帝王と自虐系トレーナー   作:平々凡々侍

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そうだな…わたしは「結果」だけを求めてはいない
「結果」だけを求めていると人は課金(らく)をしたがるものだ…………課金(らく)をした時、食費を失うかもしれない やる気も次第に失せていく

大切なのは『キャラを推し続ける意志』だと思っている

推し続ける意志さえあれば、たとえ今回は欲しかったキャラが当たらなかったとしても
いつかは当てるだろう?
(欲しいキャラを)推し続けているわけだからな
…………違うかい?

言うの遅れちゃいましたが毎話誤字報告してくださる皆さん、本当にいつも助かってます……感謝ッ!


パーフェクトハーモニー

 俺が気付いたら居候になった日の夜。

 

(なんで、こうなった……?)

 

 意識を失っていた俺が寝かされていた部屋を「そのまま自室として使って構わないよ」とトウカイテイオーの父親に言われ……俺は今その自室にて頭を抱えていた。

 

(おかしい)

 

「居候になる」など俺は一言も言った覚えがない。了承もした覚えがない。有無を言わせぬトウカイテイオーの両親による進行通りに話が進んだ結果がコレだ。

 

 俺には、何をされたのかさっぱりわからなかった。

 

(……一旦居候の件に関して考えるのはやめよう。頭がおかしくなる)

 

 気付かぬ間に記憶操作でもされたのか?とか馬鹿げた思考に至る前に俺は居候の件について考えるのを中断し、

 

「ん〜……ねーオジサン! このトレーニングメニューどう? 今考えた自信作なんだけどさー!」

 

「なんで」

 

 さも当たり前かのようにこの部屋……そこに置かれたソファの一つにパジャマ姿で寝転ぶトウカイテイオーを見る。そんなトウカイテイオーはというと、ぐちゃぐちゃな筆跡で何かが書かれた紙を掲げ俺に見せてきた。筆跡がぐちゃぐちゃなのは十中八九ソファの上で書いたからだろう。

 

 よく見ればその紙にはトウカイテイオー自身が言うように「腕立て伏せ・腹筋1000回! ランニングいっぱい!」などなどトレーニングメニューらしきものが書き綴られている。内容は正直酷い。特に「いっぱい!」「たくさん!」と明確なトレーニング回数が記載されてない所とか……というかそれ以前に

 

「お前、なんでここに居る…?」

 

「えー? ボクがボクの家に居るのは当たり前じゃん!」

 

 あー……そうだったそうだった。

 ここはトウカイテイオーの家だ。トウカイテイオーがどこに居たって何もおかしk

 

「な訳あるか。俺みたいな不審者の居る部屋になんでお前が一人で入って来てんだ。どう考えてもおかしいだろうが」

 

「不審者って……もーオジサンは(うち)の居候になったんだから! 別におかしくないよっ♪」

 

「……おかしいな。居候になった覚えが一切ない」

 

 あとオジサンじゃないお兄さんだ(半ギレ)

 再度頭を抱えたくなったが何とか耐え、俺は渋々トウカイテイオーが持つ紙を手に取り、そこに書かれたトレーニングメニューに詳しく目を通してみる。

 

 これは……うん。

 

「………やっぱ酷いな」

 

「ひどいっ!? ど、どこがひどいってのさ! それボクの自信作なんだよー!」

 

 いやまぁ小学生にしちゃ割と効果的なメニュー知ってんな……とちょっと感心した。だが…やはり内容は酷い。

 

「まずお前、限度って言葉知ってるか?」

 

「ふふん! それくらい知ってるよ。けどボクってスゴイから、これくらいトレーニングしても全然平気なんだよねー!」

 

「……お前、このトレーニングメニュー『今考えた』ってさっき言ったよな?」

 

 なのにどうしてやっても平気だと思ってるんだ?

 

「流石はテイオー様だな……慢心もお手の物か」

 

「そ、それは……! ぼ、ボクが言うんだから大丈夫ったら大丈夫なんだよー!」

 

「無理だな。今のお前じゃこんな内容のトレーニング、一日こなすのもキツい筈だ」

 

 トレーニングメニューを見ながら俺は言う。

 このトレーニング内容は小学生でまだ体も出来上がっていない、ウマ娘とはいえ子供に出来るレベルのものじゃない。今後、彼女が成長すればこなせるようになる可能性もゼロではないが……今の彼女にこのトレーニング内容はどう考えてもオーバートレーニングだ。

 

 それとこのトレーニングメニューを見てて、一つ気になった部分があった。

 

「というか、コレはなんだ?」

 

「? コレって?」

 

 俺は手に持ったトレーニングメニューの一点を指差しトウカイテイオーに見せ聞いた。

 

「ここに平仮名で書いてある…『でっど…なんちゃら?』っての」

 

「あー。それはアレだよアレ! えっと、なんだったかなぁ……前にテレビで見た筋トレでね? 地面に置いたすっごい重い棒みたいなのを両手で握って『えいやっ!』って腰の位置まで持ち上げるアレ!」

 

 筋トレ?

 すっごい重い棒?

 腰の位置まで持ち上げる?

 ………おいまさか、

 

「……お前、デッドリフトのこと言ってんの?」

 

「そーそれっ! デッドリフト! でっどって何か怖い感じがしたんだけどさぁ……アレやってるのテレビで見てボク思ったんだー。これ絶対効果あるやつだって!」

 

「……はぁーー……」

 

 俺は頭に手を当て、ため息を吐く。

 デッドリフトをやろうとする小学生なんてこいつぐらいしかいないだろ……つうかどこでやる気だったんだよデッドリフト。まさか小学生の身でジムに行く気だったのか? 正気か…? いや正気なんだろうなこいつは(確信)

 

「クソガキ、いいか? そもそも小学生っていうのはまだ体が成長途中でな? こんなバカみたいにトレーニングしたって大して効果は出ない。下手に練習量増やしたりしても…体を壊す可能性を上げるだけだ。……悪い事は言わない。このトレーニングはやめとけ」

 

「で、でもぉ……!」

 

「でもじゃない。お前だって、若い内から体壊して二度と走れない体になるなんて御免だろ?」

 

 とりあえず、俺はクソガキを全力で止める方向で話をした。

 若い頃から無茶なトレーニングをして、おかげでデビュー当初はいい結果を出してはいたが、徐々に体に無茶なトレーニングの付けが回って来て、最終的には若くして引退……なんて話はよくある事だ。それこそレースに出走するウマ娘だけに限らず、普通のスポーツ選手などにも言える話だろう。

 

「う、うぅ……ぐぬぬぬっ……!」

 

 俺の話を聞いたクソガキはというと……凄い納得のいってなさそうな顔で俺の手にあるトレーニングメニューと睨めっこしている。思わずため息が出そうになるが……それを堪え、

 

「別に、お前のトレーニングに対する意欲とかチャレンジ精神が駄目だって言ってる訳じゃあない。ただこのトレーニングは今のお前にはまだ時期尚早って……それだけの話だ」

 

 なんとか再度説得を試みた。

 

「…………」

 

「……納得いかないなら好きにすればいい。俺は三流の"元"トレーナーだし、何よりお前からすればただの不審者だ。そんなヤツの言葉に従う道理…お前にはない」

 

「…………」

 

「まぁ、やるなら精々気を付けろ」

 

 黙ってこちらの言葉を聞くトウカイテイオー。

 そんな彼女を見て「……ダメか」と説得が失敗したと結論付けた俺は手に持った紙を彼女へと返し、

 

「……ううん、わかった。このトレーニングするのはボクがもっともーっと! 強くなってからにするっ♪」

 

「……?」

 

 それを受け取った彼女の口から放たれた素直な返事に少々面食らう。やけに素直なこと言い出したぞコイツ……

 

「さっきまで納得いってなさそうだったのに……どういう風の吹き回しだ?」

 

「うーんと……なんか、上手く言えないんだけどさ」

 

 そんな俺の反応に彼女は考えながらこう言う。

 

「オジサンがボクのこと、本気で心配して言ってくれてるって何となくわかったからさ。聞いてあげてもいいかなぁーって」

 

「……そうか……」

 

 なんて反応すればいいか分からず、俺は彼女から視線を外し……水の入ったコップを手に取り、

 

「ねぇねぇオジサン」

 

「……今度はなんdーー」

 

 口に運ぼうとした直後

 

「ーーこの本のオジサンが写ってる(・・・・)ページでさ! オジサンが言ってるカンゼンチョウワ? ぱーふぇくと…はもにー?ってなんなの?」

 

「ぶふっっ!!」

 

 トウカイテイオーの見せてきた本と台詞を聞き、俺は勢いよく水を吹き出した。

 

「ゲホゲホっ…!」

 

「ちょっ!? お、オジサン大丈夫? 急にどうしたのさ!」

 

 お前のせいだわ(真顔)

 

 

 ──────────────────────

 

 このクソガキ、無自覚なのか知らんが急に妙に高等な嫌がらせしてきやがったッ……!

 

「何で、お前そんなもん持ってんだ……?」

 

 吹き出した水を拭き終わり、改めて落ち着いて水を一口飲んだ俺はトウカイテイオーの持つ雑誌を指差す。その雑誌の名は「月刊トゥインクル」。名前の通り、主にトゥインクル・シリーズに関する記事を掲載している月刊雑誌である。

 

 ……その雑誌自体は問題じゃない。問題なのはよりにもよってクソガキの手にあるソレが俺についての特集(計4ページ)が掲載された物という事だ。

 

「いやさー、ボク考えたんだ。オジサンが何であんなことしたのか全然わかんなくてさ…どうしたらオジサンを止められるのかって」

 

「……それで?」

 

「ボク、オジサンのことを少しでも知ろうって思ったんだっ!」

 

 わかるようなわからんような、返答に俺はもう一度聞いた。

 

「……最初の質問に戻るぞ。何でそれをお前が持ってんだ?」

 

「えっ、今言ったじゃん。オジサンのことをーー」

 

「ーー知りたいんだろ? 俺が聞きたいのは、お前がその雑誌を買った理由だ」

 

 俺のその質問にトウカイテイオーはこてんと首を傾げる。わかってないのか……

 

「その号はトゥインクル・シリーズのウマ娘じゃなく、トゥインクル・シリーズのウマ娘…を担当するトレーナーについての特集がメインに掲載されたものだ」

 

 内容はウマ娘じゃなく、そのトレーナーが中心なんだから当然マニアックなものだ……買う層ってのは結構絞られる。

 

 ここで問題。

 トウカイテイオーはシンボリルドルフに憧れるウマ娘です……そんな彼女が表紙も中身もトレーナーについて長々と掲載された雑誌、そんなものを買うでしょうか?

 

(俺のことを知りたくて買った? 馬鹿言え。この雑誌が出たのは今から大体一年前…シンボリルドルフが一冠をとった頃。俺が最も調子に乗っていた時期だぞ?)

 

 今から簡単にパッと手に入れられるもんじゃない。

 

「あー! そういうことっ?」

 

 そんな俺の疑問にトウカイテイオーはポンと手を叩き理解を示し、

 

「これねー。ボクがオジサンのこと知りたいなぁって言ったらパパが貸してくれたんだー!」

 

「……は?」

 

 予想外の返答に俺は固まった。

 どうしてそこで「パパ」って単語が出てくる?

 

(パパ……トウカイテイオーの父親が貸してくれた? それはつまり……)

 

「パパにね、オジサンがシンボリルドルフさんのトレーナーさんなんだよーって教えたらすっごい興奮してさ〜。ボクがオジサンを居候にしてってお願いした時もパパが真っ先に賛成してくれたんだよ!」

 

 ……なんてこった。

 

「……つまり何だ? お前の父親もルドルフのファンで…俺の事も知ってて…その雑誌を買ってたってことか……?」

 

「うんっ! あ、でもパパはシンボリルドルフさんのファンってよりかはオジサンのファンって感じだったかなぁ〜。オジサンのコメントが書いてある本読んでいっつもウンウン頷いてたし!」

 

 ファン? ルドルフのファンじゃなくて、そのトレーナーである俺のファン? ……何だそれ。

 

「とんだ物好きだな」

 

「でしょー?」

 

 トウカイテイオーに同意されながら、意外な事実を知った俺は落ち着くために水の入ったコップを手に取り

 

(俺は大丈夫…大丈夫…大丈夫)

 

「……?」

 

「オジサンオジサン。それもう空っぽだよ?」

 

 いつまで経っても喉が潤わず、不思議に思っていた俺は……トウカイテイオーの指摘を受けて確信した。

 

「オジサンじゃなくてお兄さんだ……………俺、疲れてるのかもなぁ」

 

「……え、気付くの遅くないっ!?」

 

 俺が今疲れてる理由の大半、多分お前の行動と口にした予想外の情報のせいだと思うんだが……?

 

 こんな会話をしつつ、話は最初に戻る。

 

「ーーで『完全調和』ってなんなの…って質問だったか?」

 

「そーそー! ボク、何度読んでみてもよくわかんなくてさー……カンゼンチョウワ、ぱーふぇくと…は、はもにー?」

 

「……パーフェクトハーモニー」

 

「そ、それっ! ハーモニー!」

 

 完全調和。パーフェクトハーモニー。

 かつて無駄に自信に満ち溢れ、自分を天才だと思い込み、自分は担当するウマ娘の夢の力になれる……そう根拠もなしに確信していた頃。俺が信条にしていた言葉だ。

 

「……言わないと駄目か?」

 

「…言いたくないの?」

 

「別に、説明するほど大したものじゃないからな」

 

「……オジサンを知ることにちょっとでも繋がるんだったら、ボクは聞きたい」

 

「……………」

 

 真っ直ぐこちらを見る綺麗な光の篭った瞳………俺は、それがどうにも苦手だった。

 

「……わかった。教えてやる。だが、本当に大したもんじゃないぞ?」

 

 だから、仕方なく説明することにした。

 こんなの…とんだ気の迷いだが。

 

「いいよいいよ、ボクはそんなこと気にしないし! ……逆にオジサンの口から大した話されたら困っちゃうよ♪」

 

「お前って、大概失礼だよな」

 

 トウカイテイオーもといクソガキをひと睨みし、俺は説明を始めることにした。

 

「……その前に水のおかわり、貰っていいか?」

 




?「なんてことだ……自虐系トレーナーの矢車化は止まらない、加速する……!」

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