帝王と自虐系トレーナー   作:平々凡々侍

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なに作者?
自虐野郎がどうやったら立ち直るのか
展開がさっぱり思いつかない?

作者 それは
無理矢理立ち直らせようと
するからだよ

逆に考えるんだ
「立ち直らなくてもいいさ」と
考えるんだ

作者「あっ、そっかぁ」
トウカイテイオー誕生日おめでとう!急いで書いたから今回はとんでもなく短いぜ……


カンゼンチョウワ

 

「はぁー……完全調和、パーフェクトハーモニーってのは…俺が新人トレーナーになってすぐに作って、それからずっと信条にしていた言葉だ」

 

 オジサンはコップに入った水を一口飲んで、苦々しそうな顔でそう喋り出し……ボクはすぐに首を傾げた。

 

「……シンジョー?」

 

 シンジョーってなんなんだろ……?

 

「……堅く信じている事柄。分かりやすく例えるなら…お前はルドルフが最高に強くて速くてカッコいいって思ってるだろ?」

 

「当たり前じゃんっ!!」

 

「なら、それがお前の信条ってやつだ……まぁ詳しい意味はちょっと違うが

 

「あっ、なるほど〜!」

 

 シンジョーの意味がわかってボクはポンと手を打って、それを見てから「続けるぞ?」とオジサンは話を再開しようとし、

 

「この信条について説明する前に少し俺自身の話もする必要がある……間違いなくつまらん話だが、いいか……?」

 

 そんなことをまた言ってくる。

 ボクはちょっぴりむっとした。

 

「もー。オジサン。ボクさっきも言ったじゃん! 気にしないってさ! 早く教えてよっ」

 

「……あぁ、そうだったな」

 

 ボクの言葉に頷いたオジサンは口を開いてーー淡々と「完全調和」という信条について話し始めた。

 

 

 まるで他人事みたいに。

 

 

「これは俺がまだ自分自身を『天才』だと思い込み、挙句に自分は担当するウマ娘の夢の手助けができている……力になれていると本気で勘違いしていた頃の話だがーー」

 

 

「ーー俺はウマ娘とそのトレーナー間で、最も大事なのは対等な信頼関係だと思っていた。互いに助け合い、支え合い、笑い合い、共に一つの目標へ向かって進んでいく……それこそが理想だと」

 

 

「そんな考えから生まれた信条…それが完全調和、パーフェクトハーモニーだ」

 

 

「ウマ娘とトレーナーが互いの能力を理解し合うことで、トレーナーはそのウマ娘に最適なトレーニングやスケジュールを組むことができ、ウマ娘はそれを心から信用することができる……そんな理想の関係を築きトレーニングとレースに臨む」

 

 

「そうして効率的に、効果的に、担当するウマ娘の目標(ゆめ)の達成をサポートする。以上が完全調和、パーフェクトハーモニーの説明だ……」

 

 

「まぁ、こんなのは何もかも()だったんだがな」

 

 

 そう言ってオジサンは力無く笑った。

 

 

 ──────────────────────

 

「これで、話は以上だ」

 

 話を終えたオジサンは「もう喋ることはない」とばかりにボクから視線を外して、開いていた雑誌をパタンと閉じてテーブルの上に置く。

 

「幻って…オジサンはカンゼンチョウワ、信じてたんじゃないの? それがオジサンのシンジョーだったんでしょ?」

 

「………はぁ」

 

 ボクがそう聞くと、オジサンは何も言わずに水を一口飲んで息を吐き、

 

「……あぁ、信じてた。前までは」

 

 聞いていて「苦しそう」に感じる……そんな声を漏らす。

 

「前まではって……もう、信じてないの?」

 

「……まぁな」

 

 オジサンは憂いを帯びた顔を浮かべる。ボクはもっとオジサンの事が知りたかった。知りたかったからシンジョーについて聞いたんだ……オジサンにそんな顔させたかった訳じゃ……

 

 ボクは悩んだ。

 これ以上聞いていいのか?って。

 

「……なんで?」

 

 それで悩んで悩んで悩み抜いて……ボクはもう一歩オジサンに踏み込むことに決めた。

 

「………本当、遠慮がないなお前」

 

 オジサンは一瞬驚いた顔をして……苦笑した後、答えてくれた。

 

「そもそも、俺にはウマ娘と『完全調和』するだけの能力なんざ無かった……。そんな初歩的な事に随分時間が経ってから気付いたんだ……それに『完全調和』なんて必要ないって事実にもな」

 

「どうやって、気付いたの?」

 

「……ある日、とても優秀なウマ娘のトレーナーになってな。彼女のおかげだ」

 

 彼女のおかげで俺は俺の身の程を痛感し、この事実に気付く事ができた……と言うオジサン。

 

 とても優秀なウマ娘。

 それが誰を指しているのか、ボクにはすぐに分かった。

 

「……そっか。オジサン、なくしちゃったんだね」

 

 詳しいことはわかんないけど、オジサンがシンジョーを……強く信じていたものをなくしちゃったって事はボクにもわかった。

 

「ーーあぁ、俺にはもう……パーフェクトもハーモニーもないんだよ」

 

 オジサンはボクの声に頷いて、寂しげに微笑んだ。

 

 

 

「……………」

 

 オジサンを見る。

 オジサンは濁ったような目で、水の入ったコップに目を落としていた。今、オジサンが一体何を考えているのはさっぱり分からない。でも、

 

(わかりたいなぁ……)

 

 そう心の底から思った。

 

「ねぇねぇオジサン」

 

「……なんだ」

 

 だから、ボクは気付いたらオジサンに言っていた。

 

 

ボクのトレーナーになってくれない?

 

 

 

 

 

 ……そして、長い長い沈黙の末。

 

 

「やだ」

 

 

 返ってきたのは思ったよりもハッキリした拒絶だった。

 

 

「! な、なんでえっ!? ボク、未来の三冠ウマ娘なんだよー! それも無敵のっ!!」

 

「……逆になんで今の流れで行けると思ったんだ。というか、そもそもまだ小学生だろお前」

 




※以下『月刊トゥインクル○月号』インタビューから一部抜粋(ネタ)

──早速"皇帝"シンボリルドルフの担当である〇〇トレーナーの経歴と実績などなどについてお聞きしていきたいと思います。よろしくお願いします!
はい、よろしくお願いします。まぁ大した経歴も実績もないと思いますが。

──謙虚ですね(笑)それでは最初に〇〇トレーナーは若くしてトレセン学園でのトレーナー試験に合格してすぐ、サブトレーナーとしての業務をこなしていたようですが……その理由は?
そう大層な理由ではないんですが……トレーナー試験に合格した当初の私には教科書などから学習できる最大限度の知識がありました。ですが、逆にいうとそれだけしかなかったんです。

──と、言いますと?
当初の私にはウマ娘のトレーナーとして、経験とウマ娘に関しての知見が致命的に足りていなかったんです。試験に合格したばかりの新人ですから当然といえば当然なんですが。

──つまりトレーナーとしての経験とウマ娘に関する知見を得るためにサブトレーナーの業務を?
はい。サブトレーナーの業務としてウマ娘を担当するトレーナーさんの補佐がメインで、その際にその方の担当するウマ娘と接する機会も多々あって……トレーナーとしての経験を積むにはいい環境でしたね。

──素晴らしいですっ!! こちらで調べた所、サブトレーナー業に務めていた期間は2年間なんですね。
え、えぇ、その通りです。2年間サブトレーナーとして務めさせてもらいました。……記者さんってそんなこともわかるんですね。



──それから、サブトレーナーとして2年の経験を積んで本格的にトレーナー業を始めましたが……まず初めて担当したウマ娘が「皐月賞」「菊花賞」を制し、見事二冠を達成しましたね。その時のお気持ちはどうでしたか?
勿論嬉しかったです。自分がトレーナーとして初めて担当したウマ娘だったという事もあって思い入れも強かったですから……でも、少し不完全燃焼な部分はありましたね。

──不完全燃焼?
はい。当時担当していた彼女の目標は「三冠達成」で、私はその為にトレーニングメニューを組んだんですが……それが彼女には少し厳しいものでして……

──誤ったトレーニングメニューを組んでしまった、と?
そうですね。当時の私は分析が甘く、トレーニングメニューとレーススケジュール…両方とも完璧には程遠いものだったんです。「効率的で効果的」ばかりに拘って。もしあの時、私がもっと最適なメニューを組めていれば彼女は三冠をとれていたんじゃ……なんてたらればを今になっても偶に考えてしまいますね。

──〇〇トレーナーは本当に真面目な人なんですね。
真面目ですか? 自分としてはトレーナーとして当たり前の事をしているつもりなのですが。

──その当たり前の事ができるのが〇〇トレーナーが優秀なトレーナーだという証左なんだと思います。
え、あ、ありがとうございます……?

──トレーナーとして、何かコツや信条などはありますか?
はい、信条はありますね。

──ではズバリ、その信条とは?
完全調和、パーフェクトハーモニーです。

──パーフェクトハーモニー…ですか?
えぇ、私の信条で…意味はそのままですね。私はトレーナーとして最も大切な事は担当するウマ娘との信頼関係…つまり完全調和だと考えています。トレーナーとウマ娘は互いに互いの力を理解し合い、信用し合う……それこそが理想の関係だと。


──では次に、今の話になりますが……担当のウマ娘、"皇帝"シンボリルドルフが「皐月賞」を制し一冠を達成しましたね! おめでとうございます!
はい、ありがとうございます。

──〇〇トレーナーから見て、シンボリルドルフはどうでしょうか?
どう? ……そうですね。こうはっきり言うと誤解されそうなのですが、やはりトゥインクル・シリーズに出走するウマ娘の平均的な実力と比べて、シンボリルドルフのレベルは段違いに感じますね。

──確かにあの走りは凄まじいですよね……ファンの中には彼女の走りを「絶対の走り」と評価する方も多くいますが、それについてはどう思われますか?
まぁ…はい。その通りだな、と思ってます……

──では最後に、何か意気込みの一言お願いします!
……そうですね。今後も当然「クラシック三冠」を目指して頑張っていきたいと思いますので、皆さん是非シンボリルドルフの応援のほど宜しくお願いします。


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