坂本少佐の後に続いて、基地内を歩いていく。最初はどうなるかと思って身構えたが、案内されたのは応接室と思われる部屋だった。
警戒を解くわけではないが、その度合いを一段階下げても良さそうだ。
「少し、こちらで待っていてくれ。基地司令を連れてくる。貴官には心苦しいが、戻ってくるまでは保安上の理由で鍵をかけさせてもらう。」
「分かりました。」
了承の意を伝えると、そそくさとドアから出て施錠音が聞こえた。
「大鳳、聞こえるか?」
『はい、感度良好。そちらはどんな感じですか?』
「思ったよりは待遇はいいぞ。座り心地の良いソファーに、冷たい水も用意されている。扉に簡単な鍵はかけられているがな。」
『それは良かったです。』
「それで、先遣隊は後どれくらいで到着する?」
『後、10分程でそちらに到着します。本隊の方も20分後には到着します。』
「それは上々だな、到着次第この島を囲んで揚陸準備も行ってくれ、戦車と装甲車中心でだ。」
『彼女たちはどんな感じですか?』
「まだ、一人としか会っていないから断言はできないが、人として好ましいと思える人物たちだと感じた。」
『そうですか。』
報告事項を受け、そのやり取りをしながら相手の到着を待った。
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501JFW side
「……バルクホルン、ペリーヌ、例の機体はどうだった?」
「ああ、整備員の話によれば機体名は『烈風』、製造元は『三菱重工業』、計器類はすべて扶桑語で書かれていたみたいだが……『日本国』という聞いたことのない国が書かれていたっとのことだ。」
「三菱重工……宮菱重工の間違いじゃないのか?」
「いや、私もそう思って確認したが、三菱重工だそうだ。」
「そうか……武装の方?」
「機関砲は20mm長砲身2門、30mm長砲身2門。機首に13mm機銃が2丁です。整備員の話だとフラップが妙だと言っておりましたわ、坂本少佐」
「30mmまで装備しているとは……かなりの重武装だな。」
「このことも彼に聞かなくてはならないわね。」
「あぁー、そうだなミーナ。質問が山積みだ。」
side out
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「大鳳、衛星の方はどうなんだ?やはり駄目か?」
「はい、先程はああは言いましたがその可能性は限りなく低いので、調査艦を用いた試みも行いましたが-」
「…が-どうしたんだ、大鳳?」
「……ふぅー……調査艦に搭載されていた望遠鏡から確認した結果、宇宙空間に宇宙ステーション、衛星は愚かデブリの存在も確認できませんでした。」
「なっ!?それは…!?大鳳続きは後だ、切るぞ。」
衝撃的なことを言われて、一瞬ポカンとしてしまったが鍵の解錠オンで意識を引き戻された。通信を切って、深呼吸で心を落ち着かせると相手が入ってきた。
旧海軍の将校服を着た坂本少佐とドイツの将校服を着た赤髪の女性が入ってきた。
「ごめんなさいね、待たせてしまって。」
「貴方達がここの指揮官か?」
「えぇ、私はカールスラント空軍第3戦闘航空団司令(JG3)、501統合戦闘航空団〔ストライクウィッチーズ〕司令ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です」
「改めて、扶桑皇国海軍遣欧艦隊第24航空戦隊288航空隊、同じく〔ストライクウィッチーズ〕所属、副司令の坂本美緒少佐だ。約束通り階級をお教え願おう。」
「そうでしたね。……日本国防海軍第1遠征機動打撃艦隊司令長官横山将暉大将。」
「大将……!?失礼しました。」
「気にしなくて大丈夫ですよ。貴方達からしたら、信用に置けないものの発言のはずですからね。歳も見たところ同じように見えるので、敬語は不要です。」
「そうか、……ならお言葉に甘えよう。」
「……そうさせてもらうわ。」
階級でやはり、不審を駆ったようだったが最初やろうとしたことに比べれば、誠実な対応をしたと思う。
(最初は、偽りの階級を名乗ってから相手との協議を行い、司令官と話し合ってくるという体を取って帰還する。そこから、制服に着替えてヘリで舞い戻り、島を完全に包囲といった感じ。)
「(階級に関しては偽って、大尉位にした方がすんなり行ったかもしれないな。)」
少し、失敗したと後悔しつつも相手の様子を伺う。相手が落ち着いたタイミングを見計らって話を切り出した。
「さて、本題に入りましょう。ここは何処でいつなんですか?聞いたことのない国名。それに加えてあの脚の飛行機械?私が知る限りでは、空を飛べる兵器は飛行機かミサイル位なんだが?自分の目には……空飛ぶ少女が目に写ったんだが-」
「それは、私達も聞きたいことです。横山大将、私達も「ニホン」という名前の国に覚えがありません。」
「そのことは承知のことです。ですが、まずは俺の質問に答えてください。此処はどこでいつなんですか?」
ヴィルケ中佐が表情を僅かに引き締める様子が見えたので、相手もこのやり取りは不毛と気づいたようだ。
「分かりました。今日は1944年5月8日、ブリタニア連邦ドーバー基地です。」
1944年と言われた瞬間、衛星等がない理由は合点がいったがそれと同時に疑問が浮かんだ。
「(1944年なら、第二次世界大戦頃のはず。だけど、そんな風には見えないな。)」
「横山大将こちらからも、質問ですが貴方の国は何処にあるのかしら?」
そう言って差し出された地図を見ると
「(何だ、この地図はこっちの世界とは違うようだな。)……ここです。」
「なに!ここが日本国だと!どう見ても扶桑にしか見えないが……」
「やはり、そうですか。……この地図は私の知ってるものと違っているんです。」
「「え?」」
二人がその言葉にやや面食らっている間にスマートフォンを取り出して、世界地図を呼び出し、提示した。
「なんだ、それは?」
「手帳かしら?」
「便利な道具ですよ。……こちらの地図です。」
「これは便利だな!」
「確かに違うようね。リベリオン大陸の形が違うし、それにパシフィス島も無いわ。……これは一体-」
更なる聞き覚えのない国名らしきものが出てきたため、半信半疑ではあったが仮説を二人に対して発言した。
「ヴィルケ中佐、坂本少佐、お2人は「並行世界」「異世界」という言葉に聞き覚えはありませんか?」
「……いえ、思い当たるものは無いわ。」
「そういえば、リベリオンのダイムノベルにそんな言葉があったな。だが、詳しいことは知らんな。説明してくれないか-」
「……そうですね。「平行世界」は、もしかしたら存在したかも知れない世界。例えば、選択の分岐の数だけ枝分かれのように世界が存在するという考えです。「異世界」はこの地球とは違う空間のことを指します。シュレディンガーの猫における多世界解釈の延長です。こちらは聞いたことがありますよね。」
「分かりましたが、それとあなたに何の関係があるというのですか?」
「先ほどの語ったように「平行世界」から来たということです。分かりやすく言えば、異世界から来た人間なんです。ネウロイに、聞いたことの無い国名、そして貴女方の存在、そう考えなければ辻褄が合わないんですよ。……俺のいた世界は、2020年4月20日でした。」
「「!?」」
「2020年だと、76年も未来じゃないか。」
「はいそうです。過去の世界しかも違う世界に来たということになります。」
「……となると、あなたは異世界の住民ということになるわね。」
「嘘を言っている目ではないな……しかし-」
「まあ、そうなりますね。結論は俺の艦隊を見てからでも遅くないと思います。もうすぐこちらに到着するので-」
「そうですか、なら待たせてもらいます。」
「ありがとう。ならこちらは、信用の証です。預かって置いてください。」
待つ間に、相手の信用を獲得するために懐に入れていたMP7を目の前の机に出した。
「「……」」
「艦隊が到着するまでの間に、編成の説明をします。」
「少し、待ってくれ。横山の世界には、ネウロイが存在しないと言っていたが、ならあの兵器は一体-」
「ネウロイは存在しませんので、人同士の戦争に使われています。1944年、つまりいまの頃には第二次世界大戦という戦争が行われていました。」
「第二次世界大戦に第三次世界大戦ね……」
こちらの世界の戦争の歴史、そして第三次世界大戦等について話していった。すると、中佐の顔がどんどん暗くなっていった。当然の反応だと思った。この世界は人との戦争・殺し合いは起きていないはずだからな。
この世界では1939年からネウロイとの戦争で、形の上だけでも協力関係が成り立っているから尚更だろう。
現在のネウロイ戦の主戦力たるウィッチとしては。
「それでは、編成について説明します。」
「戦艦4、空母6、巡洋艦10、駆逐艦42、潜水艦6、他54隻の122隻です。」
「陸上戦力が4個戦車師団、3個砲兵(特科)師団、3個混成機械化師団等、兵員30000人以上、戦車1000輌以上、装甲戦闘車等2000輌以上です。」
「航空戦力が戦闘機1390機、他を含めると2000機以上となります。」
「大戦力だな……一国の戦力と同等じゃないか、……こんな艦隊を一体?」
「いえ、この艦隊は補助にしかすぎませんよ。本土の主力にはこれ以上の艦がいます。」
「なっ!?」
「流石に、陸上戦力の方はそうはいってませんが-それにこの戦力を1944年当時の兵器で換算すると大国数国を相手にしても余裕があるでしょうね。」
「……なんと言っていいか-」
「まあ、そうなりますよね。……艦隊が到着したようです。外に行きませんか?」
「えぇー、分かったわ。」
二人の同意を受けて外に移動した。
「……あの、横山大将……艦隊はどこですか?」
「私には、何にも見えないが?」
「あっ、うっかりしてました。大鳳、光学迷彩解除。」
『了解。』
大鳳に迷彩解除を命じて、少し待つと艦隊が近海に出現した。
「なっ!?これは……」
「一体何が-」
「特殊な装置を用いた迷彩ですよ。どうです、この艦隊は!」
「単刀直入に言おう。我々と一緒に戦ってくれないか?」
「私からも、お願いします。」
まあ、この世界はネウロイによってガリア…フランスがいまだに占領されている状態でここが欧州における最期の砦となっているからこの要請は妥当なものだろう。
「一緒に戦うことはやぶさかではありませんが、少し時間をもらえませんか。」
「……それもそうだな。こんな案件一人では決められるものではないか。」
「……そうですね。その間、さっきの銃はお預かりください。」
「それでは、こちらは烈風で艦隊に一時帰還します。」
「色よい返事をお待ちしております。」
「中佐、少佐お話し中失礼します!」
「どうしたのかしら?」
「はい、それが例の戦闘機が急に光だしまして、収まるとストライカーユニットへ変化しました。」
「なんだって!?」
「……」
「あのヴィルケ中佐、この世界では戦闘機が……ストライカーユニットというものに変化することがあるんですか?」
「え、いえそんな事例は聞いたことはありませんが-」
「……そう……ですか。ハアー―」