それとも
『最悪6万が消し飛び天井に到達すると考えるか?』
確率、運が全てのガチャで……
だが いいか……………
テニスの競技中…ネットギリギリに
ひっかかって はじかれたボールは……
その後 ネットのどちら側に落下するのか…?
誰にもわからない
オジサンがボクの臨時トレーナーになった次の日。
「ーー本格的にトレーニングを始める上で改めて確認するが……俺はお前がトレセン学園に入学するまでの数ヶ月の間、お前の"臨時"トレーナーとして主にトレーニングの補佐をする……異議はないな?」
早朝に昨日走った河川敷に来て、オジサンはまずトレーニングやその他諸々の説明を始めた。
「これがお前専用に組んだトレーニングメニューだ……まぁ、一夜で作った上にデータが少な過ぎるせいでまだまだ
はじめてのトレーニング開始前、ボクはオジサンからトレーニングについて書き込まれた紙を手渡された。目を通してみると中にはトレーニングメニュー?が書き込まれていて………
「え、これでまだ完璧じゃないのっ!?」
「当たり前だ。トレーニングメニューは一朝一夕で完成するものじゃあない。日々相手の特徴を把握していって、徐々に完成に近付けていくものだ………まぁこれは俺個人の意見だが」
オジサンが作ったトレーニング表にはトレーニング内容が事細かに書いてあって、トレーナーが作るトレーニングメニューってみんなこんな感じなのかなぁ〜…と思ったボクはこれでもまだ「完成してない」と聞いて思わずビックリした。
驚くボクを見たオジサンは呆れたような顔をして、話を続ける。
「それとトレーニングに関して意見があれば遠慮なく言ってくれ……その代わり、自己判断で勝手にトレーニングをするなんて真似はよせ」
「は〜い」
最後に「確認事項は以上だ」と言って、ポケットからストップウォッチを取り出したオジサンはボクにこう聞いてきた。
「……準備はいいか? よければ直ぐにでも始めるぞ」
「モチロンっ! ボクはいつでもオッケーだよ♪」
ボクはそれにすぐ応えた。
準備体操はバッチリだもんね!
「なら、早速始めよう」
こうして、ボクのトレーニングの日々がスタートしたんだ。
「はぁ……お、オジサーン! あと何往復〜?」
「残り1往復だ」
とある神社の石階段を駆け上がったボクは石階段の一番下に居るオジサンに向けて叫ぶ。
今やってるトレーニング内容は石階段を一番上まで上って、次に一番下まで下りて一往復。これを10回するっていうのでそれを最初聞いた時は「そのくらいヨユーヨユー!」なんてボクも言ったんだけど、
(だんだん足が重くなってきたぁ……!)
実際にやってみると最初は楽勝なんだけど、残り4回辺りからすっごくキツくなってくるんだ……!
「うわあー頑張れボク! やれるぞボク! なんたってボクは最強無敵の三冠ウマ娘にn」
「喋ってないで足動かせ」
「! い、言われないでもわかってるってばー!!」
自分を励ましながら足踏みしたボクは下に居るオジサンのツッコミを受け、石階段を駆け下りていく。
オジサンの話だとここの石階段は300段近くあって、トレーニングするにはピッタリなんだって。何でもオジサンが最初に担当したウマ娘さんはよくここで足腰を鍛えてたとか……
「はぁ…はぁ…オジサン……な、何秒ぅ?」
石階段を駆け下りて、また駆け上がって、また駆け下りて。残り1周を終えたボクは肩で息をしながらオジサンに問うと、
「5分48秒……速いな」
ストップウォッチを一瞥してオジサンはそう呟く。
『ねぇねぇ! これやる前に聞きたいんだけど、オジサンが最初に担当したウマ娘さんのタイムっていくつだったのー?』
『……3分ジャストだった筈だ』
このトレーニングをやる前にオジサンから聞いたタイムを思い出したボクは……
「うわぁー! ま、負けたぁ〜……!」
自分のタイムを聞いてその場でへたり込む。ま、負けた……ボク本気で走ったのに……
「別に勝ち負けはないだろ。それにアイツは当時高等部、お前は今小学生だ」
「それでも勝ちたかったんだよぉ……」
負けた。それはトレーニングでも何でもやっぱり悔しい。やるからにはやっぱり勝ちたい!
「……はぁ……」
そうして悔しい気持ちを吐き出す様に息を吐き出して項垂れるボクに
「小学生で、しかも初めてで10分切っただけ上等だ」
オジサンはそう言って項垂れるボクの足元にスポーツドリンクを置く。顔を上げて見たらオジサンはボクの方を見てなかったけど……
「それってもしかして、ボクのこと励ましてくれてる……?」
その声はボクが風邪で寝込んでいた時に聞いた声みたいに優しく感じられた。
「……そんな訳あるか」
相変わらずのちょっとの間の後、ボクの言葉を否定したオジサンはさっさと歩いていく。振り返る気配は微塵もない。
「……えへへ……」
オジサンは違うって言うけど、ボクにはそうは思えなかった。
だからちょっぴり嬉しい気持ちになって、オジサンが置いていったスポーツドリンクを一口飲み
「オジサーーン! 待っててばぁ〜!」
ボクは慌ててオジサンを追いかける。
不思議とさっきまであった悔しいモヤモヤした気持ちはどっかに行っちゃってた。
そんなトレーニング以外にも早朝からランニングだったり、砂浜で裸足でダッシュ、スクワット、毎日風呂上りに足のストレッチなどをした。
『オジサーン、何かもっと他にトレーニングないの? なんかトレーニングマシン使ったりするやつとかさ〜。あ、前に言ってたデッドリフt』
『諦めろ。近辺にジムはない、家に使えるトレーニングマシンもない……そもそも仮にあったとして、小学生にデッドリフトやらせるバカがどこに居る? 俺が臨時トレーナーで居る間は絶対に却下だ』
『えぇ〜〜……』
『……やるんだったらトレセン学園に入学してからにしろ。あそこだったら最新鋭のトレーニングマシンも揃ってる』
最初はなんだかパッと見てやってみて、地味なトレーニングが多くて「何か思ってたのと違う」と思ったりもしたけど……暫くトレーニングを続けてみてわかった。
(まだ一週間しか経ってないけど……)
「なんか、速くなった気がする……!」
オジサンの組んでくれたトレーニングメニューはすごかった!ボクが自分で作ったトレーニングとは比べ物にならないぐらい「ボク成長できてる!」って実感があった!
しかも、オジサンの考えてくれるトレーニングは一週間経つ毎に内容が微妙に変わってたりする。それについてオジサン本人に聞いてみたら
『少しずつお前の特徴が分かってきたからな……それを踏まえてトレーニングを最適なものに調整していってるだけだ』
という返事が返ってきた。
(サイテキなものにチョウセイ? ……トレーナーってみんなオジサンみたいな人なのかなー?)
だったらホントにすごいと思う。ボクにはとてもじゃないけど、こんな事細かにトレーニングを考えたりなんてできそうにないなー……。
そんなことを考えながら、ボクはある日こんなことを考えた。
(あの量を一週間やっただけでこんなに速くなれるなら……もっとたくさんトレーニングすれば、きっともっともぉーっと速くなれるよね!)
今やってるトレーニングの量を増やせばきっと効果も上がるはず、と。
そして、その考えを実際に行動に移してみた。
………今はホントにこれがバカな考えだったってボクも反省してる。いや、ホントのホントに。
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翌日、真昼に河川敷からランニングを始めたボクは……
「おい待て、お前どこまでいくんだ…?」
オジサンの静止の声を無視して、指示されている量の倍の時間・距離を走った。
(ふっふっふ、流石ボク! これくらいじゃ全然疲れないもんねー!)
具体的にいうと河川敷から街まで出て、そこから街をぐるりと走って、そこから流れで神社まで走って行って、石階段を10往復以上はやって……ランニング以外の別のトレーニングも勝手にやったりしちゃって。
その結果、
「ーーうぅ…おじさぁぁぁん……おじ…さ……がくしっ」
「ーー…………はぁ〜〜〜〜〜」
ボクがスタート地点の河川敷に戻って来た頃にはすっかり夕焼けが見えるぐらいの時間帯になっていた。倍の量のトレーニングを一気にやったせいでボクは体中がガキガキで筋肉痛になっちゃって……力無く倒れたボクを見たオジサンはかなり大きく長い溜息を吐いた。
その後、オジサンに当然「なんであんな奇行に走った?」と鬼の形相(笑顔)で説明を求められ、ボクは怖がりながらも答えて
「……バカかお前は」
「……ごめんなさい」
オジサンからバカって言われたけど、今回ばかりは何も言い返せなくてボクは素直に謝る。
「自己判断で勝手にトレーニングをしたりなんて真似はよせ、そう俺は最初に言った筈だよな?」
「……うん……」
それから気付いたらボクは正座させられて、オジサンからごもっともな説教?を受けていた。
「……今回は許すが、次また同じ事があったら問答無用で契約解消だ。いいな?」
「! う、うんっ…!」
ケイヤクカイショウ……つまりはオジサンがボクの臨時トレーナーじゃなくなって死んじゃうって事だ。それだけは絶対ダメだ! ボクは慌てて返事した。
「というか………お前、それでまともに家まで歩けるのか?」
「……あ、当たり前でしょー! ボクならこんな筋肉痛ぐらい全然問題ないもnーーぎごごごぉぉぉっ……い、痛すぎぃ〜〜……!」
「……どうすんだよ」
………そして………
「オジサン、大丈夫? 重くない?」
「小学生程度、問題ない」
筋肉痛のボクを家まで連れて帰る手段として、ボクはオジサンにおんぶされる事になった。
「……今日は、ホントにごめん」
「……お前が止まらず走って行った時、ただただ困惑した。本気で意味がわからなかったからな」
おんぶされながらボクがオジサンに改めて謝るとオジサンは少し不機嫌そうに呟き、
「………二度とするな。万が一お前に何かあったら、親御さんが悲しむ」
「……うんッ」
続いて力の籠もった言葉でボクにそう伝え……ボクは力強く頷いた。
それから、また暫く時間が経ってボクは口を開く。
「……ねぇオジサン、ちょっと聞いていい?」
「……唐突に何だ」
オジサンはボクのいきなりの台詞を聞いて、訝しげにおんぶするボクの顔をチラッと見てから「……さっさと言え」とだけ言う。
聞いていいことなのかどうか。
ずっと考えて、ずっと迷ってたけど、これだけは絶対に聞いておかなきゃいけない気がするから……ボクはオジサンにこう聞いた。
「ありがと……その、オジサンってさ」
「なんでトレーナーになったの……?」
口に出して直ぐ「聞いちゃった…!」と思いながらボクはオジサンの返答を待った。
だけど、その質問を投げ掛けてから
「…………………」
「…………………」
ボクとオジサンの間には長い長い沈黙が流れて……その間もオジサンはボクをおんぶしたまま足を止めることなく前を進んでーー
「………失くしたな、そんなもの」
ーー不意に足を止めたオジサンはそう零して、河川敷から見える綺麗な夕焼けに目を向けた。それに釣られてボクも夕焼けの方を見ながら、勇気を出して続けて聞いてみる。
「失くしちゃったの? トレーナーになった理由だよ?」
「……あぁ、失くした。とうの昔にな」
「……ふ〜ん」
オジサンは歩き出さずに再び「失くした」と夕焼けを見ながら口にして……ボクには今のオジサンが何を思ってるのかわからなかったけど、
「……見つかればいいね」
ボクは思わずオジサンにこう言って。
「……見つからないさ」
オジサンは夕焼けから目を逸らして再び歩き出す。
その時のどこか寂しそうなオジサンの声は、今もボクの頭に強く残ってる。
『なんでトレーナーになったの……?』
トウカイテイオーから唐突にそう聞かれて、一瞬ドクンと心臓が跳ねるような……そんな衝撃を受けた。
(……俺がトレーナーになった理由……)
そんなの決まってる。俺がトレーナーになりたいと思ったのは………………あれ?
(……なんでだったっけ)
不思議と「トレーナーになりたかった理由」を思い出そうした途端、思考に霧がかかったような感覚に陥る。どれだけ頭を捻ってもそれらしき理由は何一つ思い浮かばない。
(俺は一体、何の為に……)
わからない。
(何で……)
わからない。
(何がしたくて……)
わからない。
(何を見たかったんだっけ……?)
わからない。
いや、違う。
わかりたくなかったんだ。
「………失くしたな、そんなもの」
何とかそんな言を絞り出し、俺は何かから目を背ける様に夕焼けを見る。
「……見つかればいいね」
それから彼女は俺にそう言った。
(見つかればいいね、か)
そんな日は果たして訪れるのだろうか?とふと考える。もしそんな日が訪れたとしたら俺は……俺は………
「……見つからないさ」
そんな日は永遠に訪れない。
(その理由を再び見つけてしまったら……きっと俺は)
俺は、死にたくなくなる。
(まだ、トレーナーでいたくなる)
……それは駄目だ。
自虐野郎「お前の"臨時"トレーナーとしてトレーニングの補佐をする……異議はないな?」
カイチョー「異議あり!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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自虐野郎の過去話(最初に担当した二冠バの話とか)って需要あります?
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やっておしまい!(需要あるの意)
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ありませんッ!!(需要ないの意)