ありふれた元マスターでクラス最弱   作:抹茶れもん

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香織編を書こうとしたんですけど、今の彼女には原作の魅力であるヤンデレ要素という最大の武器がないので後回しにします
あとちょっと暴行描写注意です


第6節 魔術

「はっはっ、はっはっ」

 

 規則正しく息を吐く。

 時刻は午前5時半。

 今私は日課の早朝ランニングを行っております。

 

 なぜ戦闘もないこの世界でこんな朝っぱらからトレーニングなのかと問われれば、それはもうルーティーンなのです、と答える以外にない。

 

 カルデアにいた頃はそれこそ毎朝トレーニングに勤しんでいたのだが、身体が完成しきっていない現段階では過度なトレーニングは逆効果。まずは自分に合ったペースで地道に体力作りから始めなければ効果的な鍛錬は積めない。

 何事も基礎が一番大事なのです。

 

 それに、有事の際に最後に頼れるのは結局のところ筋肉(自分)なのだと、スパルタ王もそ言っていた。

 なんだかんだ言ってやっぱ身体は鍛えておいて損はないしね。

 

 あっ、そうそう。光輝くんと友達になってからはクラスの雰囲気も目に見えてよくなった。

 みんな無意識にも私と彼の間にあった壁を感じ取っていたのかもしれない。子どもというのは案外そういった空気に対して敏感なものだ。

 

 クラス活動では私たちは何気にいいチームワークを発揮する。

 といっても基本、光輝くんのふわっとしたアイデアを私が現実に落とし込んでいるだけなんだけど。

 私はそれを苦に思わないし、光輝くんもあれから吹っ切れたように活発になっている。

 たまに暴走しそうになるけれど、そんな時には伝家の宝刀雫ちゃんの出番だ。彼も彼女の言葉は良く聞くし、いい薬だ。

 

 ま、そんなこんながあって、入学から早数ヶ月、私たちは夏休み期間に突入していた。

 

 たまに光輝くんの家に行って彼のお祖父ちゃんについての自慢話を聞いたり、雫ちゃんの家に遊びに行って竹刀を振ってチャンバラしたりした。案の定怒られちゃったけどね!

ちなみに雫ちゃんの家は忍者屋敷みたいで面白そうだったよ。いつか探険してみたいものだ。

 その際雫ちゃんのお祖父ちゃんに道場に歓誘されたが丁重にお断りしてきた。

 

 私は剣は護身程度にしか使えんのだよ。私の戦闘スタイルは強化の魔術を付与してからの徒手空拳での白兵戦がメイン。その際ルーン魔術で敵の妨害をしながら殴りにいく展開が一番多い。ガンドとか超得意だよ。

 まぁ私がある程度戦えたところで正直あまり意味はない。サーヴァントや幻想種には何も出来ずに縊り殺されるのがオチだ。彼らは纏っている神秘の桁が違うからね。

 

 こういった感じで、私は私なりに日々の学校生活を謳歌している。

 入学式の日に決めた精一杯楽しむという目標はらくらくクリアできそうだ。

 

 さて、それじゃあ気を取り直して、隣り町の山の麓までいざ爆走だぁーっ!

 

 

 

 

 

 往復してきました。めっちゃ疲れたよ。でも心地よい疲労でもある。

 

 さて、どっかに自動販売機でもないかな〜。鍛錬後の水分補給はまた格別なもんだ。

 

 そんなことをつらつらと考えながら帰り道の途中にある公園に入る。

 現在午前7時ちょうど。

 しかしこの時間帯にも関わらず、どうやら先客がいらっしゃるようだけど……

 ん?あれは……

 

 ッ!?

 

 

_______________________

 

 

「オイ坊主。金持ってんだろ。寄越せや」

 

 はぁ、つまんねぇ奴らに絡まれた。

 

 俺を取り囲んでいるのは高校生ぐらいの男子数名。

 そのいづれもが学ランを派手に着崩し、髪も派手に染めている。どこからどう見ても典型的な、どこに出しても恥ずかしい不良集団である。

 

 小学生相手にカツアゲとはケチくさいことを抜かす奴らだ。

 相手にするまでもねぇ。無視してどっかに……

 

「オイなんとか言ったらどうなんだよ!!」

 

「ヒャハハ、びびってんじゃねーの?なっさけねー!」

 

「おいおい、無茶言ってやんなよな〜?まだ小学生のガキだしよ〜!そんぐらい許してやりぁいいじゃねーか。ははは!

 おら、ママに助けてって泣いたらどうだ〜?どうせ聞こえねーだろうがな!」

 

「「「ぎゃはははははははっ」」」

 

 はっ、上等じゃねーか!そこまで言うんなら仕方ねぇ!

 

 この坂上龍太郎が相手になってやるぜ!

 

 

 

 

 

「は?ザコじゃん」

 

「げぼッ、ごほッ!う、あぁぁ……!」

 

「はははっ!即オチ2コマかよ!超ウケるわ!」

 

「だっせー!」

 

 朗らかな公園の雰囲気をぶち壊しにするような下衆な哄笑が辺りに木霊する。

 

 クソッ、こんな奴らに……がッ!?

 

「オラ、へばってんじゃねーぞテメェ!」

 

「ぐッ……!」

 

「おめーが売ってきた喧嘩だろがよぉ!」

 

「うッ……!」

 

「身の程を弁えろってンだよ、この糞餓鬼がぁ!!」

 

「ぐッうぅう……!」

 

 蹴る、掴む、叩きつける、殴る、もう一発殴る、引き倒す、踏み潰す、蹴り飛ばす、蹴る、蹴る、蹴る、蹴る……

 

 終わりなく続く暴行。浴びせられ続ける罵詈雑言。失われていく四肢の感覚……

 

 俺はこの時初めて「死ぬ」ということを感じた。

 

 勝てない相手に無策で突撃したのは確かに思慮に欠けた愚かな行動だっただろう。

 

 だが、愚かなのは俺だけかよ……?こいつらは違うのかよ。

 

 自分たちより圧倒的に弱い奴を囲んで、いたぶって、悦に入る。

 こんな奴らにいいようにされてろって言うのかよ?

 

 クソくらえだ!てめぇらこそ舐めてんじゃねぇぞ!

 

「痛ってぇ!?こ、こいつ思いっきり脚噛みやがった!」

 

 はっ、ざまぁみやがれクソ野郎共。

 

 勝てはしなかったが、一矢報いてやったぜ。あぁ〜なんかスッキリしたな。

 

「こいつ……調子に乗りやがって!」

 

 不良のうちの一人がポケットの中から折り畳み式のナイフを取り出し、パチンとそれを開く。

 

「痛い目見ても学習しねぇんなら、お望みどおり殺してやるよ!」

 

 おうおう、やってみりゃいいじゃねぇか。どうせもう何も怖くはない。

 なんせもうほとんど前が見えねえからな。特に右目は全く見えねぇ。

 頭ばっか蹴られたせいか意識も途切れる寸前だ。

 

「あばよクソガキ!地獄で後悔するんだなぁ!」

 

 不良が手に持ったナイフを振り上げる。

 

 視界が真っ黒に染まる。

 

 風切り音がやけにスローだ。

 

 

 

「コラァ!!!何やってる、お前たち!!」

 

「げぇっ!?サツだ!てめぇら逃げろ!」

 

 そして俺の意識は暗転した。

 

 

 

_______________________

 

 

 

 

「うっ……」

 

 目が覚める。眩しい。

 呻き声を上げながら、思わず両手で目を隠す。

 

 どうやら生きているらしい。完全に死んだと思ったんだが……

 

「おっ、お目覚めだね!おはようさん、坂上くん」

 

「……ぇ、え。……ふ、藤丸……?」

 

 俺を覗き込むようにして見下ろしていたのは、以外にも身近な人物。俺たちの副クラス長、藤丸リツカその人だった。

 

「そうだよ〜。いやぁ、ヤバかったねさっきは。下手しなくても君死んでたよ。そんぐらい重傷だった。右眼失明、頭蓋、四肢、肋骨、骨盤骨折、それらによる内臓損傷、出血多量、裂傷、擦過傷多数……数え上げたらキリないよ。よく死んでないね、きみ。頑丈すぎない?」

 

「ま、マジで……?え、でも、ありゃ?目ぇ見える……。それに、傷も全部治ってる!?なんだこりぁ!?」

 

 殴られている間は痛すぎて逆に痛みを感じないぐらいだったのに、今はかすり傷一つすらきれいさっぱりなくなっている。

 というかむしろ殴られる前より快調だ。

 

「どんな魔法使ったんだよ……」

 

「おっ、察しいいね。その通りだよ。まぁ厳密には魔法じゃないんだけどさ」

 

「は、はぁ……?」

 

 なんなんだよこいつ。スピリチュアルなのか?いや、しかし確かにそれなら説明がつくが……。うーん?

 

「すまん、よく分からんから説明してくれ」

 

「あっ、それはむり」

 

「なんでだよ!」

 

 気になるだろうが!説明しろよ!

 俺の無言の抗議を受けて、藤丸が慌てて答える。

 

「いや、これマジで嫌がらせとかじゃなくってさ。

 いい?魔法ってのは一般的じゃないの。それがバレたらかなり面倒なことになんの。周囲からの迫害ならまだいい方で、最悪の場合、同業者に狙われて、行き着く先は実験台かホルマリン漬けさ。

 だから神秘の秘匿ってのは私たち一般家庭出身の魔法使いにはそういう意味でも重要なワケ。自分たちの身を守るのはもちろんのこと、周囲の人にも危害が及ぶ可能性が高いからね。

 ちなみに私がここに残ってきみにこのことを説明してる理由としては、きみが周りの人に奇跡が起こったということをあまり吹聴して欲しくなかったから。そういう人たちは耳敏いからね〜。なるべく目をつけられる要素は無くしておきたかったのさ」

 

「すまん。さっぱりだわ。もっと分かるように説明してくれ」

 

 小難しい理屈はよく分からん。

 藤丸は苦笑して言葉を続ける。

 

「つまり『触るな危険』ってこと」

 

「なるほど。完全に理解した」

 

 つまり触るな危険ってことだな!

 藤丸は苦笑を崩すことはしなかった。

 

「まぁ、別に理解していなくってもいいよ、君がやるべきことは単純だ。

 私がその魔法を使ったことを誰にも言わないでくれればいい」

 

「そうか、分かった。言わなきゃいいんだな?そんぐらいなら俺にもできる。絶対誰にも言わないって約束する」

 

 俺の言葉に藤丸は拍子抜けしたような顔をする。

 

「ありゃ、意外。てっきりもっと根掘り葉掘り聞いてくるかと思ってたよ」

 

「あのな、俺にも人並の理解力はあるぞ。お前がなんとなく知られたくないつまり分かったし、そもそもお前は俺の命の恩人だ。それぐらいのことはするぞ」

 

「……ははぁ、なるほど。義理堅いんだねぇ、きみって。いやホント助かるわ」

 

 藤丸は今度は安心したように笑みを浮かべる。

 あぁ、そういえば、言い忘れていたな。あまりの出来事に、当然のことを忘れていた。

 

「ありがとな、助けてくれて。本当に感謝してる」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

 にっこりと笑う藤丸を見て、やはり彼女にはその笑顔が一番似合うなと、俺は思った。

 

「さ〜て、用事も済んだし、そろそろ帰るかな!」

 

「あっ、ちょっと待て。聞いておきたいことがあるんだか」

 

「ん?なにか気になることでも?」

 

「俺が意識を失う直前に、警察の人がいたと思うんだが……」

 

「ああ、あれね。あれは私の誤魔化しの魔術さ」

 

「なんだ、あれもかよ。なんでもできるんだな、お前」

 

「ははは、いや全然さ。でも急造にしてはよくできてたと思うんだよね、あれ」

 

「あとこれも聞いときたいんだが、お前なんか武術やってんのか?」

 

「おっ、さすがクラス一の空手家。目敏いね、その通りだよ」

 

「何やってんだ?お前相当できるだろ」

 

「八極を少々ね。でもまだ全然弱っちいよ」

 

「うそつけ。……今度勝負しようぜ。お互い本気でな。いいか、絶対手加減すんなよ……」

 

「えぇ〜、まぁ相手がいた方が練習になるからいいけどさ……」

 

 さんさんと照りつける太陽の下、そうやって俺たちは帰路についた。

 

 散々な目にあったが、これも輝かしいある一夏の忘れられない思い出だ。

 

 不思議な魔法使い(友達)との、かけがえのない大切な思い出だ。

 

 

 




本文中に魔法と出てきますが、もちろん主人公は魔法を使えません。
あくまで分かりやすいよう便宜上そう言っているだけです。
あと一応補足ですが、この世界にも魔術師がいるという設定です。
主人公が魔術を使えるのも、士郎顔の父と桜顔の母から受け継いだ魔術回路があるからです。
さらにいうとこっちの世界とトータスでは魔術基盤が根本から異なるので、あっちで言う魔力とこっちでいう魔力は全くの別物という設定です
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