宇宙のバミューダトライアングル   作:Eitoku Inobe

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遠い昔 遥彼方の銀河系で…

新共和国がジャクーの戦いから勝利して既に数十年の月日が流れていた。

過去の戦を忘れ大半の人々は見せかけの平和に堕落していた。

新共和国はそんな中軍縮を推し進め僅かな戦力しか持たなくなっていた。

しかし結果的にその行動は秩序の崩壊に繋がった。

今日もまた秩序なき銀河系を飛び回る密輸業者の姿があった…




ある密輸業者の結末

宇宙ってのはいくつか読み方がある。

 

そらとも読むしうみとも読む。

 

そりゃあ職業によって読み方は変わるだろう。

 

俺の場合はうみだ。

 

一応は船乗りとして通っている。

 

まあお世辞にもまともな仕事かと問われたら首を振るが。

 

船乗りって言われても観光客を乗せて宇宙旅行とかましてや正規軍の為に軍艦を動かしたりとかそういう仕事じゃない。

 

優しく言えば俺の仕事は“運送業”だ。

 

これでも嘘は言ってないぜ?

 

ただ運んでいる物が麻薬や麻薬の原料だったり法で禁止されたりする物なだけだ。

 

後“密輸”しちまってるってとこも不味いかな。

 

だがよ俺だって大変なんだぜ?

 

毎度毎度犯罪組織のボスや取引相手に頭下げて謙って。

 

じゃねぇと金の代わりにブラスターの弾丸ぶち込まれかねないが…

 

それに面倒くさい新共和国軍の連中やそこら辺の惑星の警備隊にでも捕まったら大変なことになる。

 

俺は豚箱行き、船は没収で解体、積荷はサヨナラ、犯罪組織中の信用はガタ落ち…

 

そうなったらおら一生お先真っ暗だ。

 

だからこそ密輸業者ってのは常に最新の注意を払わないといけない。

 

確かに傭兵や賞金稼ぎの連中に比べればまだマシかもしれないが俺達だって裏社会で命を張っている。

 

そういう面では変わらないはずだ。

 

だがその分儲けはそこらの運送業とは比べ物にならない程いい。

 

それにちょっとばかし積荷をくすめて後で…なんて事も多少は許されるからな。

 

おっとこれは俺の密かなお楽しみだった。

 

でもベテランの同業者達によればこの種の職業は昔よりだいぶ楽になったらしい。

 

何せあのお堅い“銀河帝国”サマが滅んでガバガバ緩々な“新共和国”になってくれたからな。

 

理想主義者なのか単にケチなだけか知らねぇが連中は大幅に軍備を縮小してくれた。

 

おかげでここいらの辺境の警備は手薄で好き放題出来る。

 

帝国があった頃はあっちこっちに馬鹿でかいスター・デストロイヤーが飛び回ってて絶望的だったそうだ。

 

実物は見た事ねぇが数千メートル級の戦闘艦だからな。

 

俺が乗ってるようなちっぽけな貨物船じゃそりゃどうしようもねぇ。

 

全く迷惑な話だ。

 

向こうにとっちゃ迷惑なのは俺達だが表の世界には表のルールが、裏の世界には裏の暗黙のルールというものがある。

 

不用意に近づいてくるから始末されるだけであって関わらなきゃ俺たちゃ無害なもんだ。

 

まあ俺の持論だが…

 

でも帝国は圧倒的な力で干渉してきやがった。

 

一体何人の密輸業者達が殺されたり殺されるよりひどい目に遭わされた事やら…

 

そん時密輸業者じゃなくてよかったぁとつくづく思う。

 

でも今じゃあそんな物は消え失せ警備艇一隻すら見えなくなった。

 

“ありがてぇ”事だな。

 

そもそも新共和国の前身たる反乱同盟軍だって元はならず者の集まりだ。

 

なんせ新共和国軍の将軍様の中には俺と同じ“密輸業者”だっているんだから。

 

俺とそいつらはとてもじゃないが比べ物にならないがやってる事は同じだ。

 

だから…まあ的外れかも知れねぇが“見逃すのが当然”のはずだ。

 

自分達だけ勝ち馬に乗ったから許されるなんてそうはいかねぇ。

 

まっ俺がそいつの代わりになれるかって言われたが無理な話だがな。

 

ただ事実だけ言うなら俺達の仕事はやりやすくなった、それだけだ。

 

にしてもやっぱりハイパースペースの航行中は退屈だ。

 

青白い世界がただ永遠に続く。

 

宇宙空間の航行も退屈だが時折見える惑星や衛星、きらめく星々が少しは退屈を紛らわしてくれる。

 

でもハイパースペースにはそんなもの一切無い。

 

そりゃ長距離航行するのにハイパースペースは飯より必要だがこう…退屈なんだよなぁ…

 

…そういやこの辺って今どこの宙域だっけな…

 

船に備え付けてあるホログラム式の星図を眺める。

 

昔は星図を眺めてるだけでも楽しかったなそういや。

 

でも今は懐かしさに浸りたいから星図を開いた訳じゃない。

 

ちょっと確かめたい事があったからだ。

 

えっと今は…はぁ…クソ。

 

“都市伝説付き”の宙域じゃねぇか…

 

何も俺は都市伝説が怖い訳じゃない、正直この仕事をしていると都市伝説以上に怖い事もあった。

 

だが…だがこの宙域にまつわる都市伝説はやたら現実味があり過ぎる…

 

このハイパースペースで航行していると突然ハイパースペースから“引き摺り出され”その船は二度と帰って来なくなる。

 

よくあるオカルトチックな話だ。

 

普通なら気にも留めない。

 

んなオカルト話よりも“フォース”やら“ジェダイ”の方が信憑性があるってもんだ。

 

だが…ここの都市伝説は普通じゃない。

 

実際にこの宙域周辺で姿を消した船は結構いるんだ。

 

酒場で聞いた話だと新共和国の輸送船団が丸ごと消えたらしい…

 

実際俺の同業者達だって何人かここで姿を消している。

 

最初の一人はまだ都市伝説が噂される前だった。

 

てっきりこの仕事が嫌になって荷物と共に夜逃げでもしたのかと思っていた。

 

違かった。

 

それから数週間後また一人いなくなった。

 

この頃からこの都市伝説は囁かれ始めた。

 

俺はそん時ハットから仕事を請け負っていたんで気にも留めなかったが一ヶ月後また同業者が消えその噂を耳にした時は流石にスルー出来なかった。

 

新共和国や周辺政府に捕まったとかそう言う話はまるで出なかった。

 

ただ「あの宙域を航行すれば二度と帰れない」と囁かれるだけだった。

 

何人かの命知らずがこの宙域に足を踏み入れたが数名は無事でやはり何人かは帰って来なかった。

 

昔宇宙クジラの話は聞いたことはあるがその類か…?

 

頼むから俺だけは見逃してくれよ…

 

都合がいいように聞こえるだろうが俺だってまだ死にたかねぇしお前らだってどうせそうだろう。

 

それに死に方って物が世の中にはある。

 

俺は誰にも看取られず訳のわからない死に方はしたくないね。

 

何度も心の中で俺は「都市伝説だ」、「所詮噂話に過ぎない」と念じた。

 

そろそろハイパースペースを抜けるはずだ。

 

ほらな、所詮は都市伝説なんだ。

 

さぁて俺は無事に帰ってジャワジュースでも一杯ひっかけ…

 

ガコンと船が揺れる音がした。

 

…おいおいおいおい。

 

勘弁してくれよ…

 

だが俺の願いは届かなかった。

 

船のエンジンが急にキュルキュルと奇妙な音を上げた、。

 

なんだ…なんだなんなんだよ!

 

あぁクソッ!あの都心伝説はまさか本当なのかよ…

 

いやダメだ、恐怖に負けちゃいけねぇ。

 

船が故障した可能性もある、スペアパーツを取ってこよう。

 

俺が動こうとした瞬間船に大きな振動が走り俺は操縦席に少し頭をぶつけてしまった。

 

いってぇ…一体何があったんだ?

 

直後青白い空間はオレンジと青が混ざった禍々しい世界に変わりあまりの眩しさに何も見えなくなった。

 

 

 

ここはどこだ…

 

目を開けるとそこは通常空間(リアルスペース)だった。

 

まさか都市伝説通りなのか…?

 

俺は船の外を見つめた。

 

そこにはあり得ない光景が映っていた。

 

だってあいつらは数十年ほど前に滅んだはずだ。

 

あの馬鹿でかい楔形の戦闘艦はもう銀河にはどこにもいないはずだ。

 

俺の目の前には“滅びたはずの帝国艦隊がいた”。

 

インペリアル級スター・デストロイヤー。

 

あれが軽く数えただけでも数十隻は並んでいる。

 

それに見慣れない艦も幾つかあった。

 

連中の真ん中に立たんずんでいるインペリアル級に球体を引っ付けたような艦。

 

まるで病気か何かに侵され腫れているようだ。

 

そして左右にはインペリアル級の2倍はありそうなデカイ艦が並んでいた。

 

なんだよあれ…だって帝国はジャクーで負けたはずじゃ…

 

俺の頭にある言葉がよぎった。

 

ー生き残りー

 

まさか帝国の生き残りがいて勢力を拡大していたのか…

 

それに噂話だが聞いた事がある。

 

帝国には船をハイパースペースからリアルスペースに引き摺り出せる艦がいると。

 

真ん中の球体を並べた艦がそうだと言うのかよ…

 

じゃあこの辺で船が消えているのは…

 

逃げないと…殺される。

 

こんな秘密知ったらアイツらは絶対俺を殺しにくる!

 

だがもう遅かった。

 

既に右のデカイ艦にトラクター・ビームに捕まった。

 

手遅れだ、俺は殺される…

 

なんで俺がこんな目に…

 

まさか積荷か?

 

俺が運んでいた積荷は…“カイバー・クリスタル”。

 

ハットがまた高い金でこいつを欲しがったんで運んでいた。

 

だが石にどんな力や意味があるのかは誰も教えてくれなかった。

 

この鉱石は貴重だがなんで連中が石如きでこんな真似するんだよ…

 

…待てよ。

 

逆に積荷を差し出せば許してくれるんじゃないのか…?

 

そうだ、どうせ連中は俺の事なんざ興味ないはずだ。

 

まだ助かる…助かる希望はあるぞ!

 

俺がそう思っている頃には既に馬鹿でかい艦のハンガーの中だった。

 

外を眺めれば“見慣れないストームトルーパー”達がわんさかいた。

 

あんな装備のトルーパー見た事がない。

 

だが今はそんな事言っている場合じゃない。

 

積荷を差し出し助からねば。

 

俺は走って荷物を取り出した。

 

まだ中身は無事だ。

 

轟音と共に船のエアロックが破られた。

 

足音が聞こえる。

 

俺はその時ばったり出会ってしまった。

 

ストームトルーパーと将校達に。

 

俺は急いで頭を下げた。

 

膝も付いた。

 

全てを投げ出した。

 

ストームトルーパー達はブラスター・ライフルを構えたが将校に止められた。

 

「お願いだ!!積荷はやる!!だから助けてくれ!!俺は頼まれていただけなんだ!!」

 

絶叫と共に命乞いをした。

 

今の俺に屈辱なんて言葉は微塵もなかった。

 

将校の顔は見えなかったが鼻で嘲笑っているようだった。

 

将校が俺の前に出た。

 

俺の髪の毛を掴み一言こう言い放つ。

 

「クズが」

 

将校の背後のトルーパー達がカイバー・クリスタルの入った箱を無理やり引き摺る。

 

将校は立ち上がるとトルーパーに合図を出した。

 

まさか…俺を殺すのか…?

 

なんでだよ…俺は…俺はただ…

 

やめてくれ…お願いだ…俺は死にたくは…

 

俺の最期の断末魔はスター・デストロイヤー中に響いた。

 

 

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