オレ…夢の中で暗闇を歩いてるとよぉ───
光が見えておれの爆死した兄貴に会ったんだ
「形兆」の兄貴さ……
『どこへ行くんだ億泰』…って……兄貴がオレに聞くんだ
オレは『兄貴について行くよ』って言った……
だって形兆兄貴はいつだって頼りになったし…兄貴の決断には間違いがねぇから安心だからな…
そしたら兄貴は…『おまえが決めろ』って言うんだよ……
『億泰…行き先を決めるのはおまえだ』ってな…
オレはちょっと考えてよォー
『今回は引かない』って答えたら目が醒めたんだ………
とてもさびしい夢だったよ
「ーー……む?」
いつの間にか私は誰もいない見知ったミーティング室に一人立ち尽くしていた。自分がどうして此処にいるのかが分からない。ここに来るまでの前後の記憶がぼんやりとし過ぎている。疑問が尽きない状況で私はまずミーティング室を見渡して……側にあった脚付きのホワイトボードに目が留まった。
(これは………随分と懐かしいな)
そこに書き込まれた内容に言いようのない懐かしさを感じてつい私の口は綻んだ。ホワイトボードには余白が殆どないほどに文字がぎっしりと書き込まれており見ているだけでも書き手の熱意がひしひしと感じられた。そんなホワイトボードの上端に書かれていた一文はこうだ。
「『皐月賞、先ずは一冠』か」
デビュー戦から4連勝し、実に好調な滑り出しに成功してからの皐月賞。私にとっては初のGIであり同時にクラシック三冠の最初の関門。大事な一冠がかかった「最も速いウマ娘が勝つ」と言われるレース。
そのレース前日のミーティングということもあって私は今まで以上にやる気に満ち溢れていた。それもそのはずだ。私は誰しもが認める頂点の存在になるためにはクラシック三冠という強さの証明が必須だと考えていたのだから。
当時の意気軒昂な私に影響されてか、この日のミーティングでのサブトレーナー君は見るからに緊張して意見を少々噛みつつ口にしていた。ちなみにトレーナー君はというと一見して普段と変わらない様子だったが私の意気に呼応してくれたのだろうか?この時のミーティングでの彼の言葉にはいつも以上の熱量があったように思えた。そう考えて思い出してみるとホワイトボードに書かれた彼の文字も何だかいつもより力が入っていて達筆なようにも見えてくる。
「……本当に、君はすごいんだ」
ホワイトボードに目を通した私は既に分かり切っていることを改めて口にする。私はトレーナーではなく一ウマ娘でしかないが、そんな私の目からしてもやはり彼のトレーナーとしての実力はトレセン学園という一流のトレーナーが多くいる環境の中でも紛れもないトップクラスに思えてならない。
皐月賞に出場予定の他ウマ娘の脚質に得意としている作戦、その中でも要注意なウマ娘数名のピックアップ、皐月賞の舞台である中山レース場・芝・2000m(中距離)の例年から分かる傾向、私が今回取るべき作戦、etc。一切の妥協も油断も見当たらない彼らしい綿密な書き込みに私はトレーナー君の優秀さを再認識しつつ、思わず首を傾げた。
(何故あの時のホワイトボードが……?)
皐月賞はもう6ヶ月以上は前で、このホワイトボードだって皐月賞を終えてトレーナー君が資料として写真を撮った後すぐにサブトレーナー君と一緒に消していた覚えが私にはあった。ならば、どうして?
(夢なのか?)
新たな疑問が増えて、これが自分の見ている夢である可能性が高いと判断した私だったが背後から人の気配を感じて振り返った。
「! トレーナー君ーー」
そこに立っていた人物の顔を見て私は咄嗟にそう口にして、
「ーー……なの、か……?」
直後に全体を見てから本当にそうなのか?と思い直した。何故なら目の前に立っていた彼の姿は私が知るトレーナー君とはかけ離れていたから。
トレーナー君はしわも乱れもないスーツとズボンを着用していて、第一印象として誰が見ても真面目な印象を受ける人物だ。しかし今そこに居た彼は白Tシャツの上に黒いボロボロのコートに黒いズボンを着用していて、真面目には程遠くやさぐれているような印象を受ける。また分かる違いとして私の記憶にあるトレーナー君の目に比べて彼の目からはまるで生気が感じられなかった。
もしも彼がトレーナー君だとするならば一体彼に何があったというのだろうか?何も喋らずただそこに立つ彼を見ながら考えて………私は不意に思った。
(私は何か大切なことを忘れていないか?)
何故そんなことを思ったのか、私自身よくわからない。ただ彼の姿を見ていると無性に胸が苦しくなって、自分が何から目を背けてるような……上手く言語化できない、そんな感覚を覚えた。
忘れている。
仮にその通りだったとして、私は一体何を忘れているというのだろうか?記憶力にはそれなりに自信があるのだが………
「……トレーナー君? どうして、何も言わないんだ?」
考えながら私は一向に口を開かずにいるトレーナー君?が気になって問いかけた。トレーナー君は元々私の知る範囲では無駄口を叩くようなタイプではなかった。かと言って無口な訳でもなく必要事項は必ず話すし日常会話も普通にしていた。場合によっては空気を読んでトレーナー君の方から話を振ってきてくれるなんてこともあった。そんな彼がここまで無言というのは見た目と相まってかなりの違和感を私に与えた。
「……やはり、これは夢なのか?」
そして、やはり、彼はトレーナー君ではないのだろうか?という思いが私の胸中で徐々に大きくなり始めた時だったーー。
「ーーどうせ俺なんか……」
漸く話してくれたと思い聞いたその言葉に、私は気付いた。彼の目は私を見ているようでその実は私を一切見ていないということに。いや私だけじゃない。その目は何も映していないように見えた。
呆気に取られる私を置いて彼は私に背を向け、ゆっくりと歩き出す。
「っ、待ってくれーー」
トレーナー君!そう声を上げて彼の背に私が手を伸ばしたのと全く同時に、彼の姿は何の前触れもなく掻き消え私の手は空を切り、足元には見覚えのあるトロフィーが三つ。蕪雑に転がっていた。
「こ、れは……」
足元のものに気付いた私はその場にしゃがみ込んで、彼に届かなかった手を三つあるトロフィーのうちの一つーー最も記憶に新しい銀の優勝トロフィーに伸ばして触れた。そうしてトロフィーを見て一つ瞬きをした時、
「……はっ……?」
触れていたトロフィーの感触が消えたかと思えば、顔を上げて見た私の視界に広がる景色は一変していた。見覚えのあるミーティング室から見覚えのない海岸……が見える場所。
(灯台……の上か?)
振り返ればそこにはこの場所に至るまでの階段と灯台らしきものが立っていて、その表面は私から見える範囲だけではあるが殆どの箇所が錆び付いていて年季を感じさせた。またミーティング室に居た際は外はまだ明るかった筈だがいつの間にか外は暗く、潮風が吹き荒み、何の気なしに空を見上ればそこには無数の星が煌めいている。
「…………」
星の綺麗さに少しの間だけ注意が逸れた私だがすぐに前を向き。
「!」
そこに立つ彼を見つけて、
「………えっ………」
名前を呼ぶより前に。駆け寄るより前に。目の前に居る彼の状況を確認して、私は絶句して近付こうとした足はまるで金縛りにあったように動かなくなる。後ろ姿しか見えないが彼の服装はミーティング室で見た時と変わらない。しかし、彼が立つ位置は危うく、何をしようとしているのか考えて………一瞬頭の中が真っ白になった。
彼は取り付けられた柵を超えた先、ほぼ足場がない場所に立っていた。あそこから一歩でも踏み出せば遥か下の海面への落下はまず免れないだろう。しかも風が強いため踏み出すまでもなくバランスを崩して落下する可能性も高い。
「……どうせ俺なんか……」
ミーティング室で見た服装と同じく彼が零した言葉もまた変わらなかった。だがその声音にはどこか前に聞いた以上の諦念が感じられてーーその台詞を最後に彼は宙に踏み出して、私が止める間もなく真っ暗な海の中へと真っ逆様に落ちていく。体はぴくりとも動かず、その場面を私はただ見つめることしかできなかった。
これは何だ?
何が起こっている?
私は一体何を見せられている?
私は一体何を忘れている?
現実かどうかなど最早重要ではなかった。今そこで起こった出来事に酷く混乱する私の耳に、バシャンと強烈な水音が届いた。そうしてその音が聞こえた途端に突然何かが脳内でフラッシュバックした。
『二人を呼んだのは他でもない! ズバリッ! 今から話すことは彼の、───君に関することだからだ』
……理事長からの呼び出し。
『まずは、たづな! あれを出してくれッ!』
……ポリ袋に入れられた見覚えのあるスマートフォン。
『説明ッ! 彼が無断でトレセン学園を去ってすぐ、何度も説得の連絡を試みたが彼には一向に繋がらなかった! そのため、トレセン学園は警察に彼の捜索願を届け出た!』
……彼が私の元を去って行方不明になったこと。
『3着はシンボリルドルフ!』
……彼と共に築いてきた私の無敗記録が終わったこと。
あぁ、そうだ、どうして私は忘れていたのだろうか。
いや、何とか忘れようと目を逸らし続けていたのか。そうでもしないととてもじゃないが正気でいられなかったから。
彼が残した手紙を読み終えた時に感じたものと同じ思いを再度胸に抱きながら私は思わず自分の頭を両の手で掴んだ。何の力加減もない。ただただ力任せに掴み痛みに構うことなく握り続ける。
あぁ、そうだ。全ては私の所為なんだ。
「……ぁ、ぁあ……」
トレーナー君をこんなことになるまで追い詰めたのは私だ。
いいや、追い詰めたなんて言い方では生温い。
「ああああああああああああああ!!」
トレーナー君を殺したのは
やはり、私だ。
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本当に起こったことだと思える程に妙に現実味のある夢。鮮明に脳裏に焼きついた光景。高所から海に落下していった彼の姿が頭の中に何度も何度も過った
「………ぁ」
そうして気付けば目の前に暗闇などなく替わりに白い天井があり、私はそれに何故だか少しの既視感を感じながら体を起こした。
「! 目が覚めましたか……よかった」
既視感の正体は掛けられた声のおかげですぐに分かった。その声は私が寝るベッドの横の椅子に座ったサブトレーナー君のもので……これによく似た状況は前にもあった気がする。確かあの時はトレーナー君が居なくなったことを考えまいと過剰に走り込みをして、そのまま倒れて次に目が覚めた時には私はトレセン学園の保健室にいたのだったか。
今回は……私はどうしてこうなっているのだろうか?
「ルドルフさん、何があったかは覚えていますか? 起きたばかりで多少混乱しているかもしれないですけど……」
「あ、あぁ……確か私はジャパンカップを走っていて、走り切って、3着になって………」
……それから……それから……。
途中から抜け落ちている自分の記憶に何があったかを大方察した私はぽつりと呟いた。
「その後に倒れた、か」
「はい、明らかな不調で無理して走ったせいでしょう……すいません。こうなるかもしれない可能性は十分察知できていた筈なのに……」
「気にしないでくれ。君のせいなんてことは微塵もないさ。何せ『出走は取り消すべき』という君からの意見を聞かずに無理を言って出走を頼んだ結果がこれなのだからね」
我ながら愚かな真似をしたと思う。出走前のサブトレーナー君の意見は明らかな正論だと分かっていたのに……自身のつまらない意地でこんな醜態を晒してしまったのだから。
その後、サブトレーナー君は私が倒れた後に少しレース場が騒ぎになったこと、それ以上の問題はなかったこと、医師の診断曰く倒れた主な原因は過度なストレスによる疲労であることなどを教えてくれた。
「……ルドルフさん、さっきまで随分と魘されてたみたいですけど、大丈夫ですか?」
暫くの沈黙が流れた後、サブトレーナー君はそんなことを口にした。夢から目が覚めて間もないからだろうか、見た夢はまだはっきりと思い出せて、魘されていたという話にも納得がいった私は何とはなしに理由を話した。
「少し悪い夢を………いや、私自身が今まで考えないように努めていたことと向き合っていてね」
「考えないように努めていたこと?」
「……この件では、サブトレーナー君、君にも謝らなくてはいけない」
それを聞いてサブトレーナー君は「は、え?」と見るからに驚いた様子でこちらを見つめてくる。そんな彼に私は続けて言った。
「ずっと、私は目を背け続けていた」
「トレーナー君が姿を消したあの日から、分かっていた筈なのに……真っ先に理解していた筈なのに……トレーナー君が居なくなった理由を一瞬でも考えまいとして、逃げるように走り続けた挙句に倒れた。我ながら愚かしい現実逃避だ」
笑止千万とは正にこのことだな、と思わず自嘲しながら私は最後にこう告げようとした。
「トレーナー君が姿を消したのは、追い詰められていたからだ」
「そして、それ程までに彼の心を傷付け、追い詰めたのは他の誰でもない私だ」
「全ては私のせいなんだ………トレーナー君を殺したのはーー」
ーー私だ、とそう言い掛けた私だったがその言葉を口にすることは叶わなかった。何故なら言葉を発しようとした次の瞬間には、
「ーー自分だ、とかバ鹿なことほざく気ならブン殴る」
私の胸倉を力強く掴まれていたから。
その手は他の誰でもないサブトレーナー君のものだったが、サブトレーナー君の予想外の行動に私は衝撃を受けた。だってそれは私の知る彼からはとてもだが考えられない行動だった………まぁ私の知る、なんて言ったが半年以上苦楽を共にしていたトレーナー君の苦しみにさえ気付けなかった私がサブトレーナー君の本質を理解できている訳はないのだが。
「先輩がいなくなった理由が、責任が、自分にだけあると思ってるなら、それはあなたの傲慢でしかない」
胸倉を掴みながらサブトレーナー君は真剣で鋭い眼差しで睨みつけながら言う。その目と口調からは本気の怒気が感じられた。
「前にも言ったように、俺にとって先輩は憧れでした。だから心のどこかで思い込んでたんです。先輩なら大丈夫。何があっても折れたりなんてしないって。何の確証もないくせに……ただ憧れの人にカッコよくあってほしいっていうバ鹿みたいな気持ちで」
「……もしかしたら、先輩のことを知る人の殆どはそうだったのかもしれない。それぐらい先輩は誰の目から見ても完璧に見えて、強かったから」
話しながらサブトレーナー君は私の胸倉からそっと手を離し、立ったまま話を続ける。
「……ルドルフさんが自分を責めたくなる気持ちは分かります。でも絶対にあなただけの所為なんかじゃない。少なくとも先輩を近くで見ていた俺にだって大なり小なり責任はある」
「……サブトレーナー君……」
それからそこまで話したサブトレーナー君は少し俯いてから、何かを考えて黙り、意を決したかのように顔を上げてこう言った。
「ーールドルフさんはこのまま終わってもいいですか?」
「! ………それは………」
どういった意味の質問だ?と言いかけて私はやめる。突然のその言葉に一瞬は呆気にとられた私だが、言葉の意味はすぐに呑み込めた。サブトレーナー君の言う終わりとは私のウマ娘としての「競走バ人生」についてだろう。
当初の目的であったクラシック三冠は達成した。それも中央競バ史上初の「無敗」のクラシック三冠という強さの証明としてはこれ以上ない結果だ。今も応援してくれる方々には申し訳なく思うがたとえここで引退したとしても何ら恥じることはない………
『皆、心配をかけてすまない。だが見ての通りだ。私は今までも…そしてこれからも"皇帝"として、絶対の走りをもって勝ち続ける。心配は完全に無用だ。これからも応援のほど宜しく頼む』
ーー訳がない。
自分自身が吐いた台詞を思い出す。これだけの大口を叩いておいて今更負けて退くなど許されるものか。彼の心を気付かぬ間に酷く傷付け追い詰めた私が……この程度の苦しみで足を止め膝を折ることなど許される筈がない。私は思う。
「………このまま終わるなんて、俺は嫌だ」
俯く私の耳にサブトレーナー君の敬語の外れた声が聞こえた。
「トレーナー業を任されてから、俺はずっと頭にキてる。何も知らないくせして好き放題言いやがる世間にマスコミにも! そいつらに言い返せるような結果を出せるよう、あんたを導けない自分にも!」
「! それは君の責任じゃーー」
怒りか悲しみかその声は震え、拳は固く握り締められていた。サブトレーナー君の思いに私は口を開こうとした。結果を出せないのは君の責任じゃない。トレーナー君の一件からいつまで経っても立ち直れないでいる私の所為だ、と。
「ーー何より、俺に無責任に何もかんも放り投げてきた先輩に!」
しかし、その言葉は続くサブトレーナー君の真っ直ぐな思いで掻き消された。それを聞いた私は思わずハッとした。
「このまま終わったら、俺は世間とマスコミの評価通り、先輩に遠く及ばないトレーナーだ。……間違いとも言い切れないし、最悪それはいい。だけどここで諦めたら俺は先輩に合わせる顔がない。面と向かって文句の一つも言ってやれない。そんなのはごめんだ」
「次に先輩に会うまでに誰も文句が言えないぐらいの結果を出して、先輩に会ったら一発ブン殴る。殴って文句を言ってやる。だから、俺はまだ終わりたくない」
「ーールドルフさん、いいや、シンボリルドルフ、あんたはどうだ?」
サブトレーナー君の口から初めて聞いた本音の数々。
「! わ、私は………」
そして、最後の問いに私は己の胸に手を当てて考える。このまま終わっていいのか。こんな結末で満足なのか。そんなの、決まっているじゃないか。
「っ、私だって! こんなところで終わりたくはないさ! そうだ……私も彼に、トレーナー君に会って言ってやりたいことが五万とある!」
心の奥に仕舞い込んでいた鬱憤を吐き出すように私は声を上げる。
『どうか、俺のことなどさっさと忘れてくれ』
トレーナー君が私宛に残した手紙に書かれた一文が脳裏を過ぎる。彼が望むなら私はそうするべきなのだろう。私にとってトレーナー君の言葉はいつだって正しかったのだから。私は私の為にも君のことを忘れるべきなのかもしれない。そうした方が今よりも遥かに気は楽になるだろう。だけど、私は………私は…………。
「ーー……サブトレーナー君、私はまだ終わりたくはない、まだ走っていたい」
今まで支えてくれたトレーナー君の為に。
今も支えてくれるサブトレーナー君の為に。
『これが、俺の見たい
何よりも私自身が語り掲げた愚かで甘く遠い夢の実現の為に。
私はサブトレーナー君の目を真っ直ぐ見つめながら頭を下げ、手を差し出しながら懇願した。
「どうか、私に力を貸して欲しい」
「………勿論、喜んで」
その日、私達は初めて互いの本音を知り、同じ方角を向いた。
───────────────────────
トレーナー君。私は君を傷付けた。
きっと、私が思うよりもずっと深く、幾ら謝罪しようとも許されないほどに。
きっと、君は私に対して殆愛想が尽きて、私が嫌いになったに違いない。
だけど、私は未だに君のことが好きだ。
………トレーナー君、私は決めたぞ。
「よし、先ずは軽い走り込みからとしようか」
私は君を諦めない。君と再び出会うその日が来るまで走り続けよう。そして、その日が来たらどうか伝えさせて欲しい。君に対してのほんの少しの鬱憤と数多の感謝を。
それとサブトレーナー君は君に対して随分と御立腹のようだから帰ってきた時には覚悟しておいた方がいいぞ?
(ーーあぁ、トレーナー君ーー)
ーーどうか無事でいてくれ。
夕日に染まり始めた空の元、走りながら私は思った。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
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