃げ道を粉砕したうえに別の道を作った上で、更に強引に引っ張っている。

 

 ……そこまでしてまで助けたいと、そう思ってくれることが嬉しかった。

 

 後ろめたくて拒絶したいが、そんなこともできないぐらいに雁字搦めにされてしまった。そう自分の中で納得がいくと、すとんと心のどこかに何かが落ちる。

 

「……責任、取ってよ」

 

 だからこそ、素で彼女はそう言う。

 

 久しぶりに本心から。苦笑とはいえ微笑みながら。

 

 起き上がったインガは、和地に抱き着いた。

 

「こんなにされたらもう、私は和地君から離れられないよ? 妾ぐらいは期待してもいいんだよね?」

 

 そんな、ある意味最後の抵抗じみた一撃を精神に叩き込む。

 

 明確にびっくり肩が振えたが、それをすぐに押し込んだ和地はインガを抱きしめた。

 

「え~とその……カズヒ姉さんからは「来る者拒まずさる者作らず」を条件として言われておりまして。……すっごく卑怯で最低な理由になりそうなんですが、その……」

 

 そんな言い訳をしている和地を見ると、インガに久しぶりの悪戯心が出てきた。

 

 OKは出したい。だがそんな条件が前に出ているから、それを踏まえると卑怯で卑劣で最低何ではないかと思っているらしい。

 

 だから、自分がされたように自分も逃げ道を封じてやろう。

 

 苦笑ではない本当の笑顔を、とはいえにやにやといった形にして。

 

「じゃあ、私を救った責任を取れるように、しっかりカズヒって人を抱え込んでね?」

 

「……うわぁ、一本取り返された」

 

 そんな降参の声に、漸く年上らしいことができたと思い―

 

「……プッ! もう台無しだよ和地君は」

 

 インガは本当の本当に、一切の裏の無い笑顔を心から浮かべられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、女の敵が使うべき技で一人の少女が助け出されていることを、二人はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アババババババババ……っ」

 

「イッセー! イッセー、しっかりしてください! こんなことで一々引き付けを起こされても困ります!」

 

「イッセーさん! 私は気にしてませんから治ってください!!」

 

 俺は今、突発的に襲った引き付けに痙攣してた。

 

 頭はガンガンするし胸は苦しいし息はできないしお腹はギリギリするし体はガクガク震える。とにかく全身が最悪のコンディションになるんだ。とどめに今はボロボロだし。

 

 そんな状態でアーシアを助ける為に、一生懸命頑張っていたらこの始末だ。

 

 理由だって? 上位神滅具で結界系の極みとかいう、絶霧(ディメンション・ロスト)の所為だよ。

 

 なんかよく分からないけどその禁手で作られた代物みたいで(ディオドラは喋れる状態じゃないから聞き出せなかった)。しかもどうやら結界が発動するまで時間がないみたいだ。

 

 どうもアーシアを利用するみたいだからどうしたものか。アーシアは自分を殺せばいいと言うけどできるかってんだ。そんな風に皆が焦って悩んでいた時、俺に天啓が閃いた。

 

 あれ? ここまでくっついてるなら、着用物扱いできるんじゃないか?

 

 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は絶霧より弱いけど、俺の煩悩と組み合わせた結果見事勝利。こうして禍の団の野望はついえたわけだ。俺の煩悩の勝利って奴だな。

 

 いや~。我ながら俺の煩悩というかスケベ根性、ちょっと洒落にならない領域になってる気がしてきたぞ?

 

 乳首をつついて禁手になるっていうのがそもそも前代未聞らしい。そんでもって、洋服崩壊も基本的にゲームじゃ使用禁止になった。乳語翻訳(パイリンガル)もなるみたいだし。

 

 ……俺、もしかして煩悩の強さって人並み以上とかそういうレベルじゃない?

 

 激痛に悶えながらそんな不安を覚えていると、回復してくれたアーシアが折れに抱き着いてくれた。

 

「イッセーさん。本当にありがとうございました」

 

「……ああ。アーシアを泣かせる奴がいるなら誰だってぶん殴ってやるし、何があったって助けにいくさ」

 

 俺がそう言いながらアーシアを撫でると、リアス部長も微笑みながら俺達の傍によって、アーシアをぎゅっと抱きしめてくれる。

 

「無事に助かって良かったわ、アーシア」

 

「はい。ありがとうございます、部長さん」

 

 そう返事をするアーシアに、部長はちょっと困ったような笑顔だった。

 

「そろそろそんなに他人行儀な呼び方はやめてほしいわね。貴女のことは妹のように思っているんだから」

 

 そう言って頬を撫でる部長に、アーシアは少し照れ臭そうに頬を染めながら、涙目で部長に微笑んだ。

 

「はい、リアスお姉さまっ」

 

 うんうん。よかったよかった。

 

 とりあえず、これでディオドラは黙らせたし、旧魔王派のテロもそろそろ鎮圧されるかな?

 

 少なくともこれが本命だったっぽいから、これ以上の作戦はまずいと思う感じだと思う。

 

 俺達の間でほっとしたムードが漂っていると、カズヒが盛大にため息をついた。

 

「はいはい。戦闘は全域で終わるまでが戦闘よ。まだ和地が戦ってる可能性はあるし、何より旧魔王派のテロが終わったって連絡は無いんだから」

 

 耳が痛いし空気も読めてないけど、実際言ってることはあってるんだよなぁ。

 

 確かに、まだ先生達からテロが終わったって報告は無い。

 

 もしかしたら、何も発動しないことに焦った旧魔王派が様子を見に来るかもしれない。こんな要素を見るにディオドラはそこそこ価値があるみたいだし、そういう意味でも来るかもしれないしな。

 

 あと九成は大丈夫だろうか。一対一だからカズヒよりは難易度低そうだけど、あのインガって女の人は星辰奏者だしな。もしかしたら負けそうになってるかも。

 

 ちょっと気を持ち直そう。うん、もうちょっと周囲を警戒しないとな。

 

 俺達が気を引き締め直したのを確認してから、カズヒは周囲を見渡しながら肩をすくめた。

 

「とりあえず、アザゼル先生が言っていたシェルターに移動するわよ。ディオドラは救出してくる奴がいるかもしれないから、拘束だけしてほおっておく方がいいでしょう。ただ眷属達の方はのして転がしてるから、できれば運ぶのを手伝って―」

 

 ………なんかやることが多いな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うん、これはつまり、絡め取られたって感じか?

 

 涙を浮かべながらもにっこり微笑みながら俺に抱き着くインガ姉ちゃんに、俺は実に複雑な感情だった。

 

 インガ姉ちゃんを引っ張り上げられたのは良い事だ。インガ姉ちゃんと再会できたのは嬉しいし、インガ姉ちゃんは可愛いし、引っ張り上げた以上は責任もある。少なくとも、諸問題を解決する余地と、終わった後に真っ当な生活を送れる余地は与えるべきだ。

 

 まあ、一般人が人を救うっていうなら、しかるべき機関に通報するとかそういうので十分だと思う。諸問題を解決してその後真っ当な生活の余地があるのなら、それで十分すぎるだろう。その後の人生で起きるすべての問題をどうにかして健やかな人生を送らせなければ意味がないってのはむしろ過干渉気味だし、誰かの為でなく利己的な目的だとしても助かっている事実は認めるべきだとも思う。

 

 だからまあ、ちゃんと先生やリーネスに相談している。その辺りについては考えがあるらしいし、あの二人はその点においては信用も信頼もできる。何かしら他の目的と併用したとしても、きちんと助けているのならそこは文句を言う気もない、

 

 ……とはいえまあ、こういうことになったのなら責任はとるべきだ。

 

 ついでに言うと、これでカズヒ姉さんの条件にもクリアーしたわけで、ハードルの一つを乗り越えたと言ってもいい。カズヒ姉さんの性格から言って条件を満たさないと惚れてもアウトになりそうだしな。これはこれでラッキーというかなんというか。

 

 なんだけど。なんだけどね。なんだけどさぁ!

 

 やっぱ俺としてはちょっと気になるんですよ。カズヒ姉さんに惚れてしまっていることが理由といえば理由だけど、なんかこう……もにょる?

 

 とはいえだ。インガ姉ちゃんも、なんていうか強かなことしてくれるな。

 

 俺が「カズヒ姉さんと結ばれる為にインガ姉ちゃんと結ばれる」なんていう深読み的なことでもにょってるのに気づいているからか、向こうからカズヒ姉さんを惚れさせるように言ってきやがった。

 

 色々と複雑ではあるが、カズヒ姉さんを本気で惚れさせて結ばれるぐらいしないと、インガ姉ちゃんは逆に気にしてしまうって言いたいのかよ。

 

 うぉおおおおお。なんか……複雑ぅ。

 

「……ふふん。私の複雑な感情を思い知ったかな?」

 

 マウントを取った表情でインガ姉ちゃんにしてやられてます。

 

 反論できない。ぐぅの音も出ない。

 

 俺がそんな精神状態なのに気づいているのか、インガ姉ちゃんは優しく抱きしめるとポンポンと背中をたたいた。

 

「でも、本当にそうして欲しいね。私は自分が助けられたことを気にするから、気にしなくてもいいように私を助けたことを君の為になる形で発揮してほしいからさ」

 

 かつての口調を取り戻しながら、インガ姉ちゃんはそう言ってきた。

 

 人生を盛大に二回も踏み外して、自己嫌悪と自己否定が強くなったインガ姉ちゃんにとって、自分を助けてもらうのには、きっと大きな理由が必要なんだろうな。

 

 だからこそ、俺の恋愛事情は都合がいい。それを言い訳にするついでに、俺にちょっとやり返す。そういうことなんだろう。

 

 ……だけど、それだけはなんか嫌だ。

 

 だから俺は、ぎゅっとインガ姉ちゃんを抱きしめる。

 

「和地君?」

 

「それだけにはしたくないな」

 

 それが本音だ。日本人としてはあれな気もするけど、異形関係者ということで強引に飲み込む。そして想いを告げる。

 

「カズヒ姉さんにOKを貰う、その条件付けの為だけにインガ姉ちゃんを貰いたくない」

 

 ああそうだ。

 

 そんな理由で女の人を迎えたいわけじゃないんだ。

 

 俺に抵抗があるなら、その本質はきっとそこだ。

 

 カズヒ姉さんが好きだからって、その為に愛してない女性を迎え入れるというのは、相手に失礼だしそもそも何かが違う。

 

 だから―

 

「俺のインガ姉ちゃんへの気持ちが、LikeじゃなくてLoveになるようにしてほしい。まあ男は基本馬鹿だから、インガ姉ちゃんが俺のこと愛してくれるなら何とかなるとは思うから……さ」

 

 うん。それはお願いしておこう。

 

 今でもLikeではある。政略結婚とかそういうのなら、これでも十分だろう。条件はまぁクリアしてるかな。

 

 だけどまあ、そこだけで終わりたくはない。それは嫌だ。

 

 だから、俺はインガ姉ちゃんにはっきり言っておこう。

 

「俺もインガ姉ちゃんが俺を愛してくれるよう、ひとかどの男になって見せる。だからインガ姉ちゃんも、そこはその……ちょっとぐらい努力して貰えると嬉しいかな」

 

 うん。まあ色々と問題はあるだろうし、これでいいのかとも思う。

 

 だけどまあ、今はこれでいいということにさせてください。

 

 ……真剣に恥ずかしいこと言ってるな。マジで顔が赤くなってる自覚がある。

 

 インガ姉ちゃんの顔をまっすぐ見れない。へ、返答はいかに?

 

 俺は心底返答が欲しいけど、返答が全く返ってこない。

 

 返事! 返事を下さい!

 

 今敵が来たら絶対に致命的な状態です! でも俺、気恥ずかしすぎて動けないから! 返事を、どんな形でもいいからとりあえず返事というきっかけをください!

 

 ホントお願いだから、今は誰も来ないでくれると―

 

「おめでとうですのぉっ!」

 

「「うひゃぁっ!?」」

 

 ヒマリの大声に、俺とインガ姉ちゃんは盛大に絶叫した。

 

 心臓が止まるかと思った。今もバクバクいってるし。

 

 俺が恨めし気に振り返ると、ヒマリはすっごく感激している感じの表情で満足げというか感慨深げといった感じで飛び跳ねていた。

 

「カズヒもこれは喜びますの! 今夜はケーキを買ってお祝いしますわ!」

 

「ヒマリ先輩。覗き見してた俺達が言うことじゃねえですが、もうちょっとこぉ、何かありやせんか?」

 

「言ってやってアニル。いやホント……ヒマリはもうちょっとこぉ、空気を読も?」

 

 飛び跳ねているヒマリに、アニルとヒツギがツッコミを入れながら姿を現した。

 

 み、見られた。

 

 ははははははははは恥ずかしぃ!

 

 俺はカチンコチンに固まっていると、更にイリナが天使の輪っかを光り輝かせながら俺達の頭上に浮かんできた。

 

 あのすいません。その位置は男の性欲を刺激するからやめてください。

 

「頑張ったわね九成君! ああ主よ、この愛に祈りを捧げます! さあ、天使の祝福を受け取って!」

 

「それでいいのか!?」

 

 思わず全力で突っ込んだよ。

 

 天使が一夫多妻的なあれを全肯定するようなことしていいのか? 和平が結ばれたとはいえ、もうちょっとこぉ、自粛を呼びかけてもいいと思うぞ?

 

「あの、もうちょっとこぅ、そっとしておくという選択肢はないのでしょうか?」

 

 ルーシアにも見られてたのか。まあこのメンツならいてもおかしくないけど。

 

 というか、ハイテンションなヒマリやイリナ、その反応に疲れ切ってるヒツギとアニルに余裕がない分、ルーシアが警戒を一手に担っている感じがするな。

 

 いろんな意味でお疲れ様でありがとう。ヒツギやアニルにもなんか奢るけど、ルーシアにはもう一段追加するから。

 

 俺が心の中で決意をしていると、何時の間にかそっとメリードが隣に立っていた。

 

 ボロボロのインガ姉ちゃんにそっと毛布をかけながら、メリードは俺に一礼する。

 

「有言実行、おめでとうございます。彼女の処遇については、私からもアザゼル総督に具申しますので、大丈夫ではないかと」

 

「あ、ああ。ありがとな」

 

 なんかどっと疲れたけど、メリードはそれとなく周囲を確認しながらも、そっと俺に某ヴィダーなゼリーを差し出した。

 

「水分とカロリーを補給したら、皆様と先に合流してください。私はヒマリ様達と共に、カズヒ様が無力化した他の眷属を保護しておきます」

 

 あ~。メリードはデミ・サーヴァント化の調整が上手くいったらしい。

 

 リーネスが何度かやった亜種聖杯戦争で、デミ・サーヴァントの成立に備えて仕込みをしていた。

 

 具体的には召喚されたサーヴァントに対してその辺りの交渉したらしい。結果として、素体となる人物が明確な目的意識の下同意してくれた場合など、いくつかの条件が成立した場合ならばできるようになった。

 

 最も肉体面のリスクなどがあって、あと百年はかかるレベルだった。しかし、メリード達ザイアから保護されたヒューマギアが名乗りを上げたことで大幅に方針転換。ヒューマギアとしての素体に亜種聖杯戦争の願望機の機能を利用したシステムを組み込むことで、一気に実用化のめどが立っていた。

 

 その第一号のメリードは、確か女性型であることもあって望月千代女っていう巫女でくノ一だったかに選ばれてたな。

 

 そんなメリードはインガ姉ちゃんに向き直ると一礼する。

 

「……ディオドラ・アスタロトの件でご相談があります」

 

「え? えっと、あまり役に立てないと思うんですけど」

 

 ディオドラがインガ姉ちゃんにどんな扱いしてたかがよく分かるが、メリードは首を横に振る。

 

「いえ、貴女でしたら相応に知っていることだと思います。こちらの名簿をご確認ください」

 

 そう言うメリードが差し出した名簿を見ると、人名が結構書かれていた。

 

 外国人の名前は判別が難しいけど、日本語で書かれている名前からすると、女の子か? 結構いるな。

 

 というか、インガ姉ちゃんが目を見開いているけどどういうことだ?

 

「私自らデミ・サーヴァントとしてのポテンシャルを最大限発揮して調査し、金銭や物資の確保はもちろん、館に囲っていた女性達の保護もしております。ですが短期間の調査では漏れがありえますので、せめて女性達に確認漏れがないかを確認していただきたいのです」

 

 ……抜け目ない人達なことで。

 

 あとディオドラ、眷属にする以外にもやらかしてやがったのか。俺が爆発すると踏んで黙ってたな、リーネス達。

 

 インガ姉ちゃんを見ると、真剣に何度も確認してから、ほっとしたように頷いていた。

 

「私が知っている人は、全員います。あの、私以外の眷属の人は?」

 

「カズヒ様が全員殺さずに鎮圧したと連絡が。ただ応急処置を施したうえで拘束してひとまとめにしているので、万が一を踏まえてリアス様達と合流する前に最低限の確保をしておきたいところです」

 

 まあ確かに。そこは必須だな。

 

 俺もそっちに手伝った方がいいかとも思うけど、メリードは俺とインガ姉ちゃんを見ると静かに首を横に振った。

 

「人手がいると嬉しいですが、それは比較的消耗の少ない私達にお任せを。和地様は彼女を連れて合流していただいた方が、気にしているだろう皆様が安心できると思います」

 

「……それもそうか」

 

 そう言われると確かにな。

 

 俺は気だるげな体を何とか立ち上がらせると、苦笑しながらインガ姉ちゃんに手を差し出した。

 

「じゃ、お互いに今後頑張るにしてもとりあえずは成立ってことで。カズヒ姉さん達に挨拶に行こうか?」

 

 俺がそう言うと、インガ姉ちゃんは照れくさそうに笑いながら、その手を取ってくれた。

 

「うん。謝ることもあるし、お礼も言った方がいいしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、問題は夜の生活ですわね。ディオドラも色々としているでしょうし、それに刺激もありますから私も参加したいですの。ヒツギもいい思い出を作る為に参加しません?」

 

「しないからね!? しないからね!? そんな気は使わなくていいからね!?」

 

「あの、仮にも教会精鋭部隊の方にあまり淫行を進めるのは、辞めていただけないでしょうか」

 

「……すんません。いい歳の男としちゃ居たたまれないんすけど」

 

「申し訳ありません、アニル様。……ヒマリ様、いい加減そのピンク暴走思考はおよしください。発情期の兎ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巻き込まれないうちに行こう、速足で」

 

「そうだね。ちょっとこの流れはキッツいかな」

 

 俺達は阿吽の呼吸でこっそりかつ速足で距離を取った。

 

 とりあえず、ことが終わったらヒマリノアの暴走淫乱っぷりをどうにかしよう。

 

 母性があるのは美徳だけど、あれじゃあ近親相姦風味が強すぎるからな。

 

 俺もヒマリとエロいことするのは我慢しよう。いい加減ヒマリ断ちした方がいいな、うん。




 さて、全員が一息ついているところ申し訳ありませんが、此処は今ホーリー編です。










 まだボス、出てきてないんですよねぇ。

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