今回これを執筆したのはシンエヴァを見てものすごく創作意欲が湧いたからです。
いや、確かヴンダーって戦艦だったな〜、と思い立ったが吉日。すぐさま筆を取りましたね。えぇ。
アズレン×ヴンダーを探した方もいるのではないでしょうか。私もその1人です。
だが、もう大丈夫!私が書く!
というわけで初投稿作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
全ての始まり、その前日譚
「ワタシ」と言う存在に心当たりはない。
しかし「ワタシ」が「私」であったという事実は確かに存在する。
それはどうしようない現実だったものであり、かの未来の礎として大地に生える贖罪の十字架であったのだから。
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窓から入る光は部屋に敷かれた赤いカーペットを眩しいほどに照らしている。
室内を照らす光が差す窓辺に1人の人間がいた。
「今期の特別計画艦。そのエンプティスペースがついに公開されたな」
窓際の人間が口を開く。誰かに語りかけるようなその言葉は独り言でなく、その部屋にいるもう1人の人間に向けたものだった。
「ああ、しかしあの計画艦には謎が多い。そして、他とは違い手間も資金も馬鹿にならない」
室内にある高級感のある椅子に座った男は、肘を机に据え、顔の前で手を組みながらそう返した。
「しかし、公開された以上開発を進めねばならんぞ。そもそも計画艦は上層部からの計画という名の命令だろう。最初から我々に拒否権などあるまい」
「分かっている。計画自体に支障はない」
「架空存在実証及び特別計画艦の実戦配備計画、か。上層部はいったい何を考えているのやら」
「何にせよ我々の計画に変更はない。上層部の目的と我々の目的はそれほど離れたものではないからな」
「ふむ、まぁよか…」
窓際の男が口を開こうとするも、ここで突然のノックにより2人の会話は唐突に終わりを告げる。
そして椅子に座る男が部屋の前にいる存在に入室許可を出した。
「おはよう、2人とも。今日も早いわね。」
扉を開けて入ってきたのは、黒を基調とした軍服に身を包んだ金髪の美女であった。
「ああ、おはよう、ビスマルク」
「おはようございます、ビスマルク。」
彼女の挨拶に2人は先ほどとはうって変わって親しみを感じさせる口調で接する。
「さて、早速だけど今日の業務を始めましょうか。では、最初に先月の決算報告だけれども…」
「それにはもう目を通したよ。まあ、いつも通りだったね」
「流石に仕事が早いわね…」
「指揮官補佐が有能だからね」
「ありがとう、2人とも。それでは、今月分の予算の確認をしましょうか」
2人の賞賛を受け止めた指揮官補佐は、無駄口を叩くなと言わんばかりに仕事を進めるように言う。
「ちょっとぐらい照れてもいいんだぞ?」
「貴方の照れる姿…みてみたいわね」
「さっさと仕事しましょう。というかビスマルク、貴方このあと演習の指揮を執るんじゃなかったんですか?」
2人の軽口をバッサリと切り捨てて、2度目の催促をする。3度目はない、というような目線に2人は肩を竦めて早速取り掛かることにした。
「まあ、やっぱり計画艦かなぁ」
「だろうね。今回の計画艦は効率よく建造できるといいですけど」
「そういえば新しい計画艦が公開されたんですって?どんなKAN-SENなの?」
「それがなぁ…」
「どうしたの?」
どうにも歯切れの悪い返事にビスマルクは怪訝に思ったのか、その端正な顔に疑問の色を浮かばせている。
「基本情報、そして見た目も名前もわからないのですよ」
彼女の疑問に答えたのは指揮官ではなく、その横に立つ副指揮官だった。
「わからない?公開されたんじゃなかったの?」
「えぇ、公開はされました。しかしそれは第三期のエンプティスペースが埋まった、というだけのことです。まあ、開発過程は記載されていたので建造できないことはないのですが」
「つまり、上層部は得体の知れないものを投げつけてきたってことね」
「しかも、他の計画艦と違って必要な資金もデータ量も2倍なんだ。」
「…それは、厳しいわね」
その想像を超えた消費資源の多さに愕然とするピスマルク。その様子にさもありなんと首を振る副指揮官。そして、言った本人も信じたくないとばかりに眉間の皺を抑えた。
「2倍となれば開発部門だけじゃなくて技術部全体の予算のほとんどを食い潰すんですよ。
…ホント、わけがわからないです」
「やらないという選択肢は…無いわね」
「うん、まぁ開発できないこともないからなぁ。
…よしっ!」
そして覚悟を決めたように椅子から立ち上がり口を開く。
「技術部に通達。新しく公開された特別計画艦の建造を開始する。資金は開発部門内の即座に使えるうちの最大限を使う。足りなければ予備費からも出そう」
「承知した。技術部の饅頭たちに伝えてすぐにでも開発を始めるわ」
「頼んだ。さて、じゃあ今日の早朝集会はお開きだな。ビスマルク、演習頑張れよ」
「ありがとう。では、もう行くわ。少し遅れてしまって、ペーターに怒られるのは流石に恥ずかしいから」
と言ってビスマルクが退出するために踵を返したと同時に、突然バタンと音を立てて扉が開いた。部屋にいる全員が扉の方を向く。
そして、入ってきたのは若干顔の強ばったZ23だった。
「ビスマルクさん、ここに居たんですか!早くきてください!みんな待ってますよ!
…あっ、指揮官に副指揮官、おはようございます!」
「おはよう、Z23」
「おはようございます、Z23。今日も元気いっぱいですね」
「えへへ…ありがとうございます!
……って時間ないんでした!ビスマルクさん、行きますよ!ペーターさんが怒りそうなんです」
照れていたのも束の間、Z23は焦った表情でビスマルクに詰め寄った。
「分かったわ。…しかし、どうやら手遅れだったようね。ペーターに怒られてしまうわ」
「何でもいいですけど、一番最初にペーターさんに一言謝って下さいね。ペーターさん、結構小言長いんですから」
「すぐに行く。じゃあ2人とも、また後で」
「失礼しました!指揮官、副指揮官!」
そう言ってビスマルクはZ23に引かれるようにして出て行った。
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「………行ったか。それにしても嵐のようだったな」
「…ああ。
……………それにしてもルディ、お前は何でそんなに重々しい口調で話しているんだ?」
ビスマルクが出て行ってから口調を戻した親友にフォルカーは疑問を投げかけた。
「それは君もだろうに」
「いや、俺はお前に合わせていただけなんだが…」
「だろうね。あぁ、理由だけどね、最初に僕たちが話していた時に部屋の外にビスマルクがいたからだよ」
「ビスマルクが?よく分かったな……
それにしても何でビスマルクがいたらあんな口調で喋るんだ?」
「前にもノリでこんな口調で喋った時があったろう?それが彼女らの中でカッコイイと評判だと風の噂で聞いたからね。ディガー、君も見られるならカッコよく見られたいだろう?」
「…………………………フッ、勿論だ。」
カッコいいと言われて張り切るリュディガーと、それを面白がって振るフェルディナントのその背中はあまり変わらないように見えた。
「さて、この後はどうする?」
「一応今ある書類は片付け終わったし、とりあえずKAN-SEN達と触れ合ってきなよ。僕は技術部に行ってくるから」
「分かった。じゃあ俺は演習を観に行ってこようかな」
「では、また後でな。フォルカー」
「あぁ、後で会おう。カフカ」
重々しい口調に、これまた重々しい口調で返事をする。
わかり合ったような返しに満足そうに微笑みながら、フェルディナントは部屋の外に出て行った。
「さて、俺も行くか。今頃始まったくらいなら、決着はまだついてないだろ」
そう言って最後に残った部屋の主人は、外の世界に踏み出していった。
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鉄血第二○一海軍基地 近海
「いや、ホントカッコよかったわ!
『上層部は一体何を考えているのやら』
『何にせよ我々の計画に変更はない』
……ああ!ホントにカッコいい…!」
「姉さん…いつもの冷静さとカッコよさはどこに置いてきたの?…まぁ、カッコいいというのはわかるけど」
「アレを生で聞いたら貴方もわかるはずよ。次は録音してくるわ」
「盗み聞きの次は盗聴録音?あぁ、我が姉が軍法会議にかけられる日は近いのだろうか…」
興奮する姉、ビスマルクに呆れたようにため息をつくティルピッツ。
そして、そこに新たな乱入者達が現れた。
「その話もっと詳しく聞かせてもらえないかしら?」
「我もその話、興味があるな。ペーターお前もどうだ?」
「いや、私は……分かったわよ。見に行くわ。だからそんな威厳もへったくれもない泣きそうな顔で見ないで、グラーフ・ツェッペリン」
「そうか!憎く、滅ぼすべき世界だが、我の娯楽となるものはあるものだな!」
「貴方、世界を滅ぼすとか言ってるけど実のところ一番楽しんでるわよね…」
ペーター・シュトラッサーは楽しげな姉の姿を見て呆れていたが、微笑ましくも感じていた。
そしてその様子を見ていたティルピッツと目が合うとまるで同じような姉を持ったなと言わんばかりに肩を竦めた。それにティルピッツは本当にねと苦笑を返す。
できる妹同士のアイコンタクトとはどんな暗号よりも優秀なようだ。
そして、残念な姉達はどちらも幸せそうな顔で物思いに耽っていた。
「んー、姉妹間の仲の良さをこれ以上ないほど見せつけられてるわね。私、寂しいわぁ」
そんな中で1人残ったプリンツ・オイゲンはちょっと拗ねていた。
「よし、今日はヒッパー……お姉ちゃんを構い倒すわよ〜」
ちょうどその時、その近くで他のKAN-SEN達とビスマルクらを待っていたアドミラル・ヒッパーは、急に悪寒を感じたという。
「さて、みんなも待っていることだし、さっさと始めるわよ。ビスマルク、早く戻ってきなさい」
ちょうど時間になったのでペーター・シュトラッサーはその場の全員に呼びかける。
「今日の演習は第一艦隊と第二艦隊の模擬戦だったと思うけど、合っていたかしら?」
「ええ、その通りよ。…ハァ、今回はハインリヒが変なことしなければいいけれど」
ビスマルクが演習の概要を聞くと、肯定とともに愚痴が返ってきた。
一応鉄血の指導者として部下の悩みを聞いてやろうと思ったのか、ペーターの話を聞こうと水上を走りながら彼女に心配するように問うた。
「ハインリヒがどうかしたの?彼女は通常任務でもかなりの好成績を出しているが」
「えぇ、そうでしょうね。書類上は」
そしてそこから始まったのはペーターが溜めに溜め込んだ愚痴のオンパレードだった。
やれ、話を聞かないだとか。やれ、自由な癖に目標だけはしっかり潰すだとか。
そんな話が十数分もつづくのである。ビスマルクはこれは失敗したと悟る暇もなく、相槌を打ちまくった。
そして、演習場所に着いた時にはまだ始まってもいないのに疲労困憊という様相を呈していた。
「アンタ…どうしたの?すごく顔色悪いじゃない」
ついにはいつも威勢のいい言葉を口にするアドミラル・ヒッパーでさえも純粋に彼女の心配をする始末だった。
「いえ、何でもないわ。そう、ちょっと闇を見ただけ…病みをね…」
「そ、そう。…何かあったら声かけなさいよ。アンタに何かあったら一大事なんだから」
「分かっている。ありがとう」
「べ、別にアンタのこと心配して言ったわけじゃないから!勘違いしないでよね!」
顔を真っ赤にしながら己の陣地に急ぐように走っていくヒッパー。その様子にビスマルクは可愛いと思ったが、それを口にすることはなかった。
言ったらまためんどくさくなると判断したからだ。
「さて、準備は終わったかしら。貴方達、始めるわよ」
ヒッパーと話している間に、全てのKAN-SENの配置が完了したようだ。ビスマルクはすぐさま演習開始の合図を出した。
開始10秒もしないうちに相手艦隊の前衛とこちらの前衛がぶつかり合う。
衝突と同時に相手方の魚雷が発射されるも、バルジによりそれを無力化する。そしてお返しにとこちらの軽巡が主砲を発射するもギリギリで回避される。
一進一退の攻防が繰り広げられる中、私、ビスマルクは後方にいる主艦隊に牽制砲撃をしながらも、相手の隙を伺っている。隣のグラーフは戦闘機や爆撃機で前衛の援護をし、逆隣の我が妹、ティルピッツは私のスキルで強化された砲撃を相手主力艦隊に撃ち出している。と、同時に魚雷を使って前衛の撃破も狙っているようだ。
徐々に戦況はこちらに有利に傾いてきた。が、ここで相手主力艦隊のペーター・シュトラッサーのスキルでこちらの前衛の動きが止められ、集中砲火に晒された。運悪く相手の主砲が命中したようで、こちらの前衛艦の1人が撃沈判定を出され、そこから離脱した。
残った前衛の娘達もボロボロで、一度後退させるために私は一斉射撃による弾幕で相手を近寄らせないようにする。直撃はしなかったが、至近弾による衝撃で相手前衛艦隊の1人を撃破した。
これで漸く同数に戻った、と安心するのも束の間相手戦艦の一斉射撃が私たちを襲った。それによりティルピッツが大破、グラーフは中破と同時に発艦艤装がやられて完全に無力化された。かくいう私も主砲の一つが衝撃でダウンし、舵がやられたのか回避もままならない。
その後、できうる限りの抵抗も虚しく相手の航空爆撃により私は撃沈判定を受けた。そして、旗艦の私が戦闘不能のためこちらの敗北が決定した。
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「ハァ、今回は負けてしまったわね」
「いや、あれは惜しかった。ペーターのスキルの発動タイミングとその後の追撃がとても良かったと思う」
ため息をつく私の姿に悔しがっていると思ったのか、ティルピッツが慰めに来た。別に悔しがってはいなかったのだが、妹の優しさに演習の疲れを忘れるくらいの幸せを感じた。
「たしかにあの手は良かったわね。…あれの対処法をあとで考えてみようかしら」
「なら、私の部屋でやりましょう。最近手に入れた良い豆があるの」
かつては1人で、寂しくてもただずっと我慢していたティルピッツ。その妹が誰かをお茶に誘うということに感動を覚える。
(妹を変えたのは、やはりあの人たちかしら。…指導者として、そして家族としても感謝してもし足りないわね)
「どうしたの、姉さん?」
黙ったままの私を不審に感じたのか、ティルピッツは私の顔を覗き込みながら聞いた。
それに私は心からの笑顔と共に返答した。
「何でもないわ。それと、良いわよ。他の子達も呼んで楽しくやりましょう」
私の返答に少し驚いたような様子でこちらを見るティルピッツ。そして、少しはにかんだように微笑んで頷いた。
聡い妹のことだ、私のこの思いに気づいたのだろう。
しかしそれを指摘することなく、嬉しそうに隣を進む妹。その姿に、あぁやっぱり変わったな、ともう一度微笑んだ。
遠くから「おーい」と呼ぶ声がする。
私はティルピッツの手を取り、繋いだ。妹は今度は驚くことなく、その手を強く握り返してくれた。一頻り一緒に笑って、前を向く。
そして手に伝わる暖かさを感じながら、私たちは仲間たちの下へと走っていった。
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「いやー、良い戦いだった。どちらもなかなかの練度だったな。戦力については心配しなくても良いかな」
1人小さなゴムボートの上で双眼鏡片手に演習を見ていたリュディガー。
彼女らの手に汗握る戦いに心を躍らせながらも、今回の目的たる戦力の分析と把握は達成していた。
「さて、とりあえず戻ろうかな。戻ったらフェルの報告聞くか」
ちなみにこのゴムボート、最先端のステルス装備を載せたかなりすごいものだったりする。なのでKAN-SEN達には気付かれてはいない。
「んー、でもちょっとだけ景色を見てからにしよう。運良く釣り道具もあるし、休憩がてら楽しもう」
その後、超高級なゴムボートで日が暮れるまで釣りを敢行した結果、フェルディナントとビスマルクにこってり絞られることになり、更に罰のとして次の日の仕事量は倍になってしまうのであった。
主人公のヴンダーさんを初回で出さないという暴挙に出た。私だ。
……いや、ごめんなさい。書いてたらなかなか出てくれなかったんです。
おそらく次の次ぐらいに出るでしょう!多分!それまで気長に待っててください。
はい、というわけで前日譚でした。拙い文章ですが楽しめていたら幸いです。
※更新頻度、結構遅くなると思います。ご了承ください。