2020年4月20日〜大西洋沖合〜
風と波を切る音だけが聞こえる。遥か彼方には海と空の境界線が何処までも広がっている。
そんな美しい大海原の上を25ノットで行くのは、日本初のひいては世界初の無人艦隊である。
そんな艦隊の創設を可能にしたのは、ある一人の天才が開発した人工知能による恩恵があってこそのものであった。
艦隊の編成としては、
空母6、戦艦4、イージス巡洋艦10、イージス駆逐艦12
汎用駆逐艦30、強襲揚陸艦6、原子力潜水艦8
補助艦艇+その他48の計124隻となる。
これから戦争しにいく感を醸し出す大艦隊ではあるが、状況の特殊性故にそこまでのことではないと考えられている。
こんな巨大な艦隊が生まれたことを語るには、10年は遡らなければ到底理解できないと思われる。
第三次世界大戦の長期化によって、戦争が日常的なことへと常識が変化していってしまった。その結果、戦争に積極的に参加していない大国が、戦争を隠れ蓑にして現代兵器の軍拡を始めたことが発端だった。
それに対して、日本も対応を迫られたがこの状況を利用して憲法のグレーラインになっている自衛隊への変革のきっかけを作ることにもつながった。憲法改正はすんなりと国民に受け入れられ、陸海空自衛隊は解体され日本国防軍として再スタートした。その年が2010年。
そこからは、トントン拍子に装備や方針転換が行われ、規模もそれに付随して拡大していった。
そして、2013年に無人艦隊誕生のきっかけとなった人工知能第一号が生まれた。艦艇から航空機、車輌まで搭載され実験された結果は優秀の一言だった。
しかし、それ以降から第三次世界大戦は激化し交戦規定に基づいた兵器の製造と通常艦艇整備を優先されたため本格的運用はおこなわれなかった。
2017年終戦後、国防軍最高司令官に就任した横山龍之介元帥は既存艦艇に対する改造によるAIの搭載を推進した。
2018年終戦からわずか1年で隣国は尖閣諸島にその魔の手を伸ばした。しかし、自衛隊時代から計画されていた迎撃作戦によって、侵攻は阻止された。無人艦も多くの戦果をあげた。(第一次日中紛争)
そして、2年後の2020年に遂に無人艦隊・陸上部隊・航空部隊が創設されるに至った。
こんな大艦隊が、日本近海ではなく何故大西洋にいるかというとそれは、この部隊の司令長官によるところもある。
部隊は、最近緊張状態にあるアラブ諸国牽制のための演習と第三次世界大戦の英雄横山将暉大将がパレードに参加するためだ。
ここで何故スエズ運河を使わないかという疑問があるだろう。それは遠洋訓練が主目的ではあったが、政治色も強い結果によるものだった。
考えてみると空母艦隊、揚陸艦隊を通過させるのはアラブ諸国の鼻先に爆弾を携えて訪れているようなものだろう。その国々にしてみたら恐怖以外の何物でもない。(早い話が気が狂って相手が行動した場合手痛いしっぺ返しを食らう可能性があるからだ。)
4月終わりとはおよそ思えない強い日差しが東から差し込んでいる。その日差しの源が少しだけ西によった時、不意にIHI製F-9エンジンの甲高い音が「大鳳」の後方から聞こえてきた。30分ほど前に哨戒に上がった戦闘機が戻ってきたようだ。
それを合図に後部甲板上を様々な色のベストを身に纏った作業要員が駆け抜ける。
彼らの姿が後部甲板から消えたと同時に直線的なデザインで構成された戦闘機が着艦体制に入った。甲板上のワイヤーに引っ掛けるためのフックを機体後部から降ろしている。
「無事に4機とも帰ってきたな。」
「司令官、流石に心配しすぎですよ。用心深いことにし過ぎるということはありませんが、練度も十分ですから大丈夫ですよ。」
その光景を艦橋から眺めているのは、この無人艦隊・部隊の司令官たる横山将暉大将と空母のAIたる「大鳳」だ。(艦の統括AI・艦長には艦名が与えられるため同名)
そんな彼らの目の前で「制御された墜落」とも言われる着艦を行ったのは、海・空軍の双方で運用されているF-15を基に開発された国産第4.5世代機F-5「閃電」と国産第5世代機F-3「心神」
その実力は双方ともに米軍のF-22に勝るとも劣らないと言われているほどだ。
それは米軍がこの機体につけたニックネーム「Jイーグル+」「Jラプター」からもそれが見て取れる。
哨戒の為に飛び立った4機の着艦が完了し、新たに4機が哨戒とエスコートのために飛び立とうと確認作業を終え待機中だった。
「さて、陸地もうすぐだし、サービスの為に飛ぶとするか!大鳳、俺が空にいる間は指揮を任せるぞ!」
「…了解しました。別に飛ばなくてもよろしいのですよ。」
答礼を返してきたが、その顔には苦笑が浮かんでいた。そんな答礼を受け取ったことを本人は無視して、第三次世界大戦時の愛機「烈風改二」に乗り込んで確認作業を行っていく。
A7M2A「烈風改」は第三次世界大戦時の最優秀機として、名を馳せた。そして、今乗っているのは、A7M2XA-1「烈風改」の試作機を更に改造(魔改造)し、側と一部を除いて別物となった「烈風改二」である。ミサイルからレーダまで搭載可能で現代機にも十分対抗可能な性能となっていた。
そんな中でその現象は起こった。先ほどまで一点の曇りもなかった青空は瞬く間にどす黒く不気味な色をした雲に覆われ、いつの間にか霧まで立ち込めていた。
「大鳳、一体何が起こったんだ!」
『レーダに問題発生!……ジャミングの類いではありません、加えて衛星システムにも異常を確認!……GPS、ミチビキシステム、衛星データリンクシステム使用不能!』
「…いった…い…なに…が……」
気づけば、すぐ近くにいるはずの機体まで見えなくなって、徐々に意識も遠のいていった。
(何が…起こったんだ…まさか…化学兵器)
意識を完全に喪失する間際に頭をよぎったのは、そのことだった。
目が覚めると、空や周りの風景は通常の物に戻っていた。左手首の腕時計に目をやると異常が起こってから5分も経っていない。
「大鳳、一体何が起きたんだ!?」
『……』
「おい、どうしたんだ?返事をしろ!」
『……』
大鳳へ呼び掛け状況の確認を求めるが一向に返事がなかった。これは、相当マズイ事態と感じて艦橋に向かおうとするとピッピッと音が響いた。
「なんだ?…これは、……確か緊急用の通信装置。」
緊急用とは言ったが、実情は秘匿通信に用いられる特殊なものだ。
ー通信装置等が軒並みダウンしてしまい、使える物がないためこちらの方での会話になります。大丈夫ですか?司令官
ー「あぁ、大丈夫だ。大鳳、一体何が起きたんだ?」
ーはい、結論から申しますと原因不明です。私もつい先程まで機能が停止していました。通信の復旧までに後1分ほどを要します。
ー「了解した。大鳳は、各所の復旧、艦隊状況の確認と診断プログラムをはしらせろ。もしかしたら、潜伏型のウィルスかもしれん。こちらは、直ちに発艦して周辺の警戒と偵察に向かう。」
ー了解しました。
そう言って、発艦した。高度を4000mまで上げたところから艦隊を見下ろすが、欠けた艦は今の所確認できなかった。
「どの艦も大鳳と似たような感じか……人間の俺までその現象と同じく意識を失ったことはいただけないな。本当に何が起こったんだ?」
愚痴を零しつつも分析と周辺の確認を起こっていると、
『こちら、大鳳。司令官聞こえますか?』
復旧したと思われる通信機から声が聞こえてきた。
「大鳳か!感度良好よく聞こえるぞ!」
『了、司令官。艦隊全艦存在を確認、衛星システムを除いて正常に作動しています。』
「?衛星システムだけが動作してないのか?再アクセスと診断プログラムははしらせたのか?」
『2回程すでに行いましたが、接続できませんでした。また、機器の方から問題は検出されませんでした。』
ウゥゥゥゥゥゥ――――!!!!(サイレン音)
『っ!?議論は後回しになりそうです。前衛の「照月」より入電!艦隊方位1-2-6、距離240kmに国籍不明機多数を探知!』
「了解!こちらで確認に向かう。艦載機はこちらの命令があるまで待機させておけ。F-3が乗っ取られでもしたら一大事だ。念入りに診断プログラムをかけておけ。」
『了、即時発艦待機体制で準備・確認を行います。ご武運を!』
指定された方位へと徐々に加速しながら向かっていった。
―――――――――――――――――
『「大鳳」より、司令官。不明機との会敵予想時刻は15分から20分と推測されます。』
「了解!それよりもまだ、衛星システムの方は回復しないか?」
『はい、先程申した通り機器の方から問題は検出されませんでした。…もはや…考えたくありませんが、…衛星が消えたか宇宙で問題が発生したとしか考えられません。』
「ハッハッ、何だ?宇宙人が攻めてでもきたか?全くどうしたって言うんだ。ハァー……冗談を言っても仕方がないか…個艦相互リンクシステム〔link16〕への切り替えは行ったか?」
『はい、そちらについては通信機の復旧と同時に行いました。』
「よし、相手方の速度は分かるか?」
『はい、速度約200ktでこちらに向かっています。発進地点はフランス、スペイン付近と予測されます。』
「200?ジェット機じゃないのか?……大鳳、全艦に対空戦闘用意発令!いつでも対応可能なようにしろ。光学迷彩とレーダ撹乱装置を起動して、艦隊の存在を隠せ。続いて、戦艦「金剛」を旗艦とする先遣隊を組織し編成が完了次第目標海域へ向かわせろ。こちらも光学迷彩とレーダ撹乱装置を起動させた状態でだ。」
『先遣隊の組織ですか?そこまでしますと機密たる光学迷彩と撹乱装置の存在が露呈する恐れがありますが-』
「そんなことは気にしなくていい、機密なんてこの情報社会内では一時的なストッパーにしかならないさ。それにどうやったって遅かれ早かれ露呈する。お前たちの基幹部分とスパコン(機密名)さえ、露呈しなければお釣りが返ってくるさ。」
『……復唱します。艦隊全艦光学迷彩・レーダ撹乱装置起動及び先遣隊の編成を行う。』
「何、そんなに心配しなくても大丈夫さ。マスコミなんかの収集付かなくなって困るのは養父の方なんだから、そっちで嫌でも対応するさ。」
追加指示等を大鳳に命令しつつ、逐一新しい情報を聞いていると会敵まで30kmをきった、不明機に対して呼び掛けを行う。
「不明機に告ぐ。貴機らは当艦隊の防空圏内へ接近している。直ちに進路を変更せよ。これに応答なき場合、安全を保障しない。」
コクピットの中でもう10回近く英語とフランス語、スペイン語で繰り返した言葉だが、相手方は全く応答するそぶりを見せない。
レーダーを見ても変更する素振りは愚か微塵も進路がずれている様子すら見られない。
「くそ!なんの意図でこんなことをしているだ?」
相手方の意図が全く読めなかった。事前協議でこの艦隊が来訪することは知られている筈。だが、これでは外交問題にも発展しかねない。
「彼奴等は戦争でも始める気か?…まさか、政府の中にナチスの残党が……。っ!?、何だまだ、距離があるはずなのに急に戦闘機動を取り始めたぞ!」
「大鳳、そちらでも確認できているか?」
『はい、確認できています。そして、新たな機影を探知……訂正小型の飛行物体を探知。数6機を確認。発進地点は見逃していたため判然とはしませんが、イギリス方面からと思われます。おそらく、不明機が戦闘機動を取り始めた原因と思われます。戦闘機隊をあげますか?』
「……ファルコン隊、クローヴ隊を発艦させろ!発艦終了次第、アルバトス隊、リッド隊に対艦・対地装備の上で即時発艦待機体制に入らせろ。まず、こちらから接触を試みる。」
そう言って、戦闘空域に突入していった。
筆がのって、書き上げましたがリリカルとセキレイを待っている方には申し訳ないと思っております。
新しいものの方がアイディアが浮かびやすいという皮肉。今月中か5月の初旬には必ず投稿させて頂きますので、どうかお待ち下さい。