帝王と自虐系トレーナー   作:平々凡々侍

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無駄だ!きさまは俺と闘うどころかもはや二次創作ができるような肉体ではない!
流法(モード)『夜勤残業・休日出勤・週交代』はおまえの肉体や生活リズムをズタズタにしてしまった!
やめろ勝負はついた!
みろッ・・・すでに微量の「文章」でさえ練ることができぬほどのモチベーション低下!

つまりもう(・・・・・)
おまえは(・・・・)
助からない(・・・・・)


さらばだ
おまえの小説は今…終わった

ヘ……ヘヘッ…

1000文字未満の執筆中小説!(投稿できません)
何故貴様がそれを!?

し……死ぬのは……こわくねえ………ぜ
だが…おれは稚拙で未熟でも作者だ
作品をしっかり完結させたいという思いがある

リア友はこのおれを作者と知らなくても作品についてアドバイスをくれた…読者の皆もこんな作品に感想をくれてモチベを上げてくれただけに留まらず遠慮なく評価してくれた…

…こ、こんなこと人間でねえきさまなんかにしゃべってもわからねーだろうがなァ
だからオレだって『なんかしなくッちゃあな
ここでエタるなんて、カッコ悪くてあの世に行けねーぜ…

JOJO────
おれの久々の
投稿だぜ────
うけとってくれ───ッ



後悔噬臍

 

 あの男と初めて会った日の事を私は今でも不思議と覚えている。

 

 生徒会メンバー総出で業務に勤しんでいた……そんな時にあの男は現れた。

 

「ーー……慌ただしいな」

 

 生徒会室に入ってきた男の第一声はそれだった。

 確かに男の言う通り、その日の生徒会室は何時も以上に人の出入りが激しく、皆仕事に追われていた。

 

 生徒たちからの相談や報告書の作成・確認などの通常業務。それに加えて、春のファン大感謝祭に向けての企画立案、全校生徒に向けた書類の作成。慌ただしくなるのも当然といえた。

 

「……入室するのならノックの一つでもしろ。貴様、それでも中央(ここ)のトレーナーか?」

 

 そんな多忙な日だったという事も影響したのか。書類から顔を上げた私は部屋に入室してきたその男を遠慮なく睨み、そう言った。……今振り返ってみても最悪の初対面だと言わざるをえないだろう。

 

「一応ノックはしたんだが……いや、返事があるまで待つべきだったな。すまなかった」

 

 男は私の睨みに何ら動じた素振りもなく、頭を下げる。しわも乱れもないパリッとしたスーツ、冷静な態度……会って数秒足らずだったが男が「真面目」な人間だということは誰の目から見ても明らかだった。

 

「……フン」

 

 ……まぁ、この時の私はハッキリ言ってイライラしていたのだろう。そんな真面目であろう人間にも不躾極まりない態度をとり続けた。今思い出しても恥ずかしい……。

 

「長居されても仕事の邪魔だ。用件は何だ」

 

「あぁ。生徒会長、シンボリルドルフに用があって来たんだがーー」

 

 私の言葉に男は頷き、用件は語り出してすぐに部屋の奥にいる人物に目を向け、

 

「トレーナー君……」

 

 その視線に気付いた会長ーーシンボリルドルフは大量に積まれた書類を整理する手を止め、席を立ち男に歩み寄るとバッと頭を下げた。耳が力無くへなり、申し訳なさそうな会長の姿に私は大いに驚いた。そんな会長を見るのは初めてだったから。何より、

 

(この男が会長のトレーナーだと?)

 

 そこが私には信じられなかった。確かに真面目な点は評価できるが……私はちらりと会長に謝罪された男の反応を伺うことにした。

 

「私とした事が予測を見誤ってしまったようだ……予定していたトレーニングを既に10分以上遅刻しているにも関わらず、この有様だ」

 

「謝る必要はない。頭を上げてくれ」

 

 会長の謝罪を聞いた男は驚く事もなく、頭を下げる会長に頭を上げるよう告げると、

 

「寧ろ謝るのは俺の方だ。春のファン大感謝祭が近いとはいえ、生徒会の仕事がまさかこれほどあるとは思ってもいなかった」

 

「それと、トレーニングに関してなら心配無用だ。1日程度の遅れなら如何とでもできる……多少の問題があっても大丈夫なように事前に組んであるからな」

 

 そう何でもないように男は言い、会長は一瞬だが言葉を失くす。

 

 それから現在ウマ娘たちが仕事に追われている生徒会室をぐるりと見渡し……男はこんなことを言い出した。

 

「ーールドルフ、俺でよければ手伝おうか?」

 

 えっ、と声を漏らしたのは私だったか会長だったか。いや両方だったのかもしれない。

 

「! だが…それでは君に迷惑が……」

 

「いいや、迷惑なんかじゃないさ。むしろ俺としては手伝わせてもらえると助かる」

 

 何かしてないと落ち着かない性分なんだ、と遠慮する会長に男はほんの僅かに表情を緩め少しだけ笑う。

 

 私は「何を考えてる?」と男を訝しげに見つめ、そんな私に気付いた男はこちらを振り返ると最後にこう付け足した。

 

「無論………迷惑じゃなけば、だが」

 

 

 

 

 

 

「エアグルーヴ、この書類はどこに置いておけば?」

 

「……その書類はここに置け。あとで私がチェックする」

 

「了解」

 

 任せた仕事は単純な書類整理だが……男の仕事振りは完璧の一言に尽きた。無駄なくサッと仕事をこなしていく様は見るものが見れば「本当に目を通しているのか?」と疑いたくなるが、現状ミスは一つたりともない。速度、精度ともに正確だ。

 

 男の優秀さはかつての私も認めざるを得ないところだった。

 

(流石は会長が選んだトレーナー。優秀なのは疑う余地もない……)

 

 それでもこの時の私はどうしてもこの男の事が気に食わなかったらしい。その日から私は極力その男と関わらないように努めた。しかし、

 

『エアグルーヴ、俺に何か手伝えることはあるか? 手伝えることがあるなら手を貸すが』

 

 男はこの一件以降、会長と話すために生徒会室に来たり、廊下で偶然私と会う際に時々そんなことを聞いてくるようになった。私はそれに「不要だ」「貴様は貴様の仕事をしろ」と容赦なく返していた。それほどまでに私はこの男が気に食わなかった。理由は言葉にし難い。

 

「エアグルーヴ、副会長とはいえ無理は禁物だ」

 

 ……今になって思えばあれはあの男の純粋な気遣い故のものだったのだろう。

 

「っ、くどい!!」

 

 だが、その日の私は冷静ではなかった。また声を掛けてきた男に対し怒鳴り声を上げた。

 

「これが最後通告だ!もう二度と私に構うな!」

 

 そして、半ば叫んで男に背を向け歩き出し、

 

(ッ? なに……?)

 

 チカリと視界が暗転し、気付けば私は床に倒れていた。

 

「ーーエアグルーヴっ!?」

 

 そして、私は最後に男の焦ったような声を聞いて意識を失った。

 

 

 ───────────────────────

 

 カタカタカタカタ。

 私が意識を取り戻した時、最初に耳に入ったのはそんな音だった。

 

「! っ……ここ、は……」

 

 音が鳴る中、私の視界に入ったのはあまり見覚えのない白い天井……だったが部屋に漂う消毒液特有の匂いからすぐにここが保健室だと分かった。

 

「ーー起きたか」

 

 次に聞こえた声の方を向いて、カタカタという音の正体も判明した。保健室のデスクにはあの男が座っており手元には男の私物と思われるノートパソコンが置かれていた。

 

「………何故、貴様が居る?」

 

「君を保健室に運んだのは俺だから。それと保健室の───先生は今日は休みだから、だな」

 

 男はキーボードの操作を止め、私の問いに明確に答えると席を立ち、

 

「気分はどうだ?」

 

「………問題ない」

 

「吐き気は?」

 

「………ない」

 

「何か飲むか?」

 

「………飲む」

 

 矢継ぎ早…という程でもないが無駄なく質問してくる。私の返答を聞いて「わかった」と男は取り出したコップを片手に冷蔵庫に向かう。

 

 私が倒れた件に関して何も言わずに。

 

「ポカリと水があるがどっちがいい?」

 

「………水でいい」

 

 男は私の要望通り水をコップに入れ手渡してきた。コップを受け取り、私は一口だけそれを飲み……

 

「………どうして何も言わない」

 

 ーー男に聞いた。

 そんな私の言葉に男はぱちくりと瞬きをすると不思議そうにする。

 

「何のことだ?」

 

「惚けるな。私は倒れる前、貴様に怒鳴った。それに対して……何か文句の一つでも言わないのか?」

 

 だから私は説明した。

 しかし、それでも男は分かっていないようでデスクに戻ると席に座り一言口にした。

 

「別に。特に言うこともないな」

 

「! 貴様はっ………」

 

 本気でそう思っているであろう男に私は思わず怒鳴りそうになり…何とか気持ちを抑えて水を飲み落ち着く。男はちらりと私の様子を見てから再びノートパソコンと向き合いキーボードを操作し始める。

 

(……って何をしているんだ私は? 早くここを出て生徒会の仕事に取り掛からなければーー)

 

 コップに入った水を飲み干した私はベッドから出て、保健室のドアまで歩き出し、

 

「ーー……貴様はこうなると分かっていたのか?」

 

「私がいずれ倒れることを」

 

「だから、会う度に私に忠告してきていたのか?」

 

 ふと、そんなことを聞いていた。

 

『エアグルーヴ、俺に何か手伝えることはあるか? 手伝えることがあるなら手を貸すが』

 

『エアグルーヴ、副会長とはいえ無理は禁物だ』

 

 男は会う度に言っていた。

 今考えればどれも私が生徒会の作業で無理をしていたことに、疲労を溜めていたことに気付いていたからこその言葉としか思えない。

 

「だとしたら何故だ? どうやって気付いた?」

 

 私は男に純粋な疑問をぶつけた。男とはほんの数時間共に仕事をしただけだ。必要最低限の会話しかしていない。そんな私が無理をしているとどうして理解できたのか。それが不思議で仕方なかった。

 

「……最初は何の確証もなかった。だがーー」

 

 男は保健室を出ようとする私の方を向くと静かに話し出す。

 

「ーーある時、君の後輩たちから相談を受けたんだ。最近、先輩が……君が無理をしているんじゃないか、そんな内容の相談を」

 

(……余計な真似を)

 

 男の話に生徒会に居る何人かの後輩たちの顔が浮かぶ。その内の誰が言ったのかは分からないが……一言注意せねばと決意する。

 

「……生徒会室に行くのか?」

 

「無論だ。体調には何の問題もない……手間を取らせたな」

 

 私はそれだけ告げると保健室のドアに手を掛け、

 

「ーー後輩たちがそんなに信じられないか?」

 

 ………なんだと?

 男の突然の聞き捨てならない台詞に手が止まった。

 

「……どういう意味だ?」

 

「そのままの意味だ。後輩たちの力を信じられないから無理をしてまで自ら仕事をしている。今の君を側から見れば、大抵の人がそう考える」

 

 男は席から立ち上がり、真っ直ぐ私を見つめそう答えた。その言葉に私は思わず怒鳴った。

 

「違う! 私はただ副会長としてすべき事をしているだけだ!」

 

「その副会長としてすべき事が仕事で無理をして倒れることか? 後輩たちの心配を無下にして仕事に戻ることか?」

 

「っ、貴様に何が分かる!?」

 

 怒鳴る私に臆する事なく喋る男に私は詰め寄りらしくもなく声を荒げる。それほどに私は冷静さを失っていた。

 

「あぁ、分からないな。君の気持ちが俺には分からない」

 

「でも、君を尊敬する後輩たちの気持ちは少し分かる」

 

「だから、その気持ちを無下にして、まだ無理を続けようとする君を行かせる訳にはいかない」

 

 男は詰め寄った私に怯まず、強い決意を持ってそう言った。

 

 男のその言葉と態度に私は息を呑み、俯く。

 

「ッ……私は……私は、ただ……」

 

 ーー会長の力になりたいんだ。

 私の口から漏れたのは自分でも信じられない程に弱々しい声だった。

 

 会長の生徒たちウマ娘の幸福を一番に願う姿を、志を知って私は副会長になった時に決めたのだ。この人の志を精一杯支えようと。

 

「それはきっと君の後輩たちも同じだ」

 

「別に生徒会の仕事をするなと言ってる訳じゃない。今は休んでくれ、そう言ってるんだ」

 

「君が一日休んでも、彼女たちならカバーできる」

 

 黙る私に男はそう伝えると再びデスクに戻り、

 

「君の後輩たちはみんな優秀だからな」

 

 それだけ言うと男はもう何も言わず黙々とキーボードを操作し始めた。行くなら勝手にしろ、言外にそう示すように。

 

「……当然だ。私の自慢の後輩たちだからな」

 

 それから、私は保健室のベッドに戻った。男の言う通りにするのは癪だったがそれ以上に後輩たちのことを信じていないと思われるのは心外だった。後輩たちの思いを無下にはできなかった。

 

 だが、不思議と悪い気分ではなかった。

 

 

 

 後日、疲労が回復して生徒会に行った私はある事実を知った。

 それは私が生徒会の業務を休んだ日、あの男が会長に会って私がするべきだった仕事の一部を引き受け処理していたというもの。

 

 私は生徒会の仕事とトレーニングを終え、急いで男を探した。素直に感謝をするつもりはないが何か一言言っておかないと気が済まなかったのだ。そして、

 

「『硬め・濃いめ・多め』を一つ」

 

「はい『硬め・濃いめ・多め』ですねー!」

 

 学園付近に来ている「はちみつドリンク」のキッチンカーの前で私は男を見つけた。

 

「……甘い」

 

(……誰だあれは?!)

 

 男は学園の生徒たちの間でも人気のはちみつドリンクを買うとキッチンカー近くのベンチに座り、はちみつドリンクを一口飲むとぽつりと独り言を零しホッとした顔を浮かべる。

 

 そんな男の学園では一度たりとも見たことない姿に私は率直に言って困惑した。人違いかとさえ思った。だが、服装も顔もあの男そのものなのだから別人ということはない……ない、筈だ。

 

「……おい、貴様」

 

 私は少し不安になりつつ、男の座るベンチに近付いて声を掛けた。

 

「…………」

 

「…聞いているのか?」

 

 しかし、男は目を閉じてはちみつドリンクを飲んでいるばかりで私の声には無反応だった。

 

「おい!」

 

 そんな男の態度に私は少し力を入れて男の座るベンチを叩き怒鳴った。結果、ベンチは少し揺れてはちみつドリンクを飲んでいた男はビクッと体を動かすと目を開き、

 

「! エアグルーヴ…?」

 

「やっと気付いたか……」

 

 ようやく私の存在に気付き、私は呆れてため息をつきたくなったがそれを堪え……私の仕事をしていた件より先に気になったことを聞いてしまった。

 

「……貴様はここで何をしているんだ?」

 

「……見て分からないか?」

 

「分からないから聞いている!」

 

 男は私の問いに考えながらも次のように喋った。

 

「ただの糖分補給……じゃないな。ルーティンというか、癖というか……日頃のご褒美?みたいな?」

 

「いや、何故疑問形なんだ?」

 

 男によればサブトレーナー時代に師事を受けていたトレーナーとそのウマ娘にはちみつドリンク店に週一ペースで連れられた事が原因か、サブトレーナーからトレーナーになって以降も時々無性にはちみつドリンクを飲みたくなる……ということらしい。

 

「……そんなに美味しいのか?」

 

 その男の話を聞いて私は思わずそんなことを聞いた。

 

 それが間違いだった。

 

「君も飲むか?」

 

「要らん」

 

「美味しいぞ?」

 

「要らんと言っている!」

 

「遠慮しないでいい。代金は俺が払う」

 

 男はやたらとしつこくはちみつドリンクを推してくる。そんなに好きなのかと思いつつ私は断り続けた。だが、ふと生徒会の後輩たちからもオススメされていた事を思い出し、

 

「……そこまで言うなら……」

 

 ーー私は何故か折れてしまった。

 

「……………」

 

「……………」

 

 結果、どういう訳か私は男の隣に腰掛けてはちみつドリンクを飲んでいた。互いに一言も喋らず黙々と。

 

「……これ、甘過ぎないか?」

 

 最初は1500円という値段にギョッとしたがいざ飲んでみるとそれ以上に甘さが気になり、私は隣の男にそう聞いた。それに男は「濃いめだからな」とだけ言い再びはちみつドリンクに口をつける。そういうものなのか…と私は渋々納得して男と同じくはちみつドリンクに口をつけ、

 

(……って、違う!)

 

「私はこんな事をしに来た訳じゃない!」

 

「? はちみーを飲みに来たんじゃないのか?」

 

「たわけ! そんな訳あるか! 私は貴様に言いたいことがあって来たんだ!」

 

 馬鹿なことを吐かす男に怒鳴りつつ、私は本題に入った。

 

「会長から聞いたぞ……私が休んだあの日、私が任された仕事を貴様が代わりに処理したと」

 

 会長の話では私が倒れた後、男は生徒会に行き会長に「今日エアグルーヴが任されていた業務は俺が代わりにやりたい」と直談判しに来たらしい。

 

「余計な真似をしてくれたな……私に恩でも売ろうとしたのか?」

 

 なんてことを口にしながらも本当は分かっていた。この男にそんなつもりは甚だないことは……ただ素直に礼を言う気にもなれなかった。

 

「……どうとってもらっても構わない。ただ、俺は俺がすべきと思ったことをしただけだ」

 

 はちみつドリンクを飲み終え、ベンチを立った男は容器をゴミ箱に捨てるとトレーナー寮に向かって歩き出す。

 

「待て」

 

 そんな男を呼び止め、私は言った。

 

「貴様は言っていたな? 手伝えることがあるなら手を貸す、と」

 

「なら、今後私が呼び出した時には生徒会の仕事に手を貸してもらうぞ」

 

「無論………迷惑じゃなけば、だがな」

 

 最初に会った時に男が私に対して口にした言葉を真似てそう口にすると、男は意外そうな顔をした後にほんの僅かに口角を上げ、

 

「あぁ、いいだろう」

 

 二つ返事で了承した。

 

 それから私は男を度々生徒会の仕事に呼び出し業務を手伝わせたり、週に数回程度だが一緒にはちみつドリンクを飲んでくだらない会話をする……実に奇妙な関係になっていった。

 

 ──────────────────────

 

 ある日のこと。

 

「「…………」」

 

 私たちはいつものようにはちみつドリンクを飲んでいた。

 

「…何かあったのか?」

 

 しかし、私は男の様子がいつもと僅かながらに違うと気付き聞いた。

 

「…どうしてそう思うんだ?」

 

「貴様は何を考えているか分かりづらいが……半年近く接していれば、悩んでいるかどうか程度は分かる」

 

「…そういう…ものか…」

 

 私の言葉に男ははちみつドリンクを一口飲み考えるように黙り込む。

 

「…言いたくないというなら無理に言えとは言わん。だが、それで生徒会の業務に支障が出ても困るからな」

 

 同じくはちみつドリンクを飲みつつ私はそんなことを言う。知り合ってから半年の付き合いだが素直に「心配だ」と伝えられるほど私は勇敢ではなかった。

 

「……そうだな。君には話しておくべきか」

 

 黙り込んでいた男はそう言い出しぽつぽつと最近悩んでいる事を話し出した。内容は「シンボリルドルフに自分の手助けなど必要なのか」や「自分はシンボリルドルフの力になれているのか」だとかそんなものだ。

 

 男が不安になる気持ちは分からないでもない。確かに会長は凄い人だ。トレセン学園の生徒会長であり、ウマ娘としての実力、勉学、人格とどれをとっても文句のつけようがない正に「皇帝」と呼ばれるに相応しいウマ娘だ。

 

 そして、何よりもあの人は強い。

 それこそ会長自身が目標として掲げている「クラシック三冠」を難なく取れてしまうのではないか?と見ている者に思わせてしまうほどに。

 

「たわけがっ!!」

 

 しかし、半年の間で私は既にこの男以外に会長のトレーナーが務まる訳がない……そう確信していた。男の持つトレーナーとしての能力は会長の隣に立つに相応しいと、本人には口が滑っても言うつもりはないが認めてさえいたのだ。だから、男の言葉を肯定することなどできなかった。

 

「貴様以外に会長の夢を支えられるトレーナーが居ると思っているのか? いいや、そんなトレーナーは現状この学園には居ない!居るものか!」

 

「エアグルーヴ……」

 

 私はベンチから立ち上がり自分の考えをありのまま男にぶつけた。男は隣に立つ私を見上げ、

 

「……そう、かもな」

 

 私と同じくベンチから立ち上がり小さな声でそう呟き、決意を露わにした。

 

「ありがとう、エアグルーヴ」

 

「……フン、精々これからも会長のトレーナーとして全身全霊で励め」

 

 そうして、その会話を最後に私たちは別れた。

 

 

 なんてやりとりをした日から数ヶ月後。会長は菊花賞を制してクラシック三冠を達成した。そして、その翌日ーー男は学園から姿を消して失踪した。

 

 あの日から私は毎日のように考えてしまう。

 もしあの日、男が悩みを打ち明けた時、私が違う言葉を掛けていれば……なんてたらればを。

 

「『硬め・濃いめ・多め』を一つお願いします」

 

 そして、私は今またあのキッチンカーに行きはちみつドリンクを買っていた。買うのはかつて男がやたらと推していた硬め・濃いめ・多めだ。

 

「…………」

 

 はちみつドリンクを受け取り、ベンチに座り……私は空いた隣に目を向け、

 

『君も飲むか?』

 

『要らん』

 

『美味しいぞ?』

 

『要らんと言っている!』

 

 男とのくだらない会話を思い出した。前は一緒に座っていたベンチだが今は私一人だけだ。……と言っても別に一緒にいた時も特に何を話すでもなく黙々とはちみつドリンクを飲んでいただけなのだが。

 

 何故か妙な寂しさを感じる自分がいた。

 

「…………」

 

 私は空を見上げ、ふと考える。

 今頃、あの男はどうしているのだろうかと。会長のトレーナーを投げ出した件は許せない……だが、元気でいるのならそれでもいいかと思う自分もいた。

 

「………たわけが」

 

 ただ、私に何も言わずに消えた事に関しては一言文句を言ってやりたかった。

 

「……やっぱりこれ、甘過ぎないか?」

 

 いつまで経ってもこの甘さには慣れないな、と思いながら私ははちみつドリンクに口をつけた。今もどこかで生きているかもしれない男の姿を思い浮かべながら。

 

 

 ──────────────────────

 

「はちみーはちみーはっちっみー♪はちみーをなめーるとー♪」

 

「あしがーあしがーあっしがー♪はやくーなるー♪」

 

 ベンチに座ったトウカイテイオーははちみつドリンクを片手に呑気に謎の歌を歌っていた。その様子からはつい先程までダンスゲームを数時間ぶっ通しでプレイしていたなんて誰も分からないだろう。

 

『もう一回! もう一回!』

 

『バカかお前! もう五千円以上プレイしてるだろ!?』

 

『なんでー! 一回ぐらいいいじゃん!』

 

『ダメだ。つうかお前さっきのダンスで足捻挫したろ?』

 

『……し、シテナイヨー』

 

『嘘つけ』

 

 トウカイテイオーは俺がダンスを踊り終えた後、俺の出したスコアを超えるために「winning the soul」を踊り続けた。だが、中々トップスコアを叩き出せずにこのクソガキはダンスゲームをプレイし続けた。五千円を軽く消費するぐらいには………いや負けず嫌いにも程ってものがある。

 

「甘〜い♪」

 

 無理矢理プレイを止めた時はそれはそれは不機嫌だったが、はちみつドリンクのキッチンカーを見つけた途端に目を輝かせ出した時は驚いた。

「単純すぎる」というのと「はちみー好きなのか…」という二つの意味で。

 

「…美味しいよな、それ」

 

 俺は美味そうにはちみつドリンクを飲むトウカイテイオーを見て言う。はちみー好きなのも驚いたがまさか『硬め・濃いめ・多め』が好きとは……クソガキテイオーの割にはいいチョイスだと思った。

 

「え? オジサンもはちみー飲んだことあるの?」

 

「…あぁ、トレーナーをやってた時にちょくちょくな。甘くて糖分補給には最適だったし」

 

「じゃあ、オジサンも一口飲む?」

 

 なんてことを考えているとトウカイテイオーは俺に容器を手渡し、そんなことを言ってくる。俺は一瞬「…ならお言葉に甘えて」とすんなり容器を受け取りそうになり……

 

『……これ、甘過ぎないか?』

 

 ふと懐かしい記憶が頭を過り、手を引っ込めた。

 

「…いや、やっぱりいい」

 

「? 遠慮しないでもいいよー?」

 

「遠慮なんてしてない。ただーー」

 

 あの時の記憶を思い出すとどうにもはちみつドリンクを飲む気にはなれなくて、俺はこう口にした。

 

「ーー今の俺に……はちみーは眩し過ぎる」

 

 するとそれを聞いたトウカイテイオーはぱちくり瞬きをするとストローから口を離しこんなことを言った。

 

「……オジサンって、たまによくわかんないこと言うよね〜」

 

「…………」

 

 ……だから、俺はベンチから立ち上がり決めた。

 

「帰る」

 

 一切後ろを振り向かずに歩き出した。別にクソガキの言葉にショックを受けたとかいう訳じゃない。断じてそんな訳ではない。

 

「うえぇっ!? お、置いてかないでよー! 今ボク足捻挫してるからー!」

 

 後方から喧しい声が聞こえるが知ったことではない。

 

「あー! オジサン! オジサーン!?」

 

 というかオジサンなんて名前に覚えはないからな。

 

 そうして、俺は振り返ることなく帰路を進んだ。

 

※この後、ちゃんとおんぶして二人一緒に帰りました。

 





大変長らくお待たせしました!!(土下座)
※今後は多分四字熟語のタイトルはトレセンの誰か視点になると思われます

キャラ紹介
・エアグルーヴ
お馴染みトレセン学園の生徒会副会長。女帝。
自虐野郎が居なくなり落ち込んでる(表には出さない)カイチョーのサポートしたり自虐野郎の心配だったりとで本作の苦労人枠候補その1。

自虐系トレーナーとは半年近くの交流があり、互いに割と遠慮なく話せるぐらいの仲だった模様。尚現在。

ちなみに自虐野郎がはちみー好きなのをエアグルーヴは知っていますが、カイチョーは知らなかったりします。
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