帝王と自虐系トレーナー   作:平々凡々侍

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なぜだ? ライナー
なんで今日まで投稿が遅れた?

…それは作者が任務で…
本作を執筆する時間がとれなかったからだ…

その任務とは?

…繁忙期だから
残業して仕事をすることが目的…だった…

…そうか
繁忙期か…
残業をするためだったら そりゃあ
仕方ないよなぁ…

違う!!違うんだエレン……!!
仕事や残業のせいじゃなくて…俺が悪いんだよ
本作の投稿が遅れたのは俺のせいだ!!



投稿遅れて申し訳ねぇ……



契約外業務

 

「ゲーセン行こー!」

 

「契約外って言ってるだろ。行くなら一人で行け………暗くなる前に帰ってこいよ」

 

 土曜日の朝。

 朝食を食べ終え、洗面所で歯磨きをしていた時の事。隣で同じように歯磨きをしていたトウカイテイオーは唐突に「一緒にゲーセンに行こう」と言い出し、それに対して俺は「嫌だ」と即答した。

 

 歯ブラシを片付けゴロゴロとうがいを済ました俺は足早に洗面所を離れる。

 

「えー!? そんなこと言わないで一緒に行こうよっ! お願い〜!」

 

「しつこいしつこい」

 

 そんな俺の後をトコトコついてきて、腕にしがみついてくるテイオー。

 

「何でそこまでして俺を連れて行きたがる……一体何企んでるんだ?」

 

 そのあまりのしつこさに俺は思わずそんな言葉を口にするが……数週間の付き合いで、トウカイテイオーが純粋だという事は理解していた。だから、彼女が俺をゲーセンに連れて行こうとするのに企みだとか裏はきっと皆無なのだろう。

 

「何でって、そんなのオジサンと一緒に遊びたいからに決まってるじゃん!」

 

「………はぁ」

 

 ………ほらな。

 

「ゲームセンターに行って何するんだ?」

 

「そんなのダンスゲームに決まってるじゃん!」

 

「…ダンスゲーム?」

 

「そっ♪ ダンスゲーム、すっごく楽しいんだよ! ノリノリでリズムに乗って、しゅたっ、きゃぴ☆ってキレキレに踊ってさ!」

 

 楽しそうに耳をピコピコ動かしながら話し出し、その場で軽やかにステップを踏んで踊り始めるトウカイテイオー……どうやら彼女はダンスゲームが趣味らしい。

 

(ダンス、か)

 

 ダンスと聞くと一つ思い出す出来事がある。

 

『……以上だ。君の目から見て、何か気になるところはあるか?』

 

 それはルドルフとのダンスレッスンだ。

 ルドルフから「私のダンスについて、君の意見をくれないか?」と直接頼まれ、俺は彼女のダンスレッスンに同行した。

 

 かつての俺はダンスに関しては無頓着で、レースに勝利する事こそが何よりも重要だと考えていた。だが、サブトレーナーとしての2年間の経験によってその考えは早い段階で間違いだと判断する事ができた。

 

 それからはダンスレッスンに関しても担当ウマ娘のトレーニングを考案するのと同様に熱を持って励んだ。所詮は無能の独学だが。

 

『……ッ』

 

『……その反応を見るに、出来は悪くないようだ』

 

 そんな俺の目から見て、彼女のダンスはあまりに「完璧」だった。率直に言って、俺が意見を挟む余地など微塵も無い程に。……この当時の俺にはまだ下らないプライドや自分自身の実力に対して確かな自信があった。そのせいもあって今じゃこの時の事は俺の中で苦い思い出になっている。

 

(全く以って愚かな話だ)

 

 そう思いながら自嘲した俺は思い出に浸るのを止め、

 

「ゲーセンで何するか聞いてきたってことは……え、ボクと一緒に遊んでくれる気になったの!? そうなのオジsーー」

 

「ーー近い、離れろ」

 

 

 こちらの顔をキラキラした目で、かなり近距離まで詰め寄って見てくる彼女の頬を片手で掴んで無理矢理離し、

 

「むぎゅっ?!」

 

(……本当にしつこいヤツだ)

 

 一々断るのがバカバカしくなった俺はため息を一つ吐き、彼女に言った。

 

「……わかった。行けばいいんだろ。行けば」

 

「! え、ほ、ホントのホントにっ!?」

 

 彼女はそれを聞いて酷く驚く。無理もない。俺だってまさか自分の口からこんな馬鹿げた台詞が出るとは思わなかった。

 

 臨時トレーナーになってもいい。

 そう発言した時と同様、これもまた気の迷いだ。そうに決まってる。

 

「後からやっぱりナシとか言っちゃダメだからね!」

 

「……あぁ」

 

 テイオーと居ると不思議と調子が狂う。

 

 それが良い方向に狂っているのか、悪い方向に狂っているのか………

 

 俺にはまだわからない。

 

 ──────────────────────

 

 その後、俺はトウカイテイオーに連れられ、近所のゲームセンターに着いた。店内の客はそこそこ。俺としては有り難いことこの上ない。人気の多い場所はトレセン学園に居た頃からあまり好きじゃなかった。

 

「それじゃ早速やっちゃお♪」

 

 トウカイテイオーは店内に入り、足早に目当てのダンスゲームの筐体に行くと振り返ってそう言う。

 

 ちなみに今の俺はトウカイテイオーの父親から借りたサングラスに、トウカイテイオー本人から何故か「変装するならコレ!」と渡され「絶対似合うから!」と推された金髪のカツラを着用している。

 

(……別に似合ってないだろコレ)

 

 被ってみたものの、彼女が言うほど似合っちゃいない。一応ここに来るまでの段階で何度か取ったのだが……その度にトウカイテイオーが騒ぎながら被せてきたので仕方なく断念した。

 

「オジサン、ボクが踊る間コレ持ってて〜」

 

「あぁ」

 

「いっくよー!! オジサン、よぉ〜く見ててね!」

 

 そんな中トウカイテイオーは俺に小銭入れを預け、筐体のコイン投入口に百円玉を入れ、手慣れた様子で曲を選びーーダンスゲームがスタートする。

 

「ーーLotta ta ta♪ Lovin! Lovin!」

 

 キレのある動きで彼女はリズム良く、歌いながら軽快なステップで足元のパネルを踏んでいく。

 

 心底楽しそうに踊るその姿にはダンスゲームの筐体を通り過ぎようとした何人かの客が足を止め、目を奪われる程の魅力があり……気付けばダンスゲームの後ろには多くのギャラリーが集まっていた。そして、

 

 ──620,000

 

「ーー自己最高記録ぅ! 見て見てオジサン、すごいでしょ!」

 

 ダンスゲームの画面にはスコアが表示され、ダンスを終えてパネルから降りたトウカイテイオーは俺に向けて笑顔でピースをした。そんなトウカイテイオーを見たギャラリーは沸き、拍手が巻き起こる。

 

 正直な所、このダンスゲームについてはさっぱり知らないため「62万点」というスコアがどれだけのレベルか俺には理解できないが……周りの反応を見るに凄いのだろうという事は窺い知れる。

 

「あぁ……凄かったよ」

 

(走りだけじゃなく踊りまで得意、か)

 

 俺はトウカイテイオーに嘘偽りのない本心を伝え

 

(……ルドルフの時と同じだな)

 

 ルドルフと同様にダンスに関して、俺が彼女に教えられる事は無いのだろう。そう悟って俺は思わず苦笑した。そして、

 

「……テイオー、どうする?」

 

 ちらりと周囲のギャラリーを見渡し、ダンスゲームに並んでいる人が居ないことを確認した俺は「もう一回やるのか?」と持たされていた小銭入れをーー

 

「じゃあ、次はオジサンの番ねっ!」

 

「………………うん?」

 

 トウカイテイオーに手渡そうとした時、こちらにトコトコ歩み寄ってきた彼女は俺の手から小銭入れを取ると中から百円玉を取り出し、それを俺の手にポンと置いてそんな訳の分からないことを宣った。

 

「だから次はオジサンが踊る番だよー」

 

「? ……何言ってんだコイツ?」

 

 そもそも、何が「じゃあ」なのかが分からない。

 しかも踊るって……は? これだけのギャラリーが居る中で、このダンスゲームに関して完全素人の俺が? 何だそれは、地獄か?

 

「…普通に嫌だが?」

 

「もぉ〜そんなこと言わないでさぁ、やろーよオジサン! 一回だけでもいいからさ。ね? ね?」

 

「嫌だ」

 

 態々そんな地獄に自分から踏み込むバカがどこに居るだろうか? 否、居るはずもない。

 

 だから俺は持たされた百円玉をトウカイテイオーが持つ小銭入れに戻そうとするが、トウカイテイオーは小銭入れをバッと後ろ手に隠す。

 

「……ま〜仕方ないかなぁ? ボクって走りだけじゃなくて踊りも上手いもんねー! ボクが踊っちゃった後だから、オジサン踊りにくいだろうし?」

 

 そして、こんなことを言った。

 

 それを聞いて俺はこう思った。

 

「………………」

 

 いや、全く持ってその通りなんだが?と。

 反論の余地もない。

 

「……ちら、ちらっ」

 

 だが、そんなことを思う俺の前で何故かトウカイテイオーは期待の眼差しで此方をチラチラと見てくる。………一体何を期待してる?

 

(……もしかしてーー)

 

 ーーさっきの台詞が挑発のつもりだったのだろうか……?

 いや挑発するの下手か? 言う通り過ぎて全くイラッとしなかったのだが………

 

「………はぁ」

 

 俺はまた周囲のギャラリーを見渡し、ギャラリーの数が然程変わってないことを確認してため息をついた。多分だが、ここに残ってる人はトウカイテイオーのダンスが上手かった為にその連れの俺までも「ダンスが上手い」と勘違いしているのだろう。酷い勘違いだ。

 

 間違いない、今日も(・・・)厄日だ。

 

「………一回だけだ」

 

 トウカイテイオーの横を通り過ぎる際、軽くその頭にチョップを噛まし、俺はダンスゲームの筐体に歩み寄り、

 

「! う、うんっ。オジサンファイトォ〜!!」

 

「うるさい」

 

 やけにテンションが上がったトウカイテイオーの激励を背に受けながら、コイン投入口に百円玉を入れた。

 

(上手く踊れる自信など微塵もないが……やれるだけやってみるしかない)

 

 仮にもし、ダンス後に居た堪れない状況になったらトウカイテイオーにはもう一度チョップしよう。そうしよう。

 




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