起きたら金髪碧眼の美少女聖女だったので、似たような奴らと共同生活始めました   作:緑茶わいん

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完全に趣味で書きました


【番外編】変身者たちとTRPG

「アリス、あんたたまには支援役以外をやりなさいよ」

「でも、私、神聖魔法を使っていないと落ち着かなくて。……というか、そう言う朱華さんだって魔法使い選ぼうとしてるじゃないですか」

「いいじゃない。ゲームの世界でくらい好きなだけファイアーボール撃たせなさいよ」

「私は錬金術師に拘りないかなー。MMOとかならまだしも、この手のゲームだと魔法使いとあんまり変わらないし。……ノワールさんはどうするのー?」

「わたしは皆さまが選ばなかったもので構いません。……強いて言えば盗賊が性に合ってはおりますが」

「せっかくだから吾輩はエルフになるぞ! なんといっても身長が高いからな!」

「教授。身長はゲーム的にあまり関係ないんですが、構いませんか?」

 

 ある休日。

 俺たちはシェアハウスのリビングに集まってわいわいと騒いでいた。それぞれの手にはラノベ調の表紙イラストが描かれた厚手の本。テーブルの上にはサイコロや筆記用具、お菓子や飲み物が置かれている。事情を知らない人がこの場面だけ見たら「?」となるだろう。

 今、俺たちは瑠璃の勧めでTRPGを遊ぼうとしている。

 誰かがふと「具体的にどういう遊びなの?」と聞いたのがきっかけだ。なら実際に一度やってみようという話になり、こうして時間を作ったわけである。

 TRPG──テーブルトークRPGは簡単に言うとネットを介したMMORPGのような事を紙とペン、会話だけで行う遊びだ。参加者の一人がGM(ゲームマスター)という役割になって進行役を務め、他のプレイヤーは一人につき一キャラずつ持ちキャラを作成してGMの用意したシナリオに挑む。

 作品によって現代ものだったりSFだったりホラーだったりとジャンルは色々なのだが、経験者ということでGMを買って出てくれた瑠璃が選んだのはオーソドックスなファンタジーものだった。

 なお、ルールブックと呼ばれるゲームの手引書は人数分ネットで購入した。本来学生には結構高い代物なのだが、俺達の財布はこの程度ではびくともしない。

 で。

 問題になったのはプレイヤー内の役割分担である。ファンタジーものなので戦士や魔法使い、盗賊、聖職者を用意するのがセオリーなのだが、

 

「まあ、アリスちゃんがヒーラーやったらリアルと変わらないよねー」

「そうですね……」

 

 リアルで慣れている役をやるか、それとも別のことに挑戦するかという独特すぎる問題が発生した。

 

「じゃあ私は戦士にしようと思います。前に立って皆さんを守るのも大事な役目ですよね」

「あんた剣道やってたんだしちょうどいいんじゃない? あ、あたしは魔法使い譲らないから」

「まあよかろう。五人いるのだから一人はどのみち自由枠だ。ふむ。では吾輩が盗賊をやるか。エルフは筋力以外のステータスが高めだからな」

 

 盗賊なら小人が一番向いている、とわざわざ教授に告げる者はさすがに誰もいなかった。

 

「じゃあ私が聖職者かなー。アリスちゃんの代わりにばんばん癒すよー」

「シルビアさんがヒーラーだと『実験のため』とか言ってわざと怪我させられそうね」

「朱華さま。さすがにそこまでは……しませんよね、シルビアさま?」

「やらないよ。魔法使う度に経験値が入るとかならともかく」

 

 恩恵があったらやるのか。

 

「では、わたしが自由枠なのですね。瑠璃さま。どうするのが一番良いのでしょうか」

「五人目はかなり自由度が高いです。戦士を増やしても安定しますし、二人目の魔法使いがいると火力が出ます。聖職者は前衛とヒーラーのサブを兼任できますし、二人めの盗賊は軽戦士の要領で前に立ってもいいですね」

「なるほど。では……聖職者にします。ヒーラーは多い方がいいですから」

「支援魔法もかけやすくなるし助かるよー。……あ、じゃあ私は攻撃魔法よりにしてもいいかも?」

「構わんが、シルビアよ。それだとお主が五人目枠だぞ」

 

 というわけで、役柄の割り振りは次のようになった。

 なお、プレイヤーの名前からして横文字が入り乱れてわかりづらいのでキャラの名前はプレイヤーと同じとした。

 

◆アリス :ファイター/モンク  人間、男

◆朱華  :メイジ  /メイジ  人間、女

◆シルビア:アコライト/メイジ  ハーフエルフ、女

◆ノワール:アコライト/サモナー ハーフフェザーフォルク、女

◆教授  :シーフ  /ダンサー エルフ、女

 

 このゲームはメインのクラスを四つから選んだあと、十以上あるサブのクラスから一つを選ぶシステム。俺はサブクラスの中から徒手格闘を得意とするモンクをチョイスした。

 

「あんた、モンクじゃ結局修行僧じゃない」

「いえ、朱華先輩。このゲームのモンクは信仰関係ないので、イメージとしてはむしろグラップラーです」

「あはは……その、防具を優先しようとしたら武器にお金が回らなかったので、じゃあ素手が強くなるクラスにしようかと」

「初期キャラの所持金がカツカツなのはよくある話だな。吾輩も七つ道具を買ったらだいぶ厳しくなったぞ」

「っていうかアリスちゃん男の子なの!?」

 

 シルビアの悲鳴に俺は苦笑して、

 

「女の子ばっかりになりそうだったので変えてみました。アリスなら男の子もいなくはないでしょうし、中性的な見た目の少年ということで」

「ああ、つまり男の娘ね。なにその美味しいキャラ」

「……アリス先輩が総受けということでしょうか?」

「瑠璃ちゃん? その単語は洒落にならないから後でお姉さんとじっくり語り合おうね」

「お二人とも後でお話があります」

 

 アコライトは侍祭、要するに下級の聖職者のことだ。

 サモナーは幻獣を召喚したり使い魔を手に入れて恩恵を受けたりできる。ノワールは最大MP上昇のスキルと使い魔に一回きりのバリアを張らせるスキルをここから得た。

 教授は「背が高い方が映えるだろう」と言って踊って戦うダンサーのクラスを選択した。シーフとの相性は良いので特に問題ない。

 

「で、瑠璃? あたしたちってもう仲間ってことでいいの?」

「ここからはGMと呼んでください。……そうですね。キャラ個別の導入を用意するやり方もありますが、今回は皆さん既にパーティーを組んでいる仲間とします。既に一度くらいは冒険をこなしているかもしれません」

「レベルは1だけどねー」

「世の中には続編が出る度にレベル1に戻る主人公もいるらしいではないか。フレーバーの経験でレベルが上がらないくらい不思議ではない」

 

 現実だと何もしなければ強くならないし、訓練なり実践を積めばそれは身になるのでこのあたりはゲームならではだ。

 

「こほん。……さて。皆さんには今回、なんとゴブリン退治をしていただきます」

「ゴブリンですね。相手にとって不足はありません」

「ゴブリンね。不思議な事に顔がありありと想像できるわ」

 

 そりゃ、リアルでは飽きるくらい倒してるからな……。

 

 

 

 

 

 というわけで。

 とある村に立ち寄った俺達が村長からゴブリン退治の依頼を受けるところから話はスタート。

 

「GMよ。これは断っても良いのか?」

「教授。依頼を断るのは悪いプレイヤーのやることだよー」

「断っても構いませんよ。その場合はこちらのランダム遭遇表でイベントを決めます」

「待ちなさい瑠璃。あたしでも知ってる有名ゲームのタイトルが見えるわよ!? それ別ゲーじゃない!?」

 

 太古の昔(誇張表現)には「わざと依頼を断ろうとするプレイヤー」の対策として依頼を受けたところからスタートする手法や事件に巻き込まれるところから始まるホットスタートの手法などが開発され、テクニックとして広められたりしたらしい。

 現代のTRPGはこうした歴史を経て「今回のあらすじ」をプレイ開始前に語るのが主流となり、その内容は確定事項として扱うようになった。

 

「もちろん、困っている人がいるのなら助けるべきです。受けましょう、教授」

「むう。そうは言うがこちらも慈善事業ではない。必要経費を差し引いて何日分の生活費になるのかきちんと計算してからだな……」

「教授。このゲームに生活費という概念はないので安心してください」

 

 宿代などは目安があるがプレイ中に特に必要な場合だけ所持金から消費する。それ以外の生活費は何かしらの方法で稼いでいるか、あらかじめ依頼料から差し引かれているものとして扱うのだそうだ。

 ふむふむとノワールが感心して、

 

「よくできているのですね……。寮完備の会社のようなものでしょうか」

「やめてよノワールさん。冒険者が単発の依頼で食いつないでる個人事業主だなんて現実は」

 

 世知辛い話すぎる。

 率先して依頼を受けようとした俺はみんなから羨望の眼差しを向けられ、照れくさくなって「話を進めましょう」と言った。

 ゴブリンが住んでいるのは歩いて数時間ほどの距離にある洞窟。詳しい数はわからないが十数匹程度ではないかという。

 

「ちなみに明かりも基本的に確保されているものとして扱います」

 

 なお太古の(中略)たいまつを何本持っていてどれに火が付いていて誰が持っているか、あとどれくらいで燃え尽きるかを真面目に管理していたケースがあるらしい。

 基本的に夜に戦っている俺たちとしては「当たり前だよな?」という思いもあるが、ゲームでいちいちそれをやっていては話が進まないし絶対忘れたり間違えたりする。ゲームなのにパーティー内に経理の人間とか置かないといけなくなる。

 と、なんだかんだ言いつつ移動を省略して洞窟の前に。

 

「見張りのゴブリンが二匹います。まだ向こうは気付いていません」

「狙撃しましょう」

「遠距離攻撃なら一人一回ずつ可能としましょう」

「私は何もできないので皆さんに任せます」

「波動拳とか撃てないの?」

「レベルが上がれば覚えられなくもないんですが、今は無理ですね」

 

 結局、朱華のファイアーボールとシルビアのホーリーライトで一匹が死亡、もう一匹には教授が「吾輩の武器は短剣なので投擲可能だ」とダメージを与えた。さすがに投げた武器は回収するまで使えないルールだが、教授は短剣二刀流なのでもう一本持っている。

 俺の拳と合わせて無傷で倒しきり、落ちた短剣も回収できた。

 

「見張りは大したことなかったわね」

「ですが、不意打ちで仕留めきれなかったので中に警告が飛んでいます。以降の展開が少し難しくなると思ってください」

「ほほう。となるとここからはシーフの出番か」

 

 教授が意気揚々とダイスを振り、幾つかの罠を発見して解除していく。

 しかし、さすがに全ての判定に成功できるわけではない。念のためにと挑戦した他のメンバーも失敗し、仕方ないからと進行した途端、

 

「はい。では前方からゴブリンによる狙撃です」

「今度はこっちが撃たれるんだ!?」

「これはトラップ扱いなので感知できれば解除の目があったんですが、残念でしたね」

 

 そして不意打ち扱いで出現する敵。弓持ちのゴブリンから一方的に攻撃を受けながらもなんとか耐え、態勢を立て直すと俺たちは敵との距離を詰めて、

 

「移動しましたね?」

「な!? まさかまだトラップがあるというのか?」

「いえ、ありません。移動は無事に完了します」

「怖がらせないでください……」

 

 二戦目が終わった頃には俺たちはだいぶ疲弊していた。

 

「ゴブリンって強かったんですね」

「あたしたちが弱いんじゃない?」

「アリス先輩とノワールさんこのゲームで言うと間違いなく10レベルを超えていますからね。……ちなみに朱華先輩は別のゲームのキャラです」

「まあ、ファンタジーに超能力者はいないわよね」

「それもそうですが、条件さえ整えれば誰が相手でもほぼ確殺はそういうゲームじゃないとありえません」

 

 思わぬところでゴブリンの強さを実感させられた俺たち。とはいえこれで倒したゴブリンは七体になった。戦いはあと一、二回だろうとポーション等を使って回復しつつ慎重に探索を進め、いくらかの戦利品を獲得しながらボス部屋へたどり着いた。

 

「ボス戦はゴブリンが四体、アーチャーが二体、さらにゴブリンメイジが一体です。メイジがボス格という扱いですね」

「多いな!?」

「GM、メイジを倒せば戦闘は終わるのですか?」

「いいえ。棲み処を追われると困るので彼らは死ぬまで戦います」

「やはり説得の通じない妖魔は滅ぼすしか……」

「アリスちゃん、中の人が漏れてるから!」

 

 戦々恐々としながらも俺たちは持てる力の限りを尽くして戦った。

 中でも役に立ったのは、

 

「ファイアーボールのくせに範囲化スキルがないと爆発しないのよね」

 

 その範囲化スキルで複数体を対象に取った朱華のファイアーボールだった。なんだかんだ言って頼りになるのが彼女である。

 俺と教授の拳と短剣もノワールの強化魔法によって威力を増し、確実にゴブリンの命を削り取った。なおシルビアはメイジの範囲化スキルでホーリーライトを拡大して攻撃していた。

 使い魔バリアにも助けられ、無事敵パーティーを撃破。

 ボスの隠し持っていた宝を手に入れて帰還し、村長から依頼料を貰ってシナリオは終了となった。お金と経験値の分配が行われ、次回があればこれを引き継ぐことができる。

 

「お疲れ様でした、皆さん。どうでしたか?」

「うん。今度ゴブリンの顔見たら燃やすわ」

 

 完全な八つ当たりだが同意見だ。

 

「機会があれば続きをやりたいですね」

「その頃には新入りが入っているかもしれんな」

 

 シェアハウスの珍しくのんびりとした一日だった。

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