マックイーンは愛し愛されたい   作:風神・雷神

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前回から時間が飛びますがご了承ください


決勝前日

夏の強化合宿が終わってから、練習に明け暮れ、順調にレースも勝ち進み、ついに最終目標であるURAファイナルズ決勝まで行くことが出来ました。

 

そして、今日は決勝前日。

 

普通なら、レースへの気持ちが昂ったり、逆に不安に襲われたりすると思いますが、今の私は違いました。

 

待ち合わせ場所の校門に、これから来るトレーナーである彼に、今の私を見てどう思われるのか不安になります。

 

ゴールドシップに参考程度に聞いた所、普段は見せない一面に殿方はグッとくるらしいので、意外な一面を見せるような服装を今回は選びました。

 

いつもならあまり着ない、白のミニワンピースに、腰には太めのメッシュベルトを巻き、手には白のハンドバック、靴は白のハイヒールを身に着け、待ち合わせ時間を待ちます。

 

この日のために用意した、履き慣れていないハイヒールによる靴擦れもなく調子は良好です。

 

10分ほど早く着いてしまいましたので、待ち時間に鏡付きのファンデーションで、自分の顔や髪型を確認します。

 

朝一番に美容院へ行き、毛先を巻いてウェーブをかけ、両サイドに編み込みを入れてもらいました。

 

メイクはあまりやったことがなかったのですが、エアグルーヴさんにコツを教えてもらいました。何やら元の素材がいいため、素材本来の魅力を活かすために、メイクは軽くでいいと言われました。

 

その時に、小声で「これが若さか…」と言っていましたが、どうゆう意味なのでしょうか。エアグルーヴさんも十分お綺麗ですのに。

 

ですが、こんなことがあろうと、爺やに化粧品一式揃えてもらって本当に良かったです。役に立ちました。

 

今度、お礼の言葉を送りましょう。

 

手鏡をバックに入れ、彼を待ちます。

 

まさか、こんなことになるとは思いもしませんでしたが、この日のために、やれることは全てやりました。

 

…可愛いと言ってくれるのでしょうか。

 

 

 

 

 

数日前

 

 

「……遊園地ですか」

 

「ああ、そうだ」

 

いつもの様に、トレーナー室に来た私は、困惑していました。

 

なぜなら、彼に遊園地へ誘われ、突然のことで思考が一時停止してします。

 

「知り合いのトレーナーにペアチケットを貰ったんだ。興味があるなら行くか?」

 

「行けるなら、行きたいですが……ですが…その…大丈夫なんですか?」

 

当然、彼も何かしら考えていると思いますが、それでも疑問に思いました。

 

「あと、数日でURAファイナルズ決勝ですのに、そのようなことをしてよろしいのですか。当日まで、少しでも走力を上げるためにギリギリまで練習をした方がよろしいのでは……」

 

正直、今の実力で簡単に勝てるとは思っていません。少しでも、勝てる確率を上げるために、走ったりするのが堅実的だと思います。

 

それに、その先の優勝は、彼のトレーナーとしての目標。

 

私は、決して負けられないのです。

 

「いいんだ。あと数日という時期になれば、そこから技術や体力面で劇的なレベルアップは難しい。だからこそ、心の準備が重要になってくる。気を詰めすぎるのも悪いからな」

 

「で、では。本当に行ってもよろしいのですか」

 

「ああ、問題ない」

 

しっかりと彼もトレーナーとして考えている事が分かり安心しました。

 

……そういう事でしたら、仕方がありませんよね。

 

「分かりました。そういう事でしたら、私も行かせて頂きます。では、今日の分の練習メニューを消化してきますので失礼します」

 

しっかりと、彼に行くことを伝え、覚られないように部屋から出ます。扉を閉め、廊下に誰もいないことを確認して、赤くなる頬を隠すように両手を当てます。

 

そして……

 

こ、これは世に言う【デート】なのでは…

 

まさか、決勝戦前にこんなことが起こるなんて。

 

どうにか冷静を保ち、今の会話の内容を頭の中で整理しますが、勝手に色んなことを想像してしまいます。

 

遊園地ということは、二人でコーヒーカップにメリーゴーランドに乗ったり、ジェットコースターを彼と一緒に楽しんだり、お化け屋敷で驚いて彼に抱き着いてしまったり、夕焼けの中観覧車に乗り、最後には照らされた二人の影が近づき、一つに……。

 

「はっ!」

 

つい、ぼうっとしてしまいました。

 

そうと分かれば、こうしてはいられません。早急に準備をしなくては。

 

早速、爺やに連絡して必要なものを送って頂きましょう。

 

歩き始めますが、嬉しさからなのか尻尾は揺れ、ルンルン気分で練習場へ向かいました。

 

今から、とても楽しみです。

 

 

 

 

 

 

ということがあり、現在に繋がるわけですが、私は未だに信じられません。

 

一瞬夢かと思いますが、これは紛れもなく現実だということを、快晴の空を照らす太陽や、肌を吹き抜ける爽やかな風が吹き教えてくれます。

 

そのようなことを思っていると、目の前の車道に黒い乗用車が止まり、車の窓が下がると、見ると待ちに待った彼がいつものスーツ姿で運転席に座っていました。

 

「待たせて悪い。乗ってくれ」

 

そう言われ、隣の助手席に乗り込みます。レース会場に向かうため、何度か彼の車には乗ったことがありましたが、その時はいつも後ろの席ばかりで、助手席に座るのは初めてなので少し新鮮に感じます。

 

車が動く前に、聞きたいことがあることを思い出し、彼に声を掛けます。

 

「トレーナーさん」

 

「……なんだ」

 

勇気を出すようにスカートの裾を握り、こっちを向く彼に視線を向けます。

 

「あの……ど、どうですか……その……今日の服などは……」

 

真っ直ぐに彼の方を向き、目を逸らさず見つめます。

 

可愛いといってくれるのでしょうか……。

 

「…ああ。いつもと違うな。似合っている……。発進していいか?」

 

「は、はい。どうぞ」

 

シートベルトを締め、車が目的地へ向けて発進します。

 

可愛いとは言われませんでしたが、「似合っている」と彼の口から聞けたので、それだけで満足でした。

 

 

 

車に揺られること一時間。

 

車から降り、入口の前で止まります。

 

ついに目的地の遊園地へ着きました。

 

子供の頃には二人で遊園地には、行ったことが無いのでどうなるのか私にもわかりません。

 

隣に並ぶ彼を見て、これから今まで経験したことがないほど楽しい時を過ごすと確信します。

 

……ですが、今思ってみれば、彼自身どんな理由で私を誘ったのかは、心の底では理解していました。

 

昔馴染みとしてではなく、愛情からでもなく、偶然チケットが手に入り、トレーナーとして担当ウマ娘の私を誘ったのでしょう。

 

なので、いつかに想像した最後のようなことは、彼が変わらない限り、幸せのハッピーエンドには決してならないでしょう。

 

分かっていても、期待してしまう自分がとても哀れに感じてしまいます。

 

 

受付のスタッフさんにチケットを渡し、園内に入るとそこには、興味を惹かれるモノで沢山でした。

 

メリーゴーランドやジェットコースター、空中ブランコにコーヒーカップなどのアトラクションが早速、目に入りました。

 

「見て下さいトレーナーさん!ここから見ただけで、アトラクションがあんなに沢山ありますわ!あちらの売店には、ソフトクリームが売っているようです!あ、あちらには、この遊園地のマスコットキャラのうまとらちゃんがいますわ!」

 

普段あまり来たことが無い遊園地に、気持ちが高ぶってしまい目を輝かせ、彼の袖を引っ張ってしまいます。

 

まずは、どれから乗りましょう。

 

観覧車は、最後に乗るとして、ここは無難にコーヒーカップから乗り始めても良いのかもしれません。いえ、まずはうまとらちゃんと記念写真を撮った方が良いのでしょうか。それとも、最初に絶叫系のジェットコースターからスタートして、勢いを付けるのも良いでしょう。

 

正直、迷ってしまいます。

 

隣にいる彼に意見を聞こうと横を向くと、自身の手が彼の袖を掴んだままでいるのが視界のに入りました。

 

「す、すみません。私、興奮して我を忘れてしまいました」

 

慌てて、掴んでいた手を離し、彼に謝罪します。

 

もしかしたら、今ので不快な思いをさせてしまったのではないかと心配になり、不安げに彼を見上げます。

 

「いやいい。それより、何に乗りたい」

 

どうやら、今の思ったことは杞憂だったようです。

 

「その、自分でも迷ってしまって……トレーナーさんは何か乗りたいモノはありますか?」

 

「俺はいい。お前が行きたい場所に付き合うからな」

 

「……そうですか。では、最初は記念撮影からでよろしいですか?」

 

「分かった」

 

最初は、うまとらちゃんとの記念撮影で決まり撮影場所へ行き、スタッフさん写真を撮って貰います。

 

ちなみに、うまとらちゃんは頭が虎で、茶色く長い四本の足で筋肉質な体をした見た目で、その見た目から、若い方を中心にコアなファンが多いとのことです。

 

彼を中心に左にうまとらちゃんで、右に私の立ち位置で撮り始めると、写真を撮るスタッフさんから指示が飛びました。

 

「すいません。彼女さん、もう少し彼氏さんの方へ寄って頂いてよろしいでしょうか」

 

「は、はい」

 

そう言われ体を寄せると、彼の腕に私の肩が密着してしまいます。自然と、顔が赤くなるのが分かり、視線が地面へと向いてしまいますが、冷静さを保ち目線をカメラに向けます。

 

「では、いきま~す。はい、ウマぴょい。はいOKでーす。ありがとうございました」

 

撮影が終わり、撮った写真をスタッフさんから二枚貰いますが、見れば映っていた私は照れていたのか、少し顔が赤くなっていました。

 

彼は気づいたのでしょうか。

 

チラリと彼の顔を覗くように見ると、神妙な面持ちで眺めていましたが、こちらの視線に気付いたのか彼と目が合います。

 

「どうした?」

 

「いえ。何でもありませんわ」

 

「……そうか、なら次行くぞ」

 

彼が数歩先を歩き、私もカバンに写真を入れ小走りで追いかけ、次のアトラクションに向かうために彼の隣を歩きます。

 

 

 

ひとしきり、アトラクションを楽しみ、あっという間に時間が過ぎて、気づけば時刻は園内の時計の針が12時を回っていました。

 

今は、休憩のためベンチに座っています。

 

「どうする。飯にするか」

 

「そ、そうですわね。あの…お昼なのですが……その…」

 

「なんだ」

 

不思議そうに聞く彼に、手をもじもじさせ言葉が詰まってしまいますが、何とか言葉を出します。

 

「私、お弁当にサンドイッチを作ってきましたので、よろしかったら一緒に食べませんか。トレーナーさんの分も作りましたので、良ければ……」

 

「……」

 

今日の為に、食堂のおばさんに作り方を聞き、朝早く起きて共同キッチンで作りました。サンドイッチを選んだのも、他の料理と比べ簡単に作れて、外で手軽に食べやすいと教えて頂きました。

 

彼は、喜んでくれるのでしょうか。

 

彼の顔を見ると、少し表情が暗くなっていることが分かりました。

 

もしや、サンドイッチが嫌いだったのでしょうか。

 

それとも、手作りのお弁当には抵抗があったのでしょうか。

 

少し不安になります。

 

「…お気に召さなければ、無理して食べて頂かなくても……」

 

「…いや、貰う」

 

そう言うと、お弁当に入れたサンドイッチを黙々と食べ始め、隣で食べているのを確認して私も食べ始めます。

 

表情は変わりませんが、兎に角無事食べて貰った喜びで思わず笑顔になってします。

 

 

 

昼食を、食べてからもアトラクションを楽しみ、最後に乗る観覧車に向かいます。

 

気付けば空にあった太陽は沈みかけ、観覧車も夕焼けに照らされ、全体を綺麗な茜色へと変えていました。

 

それは、一日の終わりを私に教えてくれます。

 

夢かと思うほど楽しかった今日が終わってしまう、その現実を受け止め、二人で観覧車に乗ります。

 

窓から外の景色を見ると、近くにある町が茜色一色に塗られて、とても美しく感じます。

 

ふと考えてしまいます。

 

きっと映画や漫画なら、両想いのカップルがこのタイミングで口付けを交わし二人の愛を確かめ合うのでしょう。

 

私たちには、決して起こらないのです。

 

私たちは、トレーナーとウマ娘の関係。

 

……決して起こらないのです。

 

そんなことを考え、外を眺めていると突然、前に座る彼から名前を呼ばれました。

 

「マックイーン」

 

いつものように呼ばれるより、少し優しく声を掛けられ視線を向けると、真っ直ぐこちらを向く彼が言葉が続けます。

 

「……目を瞑ってくれるか」

 

「・・・ふぇ?」

 

突然の彼の指示に驚いて、頭が真っ白になり変な声が出てしまいました。

 

そ、そんなことよりも……。

 

い、今のはどうゆう事なのでしょうか。

 

どうにか冷静さを保ち、彼の言っていたことの意味を考えます。

 

レースの時と同じで、どんな時にも冷静さを失ってはいけません。

 

この状況で、目を瞑るように求めるのは……。

 

まさか……。

 

私の思考が導き出した答えとは、彼に誘われた時に想像した、恋人の男女がする愛を確かめ合う行為でした。

 

 

 

わ、私。今から、き、キスをされるのではないでしょか!?。

 




取り合えずマックイーンが幸せそうだと思ってもらえればいいです
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