なぜならオレやオレたちの仲間は
その言葉を頭の中に思い浮かべた時には!
実際にガチャを回しちまって
だから使った事がねェ────ッ
ペッシ
オマエも
オレたちの仲間なら…
わかるか? オレの言ってる事…え?
※今回で漸く話がプラス?方向に進みます
「ーーいち、にぃ、さんしっ! ごー、ろく、しち、はちっ!」
トウカイテイオーが風邪で寝込んでから3日。たったそれだけの時間で38度もの高熱から回復し、喧しいレベルの元気に戻ったクソガキと何故かまだ生きている俺は真昼の河川敷に居た。
「おわり〜! じゃあオジサン、早くはじめよっ!」
「おい待て、当然の如く話を勝手に進めるな」
ラジオ体操を終え、こちらを見て平然とそんな事を宣いやがるクソガキは俺の言葉にぽかんと不思議そうな顔をする。いやその顔したいのは俺の方なんだが……
「……というかお前、まず俺に何か言うべきことがあるんじゃないか?」
そもそも臨時トレーナーの話は撤回した筈だ、とか色々言いたいことはあるがその前に俺はどうしてもトウカイテイオーに確認したいことがあり、そう鎌をかける。
「? あ、もしかして……朝にボクがオジサンの食パンに勝手にジャムかけたこと怒ってる…?」
「違う。そんなことで一々怒らん」
彼女の返答に俺は溜息を一つ吐き、ストレートに聞いた。
「正直に答えろ、トウカイテイオー………お前、両親に何言いやがった?」
「! ナ、ナナ、ナンノコトー」
「…おい、こっち見て話せよ」
露骨に動揺を示し俺から全力で目を逸らすクソガキ……その口から漏れるのは棒読み台詞だ。もうこれだけで「あ、コイツ心当たりあるな」と確信できる。
俺はトウカイテイオーが全快するまでの3日間、何度も外出しようとした。しかし、
『──君! お、お出かけかい?』
『……はい。まぁ』
『そ、そっかぁ……ちなみにどこに?』
『……その辺を、少し散歩して来ようかと』
『散歩……な、なら私も一緒に行っていいか? いや行こう!』
『ぇ、ちょっ』
『い、いやぁ……最近運動不足でね〜。私も丁度ランニングでも始めようかと思ってたんだよ!』
『……いや、これランニングじゃなくて散p』
『さぁ行こうっ! ──君っ!!』
『ちょ待っ』
これはトウカイテイオーの父親の場合だが、俺が一人で外出しようとした所に声を掛けてきて…強引に同行してきた。トウカイテイオーの母親の場合は俺が外出しようとしたら「家事手伝って!」とか色々な理由を付けて外出自体を止めてきた。
最初は二人の行動・言動の理由が分からず只管に困惑した。二人が心配になるレベルで聖人なのは短い間でも十分理解できた事だが、俺が一人で外出するのを何故止める? 理由は何だ、仲良くなりたいから? にしては色々急過ぎだ。
(……まさか……)
そして、俺はある理由に思い至った。
(もしかしてアイツ、二人に何か言ったのか?)
………うん、このクソガキなら本当に言ってそうで困る。仮にそうだったとしたら二人の行動・言動にも納得できる。
本人から説明がない為、これは想像でしかないが……多分トウカイテイオーは事前にあの二人に「俺を一人で外出させたらダメ」「外出させたら死のうとする」なんて旨の話をしたのだろう。
「そ、そそ、そんなことよりさー! と、トレーニング! トレーニングはじめよっ!」
「……はぁ、クソガキが」
どうやら俺の予想は正しかったようだ。俺は深い溜息を吐いた後に続けて罵倒を吐き捨てた。
俺が居候になった日。その翌日に二人が俺の事を気にせず普通に外出している所から考えるに、タイミング的にはトウカイテイオーが風邪で寝込んで俺が彼女を看病する為に死なずに家にいた……あの日の間にでも伝えたと考えられる。
「……なぁ、なんで何だ?」
「……え?」
「お前は、なんでここまでする? お人好しだとは思ってたが……流石に……」
お人好しにも限度がある。たった数日の付き合いに過ぎない他人相手にここまでするなんて、最早お人好しだからなんて理由だけじゃ片付けられないだろ? 気が付けば、俺は彼女に心底からの疑問を口に出していて
「なんでって……そんなの決まってるじゃん! だってーー」
「ーーやっぱりいい、言わないでいい」
咄嗟に彼女の言葉を遮っていた。
どんな理由だろうが聞きたくなかった。聞いたら……少しでも自分が安心してしまいそうで、それが怖くて仕方なかったから。
「……オジサン?」
「ったく、ここまでしつこいとはな。わかった……なってやる」
「え、何に?」
………とんだ気の迷いだが………
「ーーお前の臨時トレーナーになってやる」
本当に仕方なく、トウカイテイオーのしつこさに根負けした俺はそう言葉にした。
「! そ、それって……ボクにトレーニングつけてくれるってこと!?」
「……まぁ内容は基礎を中心になるが、そうだな」
「それじゃあ、ボクのトレーナーになってくれるってことはさ!」
「トレーナーじゃない。臨時トレーナーだ」
それを聞いたクソガキといったらピンと耳を立て、尻尾はブンブンと上下に振り始め、
「もう、あんなバカなことはしないってことだよね! ねっ!?」
なんてバカなことを言ってグイっと寄ってくる。あんなバカなこと、その言葉が指している
だから、俺は嘘偽りなくこう答えた。
「……勘違いするなよ。俺は確かにお前の臨時トレーナーになるが、だからといって俺自身が死ぬべきだって考え自体を変えた訳じゃない」
「……安心しろ。お前がトレセン学園に入学するまでの数ヶ月間。それまでは死なずに色々とサポートする……無能な"元"三流トレーナーのサポートで良ければだがな」
こんな過程を辿って俺とトウカイテイオーは臨時のコンビを組む事になった………臨時ではあるが俺は元トレーナーとして彼女に、トウカイテイオーに微力ではあるが力を貸すと決めた。なら、たとえ無能だろうが俺は俺に出来る事を全力でやる。それだけだ。
『ッ…ぐっ、そうだ…! お前は迷ってるッ…! ルドルフの行く末にまだ…うッ、未練がある筈だ……!!』
『勝手に、諦めるなッ…! お前は! 俺はッ! まだ彼女の力にーー』
ふと脳裏に夢に出た愚かな男の言葉……妄言、戯言が過る。
(………俺は、希望に縋ってなんざいない)
自分にそう言い聞かせて、俺は頭を振った。
トウカイテイオーがトレセン学園に入学するまでの間の手助け、これが俺の最後の仕事となるだろう。
腐っても大人として、最低限の恩は返すとしよう。
──────────────────────
数分後。
「よーし、やるぞ〜! オジサン! 遠慮はいらないからね。バシバシお願い!」
「……威勢がいいのは結構だが、今日からは無理だぞ」
「エッ! な、なんでぇー!? ボクのトレーナーになってくれるんじゃなかったの!?」
「トレーナーじゃない。臨時トレーナーだ」
涙目で叫ぶトウカイテイオーを宥めるよう冷静に俺は告げた。
「……普通に考えてみろ。トレーニングするも何も、そもそも俺はお前の能力を知らない。相手の能力も何も知らずにトレーニングが組める訳ないだろ」
「え〜……じゃあ、今日はどうするの?」
そう言ってトウカイテイオーは此方を見つめてくる。それに対して俺はパッと次のように答えた。
「まずは、お前の力を見せて貰おう」
(まさか、またこれを使う事になるなんてな)
トウカイテイオー宅から拝借してきたストップウォッチを片手に俺は顔を上げ、河川敷に設置されたサイクリングロード……その少し横に設置されたウマ娘専用レーンにて走る構えをとるトウカイテイオーに目を向ける。
好都合な事に今の河川敷には人気がなく、付近に車も通ってなければサイクリングロードにも自転車で走行する人はいない。ウマ娘専用レーンにも誰もいない。誰の邪魔にもならないという一点に置いては良い環境といえるだろう。
「準備オッケー! オジサン、しっかり見ててね♪」
「……臨時でもトレーナーだからな。言われなくても見る。それとおじさんじゃない。お兄さんだ。……それじゃ、俺が『ドン』と合図を出したらあそこの橋まで走ってくれ」
そして、俺は合図を出し
「にししっ、それじゃいっくよー!」
やる気満々、自信満々にトウカイテイオーは駆け出す。
(……柔軟だな)
最初に俺の目についたのはそのステップだった。まるでゴムか何かのように弾むような軽やかな走り、相当な柔軟性だ。グングンと加速していく、脚のバネも強い。フォームも小学生の独学にしては綺麗だ。
(……だがーー)
それは見ていて不安を感じる走りでもあった。
確かに、走りに置いて脚の柔らかさは重要だ。トウカイテイオーのあの柔軟性は今後も磨けば中央でも必ず通用する良い武器になるだろう。
しかし、柔らかさとは「武器」になると同時に「弱点」にもなり得る。謂わば諸刃の剣だ。
(……脚部不安の恐れあり、か。これは脚部の入念なストレッチは必須だな)
その日、俺はトウカイテイオーというウマ娘が持つ天賦の才の一端を知り……総評としてこう思った。
「オジサーーーン!! 終わったよぉ〜!」
(ルドルフみたいなウマ娘になる、か)
強ちそれは「夢」じゃないかもしれないな、と。
?「おめでとう!ルドルフの元トレーナーはテイオーの臨時トレーナーに進化した!」
カイチョー「」
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