高度育成高等学校に着任した男   作:主義

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着任

僕は今年から高度育成高等学校に教師として着任することになった。自分からなりたいと言ったわけではなく理事長から手紙が届き、『一年という期間付きで高度育成高等学校の教師になってくれないか』と簡潔に書かれていた。

 

手紙を受け取った当初はこの誘いを受けるか悩んだが……一年という期間付きなら受けても良いかなと思い受ける事にした。在学中の時に勉強とかを後輩とか同級生に教えたことはあったけど……見ず知らずの人に教える経験なんてあるはずがない。

 

 

 

では、なぜ僕に白羽の矢が立ったのかに関しては理事長本人に聞かない限り分からない。それに教師の経験なんて僕にはない。

 

 

教師の経験が一回もないような人に高度育成高等学校で教師が務まるのだろうかと不安になってしまう。でも、理事長が態態、僕に手紙を出してまでお願いをするなんて何かあるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式の一週間前に僕は高度育成高等学校に着いた。就くとそこには在学時代の後輩である茶柱佐枝さんが居た。僕が卒業してからは会う事は決してなかったけど……ここの教師をやっていたのか。

 

 

 

「お久しぶりですね、佐枝さん」

 

 

 

「そうですね……本当にお久しぶりです。龍宮さん」

 

 

在学時代の時より丁寧になったかもしれない。在学している時はあまり敬語を僕に使う事はなかった気がするけどな。

 

 

 

 

「別に無理に敬語を僕に使う必要はないよ。強制的にため口にしろとは言わないけど昔みたいな喋り方でも良いのに」

 

 

 

 

「それはできません。あなたが先輩である事は変わりない事実ですし、感謝もしているので」

 

 

昔から可愛い子だと思っていたけど………本当に美人になったな。

 

 

 

「佐枝さんは可愛いね」

 

 

 

「………」

 

 

 

佐枝さんの方を見ると何故かさっきより顔が赤い気がした。多分、僕の気の所為だろうけどね。

 

 

「それで僕の部屋に案内してくれるかな?さすがに荷物を持ったまま校内を見回る訳にもいかないからね」

 

 

 

「………あ、はい。私の後に付いてきてください」

 

 

 

佐枝さんはそういうと僕に背中を向けて寮まで僕を案内してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今は案内された部屋に荷物を置いて職員室で挨拶をするところである。これから一年という期間だが教職員として働くわけだから挨拶は重要だ。第一印象で全てが決まると言っても良い。学生時代の時も自己紹介に失敗した思い出がよみがえる。

 

 

 

 

「それでは龍宮先生、皆さんに自己紹介をお願いします」

 

 

ついに来てしまった………僕は席を立ち、深呼吸をして自己紹介を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言ってしまえば『普通』だった。可もなく不可もなく、成功もしなかったけど失敗する事もなかったと思う。こんな感じの僕の自己紹介は簡単に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ち、入学式の日を迎えた。この学校のシステムを知る事のない一年生が……最初の一か月をどう過ごすかが鍵となる。だけどこれは一度この学校を卒業しているからこそ言える事だと思うけどね。まあ、頭の回転が速い生徒は気付くものもいるかもしれない。最初の段階でこの学校のシステムを少しでも理解しているものはこれから先優位になるのは明らかだ。

 

 

 

 

頭でそんなことを考えていると隣の椅子に座っている如何にも若そうな女性がこちらを見ているのに気付いた。

 

 

 

 

「何ですか?僕の顔に何か付いてますか?」

 

 

 

「いえいえ、そうではなくて…龍宮先生は私のことを覚えていないのかな~と思いまして」

 

 

 

 

僕がどこかで知り合った事のある人なのだろうか……でも、確かに彼女を見てからというもの何かもやもやした感じがある。どこかで会った事のある人なんだろうけど名前が出てこない。さすがに本人に名前を聞くのは……もし、僕がど忘れしているだけでよく付き合っていた人なら僕が覚えていない事を知ったら傷つくんじゃないかと思い聞けずにいた。

 

 

 

 

「…………やはりどこかでお会いした事があるのですか…」

 

 

 

ここまで来たら名前を聞いてしまうのも仕方ないかもしれない。このもやもやした気持ちをずっと抱えたまま教員として活動したくないし。

 

 

 

 

 

「失礼ですが…名前をど忘れしてしまったみたいなので名前を教えていただけませんか?」

 

 

 

「やっぱり忘れてますよね。そうだと思ってたんです。私の名前は星之宮知恵です。思い出していただけましたか?」

 

 

星之宮知恵……どこかで聞いたことがある名前なんだけど…どこで会ったんだろうか。

 

 

 

 

 

「ここまで言っても思い出していただけませんか……それでは『星ちゃん』で思い出しませんか?」

 

 

 

 

「…あ、『星ちゃん』ってことはあの『星ちゃん』?」

 

 

 

「多分、龍宮先生が考えている通りであっていると思います。やっと思い出してくれましたか?このまま思い出さないままかと思いましたよ」

 

 

 

 

でも、佐枝さんもそうだけど会うのは僕がこの学校に在学以来だからかなりの年月が経っている。それにまさかあの時の一年生の二人がこの学校の教師になっているなんて思いもしなかった。

 

 

 

「いや、ごめんね。あまり物覚えは良い方ではないから許して」

 

 

 

「確かに先輩は在学時から物覚えはあまり良い方でありませんでしたね」

 

 

 

その後は在学時の思い出話に少し花が咲いてしまい長話をしてしまった。その所為で入学式に遅れそうになってしまった。まあ、ギリギリだけど間に合ったから良かったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これから僕は1年間どんな生活をこの場所で送る事になるのだろうか。楽しみ半分、不安半分と言ったところかな。まずは生徒たちと少しでも仲良くなる事を考えようかな。

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