魔王倒して元の世界に戻ろうと思ったら、歪な男女比の世界に転移してしまった件   作:羽根消しゴム

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魔王再臨

「ふん!!」

「てやぁ!」

「ふんぶるむっしゃーい!!!」

 

(あー、眼福だ)

目の前の桃源郷(揺れる胸達)に鼻血が垂れそうになるのを堪えながら、記録を記入していく。

 

途中で乱入した西宮 蓮花(変態魔神)さんのせいで、女子高生達の集中力が切れてしまったため、パンチングマシーン等を用いて、1ヶ月前からどれほど成長したか調べるらしい。因みに、変態魔神(西宮 蓮花)さんは挨拶だけして帰った。

何がしたかったんだろうか?

 

それと、記録の記入用紙だが、1ヶ月前は結月先生が記入していたらしいが、今回からは勿論俺がすることになった。

 

今はちょうどパンチングマシーンの計測に入っている。

 

可愛らしい掛け声を挙げる一番最初の子の声にニヤニヤしながら記録を記入していく。

何々?一番最初の子から615キロ、518キロ、828キロ───ん?んん?

 

み、見間違いか?

 

桁が1つくらい違う気がするが・・・あ、あぁもしかして、元の世界とはパンチングマシーンの造りが違うのかもしれない。

うん、きっとそうだ。

 

じゃないと俺達男性陣の居場所がないからな、うん。

そう無理矢理考えて、現実から逃避する。

だってあの細腕からボクサーも真っ青なパンチ力が出てると考えたら、俺もう無事に(貞操的な意味で)帰れる気がしないんだが。

 

抑え込まれたらそのまま雌堕ち、「らめぇ~!」からのジ・エンドだろう。

女装していてなんだが、まだ男としての尊厳はあるつもりだ。だからそんなバッドエンドを迎えたくはない。

 

絶対に男してバレないようにしなくては・・・。

 

「ねぇねぇ水無月さん」

 

「・・・ん?え、あ、はい!」

 

ボーッとしつつも記録を記入して早十分。

乙女の細腕から放たれる強烈な拳の一撃を目にし、恐らく後一週間は並大抵の事では動揺しないだろうと知覚した時、一番最初にパンチングマシーンの記録を計測していた子───えぇと、赤嶺(あかみね) (そら)さんから話し掛けられた。

 

「私達の記録も計測し終えちゃったからさ、良かったら水無月さんもどう?」

 

・・・ん、デートのお誘いということか?ふっ、赤嶺さんみたいな可愛らしい人からのお誘いは嬉しいが、俺は可愛さで判断しない男なんだ。

───な、なに!?なんだその胸は!?くっ、だが俺は胸の大きさで判断するようなおっぱい星人ではない!

 

残念だったな・・・。

 

「勿論お願いしますっ!!!」

 

───ごめんなさい、抗えませんでした。

即堕ち二コマとはこのことを言うんだな、と勉強になった。

 

「お!じゃあやろっか!」

 

・・・ヤ、ヤる?

そ、そんな・・・まだ早い気が。

 

「心の準備もまだだからもう少し待って・・・」

 

「ん?あ、あぁ、もしかしてパンチングマシーン初めてだった?」

 

「パンチングマシーン?・・・あ、あぁうん、少し緊張してただけだから大丈夫だよ」

 

「そ、そう?ならいいんだけど」

 

デートのお誘いではなかったのか・・・しかもパンチングマシーン・・・凄まじくやる気がおちた。

まぁ、超能力戦闘訓練学校なんだから、マネージャー専門とは言え、編入生である俺の実力を知り合いのだろう。

 

ここで俺に残された選択肢は三つ。

一つは実力を示し、俺TUEEEEすること。

二つ目は実力を隠し、ほどほどに抑えること。

三つ目は断ること。

 

ん?三つの内何を選ぶかって?

ふっ、俺TUEEEEに決まっているだろう!

 

全国の男子達よ、俺に任せてくれ。実戦を知らない小娘達に、男子の強さと恐ろしさを“分からせて”やろう・・・。

 

 

───────数分後

 

 

「ひぐっ、ぐすっ・・・」

 

最悪だ。男子の強さと恐ろしさを分からせてやるつもりが───“分からされた”。

 

あの世界で鍛え抜かれた技と力をフルで使い、パンチングマシーンに俺の全てを叩きつけたのだが・・・出たのはたった512キロ。

 

女子高生達の最低点数である518キロよりも6キロも低いのだ。しかもその子は超能力専門であり、打撃に重きをおいている訳ではないのだとか。

───おかしい。

ここでしっかりと俺TUEEEEしていく筈が、いつの間にか俺YOEEEEムーブをかましてしまった。

 

情けない。酷く情けない。

すべての男子達の希望を宿った拳を振るった(自称)がゆえに、力の及ばなさに涙がつい溢れる。

 

「あーあ、空が泣ーかした」

 

「んぇ!?あ、その・・・マネージャー専門だから、し、仕方ないと思うよ?」

 

「・・・」

 

「あ、トドメさした」

 

・・・俺、ファイトスタイル拳なんだよなぁ。剣も使うけど、殆どは拳なんだよなぁ・・・それなのに負けたんだよなぁ。

 

───ま、まぁいいし。

魔力が全回復すればもっと強くなるし。

だから今は能ある鷹は爪を隠す状態で、時が来たら俺TUEEEEを執行しよう。

 

け、決して俺が弱いわけじゃないからな?

 

 

──

───

 

主人公の妹(水無月(みなづき) 紅葉(くれは)

 

「お兄ちゃん・・・」

 

仏壇に手を合わせて、兄の遺影に呼び掛ける。兄が居なくなって、もう三年が経つ。

 

コンビニに行ったきり帰って来なくなった兄は、行方不明という扱いで捜索願いを出した。

勿論、警察の人達は一生懸命兄の行方を探す手懸かりを見つけ出そうとしていたけど、兄がコンビニから出るところを撮った室内カメラ以外に、兄の行方を知らせる手懸かりは見つからなかった。

 

結果、死亡と断定された。

 

勿論、兄の友達である萌香(もか)さんは涙を流して泣いていたし、兄のクラスメートの皆さんも、各々悲しみに暮れていた。

勿論母と父、そして私もその例に漏れない。

 

兄は愛される人だった。

何時だって笑顔だったし、優しかった。悩み事は人一倍真剣に聞いてくれて、いじめみたいな事は毛嫌いしていた。

 

そんな、とても優しい良い兄だった。

 

でも───でも、私は兄とは喧嘩別れをしてしまっている。

皆は死んだと諦めているが、私はそうは思わない。

いや、思いたくない。

 

じゃないと最後に兄に謝れないからだ。

 

喧嘩の理由は些細なこと。最近友達付き合いが多くなった私は、家に帰る時間が遅くなることが多くなった。

それで心配した兄が私を叱ったのだが、当時の私は深く聞き入れなかった。

 

兄がコンビニに買いに行ったのは、私と仲直りをするつもりだったと私は知っている。

だって兄は私と喧嘩したら、何時もコンビニのアイスを買って帰るのだ。

 

その証拠に、道端に落ちていた兄が買った物と思われる袋には、私が好きなアイスがたくさん入っていたのだ。

 

だから、兄はこんな私ともう一度仲良くなろうと自分から買い物に行った筈なのに、居なくなるわけがない。

そう何度も自分に言い聞かせている。

 

きっと何時かひょっこり現れて、「帰るの遅れた!」って謝るんだって・・・。

 

「・・・早く、帰ってきてね」

 

正直、もう限界に近い。

兄が居なくなった原因が私のせいなら、私はきちんと謝りたい。

だから───だからいち早くでも戻ってきて欲しい。

 

「おやすみなさい」

 

・・・今日はこれくらいにしておこう。

そう思い、ゆっくりと仏壇をしまい、片付ける───と。

ピンポーン。

 

現在の時刻は十時半。宅配便は頼んでないし、父は出張で今日は帰ってこない。

母も病院で療養中のため、二人とも今日は帰ってこない。そもそも、鍵を持っているのだからインターホンを押す必要はない。

 

背筋を冷たい風が走る。

 

「誰・・・なの?」

 

階段をゆっくりと降り、覗き穴からインターホンを押した張本人を観察する。

 

───果たしてそこにいた人は、黒い扇情的な格好をしていて少し不気味だった。

 

(あぁ、扉の前にいる人がお兄ちゃんだったら良かったのに・・・)

 

依然として背中を冷たいモノが通りすぎるような感覚に陥り、記憶の中の兄に助けを求めるように愚痴を溢した。

 

「───誰・・・か。そうだな、お主の兄に伝わるように言うとしたら・・・魔王だろうな」

 

「ま、魔王?」

 

───どうしよう、やっぱり不審者だ。このまま警察を呼んで来て貰おうかな・・・って、兄!?

 

「お、お兄ちゃんを知ってるんですか!?」

 

「お兄ちゃん、か・・・ふふふ、あぁ知っているさ。激しく(戦闘し)高めあった仲だ」

 

「高めあッ───!?彼女さんって事ですか!?」

 

信じられない。

私達が心配して涙が枯れるまで泣いてたのに、あの兄はひっそりと彼女作ってたってこと!?

 

「落ち着け小娘・・・“まだ”、そんな仲ではない」

 

「ま、まだ・・・って」

 

やっぱりそれに近しい仲じゃん!

お兄ちゃん本当に何やってるの!?

 

「と、取り敢えず家にあがってください!」

 

魔王発言とか格好とか変だけど、兄の知り合いだから多分大丈夫な筈。

 

だからこの人から、出来るだけ兄の情報を聞き出そう。そう決意し、扉を開く。

 

「ふふふ、そうか。では失礼するとしよう」

 

・・・え、あれ?

めちゃくちゃ美人さんなんだけど?

切れ長の紫色の瞳に、高い鼻。白い肌は私なんかより全然綺麗で、長い黒髪は艶々と輝いていてとても美しい。

そして何よりデカイ。

 

夜中で顔があんまり見えなかったからあれだけど、良く見たらめちゃくちゃ綺麗な人だった。

 

「我が名は魔王シルベレスタというものだ。宜しく頼むぞ妹殿」

 

「は、はひ・・・」

 

あまりにも現実離れした綺麗さに、私は頷くbotの如くはいはいと言うことしか出来なかった。




───はい、ということで。
魔王シルベレスタさん登場でございます。

主人公は魔王としか呼んでいませんでしたが、ちゃんと名前があります。(名前付けを忘れていた事をなかった事にする作者)

因みに、主人公サイドと妹サイドのシリアス差の違いに、思わず魔王を急遽登場させたのは秘密です。
やったね!これでふおぉぉぉう!!には逆らえなくなったよ!(白目)
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