ミホノブルボンが中距離戦を制してから数日、今度はライスの番だ。デビュー戦、中距離でやってもらうつもりだ。ここ数日で本番に向けてライスの身体は完全に仕上がってきてる。身体は。最近俺に何か言いかけては止める、なんてことが多々あった。俺からどうした?と聞いてみてもなんでもないよの一点張りだった。無理矢理聞こうかとも迷ったがそれで余計にメンタルを刺激したくは無かったので俺も強くは出なかったがレース当日、事件は起こった。デビュー戦のレース場に俺はだいぶ早く着いて最後に出す指示やアドバイス、激励を考えていたがしばらくしてブルボンから連絡があった
ブルボン『朝早くからのメールを失礼します、マスター。そちらにライスはまだ到着していませんか?先程ライスの寮長のヒシアマゾンさんから連絡があり朝からライスの姿を見た人がいなかったそうです。』
悠「見た人がいないって・・・ライス・・・」
俺は深く後悔した。ライスは自分が変われないのでは無いかと考えているのだ。スカウトした時にそれは十分理解していたしそれを変えてあげたくて俺はスカウトしたのだ・・・目覚しい伸びを見せたライスに俺は期待して、心の方は何一つ考えてやれなかったんだ・・・なんて情けない・・・
悠『おはようブルボン。とりあえずブルボンも探せるところを探してくれ。俺も直ぐに向かうよ。』
送るとブルボンからはい。という返事の見送られてきた。すぐさま探しに言ったのだろう。俺も超特急で学園に入り寮に向かう。途中ハルウララという同じ寮のウマ娘に会った為案内してもらった。
ウララ「ここだよー!」
ヒシアマ「おい、待ちな!」
悠「・・・君がヒシアマゾン?」
ヒシアマゾン「そうだ。今は非常事態たが、トレーナーは寮には入れないルールだ。探すなら外を・・・」
悠「でも、俺も探せるところは全部探したい・・・それに多分ライスの性格から考えて寮の中にいる。頼む、10分・・・いや、5分でいいから!」
俺は必死に頭を下げる。ここでライスが逃げてしまったら、多分一生後悔させてしまう。そんな悔いをライスには残したくない。
悠「お願いだ・・・後々何でもする!約束する!」
ヒシアマ「・・・あぁぁ!、分かったよ!ホントにすぐ見つけて出ていきなよ!」
悠「・・・!!ありがとう、ヒシアマゾン。恩に着るよ。ウララ、ライスはどの辺にいるとか検討つかないか?」
ウララ「うーん、空き部屋とか、真っ暗なところはまだ見てないかも!」
悠「そっか・・・入って大丈夫そう?」
ヒシアマ「もう寮入っちまったんだ。好きに探しな?ただ、手洗いとか入ったら蹴っ飛ばすからね?」
悠「それはもちろん。」
そう言うと俺は廊下を駆けて空き部屋を探しては中を探す。なかなか見つからずだんだん不安になってきたが・・・
???「あ、あの、ら、ライスさんのトレーナーさんでしょうか?」
悠「ん、君は・・・?」
ロブロイ「は、初めまして。私はゼンノロブロイと申します。ライスさんと同室の者です。そ、その、ライスさん、見つけました。ここの1番奥の空き部屋です。」
悠「何!?ありがとう。」
そう言うと俺は飛び込むようにその空き部屋に入った。すると・・・
ライス「ふえぇ、うぐ、ひっぐ」
そこには蹲り、静かに泣いているライスがいた。怖がっているのか耳やしっぽの先が微かに震えている。
悠「・・・ライス。」
ライス「え、と、トレーナーさん?」
そして俺はゆっくりライスに歩み寄りライスに手を伸ばす。殴られるとでも思ったのだろうか、ライスは肩を震わせギュッと目をつぶる。しかし俺はもちろんそんなことはせずに
ぽふん
ライス「え?」
優しくライスの頭を撫でた。
悠「・・・ライスはこれ好きだもんね?」
ライス「う、うん。」
落ち着いてきたのか耳やしっぽはもう震えていない。
悠「・・・・・・やっぱり怖い?」
ライス「え?」
悠「俺はライスが変わりたいのを知ってるから。そのために頑張って来たことも怖くても模擬レースに1人で申し込んでたことも知ってる。だからこそ、変われないのがこわいんだね?」
ライス「・・・トレーナーさんにはなんでも分かっちゃうんだね。」
悠「いや、そんなことない。俺はライスの脚の状態ばかり見てて心に気を配ってやれなかった。もっと早くに気がつくべきだったんだ。」
ライス「そ、そんなこと、ライス一言もこの事言わなかったし・・・」
悠「なぁ、ライス?」
ライス「な、なあに?」
悠「ライスが怖いのはわかるよ。実際俺も怖い。トレーナーするのだってライスが初めてだし、ライスはいつも楽しそうに、懸命にこなしてくれるけど果たしてこれでライスは成長できるのかなんてよく考えるしさ?でもライスはメキメキ成長してタイムも縮めてくれるし俺に気さくにトレーナーさんトレーナーさんって言ってくれるのだって結構救われてるんだよ?まあ、言うのはなんかダサいし今まで言わなかったけどさ?少なくとも俺はライスに笑顔にしてもらったよ。1人変えられたなら万々歳だ。一緒にレース場をライスに向けられた花だらけにしにかない?」
ライス「・・・トレーナーさんは私を見捨てたりしないの?逃げたんだよ?当日に。」
悠「こんな事で見捨てるんじゃトレーナー失格だよ。というか見捨てる理由にならないよ。」
ライス「・・・トレーナーさん」
悠「うん?」
ライス「もう1回なでなでしてくれる?」
悠「ん?、ああ。もちろん」ナデナデ
ライス「〜♪うん、もう大丈夫。ライス逃げない・・・!」
悠「よし、よく言った。じゃあ行こっか!」
ライス「うん・・・!」
そのままスっと2人で立ち上がり部屋を出る。
ウララ「あー!ライスちゃん出てきた!」
ロブロイ「ライスさん・・・!」
ライス「あ、あの、2人とも、迷惑かけてごめんなさい・・・」
ロブロイ「い、いえ。それより、ライスさん、急がないとレースに間に合わなくなってしまいますよ?」
ライス「う、うん!」
悠「俺の方からも、ありがとう!また今度ヒシアマゾン通してお礼させてくれ!」
ロブロイ「は、はい!」
悠「行こうライス!」
そのまま俺はライスを引っ張っていく。そして、
ウララ「なんだかライスちゃんの目、キラキラしてたねー♪」
ロブロイ「あの方が、ライスさんのトレーナーさん・・・」
その2人を見送っていた2人のウマ娘は、1人は目を輝かせ、1人は羨ましそうに見ていた。
悠「・・・もう電車じゃ間に合うか微妙か、ライス、こっち!」
ライス「ふえ!?」
そのままライスを連れていったのは駐輪場だ。そこにあったのは、
ライス「わぁ、おっきいバイク・・・!」
悠「そう、理事長が初任給だいぶ出してくれたから俺もだいぶ奮発したんだ。これなら多分ギリギリ間に合うから、捕まって!」
ライス「うん!」
後ろにライスを座らせてバイクを走らせる。俺はバイクが結構すきだった。バイクで走っている時、ウマ娘はこんな景色なのかな、と想像しながら走るのだ。そんなことを考えつつスピード違反ギリギリのスピードで走り続けレース場に着く。時間は・・・
悠「よし、間に合った!ライスが走っていけば間に合うから!」
ライス「う、うん!ありがとうトレーナーさん!」
そのまま先にライスはスタスタと中に駆けていった。
悠「ええっと、」
そして俺はスマホを開く。事前にブルボンにはライスを見つけた時点でこの場所に来るように連絡してあったのだ。ブルボンに場所を報告してもらい探すこと数分・・・
ブルボン「マスター、お待ちしていました。ライスは大丈夫でしたか?」
悠「ああ、とりあえず俺も直ぐにライスのところ向かわなきゃ行けないから、ブルボンは先に客席行ってて!これで関係者ゾーン入れるから。」
ブルボンに専用のパスを渡すと、
ブルボン「分かりました・・・マスター。ライスに伝言を伝えていただいてもいいでしょうか。」
悠「ん、なんだい?」
ブルボン「私達で、ライスが1着でゴールするのを待ってます。と。」
悠「分かった。じゃあ行ってくる。」
そして俺も中に駆け込む。そしてコースに出る通りで待っていると
ライス「トレーナーさん!」
体操服にゼッケンの姿のライスが俺の前に来た。
悠「間に合ったんだな?」
ライス「うん、ありがとうトレーナーさん。」
悠「いやいや、当然の事をしただけだよ。あと、ブルボンから伝言だ。」
ライス「ん、なに?」
悠「1着でゴールするのを待ってるってさ?本人は無自覚だったかもしれないけど、結構いい顔で笑ってたよ。」
ライス「ブルボンさんが・・・あの、トレーナーさん、その、私」
悠「大丈夫だライス。君だって咲ける!」
ライス「・・・・・・!いって、きます!」
俺に最高の笑顔を向けたライスは芝コースに向かってかけていく。あの小さな背中も今は頼もしく見えた。
ブルボン「・・・マスター、こちらです。」
悠「ああ、ありがとう。」
ブルボン「ライスは、勝てそうですか?」
悠「どうだろうね。レースでは何があるか分からないから。」
ブルボン「では、ライスが最高のコンディションで、レース運びも冷静に出来たとすれば?」
悠「・・・勝つよ。ぜったい。」
そう話しているうちに全てのウマ娘がゲートに入る。デビュー戦、これはウマ娘にとって特別なステージになる。ここで一般の人たちはこの子が将来活躍しそう!この娘を応援しよう!となるのだ。つまりはウマ娘の第一印象がきまる。
悠「・・・行け、ライス」
俺が呟いたと同時にゲートが開く。逃げが2人、先行が4人、差しが2人って所か・・・ライスは3番手、2番手の逃げにピッタリつけてる。あの子は自分のペースをきっちり護って走る、言わばブルボンと似た走りをするウマ娘だった。ついて行くとしたらアレ以上ライスのやりやすい相手はいないだろう。ライスも自分のペースも守れているし乱されてない。
ブルボン「・・・これは、」
悠「決まったね・・・」
第4コーナーを周りライスはついて行くのを辞めた。もちろん諦めたんじゃない。逃げ2人の前に出た。まるで差しウマ娘のような末脚で後続をグングン突き放す。目分量だが7バ身ほど開いている。そして、
ワァァァァァァァァァァァァァ
コース内は最高のボルテージになった。素晴らしい力を見せつけライスはゴール。電子板に出たのは10バ身の数字。まさに圧倒的だった。
ブルボン「・・・マスター」
悠「ここに来て化けたな、ライス・・・ブルボンも早くあの域まで行かないとな?GIは夢で終わるぞ?」
ブルボン「・・・承知しました。今のライスの走り、現時点で私の目標に設定。超えるため、善処します。」
悠「うん。じゃあ俺はライスのところ行くけど、来る?」
ブルボン「はい。」
そして急いでライスのところに向かう。未だに歓声を受けているライスは本当に嬉しそうにわらっていた。
ライス「トレーナーさん!ブルボンさん!」
ブルボン「ライス、お疲れ様でした。素晴らしかったです。」
悠「ああ、本当に素晴らしかった。というか正直びっくりした。勝つとしてもここまでやるとは思わなかったよ。でも、本当に綺麗に咲いたと思う。」
ライス「う、うん!ありがとう!それでね、トレーナーさん?お願いがあるんだけど・・・」
悠「お願い?」
ライス「トレーナーさんの事ね?お兄さまって呼びたいの。」
お兄さま。ライスが好きな絵本のライスが大好きな人物だったはずだ・・・ライスがそう呼びたいという事はそこまでトレーナーである俺に信頼を寄せていてくれるんだろう。なら俺は、答えるのみだ。
悠「もちろん、それを君が望むなら。」
ライス「・・・!じゃあ、これからもよろしくお願いします!『お兄さま』!」
ちなみに後日、お騒がせした寮のみんなには実費で大量のお菓子詰めを送った、
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