ステータスプレートでも一悶着ある予定のため、そこで説明パート挟むことになりそうです。
「さて、あなたがたにおいてはさぞこんらんしていることでしょう。いちからせつめいさせていただきますのでな、まずはわたしのはなしをさいごまできいてくだされ」
「—————————なんて?」
「『今からなぜこんなことになったのか説明します』って言ってるわ」
「ほーん……」
いやいや待って待って、本当にちょっと待ってくださいな! え? 何語喋ってんの!? 私これでも結構語学には精通してるつもりなんだけど全く聞き覚え無い言語だよ!? 英語からシュメール語まで完璧にマスターしたと太鼓判を押された私がですよ!
えぇ……まさか言葉が通じないとは思わなかったわ……。まぁ、
現在私たちはあの大聖堂から移動して、10メートル以上はありそうなテーブルがいくつも並んでいる大広間に通されていた。
私はさっきの意味不明言語で完全に頭がパァになっていたのだが、どうやら光輝くんがみんなを落ち着かせて、この胡散臭いおじさまが事情を説明すると告げたこともあり、もうなるようにな〜れと流れに身を任せた結果ここに漂着したというわけだ。
まぁ、言葉が通じないくらいで普段はここまで役立たずにはならない(はず)なのだが、今日イチ驚きだったのはその意味不明言語を聞いてもクラスメイトが至って平然としているどころか完璧に使いこなしていることだ。光輝くんが流暢に喋りだした時はやっぱり夢なんじゃないかと思ったよ。
だが悲しいかな、以前はレムレム睡眠によって夢と現実を行ったり来たりしていた身であるが故に否応無くこれが現実なのだとハッキリわかる。それに雫ちゃんに聞いても言葉わかるって言うし、やっぱり普通に現実なのだろう。
とりあえずこのまま言葉がわからずせっかくの説明パートを「ほけ〜」と聞いている訳にもいかないので雫ちゃんに通訳をしてもらいながらイシュタルさんとやらの話を聞く。イシュタルという五文字に某金星の悪魔が
彼の話は要約するとこうだ。
まずこの世界は「トータス」と呼ばれており、人間族、魔人族、亜人族という三つの種族が支配しており、北に人間族、南に魔人族、東の樹海に亜人族という分布だそうだ。
そしてこの内、何百年にも渡って人間族と魔人族が戦争を続けているという。
魔人族は個の力が強い種族だが数が少なく、それに反して人間族は個人の能力は魔人族に劣るが、その分を数による差で補い拮抗していたらしい。互いに同程度の戦力を持っていたため数十年大規模な戦争は起きていなかったそうだが、近年になってその戦局に異常が起き始めたそうだ。
それが魔人族による魔獣の使役。
彼らは野生動物が魔力を取り込み変質したとされる魔獣たちをかなりの数従えて侵略に乗り出しているようだ。元々質で負けている状態でさらに数でも上回られれば為すすべは無い。
このような事情もあって、現在人間族は滅亡片道一直線という事態に立たされているらしい。
さらにイシュタルさん曰く、私たちがいた世界はこのトータスという世界よりも上位にあたり、それぞれが強力な力を持っているのだという。
そしてそんな私たちをこの世界の唯一神『エヒト』様が異世界から召喚し、この人間族の危機を救い、魔人族を打倒するのだという信託が下ったそうな。
いや、随分と勝手してくれるもんだね。誘拐じゃん。というかマジもんの『神隠し』じゃんそれ。しかも挙げ句に戦争してくれってのはちょっと虫がよすぎない?
そう思ったのは私だけじゃないらしく、我らが社会科教師兼マスコットの畑山愛子先生こと愛ちゃんがイシュタルさんに猛然と食ってかかる。
「ふざけないでください! けっきょく、このこたちにせんそうさせようってことでしょ! そんなのゆるしません! ええ、せんせいはぜったいにゆるしませんよ! わたしたちをはやくかえしてください! きっとごかぞくもしんぱいしているはずです! あなたたちがしていることはただのゆうかおですよ!」
ま、私には何言ってんのかさっぱりなんだけどね! どうやら推定異世界人と話している時は私以外のみんなも異世界語になるらしい。そりゃそうか。
ただ、愛ちゃん先生の性格は大体把握しているのできっと『ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっとご家族も心配しているはずです! あなた達がしていることはただの誘拐ですよ!』みたいなことを言っているのだろう。
ド正論である。
ただ、怒っている姿があまりにも可愛らしいのでクラスメイトたちが
とかなんとか私が思っている間にもイシュタルさんはお構いなしに話を続ける。
そうすると、さっきまで怒り心頭といった様子だった愛ちゃん先生含め全員が絶句していた。今まで慣れない中頑張って通訳してくれていた雫ちゃんまでもが目を見開いて彼を凝視している。
これはアレか?
「もしかして『お気持ちはお察します。……しかし、あなた方の帰還は現状不可能です』って言ってんの?」
「あなた実は言葉わかってるでしょ」
わかってないよ! さすがに何となくの会話の流れとニュアンスが声質と声量と表情と身振りでわかる程度だよ!
カルデアバーサーカーズと会話してたから言葉通じなくても会話くらいならそこそこいけるけど、彼らは狂化してたからわかりやすかっただけで、理性で言語使ってるこの場合はさすがに細かいニュアンスが聞き取れない。
そしてこの老人のような食わせ者を相手にする時は、その細かな不理解が命取りになりかねないのだ。
って、こんなことつらつら考えてる場合じゃないな。明らかにみんな混乱してる。そりゃ帰れないってなったらこうもなるわ私だってなるわ。
でもどうしよう……私言語わっかんないから通訳ありとはいえ手応えがわかんないし、上手いまとめ方が思い浮かばん!
と、私も八方塞がりの状況に参っていたその時、バンッと勢いよくテーブルを叩く音が広間に響き渡り、狂騒に陥っていたみんなが静まり返る。
光輝くんだ。こういう時は確かに、彼のように強力にみんなを引っ張るリーダーシップが最適だ。
光輝くんはそのままみんなに今は落ち着くように言い聞かせ、イシュタルさんと話しをして、自分達が帰るためには魔人族に勝利することがどうも手っ取り早そうだということ、そして自分達にはそれを成すのに十分な力があると予想されることを聞き出した後、私の方にくるりと向き直って、じっと見つめてくる。
おそらく、今後の方針を私に委ねるという意味の視線だ。結構な巻き込まれ体質の彼が持ってくる様々な面倒事……その解決のための頭脳労働係は大体いつも私だからね。
自己中心的な気がある彼からしてみれば、これは最大限の信頼の証である。その信頼には私も全力で応えたいのだが……厄介なことに、今の私は超言語不自由。状況をいつものように細かく把握することができないから、この複雑な状況に対応するために最も適した案が全然浮かばない。
結局、私は彼に現状維持で協力するかどうかは一旦保留し、一度私たちだけで話し合いの時間が欲しいという旨を伝えてもらった。
イシュタルさんは、『確かにまだ結論をそれほど急ぐ状況でもないからじっくり話し合ってほしい』と私たちに伝えたことで、一旦その場はお開きとなった。
その後、私たちは広間に残って私たちだけで今後の方針を詰めていくことにした。
盗聴の心配? まぁ十中八九されてるだろうけど、今この部屋に私たちに認識されてる異世界人(?)さん方はいない。つまり自然と日本語で話すことになる筈だ。私が異世界語(?)を理解できないということはあちらも日本語を理解できないということだし。
広間から誰もいなくなったことを確認してから、光輝くんが口火を切る。
「じゃあまずは今後、俺達がこの世界でどう立ち回るべきかを話し合っていこう。リツカ、君はどう思う?」
「んー、とりあえず最終目標を決めちゃおうか。
これは言わずもがな『元の世界への帰還』ってことでいいよね。戦争とかやりたくないし」
「はい! もちろんです。一刻も早く、帰る方法を見つけなければ……」
愛ちゃん先生がそう言って頷く。
そう、私たちはなんとか元の世界に帰らなきゃいけない。こんなどことも知れない場所で死ぬなんて事態は絶対に避けなければならないから。
「でも、イシュタルさんは帰る方法は自分達にはわからないって言ってたよ、リツカ。何か案があるの?」
しかし恵里ちゃんがそう言って問題点を指摘する。彼女は私たちの参謀役No.2なので、意見も的確だ。
「ははっ、さっぱりだね。時空間移動なんて魔法レベルの代物だもん……。少なくとも、私たちだけでどうにかできることではないね。この世界の魔術について精通してそうな彼らでもできないなら、もうお手上げっていうのが正直なところ」
「ということは……結局、さっきイシュタルさんが言ってたように戦争に勝って、神様が都合よく帰還の準備をしてくれるのをお願いして待ってなきゃいけないわけだ」
そんな神頼みみたいなギャンブルはしたくないのだが、現状それが一番可能性がある事実に笑えてくる。ハードモードすぎない?
なので、こっちもやれることはしっかりやっておかなければ。
「確かにそうだけど、ぶっちゃけ可能性低いし、こっちでも情報を集めとかなきゃなんとも言えない。
イシュタルさんが嘘ついてる可能性もあるし、こっちの世界よりも強い力を持ってるらしい私たちが協力すれば、自力で帰還できる可能性もある」
「あぁ……なるほど、確かにそれはあるね」
「だから最終目標は『元の世界への帰還』、当面の目標は『情報収集』って感じかな。それと、言わずもがな『絶対に死なない』ことが
今の私たちにはいくらなんでも情報が足りなすぎるし、イシュタルさんたちの要望に程々に沿いながら、この世界の情報……特に、魔術関連の知識を集めていこう」
それっぽいことを言ってるけど、実際には時間稼ぎのようなものだ。
とにかく相手がキナ臭すぎるので、真意が知れるまでは役立たずと切り捨てられないように意向に沿いながら、こっそり裏をかいていこうという慎重策である。別に魔術について調べるのは裏切り行為じゃないし。
「……私たちは今、彼らに生殺与奪の権利を握られている状態だ。
ここで役立たずって烙印押されて放っぽり出されるのが一番まずい。最低でもこの世界で自立できるぐらいの知識と力を、庇護されている間に身につけよう。
それが今のところの『最優先事項』だね」
「なるほどな……結局、今は従うしかないってことか」
光輝くんの言葉にこくりと頷いて答える。これが今一番確実な安全策だと。
「そうか……。皆、聞いたな? 俺達はまず生きることには全力を尽くす! 皆はそれぞれ自分にできることをやってくれ。
俺が必ず! 皆を救ってみせるから!!」
光輝くんの言葉に、今まで絶望に沈んでいた生徒たちの目に光が灯る。この摩訶不思議な状況で、縋れる強いリーダーがいる。このことに希望を見出さないわけがない。
彼の声も、表情も、言葉も、みんなを鼓舞するカリスマに満ち溢れていた。
これが光輝くんにあって私に無い、『群を率いる』才能。……やっぱり、すごいなぁ。みんな持ち直してる。これならしばらくは大丈夫そうだ。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ? 力仕事は任せろよな!」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんやリツカちゃんがやるなら、私も頑張るよ!」
「香織……」
「僕も光輝君がやるならやらない理由がないよ。任せて、僕にできることは何だってやってみせるよ」
「恵里……」
他のみんなも各々が自分にできることをしようと奮起する。部屋に活気が戻ってきて、雰囲気が明るくなる。やることが明確になると人間モチベーションも上がるものだ。
私も一刻も早くやるべきならないことをやらなければ、足手まといになってしまうな。
「みんなで力を合わせれば……きっとこの危機も乗り越えられるよ。私も全力で手伝う。絶対みんな、生きて元の世界に帰ろうね!」
『おぉー!!!』
この時の私は、きっと油断していたのだ。カルデアでの人理修復の経験があれば、今回のこの異常事態もちゃんと解決できる筈だと。
認識が甘かったのだ。これはただの異常事態ではなく。
この世界の人理に関わる大事件。その幕開けなのだから。
話全然進んでない……しかも次話もステータスプレートまでいけなさそう……ほんと申し訳ない……