起きたら金髪碧眼の美少女聖女だったので、似たような奴らと共同生活始めました   作:緑茶わいん

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聖女、連携する

 不死鳥がもう一羽の同胞に頭から突っ込み、もつれあいながら宙を飛ぶ。

 二匹のオロチが首を絡ませあいながら相手に牙を突き立てる。

 

 魔物使いであるアッシェにはモンスターのコントロール能力がある。

 朱華がやっているのもそこからヒントを得たものだろう。身体の大部分が炎であることを利用した、パイロキネシスによる疑似支配。

 この効果は絶大だった。

 操れたのはでかい敵(不死鳥、オロチ、ボスオークが二体ずつの計六体)のうちの三分の一に過ぎないが、それが同士討ちを始めたことで効果は倍。

 更に、俺たちへと向けて動き出そうとしていたボスオーク、コピー・シュヴァルツたちも味方の異常に動揺を見せた。ラペーシュはモンスターたちを召喚するだけしてコントロールはしていない。つまり奴らは自身の知能で動いているので、異常事態には弱い。

 

 そしてもちろん、俺たちはその隙を見逃さない。

 

「──《聖光連撃(ホーリー・ファランクス)》!」

 

 《神光波撃(ディバイン・ウェーブ)》を封じられたのは痛いが、使えないものは仕方ない。俺は聖なる光を敵の一団に降り注がせ、更なる動揺を誘うと共にその体力を削り取る。

 直後、動きの止まったコピー・シュヴァルツの一体にノワール操るPDWの銃弾が殺到、装甲に無数の傷を作り、関節を砕き、センサーを停止させる。

 慌てるように動き出したコピー・シュヴァルツたち。高速で接近してくる瑠璃に銃弾が降り注ぐも──霊力の足場を用いた三次元軌道がそれを華麗にかわしていく。そうして敵の一団へと舞い降りれば一閃。コピーの一体が首と胴を切り離されて実質的に無力化した。

 

「朱華ちゃん、それ、もうちょっともたせてねー」

「はいはい。……って、つめたっ!? これ、普通の人間にやったらテロよ!?」

 

 後方支援のために待機していたシルビアからは朱華へと冷却剤が飛ぶ。市販のスプレーなんかとは段違いの効き目があるらしく、かかったところからしゅうしゅう音と湯気が出始めた。さすがに朱華の負担も大きそうだが、ポーションのお陰で放熱問題は多少解決──。

 

「兵をたくさん用意したのが裏目に出たかしら」

 

 小さな影が鋭く飛んだかと思うと、俺の目に銀色の輝きが映った。

 一閃。

 朱華がコントロール中の不死鳥がたったの一振りで片翼を切り飛ばされ、ぐらりとバランスを崩す。ここぞとばかりにもう一羽が勢いを増し、同胞を喰らおうと動きだす。「あ、駄目だわこれ」。呟いた朱華は突き出していた手のひらをぐっと握りこみ、操作していた不死鳥を爆発させた。

 

「あら。なかなか派手ね?」

 

 少女魔王は爆発に煽られるでもなくすとんと着地。

 配下の魔物が炎によって足止めされ火傷を負う中、銀の刀身を持つ宝剣を手にラペーシュは駆けた。「あら、これはこれは」。呑気な声と共にアッシェがオロチに迎撃させるも、鮮やかな剣捌きと常人離れした身体能力は複数の首をあっという間に解体してのける。

 

「むう。物理で殴ってくるのは正直勘弁して欲しかったのだが……!」

 

 教授の悪態を聞きながら、俺は爆発に巻き込まれた瑠璃へ回復魔法と防御魔法を飛ばす。能力を止めた朱華が後退を始める間にオロチが胴をぶった切られて消滅。

 

「アッシェ。あまりおいたが過ぎると怪我をするわよ?」

 

 鋭い銀色の短剣が虚空から生み出されたか取り出されるかして、ラペーシュの左手に握られる。それが投擲されようとした瞬間、ライフルの銃弾がそれを阻止した。雑魚人形を遠隔操作中のシュヴァルツだ。舌打ちしたラペーシュはナイフをそちらに飛ばし、シュヴァルツはかわしきれないと判断したのかライフルを犠牲に直撃を避けた。

 

「《聖光連撃》!」

「悪いけれど、その魔法なら大して怖くないわ」

 

 足止めのために一点集中した俺の主力魔法をラペーシュはステップにより回避、あるいは剣で打ち払うことによりあっさりと防いだ。かと思えば最後の一発が冗談のように直撃、失敗した? と思ったのも束の間、なんの傷も負っていない魔王の姿が現れる。

 別に避けなくてもろくにダメージ入らないアピール──って、性質が悪い。

 

「うーん……オークは操作が難しいので、もう一度蛇を狙いましょうか」

「それは困る──と言いたいところだけど、勝手にしなさい」

 

 アッシェがもう一匹のオロチを支配にかかると、ラペーシュはくすりと笑ってそれを放置した。代わりに残った一羽の不死鳥がそれに襲い掛かる。「くっ……!」アッシェは小さく唇を嚙みしめるも、支配を止めるわけにもいかない。

 

「《聖光連撃》!」

「だから効かないったら。……とはいえ、それなりに躍らされてしまったかしら」

 

 そう。

 魔王が俺の攻撃に付き合ってくれている間に、コピー・シュヴァルツには大きな被害が出ていた。瑠璃とノワールが両翼をかき乱し続けた結果だ。

 

「シュヴァルツの戦闘プログラムをそのまま利用した弊害でしょうか。同等の複数個体との連携がなっていません。本来は単独での戦闘、あるいは指揮官役を務めるはずの機体ですから当然ですが」

「一寸法師の話ではありませんが、懐に入った上で動き続ければ、銃器などそう恐ろしくはありません。……まして、アリス先輩の癒しがあれば」

 

 オロチを焼き蛇(?)にした不死鳥もここで爆発。「あーもう、あっつ……」。朱華が胸元をぱたぱたやりながら肌に直接冷却ポーションをぶっかける。政府スタッフには男性もいるので目に毒だと思うのだが……さすがにそんなこと考えている余裕はないか。

 敵の戦線は半壊。

 コピー・シュヴァルツが少しとボスオーク二体を残すのみとなった状況で、ラペーシュはむしろ楽しそうに笑い、

 

「これは、仕方ないかしら……ねっ!」

「くっ!?」

 

 目にも留まらぬ速さで瑠璃に接近、振るわれた剣が秘刀『俄雨』と衝突して大きな音を響かせる。

 

「瑠璃さまっ!」

「あら。懐に入れば銃は怖くないそうだけれど?」

「この……っ!?」

 

 霊力を用いた瑠璃も十分に人並み外れた能力だが、ラペーシュの白兵戦能力は更にその上を行っている。二度、三度と剣を振るっては瑠璃に防御させ、さりげなく互いの位置を調整してノワールの射線を塞いでみせた。

 主力二人の手が止まったところで残る敵戦力が動き出す。

 俺は《聖光連撃》をさらに連打し、コピー・シュヴァルツとボスオークを迎撃した。

 

「ノワールさん! 先にできることを!」

「っ。そうですね、先に雑魚の掃討を──」

「だめ。こっちへの注意も忘れてもらっては困るわ」

「今度はこちらに……っ!?」

 

 軽やかに芝生の地面を蹴ったラペーシュが今度はノワールへと肉薄する。我らがメイドさんもこれにはさすがに動揺。それでも魔王の剣をギリギリでかわしたのはさすがと言うべきか。しかし、メイド服の胸元がざっくりと斬られ、下に着こんだ特殊ジャケットにも大きな傷ができた。

 

「お主、最初から一人で十分だったのではないか!?」

「この子たちも、あなたたちを疲れさせる役には立ったでしょう?」

「ならば……っ!」

「皆さま、ラペーシュさまはしばらく我々で食い止めます! その間に他の敵を!」

 

 瑠璃は刀を握り直すと、自分から積極的に切り込んでいく。瑠璃とノワールの距離が縮まればラペーシュは二人を同時に意識しなくてはならなくなる。もちろん急速離脱は可能だろうが──主力二人を食い止める方が得策だと考えたらしい。

 

「いいわ、しばらく遊んであげる。──ちゃんと遊び相手になってくれれば、だけれど」

 

 ノワールは片手にPDWを持ったままコンバットナイフを手にし、反撃の機会を窺いながら魔王の剣を必死にパリィする。しかし、丈夫なはずの刀身は剣の軌道を逸らしただけの一瞬で目に見えて刃こぼれしている。

 あの剣、さらっと出てきた割に相当な業物のようだ。

 瑠璃の『俄雨』なら打ち合えているが、それでも、刀の方がややきしんだ音を立てているような。

 

「仕方ありませんわね」

 

 ふう、と息を吐いたアッシェが俺に並び、素早く尋ねてくる。

 

「アリシアさん。小物と大物、どちらに消えて欲しいですか?」

「では、コピー・シュヴァルツをお願いします。オークは私たちで」

「かしこまりました」

 

 駆け出すアッシェ。反応したコピー・シュヴァルツたちが銃を放っても動じない。何発かは実際に命中したはずだが──傷は、アッシェの身体が()()()()()()()()()()()過程でついでのように塞がってしまう。

 あっという間に巨大な白狼へと変じたアッシェは、身体に銃弾を浴びながらも文字通りに機械人形を『蹴散らして』いく。

 俺は慌てて彼女へ治癒魔法と防御魔法をかけながら、

 

「では、私はボスオークを」

「待って、アリスちゃん。あれの片方は私が受け持つよー」

「え? シルビアさん?」

 

 まさかの宣言に俺は目を瞬いた。

 シュヴァルツに支援射撃してもらいつつ朱華を頼るか、最悪、俺が魔法を打ち込み続けて二体とも倒すつもりだったのだが。

 

「お姉さんにもいいとこ見せさせてよ。……お守りまで貰っちゃったしね」

「……わかりました、お願いします」

「おっけー」

 

 頷くと、シルビアはボスオークの一体に向かって駆け出した。

 素早くシューターへポーションをセットし、立て続けに攻撃。命中したポーションは爆発するものだったり、酸だったり、スパイスでも煮詰めたのか目つぶしの効果を発揮したりした。錬金術師の本領発揮。ポーションの在庫が続く限り色んなことができるのはシルビアの強みだ。

 問題は大技がないことだが……そこはもう信じるしかない。

 俺は《聖光連撃》でもう一体のオークを注目させ、自分の方へと引っ張りながらドーム内を駆ける。朱華は──まだ暑そうだ。とはいえ、実質、不死鳥二体を一人で倒してくれたわけで、彼女に頼りすぎるのも良くない。

 となると、どうするか。

 ぶっちゃけ、このまま魔法を打ち込み続けるだけでも勝てはするだろうが。

 

「……お願いしてもいいですか、()()()()()

「はいはーい」

 

 うにょん、と、俺の衣装の中から飛び出したスライム娘は、みるみるうちに体積を増しながらボスオークへと飛びかかっていく。

 巨大な金属武器による一撃が振るわれるも、スララの軟体には碌なダメージが入らない。むしろ武器ににゅるんと巻き付いてそのまま腕へと取り付き、魔物の全身を呑み込んでいく。

 実のところ、部屋を出る時、俺が挨拶したのはうさぎのブランシュだけだった。

 リビングから転送されるときもしっかり「うさぎ以外の生き物」を転送してくれたので助かった。せっかくなのでサプライズ的に活躍してもらおうと思っていたのだが、どうせラペーシュは気付いてるんだろうし、あの剣で斬られたら危険そうな気がするのでここが頃合いだろう。

 

「おっきなごはんー」

「うわ、えっぐ」

 

 思わず、と言った感じで朱華が呟くのが聞こえたが、うん、まあ、気持ちはわかる。

 いったん身体に取り付かれたら引き剥がすのは至難の業。なんなら蜥蜴の尻尾切りの如く掴まれた箇所だけを分離することだってできる。そうしてもたついているうちに身体はどんどん溶け、スライムに吸収されていく。

 俺たちがあのボスオークにどれだけ苦戦したと思っているのか。いや、今となっては俺も「一人で倒せる」とか息巻いているわけだが、それにしたってスライム強すぎないか。

 ともあれ。

 なんか楽しそうに食事しているスララはしばらく放っておくとして、シルビアの方は──。

 

「そろそろ余裕なくなってきたみたいだねー」

 

 敵の攻撃をギリギリでかわしながら、散発的な攻撃を続けていた。

 彼女の言った通り、ボスオークの攻撃はいつシルビアに当たってもおかしくない。ポーションだってどんどん減っているはずだし、敵は怒りに我を忘れたのか大声で鳴きながら武器を振り回して、

 

「じゃあ、はい。飲んでねー」

 

 不意に撃ちだされたポーションの容器がボスオークの口内へ。

 おそらくは口の中か胃の中で割れて中の液体が広がったのだろうが──途端、奴は武器を放り出してお腹と首を押さえだした。

 何事か、と思っているうちに泡を吹きはじめ、かと思ったらみるみるうちに肌が青ざめて、ばたん、と倒れた。絶命したことを示すようにその身体は光の粒になって消えていく。

 

「え、いまのなんですか?」

「研究の過程で精製できちゃったネガ・生命の水」

 

 飲むと不老不死になる水の失敗作で、飲んだら死ぬ究極の毒らしい。

 念のために用意していたものの、ラペーシュ相手じゃ撃ってる暇がない、というか誤射が怖すぎるのでここで使ったのだという。

 

「うわあ、シルビアさんえっぐ……」

「シルビアさん、薬品のラベル管理は徹底してくださいね? シールやインクが切れたからって面倒臭がるのは絶対駄目ですよ?」

 

 なんというか、スララのもぐもぐなんて可愛いものだった。

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