夏油傑は特級術師である。
夏油傑は呪霊操術の使い手である。一般家庭出身である。
生まれは1990年である。デジ○ンポ○モン世代である。

つまりは、そういうことである。

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何か書きたくなって書いた。
こんな感じになったらなっていう妄想。
メタルグレイモンとか過去編で言ってたし…
ただ、この話では育成要素とか呪霊操術の利点がロクに出てこないよ。


じゅじゅモンマスター夏油傑

 夏油傑は呪術師である。

 生まれは1990年の2月3日。一般家庭に生を受けたが、呪力を持ち、呪術高専にスカウトで入学。術式『呪霊操術』の数少ない使い手であり、同時に高度な近接戦闘も行えるオールラウンダーな術師。

 呪術界でも4名しかいない「特級術師」の一人で、五条悟に並んで「最強」の名を欲しいままにする人物。

 

 呪霊操術という術式は確かに希少で強力な術式だが、それだけで特級術師になれる筈もない。彼が最強たる最大の所以はその術式の今までに例を見ない使い方である。その使用方法とは――

 

◆◆◆

 

「伊地知さん、時々いじってるけどそれ何なんすか?」

 

 ある術師からの依頼で呪霊を祓った任務からの帰り、呪術高専1年虎杖悠二は車の運転手で補助監督である伊地知潔高に尋ねる。

 それは伊地知の腰に二つ下げられており、呪力を纏い且つ常に身に着けている為、何かしらの呪具だと思われる。

 

「あ、ええ…虎杖くん。これですか…これは『獄モンボール』と言いまして…まあ、呪力が低かったり術式の無い補助監督に支給される呪具です」

「「獄モンボール』?」」

 

 反芻する様に紡がれた言葉は何者かと重なった。もう一つの声の主は釘崎野薔薇。虎杖と同じく呪術高専の1年で、今回の任務に当たっていた内の一人である。

 

「ええ、名称は特級呪物『獄門疆』から取られていまして、特級術師である夏油傑さんが己の術式をモチーフとして作り上げた呪具です。今回の依頼主でもありますね」

「特級術師って、五条先生みたいな?」

「夏油…傑?」

 

 躊躇いがちに吐き出された言葉は静かな車内においてはやけに大きく聞こえた。しかしながらこの二人は名前を出されてもあまりピンと来ておらず、頭の上に疑問符を浮かべている。

 それを不思議がった伊地知により会話は継続する。

 

「あれ…ああ。確か君たちはまだ夏油さんに会っていませんでしたね。彼は全呪術師の中でもあの五条さんに並んで最強と名高い人でして…」

「嘘!?五条先生並みに強い人っているの!?」

「それデマじゃない?それか誇張されてるとか」

 

 彼らにとって最も身近で最も強い人物である五条悟を引き合いに出され、一人は驚嘆、一人は疑惑の視線を伊地知に向ける。

 

「いや、あの人が五条先生に並ぶってのはデマでも誇張でもないぞ」

 

 突然の第三者からの意見に虎杖と釘崎は視線を向ける。そこには寝ていると思われていた伏黒恵が獄モンボールを手にこちらを見つめていた。

 

「そういえば伏黒くんはこの三人の中でも呪術界隈に一番長く関わっていましたね。それなら夏油さんと会ったこともあるでしょう」

 

 納得する様に伊地知は言い、虎杖は伏黒に問いかける

 

「伏黒は知ってるのか?……てかお前もそれ持ってるんだな。初めて見た」

「ああ、一回だけ戦ってるところを見たが、あれはバケモンだ。普段見てる五条先生としか比べようが無いくらいにはな。……これはそん時貰った」

 

 ころころと手の中で獄モンボールを転がしながら答える。どうやら使用用途は聞いていないらしく、今の今まで存在を忘れていたらしい。

 

「それで、その獄モンボールってのは何なのよ」

 

 痺れを切らした釘崎が脱線しかけた話を本来の道筋へと戻す。

 

「この呪具の基本的な効果は呪霊の捕縛、加えてその持ち主と特殊な縛りを結ばせ捕縛した呪霊を使役する事ですね」

「はあっ!?」

「何よそれ?そんなのあったら呪術師なんていらないじゃない。呪霊同士で戦わせればいいんだからさ」

 

 その驚きも当然の事である。それが本当ならば正に呪術師いらずの革命品だ。それに本来は戦闘に役に立たないような者でも戦線に立たせることが可能とするのだから。

 

「いえいえ、そこまで都合のいいものじゃありません。まずこの獄モンボールには制約があり、『入れられる呪霊は一体のみ』『あまりに格上の相手だと言う事を聞かない』『余程実力が離れていない限りは弱らせないと捕縛出来ない』などの欠点はあります。それにこの獄モンボールでは準2級の呪霊までしか入りません。まあ、それで助けられた部分もありますし、かなり画期的な発明なのですけどね」

 

 そう笑う伊地知の顔に嘘の色は見受けられず、それが現実なのだと実感させた。

 そして伏黒が「調伏の儀みたいにすればいいのか…」と呟く中、虎杖の脳裏の片隅に何かが引っかかる。

 

 そう、何か。呪術なんてものを知る前に似たようなものを知っていた気がする。そうしてうんうんと頭を抱える虎杖の構図は続き、遂には呪術高専に辿り着いた。

 

「何か見覚えがあるんだよなぁ…」

 

 そう呟くのは自室の玄関。ちょっとした私物が散らばる中を進み、パーカーつきの制服をかける。

 ベッドに寝そべり考えるが、一向に思い出せない。

 

「うーん、絶対どっかで見た気がするんだけどなあ……」

 

 天井から降り注ぐ人工的な白い光を浴び、瞳を閉じる。

 

「それ、これで見たんじゃない?」

 

 目を開けると、白い光は一部欠け、遮っている物はDVDディスク。虎杖の私物であり、近くのレンタルショップで適当に借りた物。そのタイトルは『ポケットモンスター』。

 

「それだぁぁーっ!!!」

 

 パチンと指を鳴らし跳び上がってそのディスクケースを手に取り、それを教えてくれた人物へと礼の言葉をかける。

 

「いやー、そうだよポケモンだよポケモン。教えてくれてありがとな」

「いやいや、別にいいって」

 

 差し出した人物に再び礼を言い、せっかく自分の部屋に来たのだからと何か茶でも出そうかと思い…

 

「……ん?」

「何かな?」

 

 こちらを見つめるのは肌の白いツギハギ顔の青年。虎杖は自室に帰ってから鍵をちゃんとかけており、他人が入り込む余地はない。さらに言えば、帰ってきた時点でこの青年は居らず、自分が瞼を閉じている間に目の前まで移動してきた事になる。

 

「って誰だぁぁぁーーーっ!??」

 

 咄嗟に背後へ跳び、構える。にも関わらずその人物はヘラヘラと笑みを浮かべ「や!」と手を掲げる。

 

「初めまして。宿儺の器…虎杖悠仁だよね?ふぅーん、映画好きなんだね。俺も好きだよ」

 

(何だ…こいつ。何か五条先生レベルに自由な人……。いや待て、この呪力は――!)

 

「あ、気づいた?そうそう、俺呪霊」

「――ッ!?」

 

(何で高専の中に呪霊が!?結界とかいうのが張ってあるんじゃないのかよ!それに、今までに見たのは話せなかったのに、流暢に話している…?それに人型とかいう初めて見る呪霊。呪力も今までの奴らの何よりもヤバい――!)

 

 全身が警鐘を鳴らし、目の前の相手から目を離せない。何故こんな存在が安全な筈の高専内、それも一生徒の部屋にいるのか―等など脳内で疑問が渦を巻く。

 それでも虎杖は逃げる事なく冷静に相手の強さを分析し、いかに五条悟を早く呼ぶかが勝負の要になると理解、今持てる最大限の呪力を拳に乗せ戦闘態勢をとる。

 

「待った待った。俺は敵じゃないって…。五条悟がそろそろ来るだろうから、聞いてみれば分かると思うよ」

 

 それまでゲームでもしようぜ?とニンテンドーSwitchを掲げる。ほいっと投げ出されたJoy-Conを慌てて受け止めると、自室のテレビに接続し、あの大乱闘なゲームが映し出される。

 

「じゃあ自己紹介でもするか、俺は特級呪霊の真人。人間への恐れから生まれた呪霊だよ」

「え、ああ…俺は虎杖悠二。呪術高専1年。宿儺の器って奴らしい……」

 

 罠かと疑うも、やらないの?と言う真人は完全にあぐらをかき前傾姿勢になっていて、その様はごく普通の男子高校生の様だった。

 何だか毒気を抜かれた虎杖は、少し離れたベッドに腰掛け、己の操作キャラを選択し、一騎討ちが始まった。

 

―――その結果としてただ一言、普通に負けたとだけ言っておく。

 

 

◆◆◆

 

「や、久しぶり、傑。前髪のライン後退してきてないかい?」

「悟の方こそ、ストレスで若白髪になってるのを誤魔化してるんじゃないだろうね」

 

 会って早々に行われる髪の毛弄り。勿論それは本気ではない。高校時代からの親友である彼らは約1年ぶりに顔を合わせる事となる。

 

 今回立ち寄った理由として、暫くこの付近を拠点とするので、折角だから…と友人に会いに来たのである。

 

「夜蛾学長や硝子は元気かい?」

「んー?硝子はいつも通りだけど、学長は宿儺の指のアレコレでストレス溜まってる感じー」

 

 尚、実際は宿儺の指よりも、それを気にする悟の態度の方がストレスが溜まっているのはご愛嬌である。

 

「何体位捕まえたんだ?呪力がまた増えてるぞ」

「ん、やっぱり悟には分かるか。この一年の成果としては蝿頭がざっと1000、4級から準2級が800くらい。2級が324、準1級が101に1級が53。特級に至ってはなんと5体もゲット出来たよ」

 

 そう飄々と語るが、それも特級に数えられる所以、本来なら特級などとはまともに戦うべきでなく、相性によっては歴戦の1級術師ですら一方的に殺されてしまう様な相手である。

 

「ひゅーう、また増えたね。ってかズルくない?僕だって色々やってんのにお前だけ延々と成長していくんだぜ?」

「ふっ……傑、これが生まれ持った才能って奴だよ」

「うわー、すげぇムカつく。殴っていい?」

「別にいいけど殴ったら前髪刈るよ」

 

 そうして懐から覗かせるのは五条にとっても苦い記憶である呪具。

 

「……やっぱやめとく」

「それが賢明だ。……で、宿儺の器とやらはどうなんだい?」

 

 まるでそれが本題であるかの様に場に緊迫した空気が流れる。それも一瞬の事で、すぐにゆるふわな空気に戻る。

 

「今の所安定してるよ。体の主導権もちゃんと握れてるし、切り替えも出るのはアッチ頼みだけど引っ込ませるのはいつでも出来るっぽい」

「ふむ、非術師からそんな者が生まれるとはね」

「ハッ、傑が言うのかよ。第一、特級術師なんて奴の4人中2人が一般家庭出身で、御三家なんて僕だけだよ?もう御三家以外の方が素質あるように思ってきてるんだけどー?」

「ははは…たまたまさ、たまたま」

 

 それを最後に、暫く沈黙する両者。何か思うところがあるのだろう。

 

「…やっぱり、糞みたいな上層部にも変化は無し、か…」

「本当にね。悠二の秘匿処刑だってあいつ等のせい。僕が無理を通して実質無期限の猶予を与えたけど……多分だけど、近いうちに暗殺命令とか出るんじゃない?…全く、嫌になるよ」

「夜蛾学長みたいにいい人もいるんだけどねぇ…。七海は社会も呪術もクソだっていうけど、物理的に殺されないのと、然るべきところに申し立てれば何とかなる分、こっちのが酷いと思うよ」

 

 一度言ったら止められないのか、お互い疲れ果てたサラリーマンの様に延々と上層部への恨み辛みを愚痴り始める。保身馬鹿世襲馬鹿高慢馬鹿ただの馬鹿だの好き放題暫く続けた後、余計に苛ついたのか話が途切れる。

 

 そして急激に高まる呪力の波。その発生源は五条悟。莫大なその呪力は並の術師が見れば戦意を喪失して膝を折るほど。それが今現在、夏油傑という一人の人間に向けられていた。

 

「ふぅー…何か余計にストレス溜まった気がしてきた」

「言い訳はよせよ。ただやりたいだけだろ?」

「当たり!」

 

 そう答えるのと同時、瞬間移動もかくやという速度で接近し殴りつける――が、空振り。

 

「おろ?」

 

 目の前には夏油傑。直前に地面を蹴り、一歩下がった様な挙動を見せて躱し、五条悟から見て右へ回り込み、呪霊が針を射出する。

 

「よっと」

 

 それを右手で払い除けようとして――その防ごうとした右腕をすり抜けて直撃――否、無下限呪術により五条悟に到達し得ない。しかし、右腕で払うことは出来ず、術式が教える攻撃位置が視認した位置と真逆だったのだ。

 流石にここまでされれば分かる。

 

「幻覚…いや、認識の支配辺りか」

「もう気づいたか。まあ悟本体には精神干渉系もあまり効かないからね、悟じゃなくて周囲の空間の認識を20層くらいに歪ませているよ。…相変わらずこういう手の術式には引っかかるんだね」

「ハッ、こんなのお前しか出来ねえよ」

 

 即座に六眼で索敵し上空の呪霊を祓う。すると霞のように視界がぼやけ、夏油の場所が本来の位置に捉えられる。

 その隙にも100以上の呪霊を呼び出し、術式による絨毯攻撃。過剰に見えるこの攻撃だが、これで死ぬようならば最強などとは呼ばれない。呪霊達の放った術式はどれも無限に阻まれ傷をつけるまでに至らない。ただしかし中には特殊な術式持ちも加わっているようで、目眩ましとしては十分に効果を発揮しただろう。

 

「ハハッ近接で来るのか!呪霊使えよ!」

「生半可なやつじゃ無駄に手持ちを減らすだけだからね!」

 

 金属同士が激しくぶつかり合う様な音を立てて殴り合う五条と夏油。夏油は領域展延により無限を貫く事を可能としていた。

 幾ばくかの拳を交わし、夏油がよろめく。逃さず追撃を加えると、咄嗟に防がれたが激しく吹き飛ばされていく。

 その勢いのままに呪霊に飲み込まれ背後より拳を振りかぶった夏油が現れる。

 

(転移か――!)

 

 振り返り際にカウンターを打ち込もうとするも、踏ん張った右足が水の中にあるかの様に沈みゆく。――いつの間にか足元に呪霊を設置されていた。

 そのまま本体を踏み砕き、咄嗟に掌で受け止めると、轟音と共に腕に強烈な振動が襲いかかる。

 予想外の威力に驚きながらも、それを狙った追撃のハイキックも跳び上がって躱す。

 

「イッテー……腕めっちゃ痺れてるんだけど。ってうわ、真っ青じゃん」

「そりゃあね。2級クラスの呪霊の命を使って出した威力さ。その位無いと困る。これは冥冥さんの神風を参考にしてね。呪霊に自死を強制させ、呪力の塊である呪霊の呪力制限を消し去り、それを一撃に乗せたのさ。展延とのタイミングを上手く切り替えないとどっちも不発になっちゃうから苦労したよ。呪力毎に対しての倍率はあれほどじゃあ無いけど、純粋威力なら今思いしっただろ?」

「久しぶりにあんなマトモな攻撃受けたね。2級であれなら特級とかは僕でもヤバい威力だろうね」

「私の腕に乗せる都合上、1級までが限界さ」

 

 あははと呑気に笑いながらもお互いに驚嘆している。五条悟は自らの術式を貫いた上に強力な攻撃の更に上があることに。そして夏油はまともに当たって尚その程度で済まされた事に。

 しかし、それで悲観等しない。むしろ親友として誇らしく思う気持ちが湧き上がってくる。

 

「ほら、今度はそっちの番だ。…撃って来いよ」

 

 気分が高揚し、歯を剥き出しにした肉食獣が如き笑みを浮かべる。

 

「術式順転『蒼』、術式反転『赫』。死ぬんじゃねえぞ」

 

 指先に集う蒼い収束と赫き無限の発散。これが五条悟の前で重なり合い、一つの球状に固まる。これは五条家の人間でもごく一部の人物しか知らない術式。仮想の質量を押し出す技であり、見る事も触れる事も出来ない「重さ」が回避不能な速度で射出される。

 

――虚式・茈

 

 放たれる不可視の術式。それは全てを消し飛ばし進撃する神の掌、無限と無限の究極奥義。逃れる術は唯一つしかなく、発動前に効果範囲外に逃げる事である。一度放たれれば全てを塵すら残さず消し飛ばす規格外の暴力。防御は意味を為さず、それをまともに受けられる存在等、彼の両面宿儺以外には想像すら出来ない秘術であった。

 

――しかし、相対する術師も仮にも最強と呼ばれる者。

 

「試させて貰うよ。『転生虹龍』!」

 

 腕から飛び出した龍は、そのまま夏油を覆い隠し―――紫電が爆ぜた。

 夜が更けているにも関わらず、真昼の様に感じさせる明るさと大轟音が五感すべてを蹂躪していく。

 術の軌道は見事に抉り取られ、広範囲に渡る深い爪痕がその威力を物語る。

 

 その破壊痕は奥にある森を貫き、荒々しい一本道を作り出していた。貫通したことで流石に不安に感じ、臨戦態勢を解き様子を伺う。が、立ち上る砂煙の中に動く影を認めればもう笑うしか無かった。

 

「お疲れ様。疲れただろう」

 

 先まで展開していた虹龍を戻し、五条悟の前に歩み寄る。

 

「ハハッ…茈がまともに防がれたのなんて五条家全体で見ても初めてじゃない?」

「お褒めに預かり光栄だよ。種明かしをすれば、あの虹龍には守っている対象に攻撃を届かせない術式を習得させていてね。茈の重さも防げて超優秀な壁役さ」

 

 流石にそう何度も耐えられそうには無いけど、と語るが、まず防げるだけであり得ない上に、その背後の者に効果を届かせないのもかなりぶっ飛んでいる。

 触れることのできない攻撃だからこそ防御が出来なかったのだが、この術式で庇い立てれば、その術者以外は無傷でいられると言うことに他ならない。

 

「うぇー、何それチートじゃん」

「かなり便利だよ。侍らせておくだけで不意打ちなんかも防げる。…まあ、勿論虹龍が消えたらその効果もなくなる上に、虹龍自体は普通に攻撃喰らってるから、あまり頼りすぎたらいけないけどね」

「て事は虹龍自体に耐えられる耐久力があるんでしょ?硬すぎ…」

「驚いたかい?」

「うん、ここ一年で一番驚いたかも」

 

 服につく砂を払い落とし、構える夏油には目立った外傷は無い。お互い反転術式で完全回復しており、未だその体力の衰えを見せない。

 

「じゃあ、最後にアレやるか」

「乗った。私が勝ったら新しい呪霊ドロップの被験体になってもらうよ」

「げぇ……んじゃあ僕が勝ったら僕の生徒たちの面倒一緒に見てよ。そういうの今もやってるんだろ?」

「…分かった。カウントは?」

「僕がやる」

 

 そう言うや否や、お互い相手を正面に捉え印を構える。

 

「3」

 

 静寂が辺りを包み込み、周囲から動物の気配が消え失せる。

 

「2」

 

 10km圏内の住民が鳥肌を覚え、呪霊がその呪力に怖れを抱く。

 

「1」

 

「領域展開――『無量空処』」

「領域展開――『非想非非想天』」

 

――空気が、爆ぜた。




後一話だけ書くつもりだけど、反響があればもっと続ける

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