ありふれた元マスターでクラス最弱   作:抹茶れもん

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難産だった。二話分描いた気がする。気がするだけだけど。おかしな部分があると思うから気になったらジャンジャン言ってくださいな。もしかしたら書き直すかもしれません。


第2節 誕生

 ふわふわと漂う私の魂。

 

 虚空に浮かんでは消える意識。

 

 世界と世界の狭間の暗闇。

 

 有りながらにして無く、また、隣りにありながら触れられない、という矛盾を体現したこの場所こそを、私たちは虚数空間と称している。

 

 「ヘヴンズ・ドリフト」を行なった場合、私の魂とそれが入っても全く拒絶反応を示さないような死亡間も無くの肉体が見つかるまで魂はこの虚数の海を彷徨うハメになる。

 

 この場所には時間という概念がない。

 

 故にどの時代、さらにはどんな場所に出るかも分からない。

 最悪の場合、紀元前の時代や銃弾飛び交う劇戦地にポッと浮上する可能性もある。

 完全なランダムだ。

 その上死亡間も無い肉体のため、放っとくとすぐに死んでしまうので、近くに医療機関があるのが必須条件なワケ。

 

 カルデアにいた頃に一応セーフティを設けたとはいえ、限りなく安全性に欠ける自殺行為だと言えるだろう。

 

 まぁ、一回自殺して此処に来てるようなもんだし、是非もないよネ! 

 

 そんな感じで虚数空間を彷徨ってだいぶ経つ。そろそろ人恋しくなってきた頃合いだ。

 今の時間を数えるのは、とうの昔にやめていた。

 

 

 あ〜つまんねぇ〜

 

 

 この空間娯楽に乏し過ぎじゃね?いや虚数空間に娯楽施設あったらそれはそれで引くけどさ。

 でも景色は一面中真っ黒な殺風景で、話相手も無く、音楽やら食事なんかの最低限の精神安定剤も無い。

 この漂流がいつ、どうやって終わるのかもてんで分からない。

 こうしてみると虚数大海戦ってすごく環境に恵まれてたんだなぁ。これら全部揃ってる潜水艦って大したもんだよ。キャプテンありがとう。ノーチラス万歳!

 

 

 苦痛だ〜助けてマシュ〜退屈に殺される〜

 

 

 そんな益体も無いことを延々と考えるのもやめにしたい。もう限界だ!と、そう思った矢先のことだ。

 

 突如すごい力で魂ごと引っ張られた。というか現在進行系で引っ張られている。

 

 あ〜れ〜

 

 まぁ、冗談はともかく、この感覚には覚えがある。

 一回死んでみたあの日に感じたのと同じものだ。

 ということはつまり、この無間地獄じみた道行ともついにおさらばってワケだ!

 

 いや〜ついにか〜。長かった〜!

 

 危うく発狂するとこだったわ。あぶないあぶない。

 

 こんなとこでつまづいてたらみんなに合わせる顔がない。本当によかった。

 

 一旦精神が落ち着いたからか、これまでとは一転してひどく晴れやかな気持ちになってきた。

 具体的に言うとワクワクしてる。

 

 懐かしい感覚だ。いままで何度も体験してきた、未知への期待。これから先には想像もできない苦難が待ち構えている。

 しかし、それと共に、新たなかけがえのない出会いがある。

 一体どんな場所で、どんな文化で、どんな人たちがいるんだろう。

 どんな縁が結べるのかな。

 

 くぅ〜!これこそが旅の醍醐味!これこそがロマンっていうもんだ!

 

 さあ、いざ赴かん、新たなる冒険の舞台へ!出発!しんこーう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、よかった!本当によかった!あなた、リツカが目を覚ましましたよ……!」

 

「うぅ……!ありがとう、ありがとう!生きていてくれて!本当に……ありがとう」

 

「信じられない……。完全に心肺は停止していたはず……。こんなことは今まで一度も……。藤丸さん、これは奇跡です。長い間医師として活動していますがこんなことは初めてだ。

 本当におめでとうございます」

 

「いいえ。先生のおかげです!なんと感謝して良いのか……!」

 

「いえいえ、これが私の仕事ですから。しかし、まだ油断は禁物です。これから精密な検査をしなければ。どうかご理解いただけますよう」

 

「はいっ、はいっ、構いません!本当にありがとう__」

 

 

 

 最初に耳にしたのは、純粋な感謝の言葉。親が子に向ける、惜しみ無い愛情こそが、私の第二の生の初めての景色だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ていうか、あれ?

 

 

 

 

「あ、あう?」

 

 

 

 

 あれれ〜?

 

 

 

 

 身体が動かしにくい?それに声も舌っ足らずで全然出ない?

 

 私の目の前にいるのは、この身体(からだ)の両親だろう成人した男女。それから医師と思しき男性と女性看護師が二人。

 

 そのいづれもが、見上げるような巨人であった。

 

 

 

 

「ああ、でも本当によかった。無事に1歳の誕生日を迎えられて」

 

 

 

 

 オウ、ジーザス。赤ちゃんだったぜ。ばぶー。

 

 

 

 

 

 いや、なんでさ。

 

 

 

 

 こうして無事(?)私は第二の生をスタートさせたのだった。

 

 

 

_______________________________________________

 

 

 

 

「リツカ〜!ごはん出来ましたよ〜!」

 

「はぁい」

 

 

 そんなこんなで早数年が過ぎたとさ。そしてその間、特に何もなかった!

 いや、本当にただただ普通の保育園生活を謳歌していましたとも。

 滅多にできない経験として、全力で幼児期を満喫したさ。童心に帰ってはしゃぎ回るってのが、なんでかとても楽しかった。

 カルデアにも子どもの姿をとったサーヴァントが何騎かいたが、こんな気持ちだったのだろうか。童話作家とか。

 

 そうそう、つい最近、と言ってもかなり前かもしれないけど、その皮肉屋な童話作家のことを考えていて思い出したのだが、この状況は生前ネット上に溢れかえっていた小説のあれなんじゃなかろうかと思い当たった。

 

 ほら、所謂「転生」とか言うやつだ。もしくは「憑依」という方が近いかもしれない。

 

 まさかネット小説テンプレというものを直に体験する日が来ようとは思ってもみなかった。

 

 技術的に見ればそうとしか言い様がないので、もっと早く、それこそ実験段階で思い至るのが自然だが、てんでその考えが浮かんで来なかったのは、そんな余裕がその時の追い詰められていた私に無かったからかもしれない。

 もしそうなら最近の私は考える余裕があるわけで、それはそれで良いことなのだと思う。いぇい。

 

 

「リツカ〜!ごはん出来てますよ!早くきなさ〜い!」

 

「あっ、はーい」

 

 

 いっけね。早く行かないと。今日の夕飯には今まで先延ばしにしてきた大事な話をする予定なのだ。

 

 

「よし、全員揃ったな。では今日はリツカの保育園卒業を祝って、腕によりをかけてリツカの好きなものを作ったぞ。母さんがな」

 

 

 卓上にはハンバーグ、エビフライ、オムライスなど、いかにも子どもが好きそうな家庭料理の類いがところ狭しと並んでいる。ちなみに全部私の好物だ。子どもっぽいかな?だが好きなんだから仕方ない!

 

 

「それじゃあ、いただきます!」

 

「「いただきまーす!」」

 

 

 話があったんだけど、まぁ後でいいや、ちょっと長くなるかもだし。せっかくのごちそうが冷めてしまう方が一大事だ。やっぱアツアツが一番だよね!

 

 

「はふはふ」

 

 

 口いっぱいに肉汁溢れるハンバーグを頬張る私に、お父さんもお母さんも笑顔になる。私も美味しくて嬉しくて笑顔になる。みんなハッピーな幸せ空間の出来上がりだ。

 

 ふふっ、楽しいなぁ。すごく楽しい。幸せだ。前の世界ではこうして両親と卒業を祝って一緒にごはんを食べるなんてできなかったから。

 

 だからこそ、腹を割って話さなければ。この善き日に水を差してしまうかもしれないけれど。この愛情に、誠実な人間でありたいから。

 

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 

 ああ、楽しい食事が終わってしまった。それじゃあ、覚悟を決めて話そうか。女は度胸!いざ!

 

 

「ね、お父さん、お母さん。大事な話があるんだ」

 

「ん?なんだ、急に改まって」

 

 

 決意が鈍りそうになる。だから、一気に言ってしまった。

 

 

「あのね、私は、魂だけ別人なんだ」

 

「「……は?」」

 

 

 あぁ〜〜〜!ついに!言って!しまった!

 

 

「えっ……は、はぁ!?」

 

「いっ、一体どういうことだ!?」

 

 

 ほらぁ、二人ともめっちゃ混乱してんじゃん。だから言いたくなかったんだよぉ。二人とも私をとても愛してくれている。だからこんなことを言えば困惑させて、さらに傷つけてしまうなんてこと分かっていた。

 これだけ幸福を貰っておいてこんな仕打ちで返すなんて、私は最低な親不幸者だ。

 私は、この身体()を乗っ取ってしまったのだと思い至ってからずっとずっとこのことを言うかどうか迷ってきた。

 でも、こんなに愛してもらったら、私にはもう騙し続けて享受するだけなんてできやしない。

 この決断は自己中心的なものなんじゃないかと今でも思う。

 

 けれど。

 

 

「私は、この世界とは別の世界で追われる身になっちゃって。それで、魂だけ別の世界の波長が合う人の死体に乗り移る形で逃げてきたんだ。

 だから、私は貴方たちに愛されちゃダメなんだ。……だって私は、私、は……」

 

「「……」」

 

 

 あ、あれ?ダメだなぁ、言葉が、出てこないや。

 ちゃんと言うって決めたのに。''私は貴方たちの大切な子どもとは別人なんだよ''ってちゃんと伝えないと。

 じゃないと、この身体()にも彼らにも、偽りの人生を送らせてしまう。それは、ダメだ。それだけは、ダメだ。

 

 それにもう未練は無い筈だ。だって二度目の人生は、十分楽しんだじゃないか。

 

 ああ、でも、ほんと、辛いなぁ。私ってこんなにもこの人たちが好きなんだなぁ。

 

 

 意を決して口に出そうとして、それを、父がすんでのところで遮った。

 

 

「なんだ、そんなことで悩んでいたのか」

 

「ヘっ!?」

 

 

 予想外の優しい声音に、今度は私の方が困惑した。もしかして悩んでたのバレてた!?完璧に隠せてると思ってたのに!

 

 

「最近妙に暗い顔してるからどんな心配事か気が気じゃなかったが、それなら何も心配する必要は無いぞ。」

 

 

 モロバレしとるやんけ!しかも慰められた!?

 

 

「どっ、どどど、ど」

 

「どうして実の子じゃないのにそんなこと言うのかって?そんなの大した理由はいらないだろ。

 だってお前の身体は正真正銘俺たちの娘のものじゃないか。

 それに俺たちは娘だからって理由でお前を愛してる訳じゃない。お前が、お前だから愛しているんだ。

 ……例えお前の魂が身体とは別人だとしても、お前を俺たちは愛しているんだ。

 あまり俺たちを見くびるなよ。父さん怒るぞ」

 

 

 ……は、はは。もう、敵わないなぁ。確かに見くびっていた。彼らの愛情はこんな事実ごときじゃびくともしないと、私は信じていなかったのだろう。

 

 そうか。私はこの世界にとって部外者だと思っていたけど、そんなことはなかったんだ。……私はちゃんと、この世界の人たちに愛されていいんだ。

 

 あー!なんか肩の荷が降りた気分!言うなれば、長時間悩み続けた数学の問題がきっちり解けた気分だ。スッキリ!

 

 ていうか、結局は私の独り相撲だったってワケか。

 

 あ、ヤバ。急に恥ずかしくなってきた。思い返せば私ってかなり小っ恥ずかしいことしてなかったか?

 思えば最近カルデアのことばっかり考えて参ってた。所謂ホームシックってのはこれか。ストレスが溜まっていたのかも。絶対私らしくないことしてた!

 というかお父さんもよくあんな突飛な話を真に受けたな。めっちゃ厨二病的なセリフじゃなかった?それだけ私のことを信じてくれてるってことかな。

 

 え、えへへ。ヤバい。かなり嬉しい。顔がぁ真っ赤になるっ〜!

 

 

「ははは」

 

「ふふふ」

 

 

 ええい、笑うなぁ!笑ってくれるな!今めっちゃ恥ずかしいんじゃ〜!

 

 こうなったら言ってやろうじゃないか!覚悟しろ!

 

 

 

 

「お父さん、お母さん。……大、大、大、大っ好き!」

 

 

 これからもどうかよろしくね。お父さん、お母さん。

 

 愛してくれてありがとう。

 

 

 

 

 

 こうして、本当の意味で、私の、藤丸リツカとしての輝かしい第二の人生が始まったのだった。

 

 

 

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