曇った硝子は、磨けば元よりも美しくなる。
秋津茜様がもし、偽典だったという妄想を書き連ねたものです。

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Twitterを開いた瞬間硬梨菜先生の言葉に性癖を破壊されてしまったので投稿させていただきました。
下手の横好きが書いたので非常に拙い文であり、誤字脱字矛盾その他諸々があるかと思われます。それを踏まえた上で、読んでいただけると幸いです。


秋津茜様、偽典へご案内申し上げます

黒い装備を纏う少女(来場者)が討ち倒した黄金の龍が紐解けるように消えていく。

やがてその形を完全に失うと、少女へ向けてアナウンスが流れ、フルオーケストラで空気を重苦しいものへと変貌させていく、暗い演奏を奏でる中会場の中で、それ(・・)の体は編むように構成されていった。

 

「■■■◾︎◾︎◾︎◾︎!!」

 

涙を流して怨嗟の声を上げ、何かに憎悪を燃やす土色の顔が一つ、編まれる。その顔は腫瘍の如く自らを増殖させ、更に醜く異常なまでに長い腕を何本も生やし肥大化していく。

 

「「「「■■■■■■■■■■!!!」」」」

 

フルオーケストラにも劣らない大音声を生み出すそれは、次に立つ為の脚を型作った。明らかにそれの重量を支えるには厳しいであろう、細く、青白く、多種多様な傷跡が残る脚を。

顔の塊を背負い立ち上がったそれは、中心部から肉を割いて突き出されるように脚と同色の腕を表に出し、左右に置かれた、引き摺られすぎて最早人であったとしか分からない何かを、それぞれの掌で雑に掴む。

 

「…」

 

縦長の鏡が埋め込まれた胴体に、透ける黄緑のゼッケンを着たそれに、何処からか一昔前のメールなどで使われる、笑顔の顔文字の書かれた球体が放り投げられ、それの頂点部分にガッチリと嵌ると、電気が切れかけた照明を想起させる点滅を繰り返し、暗くなる度に砂嵐を映して、一瞬だけ悲壮感に溢れた顔を見せた後、球体の目を隠したいのか、それは何かを掴んだ腕で編まれた包帯のような物を器用に持ち、目のある場所に何重にも巻いてキツく結んだ。

 

「これ、は…」

 

猫背なのにも関わらず約四メートルはあるそれは、奇怪な巨人は、丁度目がある部分から赤い液体を滲み出させて、滴らせ、会場を濡らす。憎しみに満ちた顔が声と共に吐き出した刃物の柄を、背中の腕が握りしめ、本体の脚やゼッケン、腕を突き刺す度に、傷口から黒いもやを吐き出し、顔文字が乱れる。

 

()…?」

 

ホラーゲームに登場してもなんらおかしくない風貌をした、奇怪な巨人の鏡に映る自身を見ながら、少女は華奢な身体を震わせ、面を歪ませた。

誰に聞いても、少女に似ても似つかないと答えるだろう。しかし、それは少女である。少女の影法師と少女が判断した存在である。

心の奥底で、呻き声を上げるそれがいると知りながら背を向けた少女は、そのことを誰よりも深く理解しているからこそ、相対した今、恐怖に身を震わせ、口を締めた。

見た目にそぐわない、驚異的な身体能力を備えた少女の肉体が、後退りする。眼前の恐怖の権化(影法師)に戦いを挑むのは駄目だと、勝つ勝てない以前に少女の心が強く拒絶しているが故に。

 

「…」

 

影法師は答えず、代わりに床に手を着き、左脚を前にかけ、頭を下に向ける姿勢を取った。

少女は、その姿勢をよく知るからからこそ逃げようとするが、怯え竦んだ脚は言うことを聞かず、最早後退りすらしてくれない。

 

「っ!」

 

ダンッ!と、空気が爆ぜた音を連れて、スターティングブロックもなしに驚異的な速度で走り出した奇怪な巨人が、私は私(・・・)だけでいいと、握りしめた何かを振りかぶって、少女に迫る。

このままでは、硬直した身体は、爆速する奇怪な巨人に振り下ろされた一撃によって粉々に砕かれてしまう。そう分かっていながらも、傍観者と化した少女の意識は身体に命令を与えることができず、ただ諦めた(・・・)ように死んでいく…

 

 

 

 

 

———筈だった。

 

『秋津茜ェ!!』

 

何かが乗り移ったのかと思わせる程形相が険しいものへと変わった少女は、自らの名を叫びつつ、滑り落ちそうな短刀を持つ手に力を込め、振り下ろされた一撃を横に跳んで回避し、仮初の死を免れた。

 

『何故ボーッと突っ立っている!?お前が死んだら我も死ぬのだぞ!!』

 

荒々しい口調で自分を叱責する少女は、床を叩き割った奇怪な巨人を睨みつけ、短刀を構える。

 

「…ノワル、リンドさん…でも…あの人は…私『アレがお前だと!?笑止千万ッ!!』で…!?」

 

少女らしい穏やかな口調に戻ったかと思えば、荒々しい口調が笑わせるなとそれを遮るように言葉を放つ。

 

『お前はお前だ!あんな吐き気を催す笑みではなく、阿保のように純粋な笑みをする、我の一番の臣下だ!!それとも、お前はアレがお前だから…ッ!』

 

揺ら揺らと掴み所のない動きで少女へと視線をやり、今度は撥ね飛ばすつもりなのか振りかぶらず肉薄する奇怪な巨人。その巨体をギリギリで避けた少女は、荒療治ではあるが、最も有効的な手段で己を焚き付けた。

 

『お前がお前であることを、諦める(・・・)というのか!!?「っ!」』

 

フルオーケストラの演奏も、数多の怨嗟の声も掻き消す怒号が、会場の隅から隅まで響き渡り、少女の脳内に、ある光景が浮かばせる。少女の病弱な身体ではやりたくてもできないことを軽々とやってのけるのに、「面倒だから」という理由でそれをしようとはしなかった同級生の、笑っている(嗤っている)光景を。

その言葉に悪意がないことは、少女も承知している。しかし。

 

「……ません」

 

面倒という理由だけで諦められるのは、やりたくてもできない少女を「やりたい」を、目の前で無意味と断じて踏み躙るのと同義。何ら変わりはしない。

そんな、「やりたい」を無意識に踏み躙った同級生を、何度も何度も見てきたからこそ、少女は同級生達を責めはせねど、同じ側に回ることを拒絶し、その行為を忌避してきた。そして、その行為を忌避することは。

 

「…絶対に」

 

「諦める」を、忌避することは。

 

「諦めません!!!」

 

今も尚、不変である。

 

『ならば!戯言など抜かさず、眼前の紛い者をその手で討てェ!!「はい!すみません!!」』

 

元のものへと戻った少女の面持ちには、もう曇りはない。真っ直ぐと奇怪な巨人を見据える瞳も、爛々としている。

輝きに満ちた視線を向けられた奇怪な巨人は、目を背けるようにクラウチングスタートの姿勢を取り、少女へと四度目の突撃を敢行した。

 

「私じゃない私さん!すみません、私は今から!!」

 

回避も、防御もせず、ただ突っ立っている少女を、奇怪な巨人は、その巨体で今度こそ撥ね飛ばそうとするが、触れる寸前で少女の姿が跡形もなく消え、代わりに出現した丸太を粉砕するという結果に終わる。

 

「…?」

 

消滅した標的を探して辺りを見回すも、塞いだ目に映るのは全て奏者であり、標的の尾の先端すら視認することができずにいる奇怪な巨人の真上で、少女は一瞬の内に様々な想いを馳せ、そして口を大きく開き、放つ。

 

「貴方を!!倒します!!!」

 

私は、諦めないという固い意志を。

 

「刃隠心得奥義!!!」

 

鳥の頭を被った半裸の人のように、頑張った先の未来にいる、憧れの自分に向かって走るという、熱き決意を。

 

「【竜威吹】!!!!」

 

天覇の龍の、息吹に乗せて。




ここまで読んで下さった方に、感謝を。
気が向いたら、また何か書いて投稿させていただくかもしれません。もし見つけたら、読んでいただけると嬉しいです。
それでは、幕を閉じさせてもらいます。
御来場、誠にありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。


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