ステータスプレート回だけど言語理解とかの件に割く尺がちょっと足りなかった……。なので、次の回にまわすことにします。ホントごめんなさい!
あ、あと薄々気づいてる人もいると思うんですけど、今章のサブタイには全部元ネタとなった楽曲があります。この章のキーとなるキャラクターの心情を表したものですので、ぜひ推理してみてくださいね。どれもとっても良い曲でした♪
私とリリィが少しだけ仲を深めた1日目の夜が明けた。
リリィは途中でダウンしてしまったのだが、あんまり付き合わせるわけにもいかないので、ちょっとだけ疲労をとってあげてから、上着を被せてゆっくり寝かせてあげました。
その後も私はずっと勉強を続け、語学がある程度身についたので魔術関連の文献も漁ってみた。
この世界の魔術はどうやら私たちの世界の魔術とは根本から構造が違うらしく、どうやら魔術回路を必要としない設計のようだ。いや、正確には魔術回路は必要なのだが、それを開く必要がないということらしい。
この世界の魔術は詠唱と魔法陣と触媒によって、使用する魔術専用の擬似的な魔術回路とも言える魔力の通り道を作っている。
なのでこの世界の人達は自力で魔力を操作する必要性が無く、結果的に「魔術回路を開く」という私たちの魔術とは根本の理論が全く違う独自の魔術体系を発展させたそうな。
言い換えるなら私たちの魔術がマニュアル操作、彼らの魔術がオート操作と言ったところか。
私的にはより細かく繊細な調整ができる慣れ親しんだ元の世界の魔術が肌に合うけど、異世界魔術も革新的で面白い。
それぞれ異なる利点が見受けられるし、今まで見たことのない理論であったため黙々と調べていたら気づいたら朝になっておりました。
異世界転移初日から徹夜とはこれ如何に。
まぁ私は性質上、『
それも『白紙』の起源を応用した魔術を使えばストレスを感じた感情自体を白紙に戻すことでリフレッシュ可能なんだけど、やるの面倒くさいしなんかそれ嫌だし。
そんなこともあり、これからはずっと徹夜だなーと考えながら、朝早くから出勤してきた司書さんにお礼を言いつつ爆睡しているリリィの後を託して図書館を出た。熟睡してらっしゃるお姫様の姿を見た司書さんがあまりの光景にフリーズしていたが私はそのまま図書館を出た。ドンマイ!
ちょっと申し訳なかったが、こっちも今日は朝から予定が入っているので涙を呑んで訓練場にダッシュで向かった。
そう、今日はさっそく私たちの戦闘訓練が行われる予定なのだ。
あんまりそういう経験はみんなに積ませたくはないのが正直なところだが、この右も左も分からない世界で戦う手段は必須だろう。
仕方ないことだ。仕方ないことなのだが、なんだかやるせない。イシュタルさんが言うには私たちにはこの世界の人間を遥かに凌ぐ力があるそうで。
そんなものを持って、力を使う心構えも身に付けていない生徒たちがどうなってしまうのか。
それがどうにも気がかりである。
「よし、全員に配り終わったな? このプレートはステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示しくれるものだ。最も信用のおける身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても大丈夫だからな。失くすなよ?」
「……リツカ、今のは……」
「あ、大丈夫だよ、雫ちゃん。昨日の夜に言葉覚えちゃったから」
「あんたも大概バケモンよね」
そんなぁ。
とまぁ冗談はさておき、私たちの訓練を担当するというメルド・ロギンス騎士団長から話を聞いていた。
彼は晩餐会で見た時もいっとう気迫が凄まじいと感じた男性で、こうして面と向かって話している間も全く隙のない正に戦士と言って過言ない人物だ。
性格も明るく豪放磊落という言葉の似合う人で、緊張して
メルドさんはまず私たちに魔法陣が刻まれた十二センチ×七センチくらいの銀色のプレートと針を配って、説明を続ける。
「プレートの側面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。”ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝くんが質問をする。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
ふむ、宝具みたいなもんかな? あれもアーティファクトって呼ばれてた気がするし。一般に普及してるものがあるってことが一番の違いだろうけど。
それに『神代』かぁー。なーんかまた厄介事の気配するなぁ。それも後で調べておくか。元々この世界の歴史は一から百まで片っ端から調べ尽くすつもりだったけど。
それはさておき、さっそく針ぶっ刺すとしますかね。みんなちょっと
というわけで、いざ! プチっとな!
そんな私につられて、クラスメイトも顔を
すると、魔法陣が一斉に淡く光り始める。
……私を除いて。
「……え?」
「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に"レベル"があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在地を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としてのした潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」
「……ゑ?」
何だよぉお、もおおお!! またかよぉおぉぉおおおお!!
って!!! ちょま、ちょま、ちょま!! えっ? いやっ、なんでさっ!?
私のプレートなんも浮かんでないんですけど!
隣にいる光輝くんのプレートにはそりゃあもうびっしりと文字が刻まれてるのに、私のプレートちゃんってば今のところマジでただの鉄板なんですけど!?
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前ら用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ、救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放だそ!」
私のステータスは成長の余地なしとでも言いたいのかな?
だがしかし、メルドさんは私がそんな風に一人完全に置いてきぼりを食らっているとは露ほども思っていない様子でどんどん説明を続けていく。
「次に"天職”ってのがあるだろう? それは言うなれば”才能"だ。末尾にある”技能"と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と技能系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
私の天職は無職だとでも言いたいのかな!?
これでも立派にカルデア職員してたんじゃい! せめて何かしらの反応見せてくれないかな私のステータスプレートちゃん! このままじゃ私推定無職になっちまうぞい!?
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前たちならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
えー……。私のやつ真っさらなんすけど……。まずそれを説明してくださいな……。まぁさっきのは口ぶりからそんな人間は過去に例が無いんだろうけども。
せめて天職が木端でもステータスがオール平均値でもいいからせめて起動ぐらいしてくれません? これじゃそもそも何にも始まらないんですけどー???
「リツカちゃん、大丈夫……? なんか苦虫を頬張ったみたいな表情になってるよ……?」
「どうしたのリツカ、苦虫でも噛み砕いてるの?」
「何その苦虫みたいな表情」
「言いスギィ!!」
くっ、調子に乗りおって! いいもんねー! 戦いは戦闘力だけじゃないんですー!
さっそくそれをわからせてやんよぉ! なぁ、光輝くん!
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天之河光輝 17歳 男 レベル1
天職:勇者
筋力:150
体力:150
耐性:100
敏捷:150
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適正・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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「ほお〜、さすがは勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」
「いや〜、あはは……」
チートじゃねーか、クソッたれぇ!!
ちくしょうっ! ステータスなんて大っ嫌いだ! 大っ嫌いだ! バーカ! ちくしょーめ!
ていうか他のみんなも続々とメルドさんに報告しに行っているのだが、どれもこれも戦闘系天職ばっかりだ。
唯一浮かない顔をしている南雲くんでさえステータスの表示ぐらいはされているみたいだし、これは本格的に置いてけぼりになってしまった。
あー、クソ。なんなんすか。神様は私になんか恨みでもあるんですかね。あっ、私神殺しいっぱいやってたわ。ファッキンゴッドしまくってたわ。ごめんねゼウス。私も
てかそのせいなんじゃね、こんな追い詰められてんの。私という存在は変わってないわけだし。やっぱりブラックバレルは悪い文明……?
というか普通にへこむわ。そういう問題じゃないんだろうけど、なんか自分に才能なんざねぇんだよ! って言われてる気分になるね……。特に言語を克服した直後にこれは中々キツい一撃だった……。
私だって聖人みたいな鋼メンタルじゃないんだよ? 白紙メンタルなんだよ。ダメージ受けてないわけじゃないんだよ。ダメージゼロにしてるだけなんよ。ぽっきり折れたメンタル無理矢理リセットして立て直してるだけなんだよぉ。ほい『
うーし、まぁいつまでも落ち込んでちゃあ何にもできないし! ほんじゃ、切り替えてこー!
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
おっ? 私がちょっと直視し難い現実からスタコラサッサと退散して一周してその勢いで飛び蹴りをかましている間に随分とメルドさんによるステータスチェックもだいぶ進んだようである。
しかし、南雲くんの番で流れが途切れていたらしい。どうやら、彼のステータスがこの世界の一般人の平均ど真ん中を貫いていたからだそうだ。
「ぶっはははっ〜、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは〜、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな〜」
「ヒァハハハ〜、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」
うっわぁ……この子たちは相変わらずだね。
南雲くんを目の敵にしている檜山くんたちのグループが、彼からステータスプレートを奪い嘲笑っている。堂々としたいじめに、私はちょっとカチンときた。
というか私たちの街ってこういう人多くない? 私の特に思い出深いエピソードには大抵いじめとチンピラが関わってるんですけど。治安悪すぎない?
よし、そこでぷるぷる震えている我らが愛ちゃん先生! 出番ですぞ! 今こそ教師の威厳を見せる時!
「こらー! 何を笑っているんですか! 仲間を笑うなんて先生許しませんよ! ええ、先生は絶対許しません! 早くプレートを南雲くんに返しなさい!」
そうだー! チームワークは超大事なんだよ! それが崩れてると後々一気にガタが来る。セラフとかマジトラウマもんなんですけど。
この調子でいっちゃってください先生! 彼らにガツンと言って
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし。ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんから。ほらっ!」
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畑山愛子 25歳 女 レベル1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・農場天雨・言語理解
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アッ、こりゃあかんわ。強すぎます……。
ほら、明らかに南雲くん落ち込んでますやん……完全にトドメになっちゃってるよ。
まぁ、「あるぇ?」みたいな顔で首傾げてる愛ちゃんにクラス中和んでるから一応結果オーライなの……かな?
とりあえずこっちでもフォロー入れとくか。彼のメンタルが回復したわけじゃないだろうしねー。
なので思いっきり大きな声で私の醜態を晒していく! 名付けて「自分より下の人がいるってわかるとなんか気が楽になるよね」作戦! GO!
「あっ、メルドさーん! 私のステータスプレートちょっとおかしいんですけど見てもらってもいいですかっ!?」
「おう、わかった。……ん? ちゃんと血はつけてたよな? 先陣切って針を刺していただろう?」
「やー! それがいっくら血付けても全く反応しないんですよねっ! もしかしてこれ私一生無理な感じですか!?」
「無理な感じだな」
「えっ……」
やっぱり? でも予想してたけどそんなガチな反応だと思わず素のテンション出ちゃうんですけど。
「というか、今までこんなことは聞いたことがない……。実際に動いてみないことにはわからんが、あまりに特殊すぎる。これは俺の判断の範疇に収まるものじゃないな……。
よし、とりあえず今日の訓練は念のため見学としよう。その後色々動いてステータスを調べるぞ。天職と技能はすまん。俺にはどうにもできそうにないな」
「そうですか……。ありがとうございます!」
「いや、いい。……あまり気を落とすなよ」
「はいっ!」
まー、多分天職も技能も付いてないと思うけどね。全員に付いてた言語理解が私には無かったし、光輝くんたちは力が漲ってるって言ってたけど私は前と変わらないどころか体調悪いぐらいだし。期待はできそうにないなー。
「……ということで、南雲くん。あんま気落ちしないでよ。私多分君より役立たずだから」
「え……」
落ち込んでいた南雲くんに小声で声をかける。私は彼の良いところを沢山知っているし、とても尊敬していてなおかつ多大な恩もある。ここで力にならなきゃいつなるのさ!
「だから、私たちでペアでも組もうぜ? 落ちこぼれ同士、鍛え上げてみんなをあっと言わせてあげようよ!」
「……僕なんかでいいの? 言っておくけど、僕だいぶ使えないよ……?」
「そんなことないって! 私も似たようなもんだと思うし。
……それにさ」
ニヤリと不敵に笑って語りかける。実際、彼の職業に充分な可能性を感じているし。
だからこそ、私はこんな言葉をかけられるのだ。
「ありふれた職業で世界最強……狙ってみるのも、悪くないでしょ?」
ちょくちょく闇が滲み出てんなー、この作品のキャラクター。