仮面ライダー ISが消えた世界   作:赤バンブル

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ウツボ男、本編に出られず。


怪奇 蜘蛛男 後編

『この愚か者!何故、奴らの死体を確認せずに戻ってきた!!』

 

基地に戻った蜘蛛男たちを待っていたのは、首領の怒りの言葉だった。

 

何故、このようなことになったのかというと少し前に捜査を任せようとしたウツボ男が海岸に変わり果てた姿で打ち上げられていたのだ。付近をパトロールしていた戦闘員たちは、驚きながらも目撃者がいないことを確認し、速やかに回収したことで存在が公になることはなかったが、損傷具合を確認すると海中で何者かに腹部を貫通されたことが致命傷になったらしい。

 

基地に戻るなり罵声を浴びせられた蜘蛛男は動揺を隠しきれない中、科学班がデータディスクを持ってきたことで状況が一変した。

 

「ウツボ男の脳に埋め込んでおいた記録メモリーのコピーが完了しました。」

 

『よし、すぐに再生させろ!』

 

科学班は早速、基地の投影システムにディスクを挿入して映像の再生を開始する。映像では海中が映されており、ウツボ男が任務通り海中を動いていたことがわかる。

 

しばらく水中を泳いでいる様子が映り、途中で何かが飛び込んだのが写る。

 

<なんだ?>

 

水中でのウツボ男の声が聞こえ、気になったポイントへと泳いでいく。そこには落ちてきた衝撃でサンゴ礁に痛々しい跡が残されいたが何もなかった。

 

<落石ではないな。一体何が・・・・・ングッ!?>

 

そこへ何者か分からない謎の腕がウツボ男を押さえる。突然の出来事にウツボ男は必死になって振り解き、反転して相手の姿を確認した瞬間、そこには赤い複眼のような目を光らせた深緑のマスクに、首には赤いマフラーを巻いた男が拳を握りしめていた。そして、振り下ろされた拳はウツボ男の体を容易く貫通してしまった。

 

<ゲッ!?>

 

そこで映像は途絶える。

 

周囲は、呆然としていたが体の特徴は海に落ちた織斑一夏と一致している。彼は海に落ちる瞬間、ベルトに風力を与えられたことによって改造人間としての本領を発揮し、偵察を行っていたウツボ男を始末していたのだ。

 

「・・・・ウ、ウウヌ。奴め、生きていたのか!!」

 

エネルギーが蓄積していないことから死亡したと判断していた蜘蛛男は生きていた一夏の姿を見て苛立ちを募らせる。

 

『蜘蛛男よ。織斑一夏が生きていた以上、篠ノ之束が生きていることも確固たる事実となった。あの二人を野放しにすれば我々ショッカーの日本侵攻計画も勿論、世界各支部に大きな支障をきたす危険性がある。一刻も早く始末するのだ。』

 

「ウゥウ・・・・しかし、奴の肉親は改造ナノマシンの試作品の実験で処分済み。誘き出すことは不可能かと。」

 

『いや、一人だけいる。織斑一夏の保護者であり、奴の伯父である立花藤兵衛だ。篠ノ之束は幼少期、妹と共にこの男に可愛がられていた。囮にするのなら奴がいいだろう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・あれからもう一週間か。」

 

その頃、藤兵衛もまた一夏の安否を気にしていたころだった。アミーゴの中では、普段手伝ってくれる一夏の代わりに蘭が後片付けをしてくれていた。

 

「立花さん、後片付け終わったよ。」

 

「・・・・・」

 

「立花さん?」

 

「ん?あ、あぁ・・・すまんね。実家のお店の方も忙しいっていうのに手伝ってもらっちゃって。」

 

藤兵衛は、パイプを灰皿の上に置くと机から封筒を取り出して蘭に手渡した。

 

「これ少ないけど小遣いの足しにしてくれ。」

 

「嫌ね。私、別にアルバイトに来たわけじゃないんだからいいのに。」

 

「いやいや、タダ働きなんかさせたら俺が厳さんに怒られてしまうよ。あの人には未だに頭が上がらんからなぁ。」

 

「そこは気にしなくていいですよ。それに私、こういう喫茶店で働くの好きですから。」

 

「ハッハハハ、そう言ってくれるとうれしいね。まあ、気持ちだから受け取りなさい。」

 

藤兵衛は、久しぶりに顔に笑みを浮かべた。一夏が行方不明になってから元気がなかったこともあり、その様子を見て蘭は少し安心した。

 

「じゃあ、私はこれで帰りますね。でも、夜の方はいいんですか?」

 

「いいよいいよ。どうせ、しばらくスナックは休業にするからな。気を付けて帰りなさい。」

 

「はぁ~い。じゃ、また明日。」

 

蘭は、手を振ると店の外へと出て行った。

 

 

 

 

 

その様子を物陰から戦闘員たちが窺っていた。

 

「立花藤兵衛が一人になりました。」

 

『よし、確実に捕らえて連れてこい。』

 

アミーゴの店の前に複数の戦闘員たちが集まってくる。

 

そんなことも知らずに藤兵衛は店じまいをし、夕飯の支度をする前にもう一服しようと店の喫煙室へと入る。

 

「ん?」

 

部屋に入るなり、藤兵衛は目を丸くする。

 

そこに流れるような銀髪に白と青のゴスロリ系ドレスといった格好の女性が目を閉じてソファーに座っていた。

しかし、店を閉める前に客は全員帰ったことは確認したはずなのでここに座っているのは明らかにおかしい。トイレにでも入っていたのだろうか。

 

「お店は、もうお終いだよ。悪いが帰ってもらえんかい?」

 

不審に感じながらも藤兵衛は飽くまで客として女性に話しかける。すると女性は、目を開けずにソファーから立ち上がって藤兵衛の前にまで来た。

 

「・・・・立花藤兵衛さん、私と一緒に来ていただけませんか?」

 

「どうして、俺の名前を?」

 

女性が自分の名前を知っていることに藤兵衛は驚く。この女性とは特に面識があるわけではない。常連でもないのになぜ自分の名前を知っているのだろうか。

 

「織斑一夏さんが待っています。」

 

「一夏!?アンタ、一夏がどこにいるのか知っているのか!?」

 

一夏の名前が出てくるなり藤兵衛は、女性に詰め寄る。

 

「はい、彼も貴方に会いたがっています。」

 

「そうか・・・・生きているんだな?一夏は無事なんだな!こうしちゃおれん!」

 

藤兵衛は、急いで出かける準備をするために喫煙室を出ようとする。

 

「ちょっと待ってください。」

 

その寸前で女性は人間業とは思えない速さでドアに先回りをした。

 

「何をするんだ?」

 

「この先はすでに敵にマークされています。飛び出していくのは自殺行為です。」

 

「自殺?ここは俺の店だぞ!?」

 

「いいから私の言う通りにしてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、ショッカーは静かになったアミーゴの中へと侵入し、藤兵衛を捕らえようと動き始める。

 

「いたか?」

 

「居住スペースにはいない。」

 

「こっちもだ。」

 

「後は、この喫煙室だけだ。」

 

戦闘員たちは、鍵がかかっているのを確認するとドアを蹴り飛ばして中へと乗り込んでいった。

 

喫煙室も藻抜けの殻になっていた。

 

「いない!?奴は一体どこへ行った!?」

 

驚きながらも外へ続く窓を除くと一台の車が走り去ろうとしているのが見えた。

 

「あの車だ!」

 

「追え!追え!」

 

戦闘員たちは急いでアミーゴの外へ出て車で追跡を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、一夏と束は立ち入り禁止されている廃ホテルの一室で身を潜めていた。

束が小型タブレットで体を解析している隣で一夏は、一枚の写真を見ながら複雑な表情を浮かべていた。写真は、幼少期の自分と姉が写っているものでいつも肌身離さず持ち続けていたものだ。

 

「・・・・俺と千冬姉は、ショッカーの計画で作り出された人造人間・・・・・束さん、これは本当のことなのか?」

 

「・・・・・」

 

「8年前、俺が誘拐された日を境に千冬姉は姿を消した。そして、貴方も自殺を偽った。これもショッカーに関連しているのか?」

 

「・・・・・」

 

「束さん、この際だから隠さずに教えてくれ。ショッカーとは一体何なんだ?何故、俺と千冬姉を作って今まで放置してきたんだ?それに自分で作り出したISを壊してまで何故自殺を演じなければならなかったんだ?答えてくれ!!」

 

無言で端末を操作する束に対し、一夏は思わず苛立ってくるがこの期に及んで騒いでも意味がないと考え直し、気分転換に水を少し飲もうと部屋に置いてあるガラスのコップを手に取る。

 

 

ガシャン

 

 

「あっ。」

 

いつもの感覚で手に取ろうとした瞬間、コップは簡単に割れてしまった。一夏は、慌てて掌に刺さったガラス片を取ろうとするが出血が数秒もしないうちに収まり、軽く払うとガラス片は綺麗に床に落ちて傷は最初からなかったかのように消えていた。

 

「傷が一瞬にして治っている。」

 

一夏は、掌を見ながら険しい表情をする。

 

「昔、子供の頃から俺は転んだり、切ったりしても次の日になれば何事もなかったかのように傷がすぐに治っていた。千冬姉に数日は絆創膏を付けたままにしておけと言われていたから変だと思っていたが・・・・弾や鈴と遊ぶようになってから自分の傷の治りの早さが普通ではないことを理解した。千冬姉は、最初から俺たちがショッカーに作られた存在だとわかってあんなことを言っていたのか?」

 

一夏が困惑しているところで束は端末の操作を終え、ようやく口を開く。

 

「・・・・私がちーちゃんの秘密を知ったのは中学の時。神社の倉庫を改修して趣味に没頭していたところで不意に打ち明けられたんだ。自分といっくんは、作られた存在なんだって。」

 

その言葉を聞いて一夏は、やはりと思った。

 

「何故、ショッカーは俺たちを作ったんだ?」

 

「改造人間に最適な素体を作るためだよ。ショッカーは、長い歴史の中で人間の体に動植物の能力を付加する技術を確立させた。でも、この技術にはいくつかの欠点があって、その一つが適性のある人間でなければ改造に耐えられないの。更に適性があっても自分たちの求める優秀さがなければいけなかったんだ。そこで計画されたのが『最高の素体』を量産する計画『プロジェクト・モザイカ』、またの名を『織斑計画』。ちーちゃんはその計画の中で1000番目にしてようやくショッカーが求めていた適性をクリアした成功体。そして、そのちーちゃんから取れたデータを基により改造人間への手術を最適化できるように調整されたのがいっくんなんだよ。」

 

「・・・・」

 

「でもね、ちーちゃん以前の素体の大半は求めていた基準に満たなかったとして処分されていたんだ。計画を主導していた生物学の権威である緑川弘博士は、そのおぞましい光景に耐えられなくなった。博士は、ちーちゃんと生まれたばかりのいっくんを知り合いの所へ密かに送り、実験のトラブルで死亡したことにしたんだ。でも、その知り合いもちーちゃんのことを不気味に思って仕送りだけして逃げたんだ。いっくんが両親のことを何も知らないのもそのせいだよ。」

 

「それ故のあの言葉か。けど、計画は続行されなかったのか?」

 

「破棄されたんだよ。戦闘要員のクローン精製技術の確立と改造手術の改良で死亡リスクが激減したんだ。だから、戦闘員は基本的に志願者を除けば量産すればいいし、手術に関してもどのみち脳改造をすれば一から教育する必要もない。」

 

「そうか・・・・それでその俺と千冬姉を作った緑川博士は?」

 

「用済みとして処分されたみたいだよ。裏切るものは『死』あるのみだからね。でも、ドイツでは小規模ながら軍で密かに流れを汲んだ計画が続行されたんだ。それがドイツの『遺伝子強化体計画』。」

 

「つまり、あの時の混乱はショッカーの存在を公にしようとして演じたのか?」

 

「流石いっくん、話が早い!まあ、真実を知らされていないドイツ軍は機密事項の処分ぐらいで済んじゃったんだけどね。作られた人たちは今も無事みたいだし。」

 

束は、そう言うとコンビニの袋から缶コーヒーを取り出して飲む。その直後、端末が鳴り出す。

 

「およ?クーちゃんからだ。はい、もしもし。」

 

『束様、申し訳ございません。立花さんを護送中にショッカーに追跡されました。現在包囲されて、攻撃を受けています!』

 

「何っ!?おやっさんも!?」

 

『何とか今は走行していますが状態からしてそう長く持ちません。至急・・・・ブツッ!』

 

「クーちゃん?クーちゃん!?」

 

通信が切れたところで束は動揺する。一夏は、すぐにホテルから出ようとした。

 

「待っていっくん!」

 

「おやっさんがピンチなんだ!行かないと!」

 

「でも・・・・」

 

「おやっさんは、俺のことを本当の息子のように接してくれた大事な家族なんだ!」

 

一夏は、束の制止を振り切って外に待機させてあるバイクに乗る。

 

 

 

バイクが走り始めるとハンドルを回す。するとバイクの外装が変化し、白い外装を纏ったマシンへと変わる。

 

同時に腰部にベルトが出現、風圧が当たることで風車が高速で回転し、一夏の姿は徐々にバッタを模した濃紺のマスクに黒いボディ、そして首から赤いマフラーを靡かせる戦士へと姿を変える。

 

「おやっさん、無事でいてくれ!」

 

一夏は、赤い目を発光させながらマシンの速度を上げていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小さいダムの近辺にある道路で一台の車が爆発で反転して勢いよく滑る。ガードレールに衝突すると割れた窓ガラスから女性と藤兵衛が這いずるように出てきた。

 

「お怪我はありませんか?」

 

「あぁ、なんとか。」

 

二人が車から出てくると既に目の前には戦闘員を引きつれた蜘蛛男が待ち構えていた。

 

「もう、逃げられんぞぉ・・・」

 

戦闘員たちは、どこからともなくロッドを取り出して二人との距離を詰めていく。女性は藤兵衛の前に立つと庇うように構えをとった。

 

「藤兵衛さん、間もなく一夏さんが迎えに来ると思います。貴方だけでも逃げる準備を。」

 

「何を言っとるんだ!?年の若い娘一人残して逃げる男がいるものか!」

 

藤兵衛は、そう言いながらボクサーのような構えをとるが圧倒的に不利なことには変わりない。しかし、女性には秘策があった。

 

「目を閉じてください。」

 

「えっ?」

 

藤兵衛は言われるままに目を閉じる。すると女性はこれまで閉じていた目を戦闘員たちに向けて開いた。その目は両方とも眼球は黒で金色の瞳をしていた。

 

「グエッ!?」

 

「ギャッ!!」

 

「イーッ!!」

 

「ヤーッ!!」

 

彼女が手を翳すと同時に戦闘員たちは何もされていないにも関わらず、飛び跳ねたり気絶するような素振りを見せ始める。目を閉じた藤兵衛は一体何が起こっているのかわからなかったが女性は様子を見ながら彼の手を取り、フワッと地上から浮いて逃げようとした。

 

「ウゥウ!!」

 

「うっ!」

 

ところが蜘蛛男の糸に首を絞められ、二人は地上に落下する。倒れていた戦闘員たちは、まるで夢から目を覚ましたように起き上がり、蜘蛛男は女性を自分の目の前にまで引っ張り上げ、その目を見た。

 

「くうぅ・・・・」

 

「その目、ドイツで作られた『ヴォーダン・オージェ』の試作品か。それにあの能力・・・・そうか、生体同期型のISを身に着けていたな?道理で戦闘員たちが急に倒れこんだわけだ。」

 

「お嬢さん!」

 

藤兵衛は、女性を助けようとするが戦闘員たちに捕らえられ、地面に押し付けられる。

 

「立花藤兵衛、我々と一緒に来てもらうぞ。篠ノ之束を誘き寄せるためにな。」

 

「束!?何を言ってるんだ!あいつはもう・・・・・」

 

「待てぃ!!」

 

そこへ一台のマシンが突っ込み、藤兵衛を拘束していた戦闘員たちを吹き飛ばす。藤兵衛は何事かとマシンが走った方を見るとそこには仮面の戦士の姿と化した一夏の姿があった。

 

「ようやく来たか、織斑一夏。」

 

「一夏!?あいつが!?」

 

藤兵衛は、一夏の姿に驚く。一夏はマシンを降りると藤兵衛の前にやってくる。

 

「お前たちの狙いは俺のはずだ。二人を開放しろ!」

 

「ウゥウ、その必要はない。貴様もここで死ぬのだからな!」

 

戦闘員たちは起き上がると一夏の所へと向かってくる。

 

「おやっさん、早くここから離れるんだ!」

 

「い、一夏・・・・」

 

藤兵衛が何かを言いかけるのと同時に戦闘員たちは、一斉に一夏にとびかかる。

一夏は、しゃがんで最初の攻撃を回避するとジャンプをして戦闘員を藤兵衛から引き離す。後を追ってきた戦闘員たちは、ロッドで攻撃をするが元から身体能力が高かったのに加えて改造されたことで更に身体能力が向上した一夏にはあまり役に立たず、逆に奪い取られて叩きのめされた。戦闘員たちは登っていた階段から次々と落され、次第に数を減らされていく。

 

「・・・・」

 

蜘蛛男は、物陰から不意打ちで一夏に毒針を飛ばそうとする。一夏は、戦闘員たちを相手にしているため、気づいていない。

 

「フン!」

 

「ムウッ!?」

 

ところが拘束されていた女性が不意に動いたことにより照準がズレ、近くの赤戦闘員の首に命中してしまう、赤戦闘員は苦痛の表情を浮かべるとその場で倒れ、体が泡になって溶けてしまった。蜘蛛男は、女性を殺そうとするが彼女の動きもまた素早く、一夏の元へと逃げて行ってしまった。

 

「後はお前だけだ!」

 

「ムウウウ!!」

 

蜘蛛男は一旦体勢を立て直すべく、口から糸を吐いてダムの上へと逃げていく。一夏は勢いよく飛びあがり、追いつくと待ち構えていた蜘蛛男の攻撃を受け止め、彼の腹部に連続でパンチを喰らわせる。たまらんとばかりに糸のネットで再び拘束しようと試みるが簡単に避けられ、顔面に蹴りを入れられただけではなく、背負い投げでアスファルトの上に叩きつけられた。流石の蜘蛛男も体に響いたのかヨロヨロと起き上がろうとする。

 

「グゥウウ・・・・」

 

だが、ここで逃がすほど一夏は甘くない。彼は蜘蛛男を掴むとジャンプして再び地面に叩きつけ、その勢いのまま空中で一回転してキックを繰り出した。

 

「トウ!!」

 

「グオォアアアア!!」

 

蜘蛛男は、キックをまともに受けて吹き飛ばされそのまま倒れる。

 

「・・・・」

 

「う、うぉお・・・・・」

 

蜘蛛男は、一夏を見ながら何か悔しそうな仕草をとったもののすぐに力尽き、その体は泡と化して溶けてしまった。

 

「・・・・・・これがショッカーに魂を売った者の末路か。もし、緑川博士が俺と千冬姉を逃がしてくれなかったら俺もこうなっていたのかもしれない。」

 

泡が完全に消え、そこには何も残らなかった。

 

一夏は、元の人間の姿に戻るとダムの上から貯水地を眺める。

 

「・・・千冬姉、もしかしてアンタも俺の知らないうちショッカーの一員になってしまったのか?もし、千冬姉が俺の敵として現れた時、俺は・・・・・」

 

「一夏~!!」

 

一人考え事をしようとした直後、離れたところから聞こえる声に思考を中断する。声のした方を見ると藤兵衛たちが戦闘員の乗っていたものを拝借したのか、車に乗ってやって来た。藤兵衛は車を降りるなり一夏の元へと駆けていく。

 

「おやっさん。」

 

「無事なんだな!お前に万が一のことが起こったらどうしようかと心配していたんだぞ。」

 

藤兵衛は、一夏の顔を見ながらホッとしたような顔をする。一夏は、先ほど変身した姿を見られて抵抗感を持たれてしまったのかと心中不安になっていた。

 

「おやっさん、俺・・・・・」

 

「何も言うな。あの姿になったことは何も気にしていない。変わってもお前はお前のままなんだからな。」

 

「・・・・・」

 

拒絶されるのではという不安から解放されたのか一夏は、思わず泣きそうになった。藤兵衛は、そんな彼の肩を軽く叩く。

 

「さっ、店に帰ろう。さっきの変な連中のせいで店の中が荒らされちゃっただろうからな。ゆっくり、現実と向き合いながら進もう。」

 

「・・・はい。」

 

そう言うと二人は、車の方へと歩いて行こうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、ちょっと!待った待った!!勝手に帰らないで!?」

 

「「!?」」

 

そんな二人の前に、束が慌ただしく乱入してきた。

 

「束さん!?」

 

「た、束!?」

 

一夏はすっかり忘れてて、藤兵衛は死んだとばかり思っていた姪の登場に驚く。束は、疲れたのか深いため息をしながら二人の方へ歩み寄ってくる。

 

「あのさ、いっくん~~~~私のこと途中で忘れないでよ~。さっき私のこと完全に忘れてたでしょ!?」

 

「す、すみません・・・・」

 

「クーちゃんが伯父さん迎えに迎えに行ったところで助けてくれたのはいいよ?でもね、勝手に帰ろうとしないで。これから重要な・・・」

 

「束!!」

 

「ひっ!?」

 

話の最中の藤兵衛の怒声に束は、飛び上がる。藤兵衛の顔を見ると明らかに怒っているようだった。

 

「お、伯父さん・・・・」

 

「お前・・・・・今まで何をしておったんだ!柳韻君やお母さん、箒をほったらかしにしておいて。テレビで頭を銃で撃ち抜いた映像を見せられた時は・・・・」

 

藤兵衛は、ドシドシと束の目の前に来る。久しぶりの伯父を相手に束はビビりっぱなしだったが彼女の肩に手を置くや藤兵衛は一変して涙を流しながら抱き寄せてきた。

 

「全く・・・・心配かけさせるんじゃないぞ!あんなもん見せられた時の俺と言ったら・・・・よかった、よかった・・・・」

 

「お、伯父さん・・・色々ごめんなさい・・・・」

 

伯父との再会のためか束は、珍しく謝罪の言葉を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界征服を企む悪の組織「ショッカー」とその身を犠牲にして戦う宿命を背負わされた織斑一夏。

 

自分たち姉弟の出生を知った一夏だが、未だに千冬の行方は分からないままだった。

 

彼女と再会できる日は訪れるのか?

 

そして、平穏な日はいつ訪れるのであろうか?

 

一夏の戦いは始まったばかりなのだ。

 

 




とりあえずパイロット版としての内容はここまで。

ライダーキックと言わせたかったけど確か原作も言っていなかったはずなのでやめときました。
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