好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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魔性変革編 第五十六話 体育祭のその裏で

 

 和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育祭当日。いまだにイッセーは目を覚まさない。

 

 つっても流石にイッセーが悪いわけじゃないな。それだけの消耗をしていてもおかしくない、それだけの負担を被っているんだから。

 

 リアス部長の魔力を借りずに覇龍に至ったのはやはりまずかった。今のイッセーはそんな無茶をした反動で、寿命がごっそり削れているらしい。

 

 元々イッセーが覇龍を発動できる領域に至ってなかったということもあるそうだ。覇龍特化の亜種禁手になってもそれは変わらず、その為暴走は抑制できても消耗は抑制できなかったらしい。残り寿命は千年を切っているとか。

 

 ちなみにこれでもマシな方だそうだ。もし通常の禁手で覇龍に至っていたら、寿命は百年を切っていた可能性もあるとか。人間基準なら十分だが、万年生きれる悪魔基準なら短命にもほどがある。

 

 そういう意味では大変なんだが、それ以上にヤバいことがないでもない。

 

 いや、イッセーの寿命大幅削減は確かに大変だが、イッセーがいまだ下級悪魔であることもあって世界的な影響力はさほどでもない。

 

 問題は、だ。

 

 なんか聖杯を二重に使って転生したとかいう、道間清明ことミザリ・ルシファー。及びミザリが前世でスカウトして悪魔に転生してもらったサーヴァント達で構成される、イシロ・グラシャラボラス眷属。

 

 ……今回の件でどの勢力も、内部に対して疑心暗鬼が進んでいると言われている。

 

 なにせ記憶と能力を継承して、全く異なる他種族に転生するという前代未聞。更にそれが最悪の形で最初になってしまったからな。

 

 コロンブスの卵とかいう真偽不明の格言が示すように、前人未到ってのはそれだけでインパクトがある。初見殺しなんて言葉もあるように、最初ってのはそれだけで凶悪で価値があるんだ。歴史に名を残した者達にも結構な割合で、最初にそれを成したとされていることが大きなパターンだってある。

 

 そんな最初の一歩が寄りにもよって大悪事を引き起こしたんだ。それも獅子身中の虫として、陣営最強とも言われる存在を他にもいる状態で一蹴。とどめに何年間もしてきた慈善活動も、最悪の形で利用する為だけにやってきたという始末。

 

 どの勢力も「比較的若手の中には、敵対していた勢力の者が同様の方法で潜り込んでいるのでは」とか思ってしまうのは仕方がないだろう。

 

 しかもミザリのやらかしで、和平を結んでいた各勢力では和平を解除することを望む奴らも数多い。

 

 自分達側にも同様の連中がいるかもしれないし、そもそも悪いのは裏切り者だ。だがそこまで考えて行動する奴ってのは意外と少ない。あと示し合わせた仕込みという可能性も捨てきれない。

 

 どこの勢力も疑心暗鬼と和平反発運動に混乱している現状だ。

 

 三大勢力はまだ和平反発運動こそ起こってないけど、ミザリが趣味の為に慈善活動の裏側で行った化け物騒ぎの火消しで苦労している。こと近年はSNSとかあるから、その辺りの情報抹消が大変だ。同様に偏見の目から罪のない被害者を守る為、魔王の方々は苦労しているとか。

 

 ただしサーゼクス様はルシファー相手に深手を負って一蹴されたことで、余計な悪感情を向けられない為に当面動けないから更に大変。本家の次期当主が禍の団に与していたアジュカ・ベルゼブブ様がかなり自由に動けるほど、ミザリ・ルシファーの行動は悪目立ちしていた。

 

 始末に負えないことに、俺達オカ研がシャルバ達を倒したことも魔王様方にとっては逆風だ。なにせその前に旧魔王の三人組は現魔王を相手に有利に立ち回っていた。その仕組みを上手く掻い潜ったと言えど、俺達は基本的に若手の若手だから、どうしても比較対象としては軽く見られる。結果として「現魔王って若手悪魔程度が三人まとめて倒せるような奴らに、一対一で負けるの?」とかいう悪評が立っているらしい。

 

 中には、サーゼクス様ではなく妹のリアス部長を魔王とするべきでは何て意見もあるらしい。

 

 ……考えない馬鹿って多いんだなぁ。もうちょっとこぉ、何かあるとか俺達がインチキをしているとか思ったりしないのか? いや、インチキ扱いで色々言われると、和平の象徴となっている俺達が悪評立たされるという割と致命的な展開になるんだけど。

 

 なんてことを思っていると、体育祭の競技は二人三脚に移行し始めている。

 

「まずいな。アーシアが後で泣きそうじゃ―」

 

「―その心配は無用だよ」

 

 その声を聴いて、俺はぎょっとなって振り返った。

 

「なんでいるんですか? サーゼクス様」

 

「いや、周りから「少しの間は表に出てくるな」と言われていてね。だからリアス達の応援に来ていたんだよ」

 

 そこにいたのはサーゼクス様だけど、理由を聞いたら納得だった。

 

 まあ確かに、冥界にいるよりは人間界にいる方が冥界的には目立たないわな。

 

 というかちょっと待て。今ちょっと気になることを言ってなかったか?

 

「―イッセーって起きたんですか?」

 

「ああ。グレイフィアが連絡を入れてくれたこともあってね。今転送されているから……ほら」

 

 サーゼクス様が示す先には、まだちょっと本調子じゃないっぽいイッセーが、アーシアと足を結んで参加しているところだった。

 

 クラスの連中はオカ件のメンバーもほっとしている。まあクラスの場合はイッセーではなくアーシアを心配しているからだろうけど。

 

 まあ、イッセーの評判は最近はだいぶマシになっているそうだ。あと松田と元浜も。

 

 何せイッセーは覗きをやめようと決意して以来、酷い時は一日に何度も心因性の発作が起きていたらしい。松田と元浜もカズヒ姉さんの餌に釣られて我慢しているけど、僅か二週間そこらで我慢で気が狂ったのか、衝動的に壁に頭を打ち付けたりしているとか。

 

 そんな光景を見ている上、うわごとのように「覗きしたいでも我慢」とか呟いている光景を見たりした結果、学内でイッセー達の評価が変化したそうだ。主に「気が狂ってるレベルの色情狂だけど、それを発狂寸前になりながら我慢し始めている」として。

 

 ……これで評価がどっちかといえばいい方向に変わってるんだから、あいつら本当に病気だろ。

 

 更にカズヒ姉さんが「集団私刑(リンチ)は覗き以上の悪行」だということを触れ回った結果もあり、「今までのことはプラマイゼロでとりあえず置いておいて、発狂しかけながら我慢している努力は認めて野郎」という方向が主流だとか。

 

 ……いやほんと、あいつら病気だろ。

 

 あとイッセーと木場の間で「女体に狂っている兵藤を、イケメン王子木場が支えて愛が芽生える」という方向性のエロ同人が新たなホモ同人のブームだとか。

 

 実在人物をネタにホモ同人とか鬼か。カズヒ姉さんは風紀委員や生徒会をと協力して摘発を進めている。

 

 ただ、そこに関してはちょっと進んでいない。カズヒ姉さんが「あなた達がイッセー達に覗かれて嫌なことと同じよ。そこは集団私刑(リンチ)でだいぶ相殺すべき以上、もしこのまま続けるのなら、むしろわざと覗かせるとかストリップするとかが筋とは思わない?」と言った結果、女子の一部が真剣に考慮し始めたそうだ。カズヒ姉さんが会長に説教される流れになった。

 

 捨て身すぎるだろ腐界の住人。これが、ホモォの世界なのか……っ。

 

 どうか巻き込まれませんようにと俺は心から願った。

 

 まあそれはそれとして、俺は真剣に気を取り直す。

 

「でもどうします? 今後魔王派は動きにくくなったんじゃないですか?」

 

「そうだね。禍の団(カオス・ブリゲート)、こと冥革連合に注力する必要性もあるし、当面は大王派の顔を立てる必要もあるだろう」

 

 サーゼクス様はそう言うけど、俺はちょっと気になることがあった。

 

「王の駒ってのはどうするんですか? なんでも生産ラインを作ることは可能だって話ですけど」

 

 その辺りはリーネスから聞いている。

 

 こと駒の隠し要素とか遊びの部分を削った結果、生産性が高まっているのが冥革連合が提出した駒の特徴だとか。

 

 それに対してサーゼクス様は首を横に振った。

 

「現状では開発はしないというのが方針だ。王の駒の強化はあまりに強大すぎて、暴走する者が必ず出るだろう。冥革連合は「多少被害が増えてでも強化されるべし」というスタンスのようだが、私達は真逆だよ」

 

 なるほどな。

 

 まあ、スタンスの違いは仕方がない。

 

 強大な力ってのは飼いならせないと暴走するからな。手綱を握れない力何て厄介極まりない。嘆きの涙を大量に生む、嫌なもんだ。

 

 だからまぁ、サーゼクス様達の方針に否は無い。

 

 だけど―

 

「ってことは、冥革連合は勝ちに行きますね」

 

「だろうね。……最も、彼らの思い通りにはならないさ」

 

 ―そうなるわけだ。

 

 大王派が政治的に優位に立っているということは、裏を返せば大王派由来の政策や計画が進みやすくなるということでもある。

 

 そして俺が思っている以上に、この人はやり手だった。

 

「どうしても魔王派(こちら)が優勢だったり拮抗できると、大王派の意見を通しにくくなる時がある。私が賛成したくても大王派のやり方を認めるのかと言ってくる過激派が出てくることもあるからね」

 

 ……なるほど。

 

 坊主憎ければなんとやら。例え取り入れた方がいい政策だとトップが思っても、柔軟性が欠ける奴らは対立派閥の政策を素直に受け取ることに反対することはあるわけだ。冥界も人間と変わらないところがあるな。

 

 だけど発言力が低下しているのなら、「今は大王派を立てて復権の機会を窺う」という形で言いくるめられる奴も出てくるだろう。

 

 つまり、取り入れる価値のある大王派の意見を組み込みやすいということか。

 

「王の駒は広めないが現四大魔王(私達)の総意でね。大王派が開発したDF(ディアボロス・フレーム)には、王の駒生産という意見をやり込める為にも使わせてもらいたい。私達の発言力低下を逆手に取らせてもらうよ」

 

 ……この人、意外に政治家としても十分能力あるな。

 

「……それはそれとして今はリアスの応援をしたいところだ。さて、リアスはどの競技に出るのかな?」

 

 ……何時の間に応援団みたいな格好してるんですか、あんたは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と、サーゼクス・ルシファーは当分強制的に休暇って感じだねぇ。俺達に聞かれてると思ってないのか、それとも聞こえていると踏んでわざと言っているのか」

 

「気にすることはあるまい。普通に関係者なら入れる高校の体育祭で、警備もなく話しているのなら聞かれることも考慮済だろう」

 

「よく言うぜ。駒王学園生徒にまで繋ぎ作ってるやつ普通いねえよ」

 

「それにDFの正式採用と、正式量産型の急ピッチでの製造が決まったのは僥倖だ」

 

「そうは言うけどよぉフロンズ。あれは確かに上級悪魔クラスの出力を出せるが、だからイコールで上級悪魔一人分ってわけじゃないんだぜ?」

 

「……本当にそうなのかね? 実際のところ、上級悪魔とも十分渡り合えていたが」

 

「初見ってのはそれだけで武器なんだよ。出力が上級クラスだろうが、それを運用する本体の質量や体積が段違いじゃあ、色々とディスアドバンテージってもんがある。格闘戦のリーチはあるだろうが、操縦システムの都合でどうしても生身と同様の動きや反応ができるわけじゃねえしな」

 

「ふむ。敵味方共に情報が共有されれば、キルレシオはDFが不利だと?」

 

「こっちも運用がこなれるからまたちょっと複雑だろうがな。距離を取っての遠距離戦闘なら面積の差が被視認距離や被弾率につながるし、図体のでかさはリーチにつながる分、懐に潜り込まれたら一気に不利だ。個人的には3、4機で上級悪魔二人と相手にする程度にしたいところだな。これも簡単にはいかねえ」

 

「其れなら大丈夫かとも思うが。あれの生産性は理論上とはいえ相応に高いぞ?」

 

「金と資材があればの話だ。兵器ってのは高性能かつ大きくなればそれだけ金がかかる。圧殺可能な数を確保しても、その結果こっちの財布がすっからかんになったら、それでクーデターを起こされるぜ? そもそも生産ラインが確立しているからって、ぽんと何百機も用意できるもんじゃねえ」

 

「なるほどな。既に盆式聖杯戦争も済んでいるし、すぐに再度と言えるものでもないしな」

 

「霊地のインターバルはもちろん、空いている土地だってお盆になるまでは使えねえしなぁ。第一、同時に他の機種だって作るんだろ? 生産側のストレス・財布・集中力とか考えとけ」

 

「確かにな。今回投入したDP-スピアは、あくまで大量に動員可能な大規模作戦やそれぞれの基地に配備するD-スピアの試験モデル。冥界の広さを考慮した緊急展開モデルや拠点防衛用、まして質の根幹ともいえるGD(ギガンティック・ディアボロス)のことを踏まえれば、配備可能な数には限度があるか」

 

「そういうわけだ。当面はスピア重視で言って、他のは生産ラインが安定するまでは小出しにするしかねえな」

 

「……軍事戦略において、やはり君には一歩劣るな。頼りにしている」

 

「安心してくれや。俺も畑の手入れにゃ一歩劣るしよ。……それはそれとして、だ」

 

「なにかね?」

 

「ロビー活動はどんな感じだ? 禍の団にスパイを送れるパイプはできたが、それだけってわけにゃいかんだろ」

 

「ふむ。実は今日、君が帰った後に本格的な商談の予定があったんだが……言ってなかったかね?」

 

「手を結べられる可能性が聞きたいねぇ。どんな感じな―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―それなら大丈夫。手紙の内容通りなら、私はあなた達と協力してもいい」

 

「……もう来ていたのかね? というより、君がこういった仲介をしてくれるとは思ってなかったよ、ティラ」

 

「なぁに。たまにはアタシも話を聞きたいのさ。ま、難しい話ならすぐ寝るさね」

 

「それでいいのかよ、ティラ。お前さん、サイラオーグに一泡吹かせたいんだろ?」

 

「まぁ、敗けっぱなしは趣味じゃないからね。つってもその御膳立てはまだ先だし、それまでしっかり鍛えとかないと無理じゃないかい、ノアさんよぉ?」

 

「そりゃどうも。……ま、都合がいいからこのまま商談ってことにしてくれないか、フロンズ」

 

「ノアの頼みなら構わないが―」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―いいかね、ベルゼブブの血が混じりこんでしまった、人間マルガレーテ・B・ゼプルよ」

 

「もちろん。魔王を失くしてくれるなら、願ったり叶ったりだもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 大体政治家は舐めたらあかんという話です。

 転んでもただでは起きないサーゼクスと、そんな中裏で動いているフロンズ一派といったところです。

 正式名称が出てきたDFですが、見ての通り何機か種類を出す予定ではあります。そして上級悪魔クラスのポテンシャルはあるが、正しい意味でそのポテンシャルを出すにはそれなりに戦術とかが必須といった塩梅にしております。

 フロンズは本質的に政治を含めた国家運営レベルの戦略的判断であり、軍事的判断力ではノアに劣ります。また一対一の真っ向勝負ではフロンズもノアもサイラオーグなら生身で勝てる部類なので、政治的な方向性と軍事力強化が基本の方向性です。

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